※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は記者会見の報告から始めよう。 11月27日に公開される“The Polar Express”のプロモー ションでロバート・ゼメキス監督の来日記者会見が行われ、 製作に使用された新技術performance capture systemの実施 風景を撮影したメイキング映像が公開された。 このシステムは、VFXの制作を行うソニー・イメージワ ークスが開発したもので、俳優の演技をそのままデータ化し てCGIアニメーションに変換すると紹介されていた。 その全貌が公開されたものだが、映像を見ると、主演のト ム・ハンクスは多分体温を遮断するための厚手のボディスー ツを着用、そして全身の各所に165個と言われる赤外線発生 器を取り付けて演技を行っていた。その赤外線発生器は、大 体BB弾ぐらいの大きさの白い球で、細かな表情を採るため に顔面だけで数10個、残りが全身にばらまかれているという 感じ。そしてその球の発する赤外線を、セットの周囲に設置 された80台から最大200台の赤外線カメラで同時に撮影し、 球の動きを直接データ化してコンピュータに取り込んでいる ということだった。 またセットは、壁やドアなどが赤外線を反射しないように 艶消しされた金属のメッシュで形成され、特に俳優が手にす る小道具もメッシュで作られているのが傑作だった。一方、 セットに置かれたベッドは普通のマットが敷かれているよう に見えたが、これは下面からの赤外線の検出は行っていない ということの現れだろう。 そしてこのシーンは、予告編でも紹介されている主人公の 少年が北極急行の到着を目撃するシーンなのだが、実はこの 少年もトム・ハンクスが演じているというのも驚きだった。 このためベッドなどは少年とハンクスの比率に合せて拡大さ れた物になっている。その中で演じるハンクスの顔の表情や 身体の動きがデータ化され、それに合せて少年の映像が作ら れたようだ。 因にハンクスは、予告編にも登場する車掌や、少年の父親 など5役を演じているということだ。他にも主題歌を提供し たスティーヴン・タイラーは、ゲスト出演として劇中のロッ クシンガーと、妖精の役も演じているそうだ。 というperformance capture systemの紹介だったが、ゼメ キスの発言によると、ハンクスは、演技中に照明のセッティ ングやフィルムの交換などで中断されることが無く、一気に 演じられるので、舞台での芝居のように集中できて良かった と言っていたそうだ。ただ唯一の不満は、ボディスーツ以外 の衣装を着られなかったことだとか。 また今回は未公開のシーンもいくつか紹介されたが、その 中には、原作には登場しないプレゼント工場の内部らしきも のも写されていた。ところがこのシーンの映像は未完成だと いうことで、背景は線画のみ。大体この時期に監督が現場を 離れ、来日までしているのに未完成のはずはないと思えるの だが、こういう映像が簡単に作れるのも、CGIならではの 効果と言えそうだ。 なお、質疑応答では、発表されているImax-3Dでの上映に 関しては、これも簡単な変換でできたと自信ありげだった。 また第2弾となる“Monster House”についても、準備はす でに進められている様子だった。 * * ついでに、あと2件、記者会見の報告をしておこう。 まずは、9月11日の公開の『バイオハザードII』のプロモ ーションで、主演のミラ・ジョヴォヴィッチの来日記者会見 が行われた。この会見で、ジョヴォヴィッチは作品の出来に も相当の自信があるらしく、雄弁に質疑に応じていたが、特 に第3作の可能性に関しては、第2作の結果次第で、そのた めにはぜひとも第2作をヒットさせて欲しいと、意欲満々の 感じだった。今回第2作は、脚本と監督もつぼを得た感じだ し、僕も第3作には期待したいところだ。 一方、9月4日公開の『ヴァン・ヘルシング』も、出演者 5人とスティーヴン・ソマーズ監督を交えた来日記者会見が 行われた。この会見では、監督に続編の可能性と、次回作の 計画についての質問が出たが、どちらも未定としたものの、 次回作については、次もVFX満載の作品になりそうだとい うことだった。これは前回紹介した“Flash Gordon”の線が 固いと見て良さそうだ。 * * 以下は、いつもの製作ニュースを紹介しよう。 まずは、“Man on Fire”(マイ・ボディガード)でも名 演技を見せてくれた天才子役ダコタ・ファニングの企画が、 ドリームワークスから2本発表されている。 1本目は、カート・ラッセルとの共演で、“Dreamer”。 この作品で彼女が演じるのは、ケンタッキーの牧場主の娘の 役で、本来なら屠殺される骨折した競争馬を介護してレース に出場させるというお話。これに挫折した騎手の復活も絡む というものだ。元々は実話に基づく父と息子の話だったそう だが、彼女の出演で父と娘の物語に改訂されることになって いる。撮影は9月14日に開始される。 そしてもう1本は、ディズニーのアニメーションでも有名 なルイス・キャロル原作の“Alice in Wonderland”(不思 議の国のアリス)の映画化の計画で、ついに映画での本格主 演ということになりそうだ。 この計画では、彼女が出演し、ナレーターも務めたテレビ シリーズ『TAKEN』の脚本家レス・ボーエンが新たな脚 色を担当し、さらにヒットの具合では、キャロルが執筆した 続編の“Through the Looking Glass”(鏡の国のアリス) の映画化も行われることになっている。 因に、『不思議の国のアリス』の映画化は、1933年に当時 のパラマウントのオールスターキャストで製作されたものが あり、戦後は1950年にイギリスで実写と人形劇の共演による もの、そして1951年のディズニー・アニメーション。さらに 1972年にピーター・セラーズらの出演によるものと、1999年 にジム・ヘンスン・クリーチャーショップが関った作品が記 録されている。またTVムーヴィでは1985年にオールスター キャストによるものがあるようだ。 これに対して、『鏡の国のアリス』の映画化は、1966年に TVムーヴィと、1985年には同年のTVムーヴィの続きとし て製作されたもの、それに1987年にアンドレア・ブレスチア ーニとリヒャルト・スラプツィスキー監督によるおそらくア ニメーション思われる作品がある以外は製作された記録が無 く、今回の計画が実現すれば、ハリウッドでは初めての映画 化になるようだ。 * * お次は、各社の参入が相次いでいる劇場用CGIアニメー ションの情報で、ソニー傘下のソニー・ピクチャー・アニメ ーション(SPA)から今後の製作計画が発表されている。 同社の動向に関しては、昨年1月15日付の第31回と今年3 月1日付の第58回でも報告しているが、その際にも紹介した 熊と鹿と森林レンジャーを主人公にした“Open Season”と いう作品が、第1作としてマーティン・ローレンスとアシュ トン・カッチャーの声の出演で製作が進められている。 これに続く第2作には、ペンギンの主人公が、『エンドレ スサマー』張りのサーフィンテクニックを披露する“Surf's Up”という作品が、『トイストーリー2』のアッシュ・ブ ラノンと、『ターザン』のクリス・バックの共同監督で準備 が進んでいるようだ。 そして新たに第3作の計画として、続編もヒットしたコメ ディ作品“Barbershop”の脚本家ドン・D・スコットが脚本 と製作を担当する“Big Nasty”という計画が発表された。 この作品は、宇宙を舞台にした物語という以外に詳しい内容 は明らかにされていないが、ミュージカルになるという情報 もあるようだ。 一方、ソニーでは、上記の“The Polar Express” に続く performance capture systemの第2弾“Monster House”の 配給を手掛けることも発表しており、CGIアニメーション では一気に攻勢を掛けることになりそうだ。 ただし今回の報告では、第31回で紹介した“Shangri-la” については題名が消えていた。また、待望の“Astroboy”に 関しては、第65回で紹介したように実写とCGIの合成で進 められることになるようだ。 * * 続いては、『冷血』や『ティファニーで朝食を』などの原 作者としても知られる作家トゥルーマン・カポーティの伝記 映画が、ワーナー・ブラザース傘下のワーナー・インディペ ンデンス・ピクチャーズで計画され、その出演者に多彩な顔 触れが集まっている。 まず発表されたのは、マーク・ウォルバーグで、彼は『冷 血』のモデルとなった殺人鬼ペリー・スミスを演じる。また サンドラ・ブロックがカポーティの従妹で『アラバマ物語』 の作家ハーパー・リーに扮し、カポーティ役はイギリス人の 俳優トビー・ジョーンズが演じる。因にジョーンズは、『ハ リー・ポッターと秘密の部屋』で妖精ドビーの声を当ててい る人だそうだ。 さらに、カポーティと親交のあった歌手のペギー・リー役 にグウィネス・パルトロウ、また作家の支援者役で『ヴィレ ッジ』のシガニー・ウィーヴァーの出演も発表されている。 なお物語は、1997年にジョージ・プリムプトンによって発 表されたカポーティの口述自伝“Truman Capote: In Which Various Friends, Enemies, Acquaintance and Detractors Recall His Turbulent Career”に基づき、ダグ・マクグラ フが脚色、マクグラフの監督で映画化されるもので、特に、 作家とペリー・スミス及びディック・ヒコックの2人の殺人 者が、死刑を待つ間に続けた交流が描かれるようだ。 映画化の題名は“Every Word Is True”で、来年1月1日 から撮影開始の予定になっている。 * * またまた往年の人気テレビシリーズの映画化で、アメリカ では1964年から65年に放送され、日本でも65年からフジテレ ビ系で放送された“The Munsters”(マンスターズ/おじい ちゃんはドラキュラ)を、“Scary Movie”シリーズの最初 の2作を手掛けたウェイアンス兄弟の脚本で映画化する計画 がユニヴァーサルから発表された。 このシリーズは、邦題の通り吸血鬼の祖父に、同じく吸血 鬼の母親、それにフランケンシュタインの怪物の父親と、狼 男の息子、さらに普通の女性の娘の一家を主人公にしたもの で、アメリカでは1988年−91年にリメイク版も製作された人 気番組。彼らは普通の生活を送ろうとしているが、なぜか隣 人たちは彼らを恐れており、その理由が判らないことから騒 動が生じるというものだ。 因に、息子のエディ・マンスターのキャラクターは、ベン ・スティラーが長らく自作のコントのキャラクターとして演 じ続け、それでも人気が保たれてきたと言われている。 そして今回の映画化では、ウェイアンスは過去にユニヴァ ーサルと組んだことはなかったが、TVシリーズの権利が同 社にあることを知り、たまたま以前ニュー・ラインで彼らの “Most Wanted”という作品を手掛けたマリー・ペアレント という人物が同社の海外担当重役を勤めていたことから、そ の伝を頼って今回の計画実現に漕ぎ着けたということだ。 ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男が揃うのは『ヴ ァン・ヘルシング』と同じだが、オリジナルは世間に受け入 れられない一家のちょっとペーソスも漂うコメディで、この 設定にウェイアンスの毒気がどう発揮されるかも気になると ころだ。 * * 1985年にジョン・ヴォイト主演で映画化された“Runaway Train”(暴走機関車)をリメイクする計画がフォックスか ら発表された。 この作品は、元々はリーダーズ・ダイジェスト誌などにも 紹介された実話に基づくもので、操縦不能になった機関車を 人的被害を最小限に食い止めようとする人々の行動を描いて いる。そしてこの作品は、最初に黒澤明監督がハリウッドで の映画化を目指したものの、トラブルで実現せず、その後に 脚本が改作されて85年の映画になっているが、アンドレイ・ コンチャロフスキーが監督したこの作品もかなりの評価を得 ているものだ。 今回は、その作品の新たな脚本の執筆を“Constantine” などのマーク・ボマックが契約したもので、彼は先にフォッ クスで“Die Hard 4”の脚本を契約しており、それに続いて 本作の脚色を進めるということだ。 なお85年作品には、はっきりと黒澤明の脚本に基づくと記 載されていたものだが、今回の報道で黒澤監督の名前は一切 紹介されておらず、その辺がちょっと気になる。もっとも、 今回の報道では、85年作品についても触れられていないが、 内容はコントロールを失った機関車を中心にした物語とされ ており、同じ原作によることは間違いないようだ。 また、ボマックはディズニーでジェリー・ブラッカイマー 製作による“Unnatural History”というアクション映画の 脚本のリライトも契約している。この作品は、自然史博物館 に閉じ込められた家族が、夜になって生命の甦った展示品の 怪物たちと、生き延びるための闘いを繰り広げるというもの で、ちょっと気になる作品になりそうだ。 * * 前日付の『ブラインド・ホライズン』の記事でも紹介して いるランドール・エメットとジョージ・ファーラが主宰して いるエメット/ファーラ・プロダクションから、新たに3本 の脚本を契約したことが発表された。 1本目は、ローデリック&ブルース・テイラーという脚本 家チームが執筆したもので“Love and Hate”。フロリダの 南部を舞台に、女性警官が幼馴染みで、死者から甦った友人 につきまとわれるというお話。すでにスティーヴン・ローリ ーによるリライトも行われ、製作準備も進んでいるようだ。 2本目は、マット・ライリー執筆の“Altitude Rush”と いう脚本で、アメリカ大統領を脅迫する計画を阻止しようと する友人グループの行動を追ったもの。 そして3本目は、スチュワート・ヘイゼルダインが執筆し た“Underground”という脚本で、退役軍人の主人公がロン ドンの地下鉄を襲う洪水から、テロリストを守らなければな らなくなるというもの。経緯がよく判らないが、アクション 映画にはなりそうだ。 この他、エメット/ファーラでは、ジャスティン・ティバ ーレイクとモーガン・フリーマンの主演による“Edison”と いう作品の撮影が完了しており、また、MGM/ディメンシ ョン製作の“The Amityvill Horror”が撮影中、さらにアル ・パチーノの主演による“88 Minutes”という作品が準備中 とのことだ。 * * 続報で、2002年10月15日付の第25回で報告したトニー・ス コット監督による“The Warriors”(ウォリアーズ)のリメ イク計画で、脚本に、テレビシリーズの“The Sopranos”で 4度のエミー賞候補に挙げられたテレンス・ウィンターの起 用が発表された。 この計画は、1979年に製作されたウォルター・ヒル監督の 同名の作品を、21世紀にマッチするようにアップデートして リメイクするもので、当初用意されたジョン・グレン、トラ ヴィス・ライトによる脚本から、ジョエル・ワイマンがリラ イトしていることも報告されていた。その脚本に、さらにリ ライトが加えられるもので、どのような問題が生じているか は不明だが、そろそろ完成を期待したいところだ。 なおウィンターは、“The Sopranos”では製作総指揮も務 めており、今年のエミー賞には彼が担当した脚本2作がノミ ネートされている他、昨年以前にも2作で候補に挙げられた ことがあるということだが、実はこのウィンターは、1995年 から独立系で放送された“Xena: Warrior Princess”の脚本 も担当していたということだ。 この作品は、“Hercules: The Legendary Journeys”から スピンオフして製作された女性が主人公のヒロイックファン タシーシリーズで、オリジナルより成功を納めたとも言われ たもの。ファンタシー系の作品でも実績のある脚本家には、 多いに期待したいところだ。 * * 後半は短いニュースをまとめておこう。 まずはファインラインから、“Roofworld”という未来物 のスリラーの計画に、コマーシャル出身のチャーリー・スタ ドラー監督の起用が発表されている。この作品は、1988年に 発表されたクリストファー・ファウラー原作の同名の小説を 映画化するもので、ロンドン市街の屋上に暮らす公民権を失 った人々の物語。何となく『メリー・ポピンズ』の煙突掃除 夫を思い出して、それだけでもファンタスティックな雰囲気 だが、ここでどのような物語が展開するのだろうか。なお監 督は、ゲイリー・オールドマン主演の“Dead Fish”という アクションコメディに続く第2作ということだ。 お次も空中のお話で、“Airborn”という飛行船を舞台に したファンタシーアドヴェンチャーの計画がユニヴァーサル で進められている。この作品は、ケネス・オペルというカナ ダの作家が発表した小説を映画化するもので、飛行船の客室 係として働く15歳の少年が、もと気球乗りの老人から美しい 生物の話を聞かされ、老人の孫娘と共にその生物を探しに行 くというもの。何か美しい物語が誕生しそうだ。なお、製作 はスティーヴン・ソマーズのプロダクションで行われるが、 ソマーズは脚本にも監督にもタッチしない予定だそうだ。 * * 最後にちょっと気になる情報で、“Sperman”の新監督に 就任したブライアン・シンガーが、スーパーマン(カル=エ ル)の父親のジョー=エル役にパトリック・スチュアートを 希望しているという噂が広がっている。 スチュアートは、テレビ/映画の“Star Trek: The Next Generation”シリーズでのピカード艦長役で有名だが、同時 に、シンガーが監督した『X−メン』及び『X−メン2』で はDr.Xを演じていたもので、シンガーが彼を招きたい気持 ちはよく判る。しかしこれでは、フォックスが進めようとし ている“X-Men 3”を完全にばらばらにしてしまうことにな る訳で、果たしてそこまでのことが出来るかどうか。 因にこの役は、McG監督のときにはジョニー・デップが 希望しているという情報もあったものだが、その線は完全に 消えたようだ。しかし物語的には、予定通りカル=エルのク リプトン星脱出から地球到着が描かれるようで、地球での養 父ジョナサン・ケント役には、ジョン・サクソンがカメラ・ テストを受けたという情報もあるようだ。 いずれにしても、2006年夏の公開に向けて“Sperman”の 製作準備は着々と進んでいるようだ。
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