2004年08月31日(火) |
ヴィレッジ、ビハインド・ザ・サン、モンスター、キャットウーマン、バイオハザードII、酔画仙、ブラインド・・、ハッスル、春夏秋冬・・ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ヴィレッジ』“The Village” M・ナイト・シャマラン監督の最新作。 試写の前に、物語中の謎に関しては口外しないという契約書 にサインをした。 僕は、元々物語のネタばらしは好きではないし、ここでも極 力ネタばれはないようにしているつもりだが、それでもうっ かりしてしまうことはある。後で気が付いて文章を削除した こともあるが、今後もネタばれには気をつけたいと思う。 ということで、物語について詳しくは書かないが、一応の設 定は、周囲を完全に森で閉ざされた村が舞台。先祖がその土 地に移住してきてから、人々は自給自足で平穏に暮らしてい るが、その森には何かの存在がいて、先祖は彼らと、森に入 らない代りに平穏な暮らしを得る契約を結んでいた。 このため村にはいろいろなタブーがあるが、その一方で、子 供たちの中には、森を肝試しの対象にした遊びも流行り始め ていた。そして…。 シャマランは、『シックスセンス』がものの見事にはまった 作品で評価も高いが、僕には究極のオタクを描いた『アンブ レイカブル』も、SF映画のアレンジの『サイン』も楽しめ る作品だった。実際、後の二者については評価しない人も多 いようだが、これが楽しめない人は可哀想だと思っているく らいだ。今回もそういう作品、だから楽しめる人には存分に 楽しんでもらいたい。 出演者は、ホアキン・フェニックス、エイドリアン・ブロデ ィ、シガニー・ウィバー、ブライス・ダラス・ハワード、ウ ィリアム・ハート。特に、本作が本格映画デビューとなった ハワードが良かった。 『ビハインド・ザ・サン』“Behind the Sun” 『セントラル・ステーション』などのウォルター・サレス監 督の2001年作品。なお、監督の名前は、従来はヴァルテルと 表記されていたが、今回から変えるようだ。 1910年のブラジルを舞台に、隣組同士が血を血で洗う抗争を 繰り広げる物語。 しかも、一方の一家はそれなりの暮らしをしているが、他方 の一家はすでにほぼ根絶やしとなり、生活も困窮してしまっ ている。そんな他方の一家の幼い末弟を語り手に、物語は進 んで行く。 その年の2月、困窮した一家の長兄が射殺される。犯人は裕 福な一家の長兄。このため、困窮した一家の次兄には、兄殺 しの犯人の射殺の義務が課せられる。それはシャツに付いた 血痕が黄色く変色した時が開始の合図となる。 義務が果たされれば、それは次の義務を生み、裁ち切れぬ恐 怖の連鎖はいつまでも続くことになる。しかし、父親は家名 をかけて義務の全うを要求する。元々は土地争いなどの大義 があったはずだが、すでにそれは忘れられ、名誉のための戦 いだけが続いて行く。 この作品の作られたのが、2001年のいつかは定かでないが、 サレス監督がこの物語に込めた寓意は誰に目にも明らかだろ う。しかし結局2001年9月11日は起こり、米=イラク戦争は 泥沼化してしまっている。人間の愚かさを見事に描き出した 作品。 困窮した生活の中で、唯一の収入源である砂糖を作り続ける 一家。そこに現れて、子供たちに楽しい世界を見せようとす るサーカスの2人。いろいろな寓意が物語を彩っている。 主演は、本作の後に、『ラブ・アクチュアリー』や『チャー リーズ・エンジェル/フルスロットル』にも出演したブラジ ルの新星ロドリゴ・サントロ。 また、サーカスの若い女性クララを演じたフラヴィア=マル コ・アントニオが魅力的だった。 『モンスター』“Monster” シャーリズ・セロンがオスカー主演女優賞に輝いた作品。 1989年11月から90年11月までの略1年間に7人の男性を殺害 したとして91年に逮捕され、内6件の裁判で死刑判決を受け て、2002年10月9日に処刑されたアイリーン・ウォーレス。 その連続殺人事件の背景を追った物語。 父親は自殺、母親はアルコール依存などの恵まれない環境に 育ち、13歳の時から売春をしていたというアイリーン。しか し、ある日一人の若い女性との交流が始まったことから生活 が変り始める。 その若い女性セルビー・ウォールは、レズビアンの兆候が見 えたことから、厳格な家を追われ、両親の知人の家に身を寄 せていた。そして巡り会った2人は一緒の生活を始め、それ を機に、アイリーンは堅気の暮らしをしようとするのだった が…。 刹那的な快楽に溺れ、余りにも愚かな行動を取ってしまう2 人。もちろん彼女たちは特別な存在であるのだが、ただ誰も が求めるようなほんの少しの欲望が、とんでもない結果を生 み出してしまう、そんな展開の物語だ。 脚本・監督のパティ・ジェンキンスと、製作者でもあるシャ ーリズ・セロンは、ウォーレスが獄中で幼馴染みに宛てて書 いた書簡を読み、映画作りの参考にしたということだ。その 書簡を読むことの許可は、ウォーレスが処刑の前夜に出した ものだとされている。 つまり作品は、ウォーレスの側に寄って作られている。しか し映画は、彼女に同情を寄せることはしていない。もちろん 不幸な生い立ちや、事件の発端が偶然の成せる技だったこと は描いているが、それよりも彼女たちの愚かさが際立つよう な構成になっている。 実はセロンには、自分の母親が、暴力を振るいセロンらを殺 そうとした父親を射殺したという過去があるそうだ。その事 件は正当防衛として母親に罪は問われなかったそうだが、セ ロンには自分のせいで母親を殺人者にしたという思いがある という。 はたまた、父親のいない環境に育ったセロンには、自分もウ ォーレスと同じようになってしまったかも知れないという思 いもあったのだろう。 それだからこそ、この自らの女優生命を絶つかも知れないよ うな究極の汚れ役への挑戦ができたのだろうし、それが彼女 にオスカーをもたらす結果になった。 なお、共演したセルビー役のクリスチーナ・リッチの存在感 も見事だった。 『キャットウーマン』“Catwoman” 『バットマン』の敵役キャラクターからスピンオフして登場 した作品。 テレビシリーズではジュリー・ニューマーやアーサー・キッ トが演じ、映画版のシリーズでは、『バットマン・リターン ズ』でミシェル・ファイファーが演じたハリウッド女優の憧 れの的とも言われるキャラクターに、オスカー女優のハリー ・ベリーが挑んだ。 正直に言って、アメリカではあまり芳しい成績が上がらず、 ベリーが希望しているという続編も難しいのではないかと言 われている。でも映画の作りは悪くないし、僕には、もう1 本くらいは挑戦して貰いたいと思える作品だった。 結局、『ハルク』でもそうだったが、その誕生に経緯のある キャラクターの登場のさせ方には難しいものがある。作る側 にはその部分をしっかりと押さえなければならないという思 いがあるし、一方、観客は最初からキャラクターの活躍を期 待する。 それを上手く処理したのは『スパイダーマン』だが、それで も発端が長いという声は聞かれたものだ。しかも『スパイダ ーマン』では、その後のビルの間を跳ぶ爽快感が救ってくれ るのだが、残念ながら本作にはそれの作りようがなかったと いうところだろう。 しかし、多少暗めの物語は、ある意味現代を象徴しているも のだし、その中でのハリー・べリーの存在感も見事に描かれ ている。特に20代後半ぐらいからの女性が見れば、共感する ところも多いと思うのだが…。 お話は、化粧品会社の新商品のキャンペーンを担当した宣伝 部のデザイナーの女性が、ふとしたことからその新商品の秘 密を知り、そのために殺されてしまう。しかし彼女は猫の持 つ神秘の力で甦り、キャットウーマンとなって復讐に乗り出 すというものだ。 共演は、化粧品会社の代表にシャロン・ストーン。他に、デ ザイナーのボーイフレンドとなり、その一方でキャットウー マンを追跡する刑事役にベンジャミン・ブラットなど。 監督は、フランスで『ヴィドック』を手掛けたピトフ。雰囲 気などの映像の描き方は抜群だと思えるが…。 『バイオハザードII/アポカリプス』 “Resident Evil: Apocalypse” 著名ゲームの映画化で2002年にヒットした作品の続編。前作 に主演したミラ・ジョヴォヴィッチが、同じ役を再演する。 原作ゲームの第1作は一度始めたことがあるが、もはや僕の 手におえるものではなかった。しかしこのゲームの面白さは 判るもので、この映画には、そのゲームを上手いゲーマーが 攻略して行くのを見ているような楽しさがある。 物語は、前作でゾンビを封じ込めた扉が開かれ、ゾンビが街 に溢れ出すことから始まる。そして前作で脱出に成功した主 人公は、再びゾンビと戦わなくてはならなくなる。しかも今 回は、その街に取り残された少女を救出するという任務が加 わる。 タイムリミットは、街が核ミサイルで消滅させられるまでの 4時間。協力者は、特殊部隊のメムバー=ジル・バレンタイ ンら数人。そして、今回は事件を引き起こした病原体T−ウ イルスに隠された謎も明らかにされる。 ジョヴォヴィッチのアクションも見事だったが、今回新登場 のジルを演じたシエンナ・ギロリーが、最初はCGキャラク ターかと思うほどの見事なクールビューティで感心した。 登場する強敵ネメシスやゾンビ犬ケルベロスの造形もそうだ が、何しろゲームの味を損なわないことに最大限の努力が払 われ、その意味でも納得できる作品になっている。 監督は、『ブラックホークダウン』などのアクション監督を 務めてきたアレクサンダー・ウィット。製作・脚本は、前作 の脚本・監督を手掛けたポール・W・S・アンダースンが担 当。『モータル・コンバット』や『イベント・ホライズン』 の監督でもある彼のSFマインドが見事に開花してきた感じ だ。 なお本作は、前作を見ていなくても充分に理解できるように 作られている。 それと、やっぱりゾンビはゆっくりと動くのが良い。 『酔画仙』(韓国映画) 19世紀後半の激動の朝鮮時代に生きた絵師の物語。 清と日本、両国の拡大政策の狭間で揺れ動く朝鮮国。しかし その中で、酒と女を生き甲斐として、賤民の出身でありなが ら宮廷画家にまで上り詰めた絵師・張承業の生涯が、総製作 費60億ウォンをかけて再現される。 クレジットには、Sponsored by Hana Bankとあり、多分企業 が宣伝活動の一環として出資した作品と思われる。それでも なければ、これだけの製作費を掛けての歴史大作は、そう簡 単に作れるものではない。 しかし映画は、僕の知らない朝鮮国のこの時期の歴史を描い ており、いろいろ勉強になる作品だった。特に、必ずしも日 本が悪者に描かれていないのも、ちょっと面白いところで、 映画には日本語のせりふも登場していた。 描かれた絵は水墨画のようで、映画の登場する絵がどこまで 本人の絵を再現したものかは判らないが、絵の制作には200 人以上の美術家や、現代韓国画壇の画家、書道家などが協力 したということだ。それらの作品が見られるのも素晴らしか った。 ただこの作品がR−18指定というのは残念なところだ。それ だけの理由はあるのだが…。 主演は『パイラン』などのチェ・ミンシク。監督のイム・グ ォンテクは、本作でカンヌの監督賞を受賞している。 『ブラインド・ホライズン』“Blind Horizon” ヴァル・キルマーの主演で、大統領暗殺に絡めたサスペンス ・ミステリー。 国境に近いニュー・メキシコの小さな町ブラックポイント。 その郊外の砂漠で、銃撃され崖から突き落されたらしい一人 の男(キルマー)が発見される。 男は収容された病院で意識を取り戻すが、記憶喪失。しかし その男の脳裏に、フラッシュバックのように記憶が甦り始め る。それは選挙遊説中の大統領をその町で暗殺するという周 到に用意された計画を示すものだった。 男は保安官(サム・シェパード)にそのことを告げるが、保 安官はこんな小さな町に大統領が遊説に来るはずが無いと一 笑に付す。やがて男の婚約者と名乗る女性(ネーヴ・キャン ベル)が現れ、彼の面倒を見始める。そして…。 上映時間99分の作品だが、上記の他にフェイ・ダナウェイや 『バーシティ・ブルース』のエイミー・スマートらが登場。 これだけの配役ががっぷり四つに組んでいるから、結構見応 えがある。 遊説中の大統領の暗殺計画というのも時期的にタイムリーな 感じだし、国境に近いニューメキシコの雰囲気も程よい感じ に出ていた。物語が、記憶の甦りか予知なのか判らない感じ の展開なのも気に入った。 監督はミュージックヴィデオ出身で、これが第2作のマイク ル・ハウスマン。 また、本作の製作者の中には、MGM/ディメンションの共 同で進められている“The Amityvill Horror”のリメイクを 手掛けるなど、最近活躍が目立ってきているランドール・エ メットとジョージ・ファーラの名前があり、彼らのコンビが 結成されるきっかけとなった作品のようだ。 『ハッスル』“Los Debutantes” チリの首都サンチャゴを舞台に、南部の田舎町からやってき た2人の兄弟が、都会の裏社会と繋がりながら、徐々に変っ て行く姿を描いたチリ製作の青春映画。 中南米の国では、メキシコとブラジルの映画は最近日本での 公開作品数も多く、評価も高くなっているが、チリの映画と いうのは記憶にない。 プレス資料によると、『オープン・ユア・アイズ』などのア レハンドロ・アメナバル監督がチリ出身で、他にも亡命中の 映画作家もいるようだが、実際にチリで製作されたチリ映画 を見るのは、僕自身は多分初めてだと思う。 といっても、本作の内容は別にチリでなくても、東京でも成 立しそうな物語。チンピラの兄が17歳の弟を男にしようとし てストリップバーに連れて行くが、そこで弟は1人の女性に 興味を魅かれる。一方、兄はそのバーで腕の立つところを見 せ、ボスに気に入られる。そして弟が興味を魅かれた女の正 体は…、という物語だ。 ただし構成には少し捻りがあって、最初は弟の立場から物語 が展開され、次に兄の立場で同じ物語が語られ、最後に女の 立場から物語が進み、クライマックスへ雪崩れ込む。 最近、このような時間軸をばらばらにした映画は流行りのよ うだ。僕自身は知らずに見ていて最初はちょっととまどった が、結構手際よく編集されているのでこの構成に気がつくの に手間はなかった。それなりに語り口は巧く作られていると いうことだろう。 それから、主人公の1人のグラシアという女性を演じたアン トネーリャ・リオスが、ストリップからベッドシーンまで文 字通りの体当たりの艶技をする。日本公開はR−18指定にな るようだが、それだけのシーンを見事に演じているのには感 心した。 他に、青森のチリ人妻として話題になったアニータ・アルバ ラードが娼婦の役で出演。日本で何をやっていたかよく判る 艶技も見せている。 僕は、基本的にこの手のチンピラものは好きではないが、本 作はそれなりに納得できる展開で、悪くはない感じだった。 『春夏秋冬そして春』(韓国映画) 『悪い男』のキム・ギドク監督の2003年の作品。 韓国の周王山国立公園の中の注山池に浮かぶ水上寺刹を舞台 に、春夏秋冬を人生の4つの節目に準えて描いたドラマ。 春、幼い主人公は小動物を虐め、住職から未来に続く罪を諭 される。夏、少年の主人公は寺を訪れた女性に恋し、寺を出 て行く。秋、恋に破れた主人公は寺に戻ってくるが…。冬、 老境の主人公に赤ん坊が託される。そして春。 ギドク監督の作品は、『悪い男』を見ているだけだが、その 人間を見つめる鋭さには心を打たれるものがあった。本作も それは同じ、しかし前の作品では物語を暴力を中心に展開し たのに対して、本作では大自然を背景に静けさの中に描いて 行く。 国立公園の大自然の中に撮影用のセットを立て、1年間を掛 けてじっくり撮られた作品。カメラは池とその周辺をほとん ど離れることなく、季節ごとの自然の移り変わりを丹念に捉 えて行く。そしてその自然と愚かな人間のドラマとの対比が 実に見事だった。 なお、4つの季節の主人公はそれぞれ違う俳優が演じている が、最も厳しかったと思われる冬の分では、ギドク監督自身 が扮して見事な演技を見せている。 そして池に浮かぶ水上寺刹は、素晴らしくファンタスティッ クな雰囲気を出しているが、実はこれは撮影用に作られたセ ットで、撮影後は現状復帰のために取り壊され、現在の注山 池に行っても見ることはできないそうだ。
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