※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 最初に前回の補足から。 前回紹介したミュージカル作品“Time After Time”の記 事では、ウェブにアップする際に、全体の文書量との関係で 一部を端折ってしまった。このため多少判り難くなってしま った面があるようなので、少し補足しておきます。 この計画は、前回紹介したように、劇作家のブライアン・ ヨーキーが自作の映画化を目指して、私費を投じて出演者の オーディションを行い、選ばれた俳優たちに歌唱、ダンスの リハーサルも行ってきたもので、その成果をハリウッドの製 作担当者たちに披露したというものだ。 ただし、そこで披露されたのはダンスを中心に30分ほどの 抜粋で、その際に全体の概要や音楽を納めたiPodが渡され、 オフィスに戻ってPCに差し込むとその全容が判る仕組みに なっていた。なおこのiPodは、アップル社とのタイアップで 提供されたものだそうで、実はこの記事が掲載された同じ日 のVariety紙には、iPodの大きな広告も掲載されていた。 そして、この抜粋とiPodの内容を見たユニヴァーサルの担 当者が、映画化権の獲得に乗り出したもので、その結果、最 高75万ドルの契約が結ばれたということだ。因にユニヴァー サルは、最初に抜粋の披露を見せたスタジオだったそうだ。 それからもう一つ、この作品の題名に関して、知人からシ ンディ・ローパーの楽曲の題名であることをご教示いただい た。つまりこの作品では、出演も予定されているローパーの 楽曲名を作品名にしていることになる訳だが、映画には音楽 とは別に題名の権利が存在しているもので、やはりワーナー 作品との問題は残りそうだ。 なお、すでにユニヴァーサルでは、ローパー以外で作品に 登場している楽曲についても、映画で使用するための権利の 交渉に入っているということで、その交渉がまとまれば、映 画化の実現はかなり早いものになりそうだ。 ということで補足は終了、以下はいつもの製作ニュースを 紹介しよう。 * * 昨年11月15日付の第41回と今年4月15日付の第51回でも紹 介した『エクソシスト』の発端を描く新作“Exorcist: The Beginning”が8月に全米公開されるレニー・ハーリン監督 の次回作として、古代から北欧で活躍してきたヴァイキング たちを主人公にした映画に挑戦する計画が、モーガン・クリ ーク社から発表された。 この作品は、“The Northmen”という題名で、ショーン・ オキーフとウィル・ステイプルスの脚本を映画化するもの。 2人のヴァイキングの兄弟が、誘拐してきたイギリスの王女 に恋心を持ったことから始まるドラマを描くものだそうだ。 元々スカンディナヴィアの出身で、幼い頃からいろいろな 民話などを聞かされて育ってきたハーリンにとって、ヴァイ キングは言わば心のヒーローのようなもの。15年以上も前か ら彼らの映画を撮りたいと考えていたということだ。そして その夢がようやく実現するものだが、ハーリンは、「表面は ラヴロマンスだが、映画では古代ヴァイキング社会の複雑な 内情を克明に描きたい」としている。 因にハーリンは、1995年製作の『カットスロート・アイラ ンド』で、当時夫人のジーナ・デイヴィスを主演に、時代も のの海洋アクションを手掛けたことがあるが、このときは、 作品的な評価はされたものの、興行的には今一つだった。今 回はその分も含めて成果を期待したいものだ。 なお、ハーリン監督の作品では、他にインターメディア製 作のサイコスリラー作品“Mindhunters”が来年公開予定に なっている。また、今回の脚本を手掛けているオキーフ=ス テイプルスのチームは、ローランド・エメリッヒ監督向けに “King Tut”という作品も担当しているようだ。 * * 1954年にジョージ・パル製作、バイロン・ハスキン監督、 チャールトン・ヘストン、エレノア・パーカー主演で映画化 された“The Naked Jungle”(黒い絨毯)を、『アルマゲド ン』などの脚本家ジョナサン・ヘンスレイの脚本監督でリメ イクする計画が発表されている。 オリジナルは、カール・ステップヘンスンという作家の短 編小説を映画化したもので、1901年を時代背景にして、南米 奥地のジャングルで農園を経営する男(ヘストン)と、彼の 許に手紙だけを頼りにやってきた花嫁(パーカー)の愛憎ド ラマを軸に、突如その農園に襲いかかる集団殺人蟻マラブン タの恐怖を描いたもの。黒い絨毯のように野山を覆いながら 進む集団蟻を、当時最新の特撮技術で描いていた。 因に、パル=ハスキンのコンビは、特撮映画として多様な ジャンルの作品を手掛けたが、その中で本作は動物パニック 映画の走りとも呼べるものだ。そして今回リメイクを手掛け るヘンスレイは、「オリジナルは、今見ても充分通用する作 品と思うが。リメイクでは最新のCGIエフェクトを導入し て、さらに次元の違った作品にしてみせる」と抱負を語って いる。 なお、本作はパラマウント傘下のアルファヴィルというプ ロダクションで製作されるが、同社では、先にマーヴェル・ コミックス原作の映画化で、ヘンスレイが監督デビューを飾 った“The Punisher”も手掛けている。 * * もう1本、パラマウント映画のリメイクで、これもC・ヘ ストン主演の1956年作品“The Ten Commandments”(十戒) の再映画化が計画されている。 旧約聖書の記述に基づくオリジナルは、ヘストンの他、ユ ル・ブリナー、アン・バクスター、エドワード・G・ロビン スンらが共演、セシル・B・デミルの監督で、同年のアカデ ミー賞では、作品賞を含め7部門でノミネートされ、特殊効 果賞を受賞している。 ファラオ支配のエジプトを舞台に、神の啓示を受けたモー ゼが、圧制に苦しむユダヤの民を率いて紅海を渡り、彼らを イスラエルへと導く。そしてその間に、神から十戒を授けら れるという物語。これを、当時70ミリに対抗して開発された ヴィスタ・ヴィジョン方式の大型画面で映像化したもので、 古代エジプトでの巨大な神殿を建設するシーンや、紅海を渡 る場面で海が2つに割れるシーンなどの、オスカーを受賞し た特殊効果は圧巻だった。 因に、デミルは、1923年にも同じ題材を映画化しており、 56年作品はそのリメイクということになっているが、23年作 は2部構成で、全体が146分の上映時間の中の古代エジプト のシーンは第1部の35分間のみ、また製作もパラマウントで はないために、今回の計画では1956年作品のリメイクとされ ているようだ。 そして今回の計画を進めるのは、『ザ・デイ・アフター・ トゥモロー』の製作者マーク・ゴードンと、『ライフ・オブ ・デビッド・ゲイル』の脚本家チャールズ・ランドルフ。こ の2人の顔合せでは、かなり現実的な物語になりそうだとい う観測もあるようだが、実はデミルの23年作の第2部では、 舞台を映画製作当時の現代にして、十戒と当時の人々との関 わりを描いていたということで、一体どんなリメイクになる か楽しみというところだ。 * * “Astroboy”“Speed Racer”に続いて、こちらも待望久 しい日本アニメーションの実写ハリウッド版の計画で、フォ ックスが進めている“Dragonball Z”(ドラゴンボールZ) に、ベン・ラムゼイという脚本家の名前が発表された。 ラムゼイは、1998年にコロムビアが公開した『ビッグ・ヒ ット』などの作品で知られるが、現在コロムビアで進められ ているマーヴェル・コミックスの映画化“Luke Cage”や、 同じくコロムビアで進行中の“Static”という作品も手掛け ているようだ。つまり、コロムビア育ちの脚本家がフォック ス作品に起用される訳で、彼が本作にどのような思い入れを 持っているかは不明だが、フォックスとして他社からの抜擢 はそれなりの意味があってのことだろう。 なお、Variety紙の報道では、本作は“Dragonball”のシ リーズを映画化する“Dragonball Z”となっていたが、タイ トルに“Z”が付けられているということは、主人公の悟空 が地球壊滅を目論むサイヤ人の血を引くことが判明する青年 期の物語。展開やアクションのスケールも最大になる部分を 映画化する訳で、大いに期待したいところだ。 因に今回の報道で、本作は、日本製のmangaを原作とした animeシリーズからの映画化と紹介されていた。 * * 4月1日付の第60回で報告したロベルト・ロドリゲス監督 のDGA脱退に発展した映画“Sin City”の製作で、テキサ ス州オースティンのスタジオで進められている撮影に、クェ ンティン・タランティーノが予告通りゲスト監督として参加 したことが報告された。 この製作では、ロドリゲスが原作者のフランク・ミラーを 共同監督としたことが、DGA規定に違反しているとされた ものだが、さらにタランティーノは、映画の最終章の中の1 シーンを担当、クライヴ・オーウェン、ベネチオ・デル=ト ロ、ブリタニー・マーフィらの出演シーンを監督している。 なお、これでタランティーノが受け取った監督料は1ドル で、これは『キル・ビル vol.2』の音楽を、ロドリゲスが1 ドルで引き受けてくれたことへのお返しだそうだ。またタラ ンティーノには、今回の撮影に使用されているディジタルカ メラを実地に使ってみたいという希望もあったようだ。 なお本作には、上記3人の他に、ブルース・ウィリス、ミ ッキー・ローク、イライジャ・ウッド、ニック・スタール、 カーラ・ギグノ、ジェイミー・キング、ジェシカ・アルバ、 ロザリオ・ドースン、マイクル・クラーク・ダンカン、アレ クシス・ブレデル、ジョッシュ・ハートネット、マーリー・ シェルトンの共演が発表されている。 * * 続いてもトラブル絡みの情報で、この秋の撮影開始予定で 製作準備が進められているワーナー製作の新生“Superman” の計画が、またまた監督を探す事態になってしまった。 この計画では、昨年のブレット・ラトナーの降板以後は、 McG監督で順調に進んでいるように見えたのだが、最終的 にニューヨークで撮影を行いたいとする監督と、製作費の削 減のためにオーストラリアでの撮影を要望する会社との意見 の調整が出来なかったようだ。 因に、このシリーズの撮影では、以前のクリストファー・ リーヴが主演していた当時も、カナダのトロントをメトロポ リスに見立てた撮影が行われていたものだが、今回は、さら に海を渡って撮影をオーストラリアで行う計画で、すでに当 地のフォックススタジオには、セットの建設も始まっている というものだ。 しかし、撮影の準備のためにニューヨークを訪れたMcG は、「こここそがメトロポリスであり、映画作家として、ア メリカの心を他の大陸で描くのは不当なことだと感じた」と して、ニューヨークでの撮影を主張したということだ。 とは言うものの、現実にニューヨークでの撮影を行うため には、すでに2億ドルといわれる製作費に、さらに数千万ド ルの上積みが必要になるということで、とうてい実現不可能 なこと、結局McGの希望は叶えられないとして、降板が決 まったようだ。まあ、監督の我儘と言えないこともないが、 『スパイダーマン』のニューヨークシーンなどを見せられる と、何故、自分は出来ないのかという気持ちも判る感じだ。 ということで、以下は後任監督の話題だが、実は、McG 監督の降板が報じられる前から、ワーナー首脳が『Xメン』 シリーズのブライアン・シンガー監督と接触しているという 情報が流れていた。これは、シンガーとワーナー映画の社長 のアラン・ホーンが会食し、新“Superman”の監督を要請し たというもので、これに対してシンガーは検討したいと答え たということだが…。 しかしシンガーには、今年3月15日付第59回でも紹介した ように、ワーナーで“Logan's Run”のリメイクを進めるこ とが予定されており、これはただちに中断できるものの、さ らに来年の撮影予定で“X-Men 3”の計画がフォックスから 要請されていて、こちらは2006年5月5日の公開予定になっ ている。となると、同時期の公開が予想される“Superman” の監督は、ちょっと問題が生じることになるようだ。 この他の監督リストには、『アルマゲドン』、『バッド・ ボーイズ』のマイクル・ベイ監督の名前も挙がっているよう だが、すでに何度も報告しているように、本作の製作準備は 着々と進行しているもので、主演俳優も含めて早期の決着が 期待されるところだ。 なお、降板したMcG監督の次回作には、ユニヴァーサル で“Evel Knievel”と、コロムビアで“Cleopatra”と“Hot Wheels”の計画が進行しているようだ。 * * いろいろな情報が錯綜したが、今度こそ実現となりそうな 計画で、ジョージ・A・ロメロ監督の“Land of the Dead” が、今年の10月にウィニペグまたはピッツバーグで撮影され ることが発表された。 この話題に関しては、昨年12月1日付の第52回で紹介した “Diamond Dead”の記事の中で、当時“Dead Reckoning”と されていた題名の変更問題で、当時計画を進めていたフォッ クス・サーチライトとの間でもめていることを報告したが、 今回の報道ではフォックスの名前が消されており、どうやら ロメロ側が企画を一旦取り戻したということのようだ。 そして今回の発表は、製作者のマーク・カントンが昨年末 に設立したアトモスフィアというプロダクションが行ったも ので、正式のゴーサインが出たことが報告されている。また 製作は、アトモスフィアとパリに本拠を置くワイルド・バン チという会社の共同で行われるということだ。 なお、物語はロメロ自身の脚本によるもので、今回はゾン ビが完全に世界を支配してしまった時代が描かれる。そして 生き残った人々は、壁に囲まれた都市に暮らしているが、脳 を持たず動きも鈍かったゾンビは、今回は少し進化して、よ り危険なものになっているということだ。また、全体の流れ は「ゾンビ meets マッド・マックス」と紹介されていた。 ただしこの計画が発表されたことで、“Diamond Dead”に ついては、実はスコット・フリーの製作で8月からの撮影も 発表されていたのだが、現状では頓挫ということになってし まいそうだ。またロメロは、ライオンズ・ゲイトの製作で、 スティーヴン・キング原作による“The Girl Who Loved Tom Gordon”という作品を、自ら監督する計画で脚色を行って いたようだが、これも当面中断ということになりそうだ。 まあ、一番期待される作品が進められる訳だから、他につ いては我慢するしかないが、それらもできれば追々実現して もらいたいものだ。因に60年代から、70年代、80年代に1作 ずつ発表されてきたシリーズが、90年代には作られなかった ことについてロメロは、「自分では、伝統を守りたいという 気持ちを持っており、その一方でこの時代には、新しいもの がどんどん出てきたためだ」と語っていたそうだ。 * * 主演メル・ギブスン、監督リチャード・ドナーの『リーサ ル・ウェポン』コンビの再結集で、アクション中心SF映画 の計画がパラマウントから発表されている。 この作品は、“The Field”と題されたもので、ギブスン が希望している主人公は、不当に25年間の刑務所生活をさせ られた男。そしてようやく出所してきた男に、弁護士から救 いの手が差し伸べられるが、実はその弁護士は、自分の利益 のために彼の人格そのものを狙っていた…、というお話。 これだけでSFかどうかは、ちょっと判断に窮するところ だが、実はこの脚本を『ペイチェック』のディーン・ジョー ガリスが手掛けているとなれば、かなり信用が置けそうだ。 と言ってもジョーガリスは、他の作品では“The Manchurian Candidate”のリメイクや、ケヴィン・レイノルズが監督し た“Tristan & Isolde”など、別段SFプロパーの脚本家で はないのだが、少なくとも『ペイチェック』では、かなりの SFマインドを感じたものだ。 なお映画化は、パラマウント傘下で、ジョーガリスとパー トナーのマイクル・アグリアが主宰するペンステーションと いうプロダクションで進められるが、同プロダクションは、 前回紹介したジョージ・A・ロメロ原作の“The Crazies” のリメイクも担当している。 * * 久し振りに“Star Trek XI”の話題で、映画及びテレビシ リーズ製作者のリック・バーマンとブラノン・ブラーガから 映画シリーズの新作を期待する発言が公表された。 それによると、現在は2つのアイデアが検討されているよ うで、その一つはカーク船長を中心としたオリジナルシリー ズのメムバーが関わるもの。そしてもう一つは現在放送中の “Enterprise”の劇場版だそうだ。しかし製作者に言わせる と、どちらももう一つアイデアが足りないということで、そ の新たなヒントが求められているそうだ。 また、製作者の希望としては、ロミュラン帝国との戦いを 描きたいということで、その基本にはオリジナルシリーズの 第1シーズンに放送された“Balence of Terror”のエピソ ードが考えられているようだ。因に、このエピソードは、ポ ール・シュナイダーの脚本、ヴィンセント・マクエヴィーテ ィの監督によるもので、初登場のロミュラン司令官には、後 にスポックの父親サレックを演じるマーク・レナードが扮し ていた。 ということは、必然的にオリジナルシリーズの物語になり そうだが、実は、惑星連邦とロミュランとの間で最初の和平 が結ばれるのは2160年、そして現在放送中の“Enterprise” の時代設定はすでに2154年になっているのだそうで、どちら の物語も可能なアイデアのようだ。 * * 最後は、夏の納涼という訳でもないだろうが、幽霊映画の 計画が続けて発表されている。 1本目はソニー/コロムビアの計画で“Ghost Story”。 如何にもという題名だが、この幽霊の登場する場所がホワイ トハウスというのが味噌で、大統領府を巡るいろいろな伝説 を、新大統領の11歳の息子の目を通して描くものだ。因に、 ジョン・フェルスンと共に本作の脚本を執筆したラスティ・ ゴーマンによると、ウェブで"White House" ghostと入れて 検索すると15000件以上ヒットするそうだ。 もう1本はモーガン・クリークから、“The In-Between” という計画が発表されている。お話は、高校生の少女が、死 んだ元ボーイフレンドの幽霊につきまとわれるというもの。 彼は死後の世界で一緒に暮らそうと言い寄るのだが…。ジョ ン・グラスコーの脚本で、アメリカ配給はユニヴァーサルが 担当することになっている。
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