※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 最初は、いつか出てくると思っていたこの話題から。 作家のレイ・ブラッドベリが、マイクル・ムーア監督のパ ルムドール受賞作にご立腹なのだそうだ。 受賞作というのは言うまでもなく“Fahrenheit 9/11”の ことなのだが、このタイトルについて、それがブラッドベリ の原作で映画化もされた名作“Fahrenheit 451”(華氏45 1)からインスパイアされたことが明らかなのに、ムーアか らは一言の挨拶もない、ということだ。 実はブラッドベリは1957年に、同作品が“Playhouse 90” というテレビ番組で、原作者の許可なくドラマ化された際に は、番組を製作したCBSを裁判所に訴え、勝訴していると いうことだが、今回の件に関しては、それが法律に触れるよ うなことでないことは了解しているそうだ。しかし、同作品 が発表から50年を過ぎて、今だに全米の学校で教科書として 使われている事実からして、ムーアが同作品のタイトルから 映画のタイトルを思いついたことは間違いなく、それなら一 言ぐらいあってもいいのではないか、ということのようだ。 さらにブラッドベリは、「彼(ムーア)は間抜け野郎だ、 とても良い人間とは思えないね」とまで言ったそうだ。 実際、今回この情報を伝えたVariety紙の記事でも、「華 氏451度が紙の燃える温度であることは、今や誰でも知っ ている」という書き出しで始まるほど、アメリカでこの作品 の知名度は高い訳で、ブラッドベリの発言は、単なる言いが かりと言えるようなものではない。 そして結局ムーアの事務所からは、「我々はレイ・ブラッ ドベリに最高の尊敬の念を持っている。彼は、我国の偉大な 小説作家の一人である。ブラッドベリ氏の著作は、我々の映 画の全体に対して多大な影響を与えている。」という文書が 発表されることになったそうだが、これでブラッドベリの怒 りが納まるかどうか。1920年生まれの作家は、まだまだ健在 のようだ。 因に今回の記事では、“Fahrenheit 451”の映画化のリメ イクの情報については全く触れられていなかった。 * * 以下は、製作情報を紹介しよう。 3月15日付の第59回でも紹介した、本年度アカデミー主演 女優賞受賞者シャーリズ・セロンの新作“Aeon Flux”に、 1996年度の同賞受賞者フランシス・マクダーモンドの共演が 発表された。 この作品は、前回も紹介したように、パラマウント傘下の MTVで放送されているアニメーションシリーズを実写映画 化するものだが、この製作を担当しているのが『ターミネー ター』などのゲイル・アン・ハード、そして監督が『ガール ファイト』のカリン・クサマということで、まさに女だらけ のアクション映画になりそうだ。 お話は、数100年(前回の記事では400年だったが、今回は 1000年になっていた)後の未来が舞台。疫病により人類が死 滅しかけている時代の未来都市を背景に、時の政府に反抗す るアクロバティックなヒロインが活躍する物語で、このヒロ インをセロンが演じ、マクダーモンドはヒロインが参加する 反抗組織のリーダー役。ただし、ヒロインは自分の行動に疑 問を持っているということだ。 脚本は、2001年にキルスティン・ダンスト主演で映画化さ れた“Crazy/Beautiful”のフィル・ヘイと、ジャッキー・ チェン主演『タキシード』のマット・マンフレディ。特に、 ヘイが手掛けた作品では、細部へのこだわりや物語の展開が かなり評価されているようなので期待したい。 撮影は8月にベルリンで開始の予定。オスカー女優2人の 共演も楽しみだが、アニメーションの原作からは『マトリッ クス』以上のVFXアクションが期待できそうで、これを新 人監督がどう捌くかも注目される。ここにハードの後ろ楯は 大いに頼りになりそうだ。 アメリカ公開は2005年に予定されている。 * * 『オーシャンズ11』で共演し、さらに続編の“Ocean's 12”でも共演しているマット・デイモンとジョージ・クルー ニーの共演作が、もう1本発表されている。 作品の題名は、“Syriana”。中東を舞台に、石油の利権 を巡って国際的な陰謀が繰り広げられる『トラフィック』の ような物語ということで、CIAによる外国政府への介入の 実体が描かれる。元CIAエージェントのロバート・ベアが 著した“See No Evil: The True Story of a Foot Soldier in the CIA's War on Terrorism”というノンフィクション 本からインスパイアされた脚本ということだ。 そしてその脚本と監督も手掛けるのは、『トラフィック』 の脚本でオスカーを受賞したスティーヴン・ゲイガン。彼は 昨年公開された『ケイティ』の監督も務めていたが、2003年 11月2日付の紹介文を読んでいただければ判るように、脚本 も演出も巧みで、かなり期待できる感じだ。 なおデイモンは、今回の作品でアメリカ系石油資本の担当 役員を演じ、クルーニーは原作者でもあるベアを演じること になっている。 因に、本作は昨年末にクルーニーのベア役での出演作とし て発表されていたものだが、今回はそれにデイモンの主演が 追加されたもの。『オーシャン』では脇役に廻らざるを得な いデイモンへ、クルーニーからのプレゼントというところだ ろうか。なおデイモンには、上記の続編の他に、これも続編 の“The Bourne Supremacy”と、“The Brothers Grimm”の 公開が今年中に予定されている。 また、本作はクルーニーとスティーヴン・ソダーバーグが 主宰のセクション8で製作、ワーナーが配給する計画だが、 ワーナーではこの他にも、テロ組織アルカイダによって殺害 されたジャーナリスト、ダニー・パールの未亡人マリアン・ パールが発表した回想録“A Mighty Heart: The Brave Life and Death of My Husband Danny Pearl”の映画化を、ブラ ッド・ピットらが主宰するプランB製作で進めており、さら にヴィデオゲーム“Doom”の映画版の脚本を手掛けたデイヴ ・カラハン脚本でも、同様の中東石油とテロリズムを背景に した作品が進められているということで、時ならぬ社内での 競作になりそうだ。 ところで今回の作品の題名は、シリア人というような意味 らしいが、発音がちょっと微妙な感じがするのは、僕だけ? * * 計画が発表されてから久しい『鉄腕アトム』“Astroboy” のハリウッド版に動きが出た。 この計画は1997年に発表され、当時はトッド・オルコット による脚本も用意されて、一旦は製作のゴーサインも出たも のだが、その直後にスティーヴン・スピルバーグ監督による 『AI』の計画が発表され、子供の死後に替りのロボットを 作り出すというテーマが似ていることから、同時期に公開す るのは不利と判断されて頓挫していた。 その計画が再始動されたもので、今回発表されたのは脚本 家。この脚本に、ザ・ロック主演の映画化も予定されている “Samurai Jack”や、一昨年劇場版が公開された『パワーパ フ・ガールズ』などのTVアニメーションを手掛けるジェン ディ・ターテイコフスキーの契約が報告されている。 なおこの映画化では、一時は“Dinosaur”などを手掛ける エリック・レイトンが招請されてオールCGIによる計画も 報告されたが、現在はアニメーションと、アニマトロニクス と実写の混合による『スチュアート・リトル』のような映画 化が検討されているということだ。この方針について製作者 のドン・マーフィは、「自分は最初からこの方が良いと考え ていたので、実写に戻ってきたことには大変満足している」 と発言している。 また製作には、マペッツの創始者の流れを汲むジム・ヘン スンピクチャーズの参加も発表されている。 因に、今回のVariety紙の記事では、原作者の手塚治虫の 業績として、“Astroboy”の他に“Kinba the White Lion” (ジャングル大帝)と“The Phoenix”(火の鳥)が挙げら れていた。 * * アメリカでは大ベストセラーの兆しも見せてきたダン・ブ ラウン原作“The Da Vinci Code”の、ソニー=コロムビア での映画化については、2003年7月15日付第43回と10月15日 付第49回で報告しているが、それと同様の中世の作品に隠さ れた謎を巡って、現代に起きる事件を扱ったスリラー作品の 計画が、ワーナーから発表された。 今回の作品は、“The Rule of Four”という題名で、内容 は、15世紀に書かれたHypnerotomachia Poliphiliという文 書の解読を進める4人の研究者が、そこに秘められたローマ 帝国が隠した財宝の情報を見つけ出し、それに絡む殺人事件 に巻き込まれるというもの。イアン・コールドウェル、ダス ティン・トマスンの共著による小説の映画化権が、ワーナー と契約されている。 なお、この計画はまだ脚本家も未定のものだが、実は、第 43回の“The Da Vinci Code”の報告で触れたルイス・ペル デュー原作の“Daughter of God”については、同じくペル デューが1983年に発表した“The Da Vinci Legacy”という 作品と合わせて、製作者のマーク・バーネットが計画を進め ることを表明しており、すでに脚本家の選考に入っていると いうことだ。因に、ペルデューの本業は脚本家なのだが、バ ーネットは他で選考しているらしい。 ということで、第49回で報告したコロムビア作品(ブライ アン・グレイザー製作、ロン・ハワード監督、アキヴァ・ゴ ールズマン脚本)の製作は、今年の秋以降という計画だった が、今回のワーナーの計画も含めて、これから他社の動向次 第では、時期が早まることもありそうだ。 * * 2000年に公開されて、全世界で9000万ドル以上を稼ぎ出し たと言われる“Final Destination”(ファイナル・デステ ィネーション)の第3作の計画がニューラインから発表され ている。 このシリーズでは、第1作はグレン・モーガン脚本、ジェ ームズ・ウォン監督、デヴォン・サワ主演で作られたものだ が、2003年公開の第2作“Final Destination 2”(デッド ・コースター)に彼らはタッチせず、この作品も全世界では 7000万ドル以上を稼いだとは言うものの、ファンの目にはテ ーマが消化不良で、かなり物足りない感じの作品だった。 そこで、今回発表された第3作にはモーガン=ウォンのコ ンビが復活するもので、彼らの基本コンセプトを活かした作 品を期待したいところだ。因に基本コンセプトは、第1作で は、サワ扮する主人公が、いろいろな予兆から死神の次の行 動を察知し、それを巧みに避けて行くというもの。その理詰 めな展開が面白かったものだが、第2作ではその展開が欠け ていたものだ。 なお監督と脚本家は、第2作の製作時には、ニューライン の親会社のワーナーで、ジェット・リー主演の『ザ・ワン』 を手掛けていた。また、今回のの第3作については、3Dで 撮影されるという情報もあるようだが、いろいろなものが飛 び散るこのシリーズでは、かなり強烈なものになりそうだ。 * * 1970年代に“Chariots of the Gods”(未来の記憶)など の著作で一世を風靡したスイス出身の作家エリッヒ・フォン ・デニケンが、800万ユーロ(約956万米ドル)の製作費を自 ら集めて、Imaxによるドキュメンタリー作品“World of Mysteries”を製作する計画を発表している。 この計画は、“The Ring of Buddha”などの作品のあるジ ョカン・ブライテンスタイン監督とのコラボレーションで進 められるもので、計画では今年の後半から、チリのアタカマ 砂漠、ペルーのナスカ高原、メキシコのマヤ寺院、トルコの 古代遺跡、イギリスのストーンヘンジなどで撮影が行われ、 2005年の公開を目指すということだ。 因に、“Chariots of the Gods”は、1974年にハラルド・ ラインル監督で映画化されており、この作品は何かの機会に 日本で上映されたのを見た記憶があるのだが、今回調べた範 囲では日本での一般公開の記録はないようだ。しかし、アメ リカのガイド本では、星3つというかなり高い評価を与えら れているもので、僕も広角レンズを多用したパノラマ感覚の 映像が優れていたと記憶している。 なお、フォン・デニケンは、大西洋の両側で作られた彼の 著作に基づくテレビ番組などで、今も悠々自適の生活のよう だが、最近は彼の著作を、テーマを変えただけで流用したよ うな作品もいろいろ出版されており、ここらで一つ本家の姿 を見せてもらいたいものだ。 * * 『シュレック』第1作と、『パイレーツ・オブ・カリビア ン』の脚本を手掛けたテッド・エリオットとテリー・ロッジ オの脚本家コンビの片割れ、ロッジオがビル・マーシリと組 んで執筆した“Deja Vu”という脚本が、ジェリー・ブラッ カイマーの製作でディズニーで映画化されることになった。 物語は、現代を舞台にしたタイムトラヴェルもので、時間 を遡る能力を持ったFBIの捜査官が、殺人を犯す女性に恋 をしてしまうというのもの。犯人を知り得ても事実を変える ことの許されない状況の中で、どのような結末が待ち構えて いるのかということだが、ブラッカイマーは、「非常にエキ サイティングで、サスペンスとロマンスにも満ちあふれた作 品」と紹介している。 そしてロッジオは、このロマンティックスリラーの脚本に ついて、ディズニーと数100万ドルの金額で映画化権を契約 したということだ。またエリオットは、本作の映画化では製 作を担当することになっている。 なお、エリオットとロッジオは、ジョン・タートルトーボ 監督、ニコラス・ケイジ主演で進められているディズニー作 品“National Treasure”のリライトを手掛けている他、マ ーシリの前作の“Jingle”という作品に協力しており、さら に現在は、“Pirates of the Caribbean”の2本の続編を執 筆中ということだ。
* * 『LOTR』のヴィゴ・モーテンセンが、デイヴィッド・ クローネンバーグ監督と組む計画が発表されている。 この作品は、ニューラインで進められている“A History of Violence”というもので、小さな街で静かに暮らしてい た男が、ちょっとした事件で活躍したことから人々の注目を 集め、それが予期せぬ事態に進展して行くという物語。ジョ ン・ワグナーという作家のグラフィックノヴェルを原作とす る作品ということだ。 『LOTR』以後のモーテンセンには、いろいろな会社か ら主役のオファーが舞い込んでいるということだが、『LO TR』の製作会社でもあるニューラインでは、敢えて彼の成 功の元となったインディペンデントやアートフィルムの線で 交渉を行ったようで、その考えにクローネンバーグも呼応し て今回の計画が実現したということだ。ジョッシュ・オルス ンの脚本で、撮影は今秋開始される予定。 なお、モーテンセンは、スペインのアウグスティン・ディ アズ・ヤンズ監督の下で進められる“Alatriste”という作 品の前に、本作に出演することになるようだ。 * * 続報で、パラマウントが進めているトム・クランシー原作 “Rainbow Six”の映画化の監督に、『ペイチェック』など のジョン・ウーの名前が挙がってきている。 この作品は、ジャック・ライアンシリーズの傍系として発 表されているもので、『トータル・フィアーズ』にも登場し たCIAエージェントのジョン・クラークを主人公にしたも のだが、今年3月には新たな脚本家が契約して、その作業も かなり進んでいるようだ。 そして今回は、その監督にウーの名前が挙がっているもの で、ウーもこの計画に興味を示したということだ。ところが ウーの計画では、実は1月15日付の第55回で紹介したザ・ロ ック主演の“Spy Hunter”の監督をすることが先月発表され たばかりで、ユニヴァーサルで進められているこの計画は、 来年夏のテントポールが予定されて、この夏にも撮影が行わ れることになっている。 しかし、ウーとパラマウントとの間では優先契約が結ばれ ており、もしパラマウント側が要請してウーが了承すれば、 他社の契約は後回しにされるということで、それではユニヴ ァーサルの来年夏の目玉の行方が判らなくなってしまうとい うことだ。ウーも契約を忘れて話しているとは思えないし、 何かの方策は考えているのだろうが、ちょっと気になる状況 のようだ。 * * 後は短い話題で、 まずは、ハナ=バーベラのテレビアニメーションシリーズ “The Jetsons”の実写映画化について、計画を進めている 製作者のデニス・ディ・ノヴィから、新たな脚本が完成し、 希望する俳優たちにも近々提示できる状況になったことが報 告された。この脚本は、昨年末に好成績を納めた“Cheaper by the Dozen”のサム・ハーパーが執筆していたもので、主 人公のジョージを演じる俳優に最初に提示されるということ だ。なお監督には、『女神が家にやってきた』のアダム・シ ャンクマンが現在も関っているようだ。 前回も紹介した新“Sperman”の計画で、主演のスクリー ンテストが行われたようだ。これには6人の俳優が参加し、 ジェイク・ギレンホールやヘンリー・ケイヴィルも居たとい うことだが、ブレンダン・フレイザーの姿はなかったという ことだ。また、特殊効果の担当で、新たにフォトンVFXと ジャイアント・キラー・ロボットという会社の参加が発表さ れている。これらの会社は、前回報告したESCに協力して 製作を進めるようだ。 * * 最後にちょっと変な話題で、アメリカでは先週公開された ヴィン・ディーゼル主演“The Chronicles of Riddick”に ついて、監督のデイヴィッド・トゥーイが、上映版は彼の最 初の編集より50分も短く、丸々カットされたキャラクターも あると発言したことが伝えられている。この発言の真意がど こにあるかは判らないが、最終的なディレクターズカットか らも公開版は15分短くされているということで、トゥーイは DVDが出るときには全てを見せたいとしているが、作品の 公開直前にしては、ちょっと変則的な発言と言えそうだ。な おカットされたのは、Escape from Butcher Bayというヴィ デオゲームに登場するシーラというキャラクターで、主人公 が追い求める過去の経緯を握るものということだ。
|