※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずはアカデミー賞の講評を簡単に書いておこう。 今回のオスカーは、すでにご承知のように“The Lord of the Rings”の11部門(候補になった全部門)での受賞とい う圧勝に終った訳だが、永年SF/ファンタシー映画を追い 続けてきた者にとっては、こんなに嬉しいことはなかった。 実際、翌日の試写室で「今年は予想通りで詰まらなかった」 などと話している連中を見たときには、「お前らは本当に映 画が判っているのか、過去の経緯を心得ているのか」と聞き 返したくなったほどだ。 思えば、1978年3月の受賞式に、1977年度の作品賞候補と して『スター・ウォーズ』が挙げられて以来、81年度の『レ イダース/失われた聖櫃』、82年度の『E.T.』と続いて、 特に82年度は受賞間違いなしと思っていたものが、見事に裏 切られた(受賞作は『ガンジー』)ときには、アカデミー賞 の存在自体を呪いたくなったものだ。それは94年度の『フォ レスト・ガンプ』、97年度の『タイタニック』で比較的近い 作品が受賞を果たしても変わることはなかった。 だから今回は、2001年度から3年連続の候補で、直前のゴ ールデン・グローブ賞などを総嘗めにしても、最後の最後ま で緊張は解けなかった。確かに、3年連続の労い賞だとか、 良く頑張ったで賞とか言われてもいるが、Variety紙の記事 でも何かほっとしたような論調なのは、永年このジャンルの 作品を無視し続けたことへの後ろめたさのようにも感じた。 実際その記事の中でも、これでハリウッドが変わると予言ま でしている。本当にそうあって欲しいものだ。 ということで、以下は定例の製作ニュースを紹介しよう。 * * といっても、最初はアカデミー賞の効果と言って良さそう な話題だが、永年滞っていた待望の計画がついに動き出すこ とになりそうだ。 2002年5月1日の第14回で紹介したパラマウントの計画、 “A Princess of Mars”に始まるエドガー・ライス・バロー ズ原作「火星」シリーズの映画化に、『スパイ・キッズ』、 『レジェンド・オブ・メキシコ』のロベルト・ロドリゲス監 督の契約が発表された。 この計画は、ユニヴァーサル配給の『ハムナプトラ』シリ ーズなどを手掛けたアルファヴィル・プロダクションが進め ているもので、同社の要請でパラマウントは、2002年にコロ ムビアなどとの争奪戦の末に、最低30万ドルから最高200万 ドルの契約金で、バローズの遺族から映画化権を獲得してい たものだ。 そしてすでに、『ザ・セル』などのマーク・プロトセヴィ ッチによる脚本も完成しているということで、ロドリゲスは 来年早々の撮影開始という線で計画を進めるとされている。 従ってこの計画通りなら、2006年の夏〜クリスマスシーズン には、映画版のジョン・カーターとデジャー・ソリスに会う ことができそうだ。 なお、撮影はロドリゲスが本拠を置くテキサス州オーステ ィンを中心に行われるということで、これは“The Lord…” でのピーター・ジャクスンのやり方に倣うということだが、 実はロドリゲスは、すでにオースティンにスタジオと特撮工 房を構えており、これはおそらく『スパイ・キッズ』の製作 用に作られたものと思われるが、その設備を駆使して製作が 行われることになりそうだ。 またロドリゲスは、このシリーズについて、「“The Lord …”の後に残された映画化されていない作品の中で、最も有 名なファンタシーの古典と言える作品だ。今までは技術が追 いついてくるまで実現が不可能だった」と語ったそうだが、 正直に言って、JRRトーキンの“The Lord…”の原作は、 文学的にも優れた作品だが、バローズの作品は決してそのよ うなものではない。ロドリゲスにはその辺を勘違いしないで 映画化を実現してもらいたいものだ。 まあ、簡単に言えば、ロドリゲスの今までの作品の乗りで やってもらえればファンも満足する作品になると考える。間 違っても、「火星」シリーズで『グレイストーク』は作らな いで欲しいというところだ。 キャスティングは未発表だが、カーター、ソリスの配役は もとより、6本脚の馬や、身長12フィートの怪人をどのよう に映像化するかにも興味は集まる。『スパイ・キッズ』でも VFXはかなり頑張ってはいるが、今回スケールや質の点で は“The Lord…”に匹敵するものが要求されることになる訳 で、スタッフにはその辺の一層の頑張りを期待したい。 なお、ロドリゲスは、今後はすでに撮影開始された“Sin City”(ジョッシュ・ハートネット、メアリー・シェルトン 共演によるフランク・ミラー原作のグラフィックノヴェルの 映画化)の監督に並行して、本シリーズの準備を進めること になるようだ。 * * お次もファンタシーシリーズの話題で、2002年7月15日の 第19回で紹介したC・S・ルイス原作“The Chronicles of Narnia”の映画化について、前回紹介したウォルデン・メデ ィアに加えて、ディズニーが共同製作の形で参加することが 発表された。 この計画については、2001年12月にウォルデンが映画化権 を獲得し、独自に準備を進めていたもので、すでに『シュレ ック』を手掛けたアンドリュー・アダムスンの監督も発表さ れ、アダムスンとクリストファー・マーカス、スティーヴン ・マクフィリーの草案から、アン・ピーコックによる脚本も 執筆されているようだ。そして本年6月末か7月初めから、 ニュージーランドとチェコスロヴァキアでの撮影も準備され ており、公開は2005年クリスマスを目指すとされている。 この計画にディズニーが参加する訳だが、両社は50/50で 製作費を負担することになっており、これによりディズニー は、全世界マーケットでのヴィデオ、ライセンシング、マー チャンダイズなどの権利も獲得するということだ。 なお、映画化はシリーズで最初に書かれた“The Lion,the Witch and the Wardrobe”から開始されることになってい るが、実は物語的にはこの作品は第2部に当るもので、この 前の話として“The Magician's Nephew”という作品が書か れている。一方、今回の計画では当初から“The Chronicles of Narnia”と銘打たれており、シリーズの全7作の映画化 が想定されているもので、時間の流れをどう説明するか、今 後の映画化が進むとその辺の調整も注目されそうだ。 因に、ウォルデンとディズニーの関係は、ディズニーがア メリカ国内の配給権を契約して、すでにIMAX作品の『タイタ ニックの秘密』や、ジャッキー・チェン主演でリメイクされ た“Around the World in 80 Days”のアメリカ配給なども 手掛け、その契約も2年間更新されたようだが、今回の共同 製作はそれとは別の契約で行われるということだ。 キャスティングは未発表だが、ウォルデン代表のキャリー ・グラナットは、「“The Lord of the Rings”ではゴラム という素晴らしいキャラクターが生み出されたが、我々は同 様のキャラクターを5体作り上げなければならない」と、そ の目標を掲げている。なおシリーズは、上記の2作と“The Horse and His Boy”“Prince Caspian”“The Voyage of the Dawn Treader”“The Silver Chair”“The Last Battle”で構成される。 * * 続いては、今年主演女優賞を受賞したシャーリズ・セロン の話題で、次回作としてレイクショア=パラマウント製作の “Aeon Flux”という作品に主演することが発表された。 この作品は、元々はパラマウント傘下のMTVで放送され ているアニメーションシリーズを実写映画化するもので、物 語は、400年後の未来が舞台。地球人類は謎の病原菌によっ てほぼ全滅させられ、人々は病原菌を除去するドームに包ま れた都市の中でかろうじて生き長らえている。そして主人公 は、その世界での政治的なリーダーを殺すことを命じられた アクロバティックなスーパーヒロイン、このスーパーヒロイ ンをセロンが演じるというものだ。 オスカー受賞の直後にしては風変わりな作品を選んだもの だが、実はこの発表は、受賞式直前の2月26日に行われたも ので、渡辺謙のラーズ・オル・グールと同様、箔が付いてし まう前に契約を結んでしまおうというもののようにも感じら れる。といっても、先日のハリー・ベリーもオスカーで仕事 を選ぶことはないと言っていたように、セロンもこういう役 柄を演じて見たかったのかも知れない。実際、“Monster” の公開以後に殺到した出演交渉の中からこの作品が選ばれて いる訳で、彼女自身が選んだ役柄であることに変わりはない ということだ。 なお映画化は、ゲイル・アン・ハードのワルハラ・プロダ クションが進めるもので、ハードは10年以上前からこの企画 を温めていたそうだ。そして監督は、2000年に話題になった 『ガールファイト』のケイリン・クサマで、監督も1年近く この計画に関わっているようだ。脚本はフィル・ヘイとマッ ト・マンフレディが執筆。撮影は、本年6月にベルリン郊外 で開始されることになっている。 * * 話のついでに、渡辺謙のラーズ・オル・グールが登場する “Batman Begins”の情報で、シリーズのレギュラーとなる ゴッサムシティ警察のゴードン本部長(署長ではなかった) 役に、“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”には タイトルロールのシリウス・ブラック役で登場するゲイリー ・オールドマンの登場が発表された。なおこの配役は、以前 の紹介ではデニス・クウェイドが報告されていたものだが変 更になったようだ。 因にゴードン本部長役は、前のシリーズではパット・ヒン グルという俳優が演じていたが、大元の設定では前作『バッ トマン&ロビン』に登場したバットガールの父親というもの (その後の設定変更では叔父、ただし映画版のバットガール は執事アルフレッドの姪ということになっていた)。今回の 設定がこの先どうなるかは判らないが、ましてオールドマン が演じるとなれば、かなり重要な登場人物になりそうだ。 なお、本編の撮影はアイスランドで開始されたようだ。 * * 続いてはSF映画のリメイクの情報で、1976年にMGMで 映画化されたウィリアム・F・ノーラン、ジョージ・クレイ トン・ジョンスン共作の“Logan's Run”(2300年未来 への旅)を、『X−メン』のブライアン・シンガーの監督、 『マトリックス』のジョール・シルヴァ製作で、ワーナーで 再映画化する計画が発表された。 オリジナルの映画化は、1956年のオスカー作品賞を受賞し た『80日間世界一周』などのマイクル・アンダースンが監督 し、マイクル・ヨークとジェニー・アガターが主演、ファラ ・フォーセットの出演などでも話題になったものだ。 物語は、2274年の舞台設定で、ドーム都市の中でユートピ ア社会が構築された世界。しかし都市の人口増加を押さえる ため、住民は30歳になると儀式によって死ななくてはならな い。そして主人公は、死を免れようとする住民を取り締まる 警官だったのだが、ある日、逃亡の手段を見つけてしまう。 オリジナルの映画化では、巨大な未来都市のミニチュアセ ットの中をシュノーケルカメラが縦横に動き回るなど、当時 としては最新の技術が駆使されたもので、内容自体はさほど 優れたものとは思わなかったが、映画の評価はガイドブック で星3つなどと高めになっている。また、映画公開後にはテ レビシリーズ化もされた。 その作品をシンガーの監督でリメイクするものだが、シン ガーはすでに『X−メン2』のプロダクションデザインを手 掛けたジー・ダイアスとの作業を開始しており、「皆さんが 今まで見たこともないような世界をご覧にいれる」と抱負を 語っている。またシンガーは、イーサン・グロス、ポール・ トゥディスコと共に、脚本の執筆も開始しており、キャステ ィングや撮影時期は未定だが、ワーナー側は2005年中の公開 を期待しているということだ。因に、この脚本で住民は21歳 で死ぬことになるそうだ。 なお、シンガーはフォックスと包括契約を結んでおり、こ の契約では“X-Men”シリーズの続編が期待されているもの だが、本作はその前に製作されることになる計画だそうだ。 また原作者のノーランは、本作に続けて、ローガンとジェ シカの冒険を描いた“Logan's World”“Logan's Search” の2作の続編を発表しているそうだが、今回のリメイクがそ こまでの製作を考慮したものか否かは定かではない。 * * 前の話題は3部作になるかも知れないが、次はシリーズ第 3作の話題を2つ紹介しよう。 まずは今年7月に第2弾が公開される“Spider-Man”で、 早くも“Spider-Man 3”の計画が発表された。この発表は、 原作コミックスを出版するマーヴル・コミックス側が行った もので、それによると第3作の公開時期は2007年、これは早 めれば06年も可能だが、安全を考えて07年に設定していると いうことだ。 そしてこの計画は、すでに監督のサム・ライミとも話し合 われており、また主演のトビー・マクガイアのエージェント 及びマネージャーとは、予定される撮影期間に他の作品の撮 影がぶつからないかどうか調整を行っているということだ。 これに対して映画を製作配給するソニーは、“Spider-Man 3”の計画が進行中であることは認めたものの、その詳細は 回答できないとしている。なおソニーとマーヴルの間では、 昨年“Spider-Man”のキャラクターの使用を巡って裁判沙汰 にまで発展したが、結局映画シリーズを続けるためには両社 の協力がなければできない訳で、その辺は割り切って計画は 進められているようだ。 * * そしてもう1本の第3作は、昨年第2弾の『ワイルド・ス ピード2』が公開された“The Fast and the Furious”のシ リーズの続編で、ヴィン・ディーゼルを呼び戻す計画が進め られている。 このシリーズでは、2001年公開の第1作でディーゼルの売 り出しに大いに貢献したが、第2作ではディーゼルの出演は なく、第1作に続いてポール・ウォーカーが演じた潜入捜査 官ブライアン・オコナーを主人公にして、タイリーズ演じる 別のキャラクターが彼のパートナーとなっていた。そしてこ のときは、第1作の監督ロブ・コーエンも降板し、ジョン・ シングルトンが監督を勤めたものだ。 とは言え、この第2作の興行成績は、アメリカ国内は第1 作よりわずかに下がったものの1億ドルを突破、全世界では 第1作を上回る数字を残し、物語自体が世界中で受け入れら れたことを示していた。 ということで第3作の計画が注目された訳だが、製作会社 のユニヴァーサルは敢えてディーゼル演じるドミニク・トレ ットのキャラクターを選択。『S.W.A.T.』のリライトな どを手掛けたクリス・モーガンを雇ってメキシコに逃れたト レットの新たな物語を作らせた。そしてその脚本では、何と トレットは東京に現れ、最近のストリートレースのメッカと 言われるこの街で、ギャング団とのトラブルに巻き込まれた 友人を救うためにレースに挑むということだ。 なお、ディーゼル本人はシリーズの第3作への出演を希望 しているということだが、その前に脚本の確認が必要という ことで、現在は脚本の完成待ちの状態のようだ。一方、監督 のコーエンも、ディーゼルが出演するなら席に戻る可能性が あるということで、シリーズ第1作と2002年の『XXX』を 作り上げた最強のコンビが復活することもあるようだ。 とまあ、期待のシリーズ第3弾というところだが、それに しても今回の脚本で、東京の警察はすんなりとOKを出して くれるのだろうか。主演と監督が戻っても、その辺がちょっ と気がかりなところもある。 因に、本作の公開は2005年の夏に予定されているが、この 夏のユニヴァーサル映画には、ドウェイン“ザ・ロック”ジ ョンスン主演の“Spy Hunter”しか決まっておらず、ユニヴ ァーサルとしてはぜひとも実現したい計画のようだ。 * * 続いては企画復活の情報で、2002年9月15日の第23回で計 画延期を報告したダーレン・アロノフスキー監督のSF大作 “The Foutain”が、ヒュー・ジャックマンの主演で復活す る可能性が出てきた。 この計画は、アロノフスキーとアリ・ハンデルの脚本を映 画化するもので、物語は、現代を中心とした前後500年ずつ の過去と未来を結ぶ不滅の愛を描くもの。そして凍結前の計 画では、ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットの共演 が予定され、この2人が500年前のスペインの南米制服と、 現代と、500年後の宇宙船を背景に、ブランシェットはそれ ぞれ違う人物、対するピットは同一の人物として登場すると いうものだった。 そしてこのときは7500万ドルの予算が組まれ、すでにオー ストラリアに一部セットの建設も始まっていた。しかしブラ ンシェットの妊娠などで計画が遅れ、結局ピットが“Troy” への出演を決めた時点で製作会社のワーナーから延期が発表 されたものだ。 その計画が復活する気配になったものだが、主演がピット からジャックマンに変更になったことで、製作予算は一気に 3500〜4000万ドルになってしまったということ。しかもこの 計画では、前回の延期発表までに投入された1800万ドルが別 に負債として残っているということで、製作会社側としては かなり厳しい条件に見舞われることになるようだ。 従って、実現までにはまだ前途多難なようだが、アロノフ スキーとしてはかなり気合いを入れた作品だっただけに、何 とか実現してもらいたいものだ。 なお、アロノフスキーの計画では、前々回紹介した“Song of Kali”が進められている他、日本の侍コミックスを実写 映画化する“Lone Wolf and Cub”(子連れ狼)の計画も進 んでいるようだ。 * * 最後に続報で、3月30日からの撮影が予定されているハリ ウッド版“The Ring 2”の監督に、急遽日本版『リング』を 手掛けた中田秀夫の起用が発表された。 この続編の計画では、CF出身のノアン・モロという監督 の起用が予定されていたが、3月上旬に製作者のウォルター ・F・パークスとの間で創造上の意見の相違が発覚。降板が 表明されて、その後をオリジナルの監督が継ぐことになった ものだ。因に中田監督は日本版の『リング2』も監督してい るが、今回のハリウッド版はリメイク版“The Ring”の続編 ではあるものの、内容は日本版とは全く異なるそうだ。
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