井口健二のOn the Production
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2004年03月14日(日) オーシャン・オブ・ファイヤー、キャンプ、犬と歩けば、永遠のモータウン、ホーンテッド・マンション、フォーチュン・クッキー

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『オーシャン・オブ・ファイヤー』“Hidalgo”      
実話に基づく物語。                  
イエメンのアデンからシリアのダマスカスまで、全長3000マ
イル(4800km)を走破する砂漠の競馬レース。1890年、アラ
ブ馬の純血種だけで1000年に亙って競われてきたそのレース
に、ヒダルゴという名の1頭のマスタングとアメリカ人の騎
手が挑戦した。                    
主人公のホプキンスは、アメリカ1番のクロスカントリー競
馬の乗手と呼ばれた男。しかし平生は騎兵隊の伝令としての
仕事も引き受ける彼は、ある日、第7騎兵隊への命令書を届
け、それによってウーンデッド・ニーの惨劇が引き起こされ
るのを目撃してしまう。                
その罪の意識から生活が荒み、ウェスタンショウへの出演な
どで、その日暮らしの生活をしていた彼に、ある日アラブ人
の使者が現れ、砂漠のレースへの参加が招待される。   
その賞金は10万ドル。その金があれば、荒野のマスタングの
群れを守り、インディアンたちの生活を救うことができる。
彼は命を掛けた過酷なレースに参加を決意する。     
しかしそのレースは、自然との戦いだけでなく、参加者たち
の陰謀とも戦わなければならないものだった。      
『ロード・オブ・ザ・リングス』でアラゴルン役を好演した
ヴィゴ・モーテンセンがホプキンスを演じ、他にオマー・シ
ャリフらが共演。監督は、『ジュマンジ』などのジョー・ジ
ョンストン。                     
『ラスト・サムライ』と同じ頃の話ということになるが、こ
の作品でも、インディアンたちの言葉や、アラビア語が字幕
付きで描かれるのは気持ちが良い。また、ショウの舞台裏で
はアニー・オークレイが出てくるなどのくすぐりもある。 
そして舞台がアラビア半島に移り、そこからの画面を彩るの
は、壁のように襲いかかる砂嵐や、解き放たれた豹が馬を襲
うなどのVFXの数々。ジョンストンは、元々がILMの特
撮マンだからこの辺の映像との絡みはお手のものだ。   
正直に言って、もっと人間を描ける監督だったら違う雰囲気
になったかも知れないが、見せ場たっぷりの映像は、それは
それで良しと言うところだろう。            
                           
『キャンプ』“Camp”                 
アメリカで、芸能界に向かう登竜門の一つとも言われるミュ
ージックキャンプに挑戦する素人の若者たちを描いた作品。
製作、脚本、監督(デビュー作)のトッド・グラフは、『ア
ビス』などに出演した俳優でもあるようだが、自らミュージ
ックキャンプの出身者ということで、監督自身が落ちこぼれ
の集まりと自称する彼らの姿を愛情を込めて描いている。 
芸能界を夢見る若者たちが集まるミュージックキャンプ。そ
こは、ゲイや、自分はもてないと思い込んでいる少女や、親
の言いなりになっている自分から逃げたい子供など、世間か
らはちょっと変わり者と思われているような連中の寄り集ま
りだ。                        
このキャンプで彼らは、普段の生活を離れて、自分自身を再
発見するチャンスを得ることになる。そんなキャンプに、今
年は一人の青年が参加する。ギターや歌も巧く、一見完璧に
見える青年は、少女やゲイたちの憧れの的となるのだが…。
『ウエスト・サイド・ストーリー』の作詞家スティーヴン・
ソンドハイムが、自らカメオ出演もするなどの協力で、往年
のミュージカルスの楽曲もふんだんに登場。『フェーム』の
音楽スタッフによる新曲も披露されるなど音楽ファンにはか
なりのもののようだ。                 
展開に多少あざといところはあるけれど、タップダンスや歌
唱など、出てくる若者たちの見事なパフォーマンスを見せら
れると、そんなことはどうでも良くなってしまう。それに何
より彼らに向けられる目の暖かさが素敵、そんな感じの作品
だった。                       
                           
『犬と歩けば』                    
ココリコの田中直樹の主演で、恋人に振られた若者と、捨て
犬との交流を描いた作品。               
これに共演がりょう、ラーメンズ片桐仁、Puffy吉村由美、
さらに嶋田久作、寺島進、ガダルカナル・タカ、はなわなど
と来ると、なかなか見に行く食指が動かないという感じの作
品だ。だって、どう考えてもまともな映画が作れる体制では
ない。                        
しかし監督の篠崎誠は、前作『忘れられない人々』が気に入
っているので見に行った。               
そこで映画は、もちろん田中主演のドラマではあるのだけれ
ど、主眼は動物介在療法(アニマルセラピー)の活動を描い
たもので、その支援活動を続けているミュージシャンの大木
トオル氏も特別出演して、その訓練から実践までが手際良く
描かれている。                    
これが、自分で犬を飼っている身としては実に分かり易すく
描かれているし、また田中直樹が飼い主の視点でそれを演じ
ていてくれるのも良い感じだった。           
監督は、前作でも、戦争から老人問題、そして現代の社会悪
までも手際良くまとめてみせてくれたが、今回は前作ほどテ
ーマの数を盛り込んでいないから判りやすい反面、言いたい
ことがもろに出過ぎた感じはする。でもこのテーマなら仕方
ないかなという感じだ。                
なお出演者の演技は、多少臭い部分もあるが概ね悪くはなか
った。ただ、映画の宣伝は、もっとセラピードックを前面に
出してもいいのではないかと思うが、どうだろう。    
                           
『永遠のモータウン』                 
         “Standing in the Shadows of Motown”
1959年、デトロイトに誕生したモータウンレコード。   
スティーヴィー・ワンダーからダイアナ・ロス、テンプテー
ションズ、そしてマイクル・ジャクスンまでも育てた伝説の
レコード会社を、陰で支えたスタジオミュージシャンたち。
彼らの名はファンク・ブラザース。            
「歌手は誰でも良かった。彼らのサウンドがあったからこそ
モータウンはヒット曲を連発できた」とまで言われるファン
ク・ブラザースだが、今まで彼らの存在が語られることはほ
とんどなかった。そのファンク・ブラザースにスポットを当
てたドキュメンタリー。                
といっても、本作の製作も、元になる同名の書籍が1989年に
発表されてから14年もかかっているのだから、本当に幻に終
ってしまうところだったようだ。実際に映像では1990年代に
撮影されたものも多く登場するが、その内の何人かはすでに
亡き人なのだ。                    
しかしようやく完成されたこのドキュメンタリーがきっかけ
で、ファンク・ブラザースは復活。英米でのコンサートを成
功させ、今年のグラミー賞で功労賞が授与されたという。 
映画は、その復活コンサートを中心に、参加した若手ミュー
ジシャンとの交流や、すでに亡くなった人を含むメムバーへ
のインタヴュー、思い出話しに、その再現映像などで綴られ
る。まあ、ミュージシャンにありがちな思い出話しだが、人
種を超えたグループだっただけに、キング牧師暗殺やデトロ
イトの暴動の時のエピソードには感銘を受けた。     
それにしても、「マイガール」や「プリーズ・ミスター・ポ
ストマン」など、聞き覚えのある曲の数々が、みな彼らの作
品だったというのには感動した。しかも、最初の数小節だけ
があって、そこからほとんど即興で曲が作られる。2時間も
あれば2、3曲は作れたという話しも、このドキュメンタリ
ーを見ていると真実と理解できた。           
                           
『ホーンテッド・マンション』“The Haunted Mansion”  
ディズニーランドのアトラクションにインスパイアされた作
品の第3弾。お馴染みの幽霊屋敷の成立までの経緯が、ここ
に明らかにされる。                  
不動産業を営んで、夕食にも帰らずに仕事に精出す主人公。
妻は諦め気味で、姉弟2人の子供の内、姉は反抗的、弟は父
親との接触が少ないためか内向的に育っている。     
そんな状況を打破しようと、主人公は、親子関係を取り戻す
ために週末をリゾート地の湖で過ごすことを決めるのだが、
ちょうどその日、古い屋敷の売却の話しが舞い込んでくる。
そして湖に向かう途中、全員でその屋敷を訪れた一家は…。
まあ、お話は他愛もないものではあるが、アトラクションの
内容なども巧く取り込んで、1時間28分の上映時間は満足で
きる。特に、くすぐりの部分がほとんどそれに拠っているの
は、アトラクションのファンにはたまらないところだ。  
監督は、『ライオン・キング』『スチュアート・リトル』の
ロブ・ミンコフ。さすがディズニー出身者は、その精神みた
いなものもよく判っているし、VFXの使用にも慣れている
から、この作品にはピッタリの人材と言える。      
そして主演には、エディ・マーフィが、最近板に着いてきた
父親役を本作でも調子良く演じている。他にテレンス・スタ
ンプが執事役で登場、貫禄を見せる。          
VFXは、『スチュアート…』などのソニー・イメージワー
クス。また、久々のリック・ベーカーが、ゴーストやゾンビ
などの特殊メイクを担当している。           
昨年春の『カントリー・ベア』に続く、夏の『パイレーツ・
オブ・カリビアン』の大ヒットのお陰で、日本での前売鑑賞
券の売り上げは、『ファインディング・ニモ』の1.5倍に
なっているそうだ。                  
                           
『フォーチュン・クッキー』“Freaky Friday”      
お互いを理解できない母親と娘が、中華料理店で渡されたフ
ォーチュンクッキーの魔法で身体が入れ替わり、すったもん
だの末に理解できるようになるという、ディズニーお得意の
ちょっとファンタスティックなファミリー・コメディ。  
アナはロックに熱中する高校生。バンドを結成してガレージ
で練習することは認められているが、母親で精神科医のテス
は口うるさく、お互いの関係はかなりぎくしゃくしている。
しかもテスの再婚の日が近づき、新しい父親にも馴染めてい
ない。                         
そんな状況でアナは学校でもいらいらのし通し。しかしバン
ドがオーディション出場のチャンスを掴み、前が開けたと思
ったのだが、その日はテスの結婚式のリハーサルで、アナは
花嫁の介添え役をしなければならなかった。             
親子の身体が入れ替わる話というと、1987年公開の『ハモン
ド家の秘密』を思い出すが、実は本作は、1976年製作のジョ
ディ・フォスター主演作品のリメイクで、さらに1972年に発
表された小説の映画化ということだから、こちらの方が断然
先に作られたお話だ。                     
そしてこのお話を、今回はジェイミー・リー・カーティスと
リンゼイ・ローハンという16歳の女優の共演で映画化してい
るが、このローハンが何しろ巧い。カーティスは、最後の方
に見せ場は用意されているものの、ほとんどローハンのため
の作品という感じで、さすがフォスターの跡を継いだという
ところだ。                      
なおローハンはCMとテレビの出身で、1998年製作の『罠に
かかったパパとママ』のリメイク版『ファミリー・ゲーム』
で、1人で双子を演じて映画デビュー。1億ドル突破の本作
に続く主演作の“Confession of a Teenage Drama Queen”
は、2月に全米公開されて初登場第2位。さらに次回作には
『ラブ・バッグ』の新作への主演も予定されている。   
まあ、基本的にはプログラム・ピクチャーで超大作ではない
が、1時間37分の上映時間は充分に楽しめる。なお、劇中の
主人公が歌う歌はローハンが自分で吹き込んでいるようだ。
また、騒動のきっかけとなる中華料理店の女将の役で、ロザ
リンド・チャオが出演している。                     


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井口健二