井口健二のOn the Production
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2003年11月16日(日) ラストサムライ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ラストサムライ』“The Last Samurai”        
明治10年頃の日本を舞台に、侍社会の終焉を描いたトム・ク
ルーズ主演の歴史ロマン。               
最初に一言で言えば、予想以上に良くできた作品だった。 
物語は、明治初期のいわゆるお雇い外国人としてやってきた
男が、消え行く日本の侍文化に触れ、自らも改革されて行く
というものだが、そこには男のロマンのようなものが高らか
に謳いあげられ、見終って久しぶりにカタルシスが感じられ
るような作品だった。                 
主人公は、明治9年6月に戦死したカスター将軍と共に、南
軍やインディアンとの闘いで数々の武勲を挙げたという男。
その男が皇軍の軍事指導のため日本にやって来る。それはま
た、銃器を日本に売り込もうとするアメリカ政府の意向にも
沿うものだった。                   
しかし、最初の闘いで作戦の失敗から敵将勝元の捕虜となっ
た主人公は、山間の隠れ里で一冬を過ごすことになる。そし
てその間に日本の侍文化に触れることにもなるのだが…。や
がて春となったとき、彼らは圧倒的な皇軍との闘いを強いら
れることになる。                   
原作はなく、『グラディエーター』のジョン・ローガンがス
トーリーとクレジットされている。ローガンは共同脚本にも
なっているが、物語を最終的に仕上げたのは、監督でもある
エドワード・ズウィックと製作も手掛けたマーシャル・ハー
スコヴィッツのようだ。                
その脚本は、主人公にカスターの最期を語らせることで、特
にアメリカの観客には物語の展開を判りやすくするという構
成にしていると思われる。そしてこの主人公が、第7騎兵隊
の軍服を着て登場するシーンは彼の心情を見事に表現したも
のだ。                        
一方、日本人の観客である僕には、日本文化に帰依して行く
主人公の生き方が、ある種の理想形のような描き方で心地よ
い感じがした。また点描的に刀鍛冶が日本刀を仕上げて行く
過程を描くなど、日本文化に対する配慮も良い感じだった。
確かに、ニュージーランドでロケされた山里の風景は見るか
らにU字谷であったり、日本とは明らかに植生が違うなど違
和感を感じるべきところはあるが、この映画には、それを上
回るドラマの力強さが感じられた。           
また、主人公が、アメリカでカスターの敗戦の原因とも言わ
れるウィンチェスター銃の宣伝に協力していたり、日本に来
てからの最初の任務がカスターと同じ鉄道警備だったりとい
うような、細かい点の配慮も行き届いている感じがした。 
日本人の扱い方も、互いに蛮人と呼びあっていながらも敬意
が感じられ、特に日本人女性に対する態度が終始敬意を持っ
て描かれている点も素晴らしかった。          
さらに日本語と英語の字幕が、画面下部に同等に横書きで表
示されるのも、ちょっと不思議な感じもしたが、平等を象徴
しているようで良い感じだった。なお、予告編で気になった
General Hasegawaに対する長谷川将軍という表記は、長谷川
大将に改められていた。


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井口健二