井口健二のOn the Production
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2003年11月15日(土) 第51回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回は続編の話題からで、まずは新作“Timeline”が今月
末に全米公開される監督リチャード・ドナーから、1985年に
監督した“The Goonies”(邦題:グーニーズ)の続編の計
画が発表されている。                 
 前作は、スティーヴン・スピルバーグの原案製作、スピル
バーグとクリス・コロンバスの脚本を、ドナーが監督したも
のだが、後に『ハリー・ポッター』を手掛けるコロンバスに
とっては前年の『グレムリン』に続く第2作であり、ドナー
も先に『オーメン』『スーパーマン』はあるものの、翌年の
『リーサル・ウェポン』で本格的にブレイクする直前の作品
といえる。                      
 物語は、海辺の小さな町に住むマイキー筆頭に、マウス、
データ、チャック、スルースの少年グループが、海賊「片目
のウィリー」の残した財宝の地図を手掛りに大冒険を繰り広
げるというもの。また公開当時は、撮影のために特別に設計
されたウォータースライダーなどの、まるで遊園地のような
セットも話題を呼んだものだ。             
 そしてこの主人公のマイキーを、最近では“The Lord of
the Rings”3部作のサムワイズ役などで活躍しているショ
ーン・アスティンが演じ、また中国系のデータ役は、前年に
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』でデビューしたキー
・ホイ=クワンが演じていた。             
 その続編の計画だが、実はこの続編に関しては、前作の公
開直後から報告されていた。しかしいろいろな事情で今まで
製作されなかったもので、その計画が約20年経ってようやく
実現することになりそうだ。              
 なお続編の題名は“The Groonies”。これは前作でのデー
タの中国風の発音がこのように聞こえたことから名付けられ
たもので、続編では成長して電気店を営むデータの店に集ま
る少年たちがそう名乗るグループを結成して冒険を繰り広げ
ることになっている。そしてこの冒険には、前作のメンバー
も登場するということだ。               
 因に、残りの3人の少年の内、マウスとスルース役を演じ
たコーリー・フェルドマンとジョッシュ・ブローリンは現役
の俳優だが、チャックを演じたジェフ・コーエンはその後は
学業に専念し、実はUCバークレーの法学部を首席で卒業、
現在はハリウッドで法律事務所を営業しているとのこと。そ
のコーエンも続編には出演するということだ。      
 さらにグループと共に行動した2人の少女役のマーサ・プ
リンプトンとジョー・パントリアーノも現役の女優で、彼女
らも続編に出演する計画だそうだ。           
 続編の脚本は出来上がっているようで、前作を製作したス
ピルバーグの了承はすでに得ており、現況は最後の関門の製
作権を所有するワーナーにアプローチしているところという
ことだが、この企画に断る理由があるのだろうか。    
        *         *        
 後2つスピルバーグ関連の続編の情報で、まずはドリーム
ワークスが製作した『ザ・リング』の続編“The Ring 2”の
来年1月の撮影開始が発表された。           
 日本製ホラー映画をリメイクした前作は、全米で1億2900
万ドルを興行収入を上げた他、海外でも1億2000万ドルを稼
ぎ出したということだ。また元々の日本版にも『リング2』
と『リング0』が製作されており、当初から続編の製作は自
明だったようだ。                   
 そして続編には、前作の主人公を演じたナオミ・ワッツ、
息子役のデイヴィッド・ドーフマンの再登場が発表されてい
る他、脚本は前作と同じアーレン・クルーガーが担当してい
る。しかしその内容は、ドリームワークスによって厳重に機
密保持されており、印刷物はすべて暗号化されたものしか持
ち出せないということだ。               
 一方、監督は、前作のゴア・ヴァビンスキーに替ってコマ
ーシャル出身のノアム・モロの起用が発表されている。因に
モロは“Got Milk?”と題されたダークな雰囲気の牛乳のコ
マーシャルで話題になり、それが今回の抜擢に繋がったとの
こと。この他にナイキやフォルクスワーゲンなどのコマーシ
ャルを担当し、今年のカンヌ広告映像祭では3部門で受賞の
他、アメリカ監督協会のコマーシャル部門も受賞している。
 なお、1月から撮影される映画の公開は、来年11月の予定
になっている。                     
        *         *        
 一方、1998年に当時のアムブリンで製作された『マスク・
オブ・ゾロ』の続編の計画も発表され、この続編には、アン
トニオ・バンデラス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アン
ソニー・ホプキンスの再登場と、マーティン・キャンベル監
督の再登板も発表されている。             
 この前作は、特にゼタ=ジョーンズがブレイクした作品と
して知られるが、これを見たマイクル・ダグラスが一目で彼
女と結婚したいと言い出し、その後2年間のアプローチでつ
いに念願を果たしたという伝説も生み出した作品だ。   
 そしてこの続編も、前作の公開直後から話題になっていた
ものだが、特にこの続編にはキャンベル監督が常に中心とな
って計画が進められていた。しかし製作者たちの期待に応え
る脚本が中々得られず製作に至らなかったものだ。    
 その計画に今回は、テレビシリーズ“Alias”の製作総指
揮を手掛けるロベルト・オーチとアレックス・カーツマンが
執筆した強力な脚本がもたらされ、一気に製作が決ったとの
こと。この作品も来年春からの撮影が予定されている。  
 因に監督のキャンベルは、アンジェリーナ・ジョリー主演
の『すべては愛のために』の全米公開が始まったところで、
これから準備を本格的に行えるようだ。また、ゼタ=ジョー
ンズは新作の撮影を完了しており、バンデラスはブロードウ
ェイのミュージカルに出演中だが、これらも含めてスケジュ
ールの調整は万全なようだ。              
 なお、続編の製作発表はコロムビア=ソニーの単独で行わ
れており、『メン・イン・ブラック2』のようにアムブリン
が復活することはないようだ。             
        *         *        
 お次は前編の話題で、来年の公開を目指してワーナー傘下
のモーガン・クリークで進められている『エクソシスト』の
前日譚“Exorcist: The Beginning”の製作で、当初監督を
担当していたポール・シュレイダーが降板し、引き継いだレ
ニー・ハーリンの下で6週間の再撮影を行うことが発表され
ている。                       
 1973年のアカデミー賞で作品賞を含む10部門にノミネート
され、脚色及び音響部門に輝いた第1作からは、77年と90年
に続編が製作されているが、本作は第1作でマック・フォン
・シドーが演じたメリン神父の事件に至るまでの足跡をたど
るもの。第1作のプロローグや第2作で描かれたアフリカの
遺跡調査での神父と悪魔との最初の遭遇の物語だ。    
 そしてこの作品の撮影は、昨年11月11日に開始され、今年
3月にはVariety紙に撮影終了の広告も掲載されて、来年2
月公開に向けてのポストプロダクションが行われていた。と
ころが9月になって、シュレイダーと製作会社との間で創造
上の意見の相違が発覚し、ポストプロダクションの半ばで監
督の降板としてしまった。               
 これに対してモーガン・クリーク側は、レニー・ハーリン
に監督の引き継ぎを依頼したのだが、今度はシュレイダーに
同調した俳優2人が降板を表明し、結局この2人の出演シー
ンの撮り直しのために6週間の再撮影が行われることになっ
た模様だ。                      
 それにしても、撮影が終った段階での監督の降板とは珍し
い事態だが、実はこのままではシュレイダーの名前も監督と
して残るということで、このままハーリンとの共同監督とい
うことになるのだろうか。また、再撮影が行われるローマの
チネチッタ撮影所では、急遽スケジュールの立直しなど、か
なりの混乱が生じたようだ。              
        *         *        
 続いてはリメイクの話題で、まずは1950年にアレック・ギ
ネス主演で製作されたイギリス映画“Last Holiday”を、今
年のオスカーで助演賞候補になったクィーン・ラティファの
主演で再映画化する計画が発表されている。       
 オリジナルはイギリスの作家、劇作家ジョン・プリースト
リーの原作に基づくもので、それまでは普通の生活をしてい
た主人公が、自分の死期の迫っていることを知らされ、最期
にリゾート地で散財を試みるが、それが騒動を巻き起こすと
いうもの。日本では未公開のようだが欧米のガイド本では、
星3つなどの高い評価を受けているコメディ作品だ。   
 このオリジナルでギネスが扮した主人公を、ラティファが
演じるという計画で、脚色には『ロジャー・ラビット』や、
昨年公開されたジム・キャリー主演の『グリンチ』などを手
掛けたピーター・シーマンとジェフリー・プライスが起用さ
れている。                      
 因にラティファは、現在撮影中の『Taxi』のリメイク
では、オリジナルのフランス映画でサミ・ナセリが扮したタ
クシー運転手を演じており、今回の計画はまたまたヨーロッ
パ映画からのリメイクで、しかもどちらもオリジナルは男性
の役を演じることでも話題になっているようだ。     
        *         *        
 もう1本リメイクの計画は、1987年にブレイク・エドワー
ズ監督、ブルース・ウィリス、キム・ベイシンガーの共演で
映画化されたコメディ作品“Blind Dates”(ブラインド・
デート)の再映画化が計画されている。         
 オリジナルの物語は、仕事中毒気味の男性がふと誘われた
ブラインドデートで羽目を外し過ぎたことから、会社絡みの
トラブルに見舞われるというもの。実は、『ダイ・ハード』
の前年にトライスターで製作された作品で、ウィリスの映画
主演デビュー作とも言われているもののようだ。     
 そして今回のリメイクでは、リヴォルーションでこの夏公
開したハリスン・フォード、ジョッシュ・ハートネット共演
の『ハリウッド的殺人事件』を手掛けたルー・ピットが製作
を担当し、この脚色もピーター・シーマンとジェフリー・プ
ライスが担当することになっている。          
 脚色以外のスタッフキャストや製作時期などは未定だが、
この作品のリメイク権はコロムビアが所有しており、最終的
にはリヴォルーションと同社の共同製作になりそうだ。  
        *         *        
 新しい話題で、昨年の東京国際映画祭で話題を呼んだブラ
ジル映画『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレ
レス監督が英語作品に初挑戦することが報告され、その作品
としてジョン・ル=カレ原作“The Constant Gardener”の
映画化の計画が発表されている。            
 原作はアフリカのケニアを舞台に、イギリス人外交官が現
地の人権運動に関わっていた妻の謎の死を切っ掛けとして、
西欧製薬会社と現地政府との癒着を暴くというもの。そして
この脚色を、1995年の『007/ゴールデンアイ』を手掛け
たジェフリー・ケインが担当し、主人公のジョスティン・ク
ウェイル役にはレイフ・ファインズの配役も決定して、来年
3月からの撮影が予定されている。           
 因にこの計画、元はマイク・ニューウェルの監督で進めら
れていたものだが、彼が“Harry Potter and the Goblet of
Fire”の監督に決ったためにメイレレスの起用となったよ
うだ。しかし、前作で社会性の強い作品を手掛けたブラジル
人監督には、第3世界と西欧企業の関係を描いたこの原作の
テーマに最適との呼び声も高く、製作会社のフォーカス・フ
ューチャーズが所有する全世界の配給権には、すでにミラマ
ックスやUAなどから強い引合いが来ているということだ。
 なおル=カレ原作の映画化では、2001年に原作者自身の脚
色製作総指揮による『テイラー・オブ・パナマ』が公開され
ているが、今回の映画化は原作者が直接関わっているもので
はないようだ。                    
        *         *        
 前回に続いて、アイザック・アジモフ原作の映画化の情報
で、パラマウントとクルーズ/ワグナーの製作による“End
of Eternity”(邦訳:永遠の終り)の計画が報告された。
 1955年に発表された原作は、アジモフでは珍しい時間テー
マの作品で、時間移動の手段を手に入れた人類は、時間管理
機関を創設して正しい歴史が進むよう操作を行っているが、
その担当官が一人の女性を愛したことから問題が生じるとい
うもの。                       
 そしてこの原作の映画化の計画は数年前から立上げられ、
一時はゲイリー・ゴールドマン脚色で、リドリー・スコット
監督という話もあったようだが、立ち消えになっていた。 
 今回はこの作品の脚色に、“The Singing Detective”と
いう作品のパラマウント配給が決ったキース・ゴードンの起
用が発表されたもの。因にゴードンは、ジェニファー・コネ
リーの主演で2000年に発表した“Waking the Dead”という
作品が高い評価を受けているようだ。          
 なおこの計画で、トム・クルーズの出演は発表されていな
いが、パラマウントでは、“Timeline”に続く時間ものとし
て期待される。                    
        *         *        
 クルーズ/ワグナーの話題のついでに、来年1月からの撮
影が予定されている“Mission: Impossible 3”で、新たな
キャスティングの情報が紹介されている。        
 同作のキャスティングでは、先にヒロインの情報をお伝え
したが、今度は男優で、アンディという名前のチームメイト
が選考されている。役柄は、20代後半から30代前半、すでに
IMFのエージェントで、聡明で運動能力に優れ、コメディ
アンのようなウィットを持ち、コンピューターに対する知識
も豊富。さらにバイカーで、ヒップホッパー、高位の貴族の
称号を持つというもの。                
 こんな奴がいるのかと言われそうだが、役柄ということだ
から、別段本人がこの通りである必要はない。要はこのよう
な雰囲気を持っている俳優が選考されているということだ。
因に、女優の方にはアメリカ訛りが喋れることという条件が
あったが、男優は国籍を問わないということだ。     
 ただし、『ナーク』のジョー・カーハンが監督するシリー
ズ第3作は、最新の製作情報でもトム・クルーズ以外のキャ
スティングは明らかにされておらず、ヒロインの選考も進ん
でいないようで、さらに撮影開始が遅れるという情報もある
ようだ。                       
        *         *        
 クリス・ヴァン=オールズバーグの原作で、CGI/実写
合成による“Polar Express”の映画化を、キャッスルロッ
ク=ワーナーとの共同で完成したばかりのトム・ハンクス主
宰プレイトーンから、さらに絵本の映画化の計画が発表され
ている。                       
 新たに発表されたのは、モーリス・センダク原作“Where
The Wild Things Are”。1963年の文学賞受賞作でもある原
作は、元々キャラクターのユニークさなどで映画化が期待さ
れていたものだが、ユニヴァーサルとの共同で進められてい
るこの計画に、さらに『アダプテーション』などのスパイク
・ジョーンズ監督の契約が発表された。         
 原作の物語は、マックスという名前のいたずら好きの少年
が、夕食を取り上げられた日に、子供の想像力で自分の部屋
をジャングルに変え、怪物や野性の動物を造り出して自分が
その王様になるというもの。              
 この映画化にジョーンズ監督が挑戦する訳だが、元の計画
ではオールCGIで製作されることになっていた映画化は、
ジョーンズ監督の起用で、実写も考慮した体勢に作り替える
ということで、かなりユニークな作品になりそうだ。   
 なお、プレイトーンではもう1本、ワーナーとの共同によ
る“Ant Bully”の映画化の計画も進めており、こちらは、
昨年のアカデミー賞で第1回長編アニメーション作品賞候補
になったパラマウント製作“Jimmy Neutron: Boy Genius”
のジョン・デイヴィス監督で進められている。      
        *         *        
 最後に脚本家の話題を2つ。             
 まずは、ザ・ロック=ドウェイン・ジョンスン主演で計画
されている“Johnny Bravo”の脚本に、マシュー・ベリーと
エリック・エイブラムスのコンビの起用が発表されている。
 カートゥーンネットワークの人気アニメーションから、シ
リーズの大ファンだというジョンスンが自ら主演を買って出
ている今回の映画化は、ワーナーとカートゥーンの共同製作
で進められているが、計画されている物語では、ジョニーが
長く行方不明だった父親を探す展開になるということだ。 
 なお、起用される脚本家コンビは、“Undercover Elvis”
という脚本を発表している他、ヘンスン社が昨年フォックス
で計画した“New Muppet Show”のパイロット版なども手掛
けているそうだ。                   
        *         *        
 もう1本は、以前に紹介した“The Phantom”の再映画化
で、元オリンピック競泳の金メダリストから脚本家に転身し
たメル・スチュワートの起用が発表されている。     
 同名のコミックスの映画化は、最近では1996年に製作され
たビリー・ザーンと、ブレイク前のキャリン・ゼタ=ジョー
ンズの共演作があるが、今回の計画でスチュワートは、舞台
を現代にすることを希望しているそうだ。        
 因に、96年の映画化は舞台を1930年代に設定しているが、
コミックスの設定では、主人公は何代にも渡って人類を守り
続けてきたということで、物語の舞台が現代になることはな
んら問題ないそうだ。                 


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井口健二