井口健二のOn the Production
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2003年10月15日(水) 第49回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回はこんな話題から。               
 1930年代から、第2次世界大戦の戦前戦後を通じて活躍し
たコメディ・チーム“The Three Stooges”(3ばか大将)
の再映画化の計画がワーナーから発表された。      
 『3ばか大将』は、主にモー、ラリー、カーリーの3人を
中心に展開される典型的なスラップスティックコメディで、
60年代には約190本の往年の2巻物の短編作品がテレビにも
登場して人気を博していた。しかし93年、52年に早世したカ
ーリーの跡を継いだジョー・デライタが最後のStoogesとし
て死去し、その歴史は閉じたのだが、それと同時に彼らの業
績を見直す動きも出ていたようだ。           
 そして今回の計画は、98年にキャメロン・ディアス主演に
よる『メリーに首ったけ』などを手掛けたボビー&ピーター
・ファレリー兄弟の脚本、監督で再映画化を進めるもので、
兄弟は、『メリー…』を製作する以前の97年頃から、すでに
この計画を公表し、チャンスを狙っていたものだ。因に、こ
の計画にはデライタの遺族も参画しているようだ。    
 しかしこの映画化権については、元々The Three Stooges
の作品の版権はコロムビア=ソニーが所有しており、一方、
ファレリー兄弟はフォックスと優先契約を結んでいるために
実現が困難となっていた。ところが、ソニーが諸般の事情で
映画化を断念し、それをワーナーが引き継ぐことになった。
そしてファレリー兄弟には、2001年にクリス・ロック主演で
ワーナーで製作された“Osmosis Jones”を手掛けたなどの
実績もあって、計画が実現可能となったものだ。     
 なお兄弟は、今年の冬から春にかけて脚本家のマイク・セ
ローネと共にThe Three Stoogesの3人のキャラクターを現
代に甦らせた脚本を完成させており、つまり今回の発表は、
その脚本に、ワーナーから正式にゴーサインが出たというも
のだ。またワーナーの発表では、撮影は来年早期に行われ、
公開は05年夏とされている。              
 正直なところ、僕は『3ばか大将』には、同様のコメディ
チームの『マルクス兄弟』などより過激で暴力的だった印象
を持つが、アメリカでの人気はかなり根強いようだ。その感
覚が現代にどう甦るかも気になるところだ。因に映画化は、
伝記ではなく、当時のThe Three Stoogesのキャラクターを
再現したフィクションの映画になるということだ。    
        *         *        
 続いては続編の情報。                
 まずはヴィン・ディーゼルの主演でヒットした『XXX』
の続編にディーゼルは出演せず、替って同じく黒人スターの
アイス・キューブが主演。また監督を、ロブ・コーエンに替
って『ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリが担当する
ことが発表された。                  
 この続編に関しては、ディーゼルがオリジナルの製作まで
勤めた作品であるだけに、彼の再演が期待されていたものだ
が、実は“XXX 2”と名付けられている続編の脚本が、オリ
ジナルのようなEXスポーツを背景と言うよりも、ワシント
ンが舞台のスリラー的要素の高いものに出来上がったという
ことで、敢えてディーゼルは主演を降り、コミカルからシリ
アスまでこなせるキューブの配役を決めたということだ。 
 なお、物語の基本コンセプトでは、「XXX」というのは
アメリカの刑法で3回罪を犯すと重罰に処すという3ストラ
イク制度に由来したもので、今回のキューブの役柄もその3
度目の罪を犯して、刑務所に入るかエージェントになるかの
選択を迫られるという設定。その辺でシリーズとして、まっ
たく問題はないということだ。             
 脚本は、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの
共演で進められることになった“Mr.and Mrs.Smith”のサイ
モン・キンバーグが担当。撮影は来年夏に行い、公開は05年
が予定されている。                  
 因にディーゼルは、すでに『ピッチ・ブラック』の続編の
“The Chronicles of Riddick”の撮影を完了しているが、
彼の次回作としては、『XXX』と同じリヴォルーションの
製作で、『グラディエーター』のデイヴィッド・フランゾー
ニの脚本による紀元前3世紀が舞台の歴史大作“Hannibal”
への主演が期待されているようだ。           
        *         *        
 もう1本続編は、マット・デイモン主演の『ボーン・アイ
デンティティー』の続編“The Bourne Supremacy”で、共演
者に、『ロード・オブ・ザ・リング』でエオメル役を演じる
カール・アーバンが交渉されていることが報告された。  
 このシリーズでは、以前にも紹介したようにロバート・ラ
ドラムの原作は3作あり、今回の作品はその第2作に当たる
もの。舞台は中国で、要人暗殺の犯人とされたジェイソン・
ボーンがCIAに呼び戻され、世界の平和と自分自身のアイ
デンティティーに掛けて真犯人を探り出すというお話。なお
アーバンの役柄は、主要な悪役と紹介されている。    
 また、すでに発表されている計画では、主人公のジェイソ
ン役にはデイモンが再登場し、舞台出身のヴェテラン女優ジ
ョアン・アレンの共演も報告されている。脚本は第1作を手
掛けたトニー・ギルロイ、監督はバズ・ラーマンに替ってポ
ール・グリーングラスが担当することになっている。撮影は
12月に開始されるということだ。            
 なおアーバンは、上の記事でも紹介したディーゼル主演の
“The Chronicles of Riddick”にも出演しているそうだ。
        *         *        
 またまたコミックスの映画化で、ワーナーからダグ・マイ
アーズ原作のカルトコミックス“The Exes”の映画化を、ク
リストファー・ノーランの監督で進めることが発表された。
 『メメント』『インソムニア』で高い評価を得ているノー
ランは、ワーナーではすでにクリスチャン・ベイルの主演で
“Batman 5”を監督することも発表されているが、今回の計
画はその前に製作されるという情報もあるようだ。    
 お話は、未来の企業が実権を握る社会でのビジネス戦争を
描いたものということで、この原作から、クリストファーの
兄弟で『メメント』の原案も提供したジョナサン・ノーラン
が脚色を担当することになっており、その作業はただちに始
められるということだ。                
 因にジョナサンは、クリストファー・プリーストの原作で
ノーランの監督が予定されている“The Prestige”の脚色も
手掛けており、魔術師の戦いを描いたこの作品の映画化は、
ワーナーとディズニーの共同製作で“Batman 5”に続けて行
われるとされていて、この文脈だと来年2月1日からの撮影
が予定されている“Batman 5”の前に本作ということになり
そうだが・・・。                      
 なお、この作品の製作には、『ハリー・ポッター』シリー
ズのデイヴィッド・ハイマンと、リヴォルーションで上記の
“Mr.and Mrs.Smith”も手掛けるアキヴァ・ゴールズマンが
共同で当っており、ワーナーの意気込みが感じられる。  
        *         *        
 お次はヴィデオゲームの映画化で、80年代に発表されたヴ
ィデオゲームでは古典とも言える作品“Spy Hunter”を、プ
ロレスラーのザ・ロックことドウェイン・ジョンスンの主演
で映画化する計画がユニヴァーサルから発表されている。 
 ジョンスンは、01年の『ハムナプトラ2』に続いて、昨年
は『スコーピオン・キング』に主演し、今9月末に全米公開
された新主演作の“The Rundown”も初登場第1位を獲得す
るなど、いずれもユニヴァーサルで出演した作品が好調を極
めているが、次回作にはMGM配給で73年に製作された現代
アクション“Walking Tall”のリメイクが予定されている。
 そのジョンスンのユニヴァーサルでの4本目の作品として
ゲームの映画化が計画されているもので、ユニヴァーサルで
は製作費9000万ドルを予定し、05年夏のテントポール作品と
する意向のようだ。因に、前3作はいずれも5月と9月の公
開でテントポール作品ではなかった。          
 なおユニヴァーサルでは、昨年の夏に当初からジョンスン
の主演を想定してゲームの発売元のミドウェイゲームズ社か
ら映画化の権利を獲得し、準備を進めていたもので、映画化
のストーリーは元戦闘機パイロットの主人公が、ハイテク搭
載のG-6155インターセプター車を駆使して、スパイや暗殺者
との戦いを続けるというものになる。そしてこの脚本は、今
年の夏公開された『ワイルド・スピード2』を手掛けたマイ
クル・バンディットとデレク・ハースにすでに発注されてい
るということだ。                   
 監督は未定だが、撮影は来年の春に行われることになって
いる。                        
        *         *        
 ゲームの話題の流れで、第17回で紹介した日本製ヴィデオ
ゲーム『Zero〜零』(アメリカ題名:Fatal Frame)の
映画化に、新たに脚本家として『ザ・コア』のジョン・ロジ
ャースの起用が発表された。              
 この計画は、『ザ・リング』に続くジャパニーズホラーの
映画化としてドリームワークスが進めているもので、昨年の
5月にゲーム会社との間で契約が結ばれ、今年の2月には、
スクリーンジェムズ社に“Streaming Evil”という脚本を契
約したロバート・ファイヴォレント、マーク・R・ブリンカ
ーという脚本家の契約も報告されていた。なお、このときロ
ジャースは製作者として名前が挙がってたものだ。    
 しかし結局、ロジャース自身が撮影台本を書くことになっ
たようで、現在その作業が進められているということだ。そ
してロジャースは、今回の脚本は日本を舞台にした内容にす
るとし、「アメリカの観客に馴染みのない、日本文化に根差
した幽霊を登場させ、ちょっと古風な感じのお化け屋敷映画
を実現したい」と抱負を語っている。          
 なお、監督は未定だが、脚本の完成を待って決定されると
いうことで、その後は直ちにキャスティグなど撮影に向けた
作業に入るとされている。また、原作ゲームでは、今年11月
に続編(アメリカ題名:Fatal Frame: Crimson Butterfly)
が発表されることになっており、今回の映画化もシリーズの
第1作として計画されているということだ。       
 因にロジャースは、現在ハル・べリー主演で撮影中のワー
ナー作品“Catwoman”の脚本も手掛けている。      
        *         *        
 ジャパニーズホラーの話題をもう一つ。        
 『リング』の中田秀夫監督が昨年1月に発表した『仄暗い
水の底から』のハリウッドリメイクが、“Dark Water”の題
名で、ディズニーと契約を結んでいるペンデモニウムという
プロダクションで計画され、その監督に、『セントラル・ス
テーション』のウォルター・セイルズの起用が決定された。
 ブラジル映画の『セントラル…』は、浮浪児の少年を彼の
父親の許に送り届けようとする女性が、いろいろな困難に立
ち向かって行く姿を描いており、一種の母子ものに近い感覚
も持っていることから、その意味では母親と娘を中心にした
『仄暗い…』の映画化には好適といえそうだ。      
 そのセイルズ監督の最新作は、スペイン語でチェ・ゲヴァ
ラの若き日の冒険を描いた“The Motorcycle Diaries”の撮
影を完了したところで、この作品は現在ポストプロダクショ
ン中ということだ。                  
 そして“Dark Water”の撮影は来年1月に予定され、主演
には『ハルク』のジェニファー・コネリーが配役されて、ニ
ューヨークとトロントで撮影が行われることになっている。
 なお、この他に中田監督関連では、99年公開の『カオス』
のリメイクがユニヴァーサルで計画されており、また、昨年
ドリームワークスが製作公開した『ザ・リング』の続編の計
画も進行中ということだ。一方、中田監督本人もMGMから
“True Believers”という作品の監督を要請されており、作
品に続いて監督のハリウッド進出も実現するようだ。   
        *         *        
 お次は続報で、第43回で紹介したコロムビア製作、ダン・
ブラウン原作の“The Da Vinci Code”の映画化の計画に、
監督ロン・ハワード、製作ブライアン・グレイザー、脚色ア
キヴァ・ゴールズマンの、『ビューティフル・マインド』で
オスカーを独占したトリオの参加が発表された。     
 この原作は、以前にも紹介したように、記号学の大学教授
を主人公にしたシリーズの第2作で、本作では美術館長殺人
事件を発端にダ=ヴィンチの絵画に隠された謎を解明して行
くというもの。そしてこの原作は、今年の春に出版された後
26週間に亙って全米ベストセラーリストに登場し、その多く
の週で第1位に輝いている大ベストセラーということだ。 
 またこの計画では、9月にソニー・ピクチャーズの最高責
任者の座を退いたジョン・コーリーが共同製作者として名を
連ね、新たに一製作者となってソニーと契約したコーリーの
再出発の第1作となるもので、その意味でも注目の作品とな
っている。                      
 なお今回の計画は、上記のトリオ+ラッセル・クロウの主
演で来年3月1日の撮影開始が発表されている“Cinderella
Man”の次のハワード監督作品として予定されており、早け
れば来年後半の撮影という可能性もあるようだ。     
 因に、ハワード、グレイザーが経営するイマジン・ピクチ
ャーズは、本来はユニヴァーサルに本拠を置いているが、最
近は各社との距離を調整しているようで、ハワードの監督最
新作で11月19日公開の“The Missing”はアメリカではソニ
ー配給、また2人が製作を務める年末公開の“The Alamo”
はブエナ・ヴィスタの配給になっている。        
 さらに、グレイザーの製作で“The Incredible Shrinking
Man”“Fun With Dick and Jane”のリメイク2作もソニー
の配給になっているようだ。              
        *         *        
 後半はリメイクの情報をまとめて紹介しよう。まずは新し
い計画を2本。                    
 1本目は、65年製作のオットー・プレミンジャー監督作品
“Bunny Lake Is Missing”(バーニーレイクは行方不明)
をリーズ・ウェザスプーンの製作主演でリメイクする計画が
コロムビアから発表されている。            
 オリジナルは、ローレンス・オリヴィエとキャロル・リン
リーの共演で、バニーという少女が行方不明になったとその
母親から訴えがあり、警察が動くが足取りが掴めない、しか
も母親の証言がだんだんあやふやになり・・・というもの。
映画はイギリスで撮影され、同性愛者など怪しげな登場人物
が次々に登場する不思議なムードの作品と言われている。 
 この作品を、ウェザスプーン主宰のタイプAフィルムスの
製作で再映画化するもので、脚本、監督などは未定だが、元
フォックスのトップで01年に独立し、最近ソニーと製作契約
を結んだマーク・ゴードンのプロダクションが第1回作品と
して共同製作することも発表されている。        
 因に、ゴードンは第23回で紹介したヴィデオゲーム映画化
“Return to Castle Wolfenstein”の製作も担当している。
        *         *        
 2本目は、69年にユニヴァーサルで製作されたコメディ作
品“The Love God?”(日本未公開)のリメイクが、ユニヴ
ァーサルとイマジンの共同で行われる。         
 オリジナルは、一時期リメイクの情報もあった『秘密兵器
リンペット』などのドン・ノッツの主演で、バードウォッチ
ング雑誌の編集者だった主人公が、ある日ヌード満載の男性
雑誌の企画を思いつき・・・という、Playboy誌のヒュー・
ヘフナーを髣髴とさせるお話。『禁断の惑星』などのアン・
フランシスが共演している。              
 この作品を、マ−ティン・ローレンス主演の『ビッグ・マ
マス・ハウス』などのダリル・クォールスの脚本で現代化し
てリメイクするもので、製作スケジュールなどの詳細は不明
だが、新しい脚本にはここ30年ほどの時代背景の変化がどの
ように反映されるかも楽しみだ。            
 製作は、ブライアン・グレイザーが担当している。   
        *         *        
 後は続報で、バート・ランカスター主演で68年に映画化さ
れた“The Swimmer”(泳ぐひと)のリメイクが以前から計
画されていたが、その製作、主演にアレック・ボールドウィ
ンの参加が発表され、さらに脚本、監督をジョン・ミリウス
に依頼していることが公表された。ジョン・チーヴァースの
短編小説の映画化で、オリジナルの内容は、会社重役の主人
公が、ある日近隣の邸宅のプールを泳ぎながら家路に着くこ
とを思いつくが、それぞれの家にはいろいろな問題があり・
・・というもの。現代社会を鋭く描いた作品として知られて
いる。撮影は、来年の春〜夏に予定されている。     
 もう1本は、上にも書いた77年にジョージ・シーガル、ジ
ェーン・フォンダ共演で映画化された“Fun With Dick and
Jane”(おかしな泥棒/ディックとジェーン)を、ジム・キ
ャリー、キャメロン・ディアスの『マスク』コンビでリメイ
クする計画で、一時予定されたバリー・ソネンフェルド監督
の後任に、『ギャラクシー・クェスト』のディーン・パリゾ
ット監督の起用が発表されている。オリジナルは、上流階級
に属する主人公の夫婦が、ある日泥棒の才能に目覚めて・・
・というもの。まあこのテーマも一種の現代の病巣みたいな
ものだが、こちらはコメディで映画化される。      
 なおこの2本は、いずれもコロムビア=ソニーの製作。 
        *         *        
 最後に、ちょっと気になる話題で、M・ナイト・シャマラ
ン監督で進められている新作の題名が、“The Village”に
変更になった。これは第47回で紹介したように先に発表され
ていた“The Woods”という題名が他社で使われていたため
だが、他にも、ロバート・アルトマン監督が予定していた新
作の題名“Ultraviolet”が前回紹介したミラ・ジョヴォヴ
ィッチ主演作品との関係で使用できなくなったということも
あり、もっと事前に調査でいないものかという感じだ。少な
くともシャマラン作品の題名については、僕でも気づいてい
たくらいなのだから。                 


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