井口健二のOn the Production
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2003年10月01日(水) 第48回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回は、いよいよ動き始めたこの話題から。      
 第37回で紹介したピーター・ジャクスン監督による“King
Kong”のリメイクが本格的に始動した。         
 この計画では、まず8月上旬にジャクスンとユニヴァーサ
ルとの間で、契約金2000万ドル、若しくは興行収入の20%と
いう契約が結ばれた。監督の契約金で8桁というのは、M・
ナイト=シャマラン、スティーヴン・スピルバーグ、ロバー
ト・ゼメキスらが先に達成しているが、いずれも1番上の桁
の数字は1だったということで、2の大台に達したのは初め
てのようだ。                     
 ただし、この契約金には脚本料も含まれているということ
で、ジャクスンは“The Lord of the Rings”も共同で脚色
したフラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエンにも契約金
を分配するとしている。なおウォルシュ(女性)は、現在ニ
ュージーランドでジャクスンと生活を共にしているそうだ。
 また、今回の計画では、ロケーション及びセットの撮影か
ら視覚効果までの全作業をニュージーランドで行うとしてい
るが、それらの予算は別に建てられることになっている。そ
の場合に、使われる撮影所及び視覚効果工房はいずれもジャ
クスンが経営にタッチしているもので、その分の収益は別に
入ることになりそうだ。                
 物語の始まりは大恐慌時代のニューヨーク。ブロードウェ
イ女優のアン・ダーロウは、仕事にあぶれていたところを、
友人で探検家のカール・デンハムに誘われ、南太平洋の孤島
へとやってくる。そこで彼女らは巨大な猿に遭遇し…、とい
うことで、今回の計画では、1976年のリメイクのような現代
化はせず、時代背景を1933年製作のオリジナルの時代に戻し
て、その雰囲気の中での物語の展開を考えているようだ。 
 そしてジャクスンは、この主人公の女優アン・ダーロウ役
をナオミ・ワッツにオファーしていることを表明した。  
 この役は、オリジナルでフェイ・レイが演じ、リメイクで
はジェシカ・ラングが演じているが、レイに至っては、「96
分間(上映時間)叫びっぱなし」と評されたもので、この役
を、ハリウッドリメイク版“The Ring”の主演で注目された
ワッツがどのように演じてくれるのかも楽しみだ。    
 なお、モデル出身で、後にアカデミー賞の助演女優賞、主
演女優賞を獲得するジェシカ・ラングは、ディノ・デ=ラウ
レンティス製作、ジョン・ギラーミン監督による76年作品で
映画デビューを飾ったものだ。             
 撮影計画は未発表だが、ユニヴァーサルは05年クリスマス
シーズンの公開を予定している。            
 因にこの話題、アメリカでは「“The Rings”の監督が、
“The Ring”の女優を希望」というように報じられていた。
        *         *        
 お次はメル・ギブスンの話題で、イエス・キリストの最後
の12時間を新解釈で描いて論議を呼んでいた監督作品“The
Passion”に対しては、キリスト教の総本山ヴァティカンの
お墨付きも出て一安心のギブスンに、新しい主演作品の計画
が発表されている。                  
 作品の題名は“Under and Alone”。2000年に摘発された
不法バイカーグループ・モンゴルスに対する潜入捜査に従事
したATF(アルコール・タバコ・火器取締り局)の捜査官
ビル・クィーンを描いた実話に基づく物語で、彼はサン・フ
ェルナンド・ヴァレーを中心に活動していたグループの支部
に2年間潜入して徐々にその地位を上げ、00年5月に約40人
の容疑者を、無許可銃、コカイン、及び盗難バイクの所持で
摘発した捜査の証拠を集めたというものだ。       
 この物語は、アメリカではテレビ番組などでも広く取り上
げられたが、現在はクィーン自身が上記の題名の自伝を執筆
中ということで、この自伝はランダムハウス社から出版され
ることになっている。そしてその自伝に基づく映画化権を、
ギブスンが主宰するプロダクションのイコン社が獲得し、ギ
ブスンの主演でワーナーで製作する計画だ。       
 なお製作状況は、すでに脚本の執筆を、ナショナル・ジェ
オグラフィックの製作でディズニーが配給するリチャード・
ギア主演作品“Emperor Zehnder”や、ユニヴァーサルでビ
ル・コンドンが監督する“Suger Kings”など、実録ものの
脚本を数多く手掛けているネッド・ゼマンとダニエル・バー
ンズのコンビが、6桁後半〜7桁中盤($)の金額で契約し
たことが発表されている。               
 因に、ギブスンでバイクものというと、フォックス製作に
よる“Mad Max”の新作が先に計画されていたが、今年6月
にナミビアで予定されていた撮影は、イラク戦争勃発の影響
で延期が発表されたままで、その後音沙汰が無いようだ。 
        *         *        
 続いては最新の話題で、9月第3週の全米興行で第1位を
記録したソニー傘下のスクリーン・ジェムズ(SG)社配給
のホラーアクション作品“Underworld”の続編の計画が発表
されている。                     
 この作品は、昨年のミラ・ジョヴォヴィッチ主演『バイオ
ハザード』に続いて、SGが展開する女性中心のアクション
路線に載ったもので、お話は、女吸血鬼の主人公が、敵対す
る狼男の1人と恋に落ちてしまうという、シェークスピアの
『ロミオとジュリエット』のホラー版といった作品。元々は
レイクショアで進められていた計画を、脚本段階でSGが契
約し、アメリカ国内及び海外の配給権を獲得していた。  
 そして9月19日に全米公開され、第1週の週末興行収入で
2180万ドルを稼ぎ出している。この金額は超大作並みとは行
かないものの、いわゆるジャンルムーヴィでは充分に期待に
応えるもの。SGの作品では『バイオハザード』を上回って
歴代最高の成績となっている。そしてその続編の計画が早く
も発表されたものだ。                 
 その発表によると、続編はSGとレイクショアの両社が共
同で製作するもので、すでに前作を手掛けた脚本のダニー・
マクブライドと、脚本監督のレン・ワイズマンが契約を結ん
だということだ。また、前作に主演したケイト・ベッキンセ
イルは、未だ契約はしていないものの同じ役を演じることに
は強い興味を示しているということで、会社側も出来るだけ
早い契約と続編の製作を望んでいる。          
 さらにSG側は、第1作以前の物語も希望しているという
ことで、こちらは第3作としての製作が期待されている。そ
れが作られると全体として3部作の構成となるようだ。  
 因に、SGの女性アクション路線では、すでに『バイオハ
ザード』の続編の“Resident Evil II”が、ジョヴォヴィッ
チ主演で製作されている他、同じくジョヴォヴィッチ主演で
近未来の上海を舞台にした吸血鬼ものの“Ultraviolet”、
さらに女子高生を主人公にしたスパイ・アクションコメディ
“D.E.B.S.”などの計画が進められている。       
        *         *        
 次もホラー映画の話題で、1979年にMGM配給で公開され
た“The Amityvill Horror”(悪魔の棲む家)の実話に基づ
く物語を、再度映画化する計画が発表された。      
 この物語は、元々は1974年にニューヨーク州アミティヴィ
ルに所在する家で起きた親殺し事件に端を発し、その後に生
じた数々の超自然的な出来事を調査した研究者が、その原因
を家に住み着く悪霊の仕業として77年に発表した書物に基づ
くもので、第1作の映画化はスチュアート・ローゼンバーグ
監督、ジェームズ・ブローリン、マーゴ・キダー、ロッド・
スタイガーの出演で行われている。           
 そしてこの作品は、2000年までに、劇場用映画やTVムー
ヴィ、ダイレクト・ヴィデオなどで計8作のシリーズが発表
されているということだ。               
 これに対して今回の計画を発表しているのは、エメット/
ファーラ・フィルムスというプロダクションで、発表による
と、先に“The Amityvill 2000”というTVドキュメンタリ
ーを発表しているダニエル・ファランドを脚本家に招いて、
新たな恐怖物語を作り出すとしている。因にファランドは、
95年製作の“Halloween: The Curse of Micheal Myers”の
脚本も手掛けているそうだ。              
 今回の計画とMGM作品との関係がどのようになっている
のか、報道では明らかにされていなかったが、8本作られた
シリーズでは、第1作以外は只のお化け屋敷ホラーになって
いるようで、今回の計画で先にドキュメンタリーを発表して
いる作家を招くことは、原点に立ち返るという意味では面白
くなりそうだ。                    
 なおエメット/ファーラ・フィルムスでは、ティム・ハン
ター監督、レイ・リオッタ、ウィレム・デフォー、ミシェル
・ロドリゲス共演による“Control”という作品の撮影を、
9月中旬に開始したばかりということだ。        
        *         *        
 またまたユース・ファンタシーの計画が報告された。  
 今回の紹介は2本で、まずはニューラインから“Titans”
という計画が発表されている。             
 この作品は、古代ギリシャを舞台に、未来のゼウスや、ヘ
ラや、ポセイドンとなる若者たちの成長を描くというもの。
なんとも壮大な構想だが、これを『ハルク』のマイクル・フ
ランスの脚本で映画化するという計画だ。        
 元々このアイデアは、『デアデビル』を手掛けた製作者の
ゲイリー・フォスターと監督のマーク・スティーヴ・ジョン
スンが主宰するホースショア・ベイ・プロダクションで、フ
ォスターのアシスタントを勤めるエリル・コクラムという女
性が思いついたもの。神になる運命の若者たちが、先に地球
を支配していた巨人族タイタンとの戦いを通して、神として
の自覚を持って行く姿を描くということだ。       
 そしてこの脚本を、『ハルク』の脚本家が手掛けるという
訳だが、『ハルク』も巨大な能力を持ちながらそれを支配で
きない男の物語を丁寧に描いていたということで、これは結
構当たりのような感じがする。因にフランスは、『007ゴ
ールデンアイ』と『クリフハンガー』も手掛けている。  
 なお、監督が予定されるジョンスンは、先にソニー製作、
ニコラス・ケイジ主演の“Ghost Rider”の映画化が来年春
の開始で予定されており、また『デアデビル』の続編などの
計画もあって、今回の作品の実現は少し先になりそうだ。 
        *         *        
 もう1本は原作もので、イギリスの作家デイヴィッド・ア
ーモンドが1998年に発表した“Skellig”の映画化権を、フ
ェニックスピクチャーズが獲得したことが発表されている。
 この原作は、この年のChildren's Book of the yearを、
『ハリー・ポッター』を押さえて受賞した他、カーネギー・
メダルにも輝くなど高い評価を受けている。内容は、スケリ
グと名乗る謎の生物が、1人の少年や彼の新しい友達、また
幼い妹などに変身して騒動を起こすということで、一応はフ
ァンタスティックな内容のもののようだ。        
 さらにこの原作は、今年の11月にアーモンド自身の脚色、
『ピーター・パン』などのトレヴァー・ナンの監督で、ロン
ドンのヤングヴィック劇場に掛かることにもなっている。 
 そして映画化では、脚色をBBC出身のイレーナ・ブリグ
ナルが担当し、『マックス・ヘッドルーム』のアナベル・ジ
ャンケルが製作監督を手掛けることになっている。因にジャ
ンケルは、『マックス・ヘッドルーム』の他に、88年にメグ
・ライアン、デニス・クェイドが共演した『D.O.A.』
と、93年に『スーパーマリオ』を監督しているが、これらの
作品はいずれもロッキー・モートンとの共同監督になってい
る。しかし今回は単独で手掛けるようだ。        
 また、ジャンケルは、現在もテレビでCGIと実写の合成
シリーズを手掛けているということで、本作にもその方面の
手腕が期待されているのだろう。            
        *         *        
 第45回で“The Longest Yard”のリメイクの情報をお伝え
しているが、そのオリジナルに主演したバート・レイノルズ
が、彼の出世作『脱出』で演じた役を再び演じる計画が発表
された。                       
 といってもこの計画、実はオリジナルをパロディ化したよ
うな“Without a Padle”という作品にゲスト的に登場する
もので、都会人の3人組がキャンプ旅行でやってきた森の中
で恐ろしい体験をするという物語に、世捨て人のような山男
の役で現れるということだ。しかし報道では、72年作品の役
と書かれており、ということは、彼はあのまま山を下りなか
ったということらしい。                
 そして今回恐怖の旅を体験するのは、『オースティン・パ
ワーズ』などのセス・グリーンと、『スクービー・ドゥー』
のマシュー・リーランド、それにMTVのコメディシリーズ
“Punk'd”でアシュトン・カッチャーらと共演しているダッ
クス・シェパード。                  
 この内、シェパードの風貌は不明だが、後の2人の雰囲気
では『脱出』のジョン・ヴォイド、レイノルズ、ネッド・ビ
ーティらに比べて明らかにひ弱な感じの彼らが、いったいど
んな冒険を繰り広げるかも面白そうだ。         
 監督は、『リトル・ニッキー』のスティーヴン・ブリル。
パラマウントの製作で、9月末にニュージーランドで撮影が
開始されている。                   
        *         *        
 久しぶりにテレビシリーズからの映画化の話題で、1980年
〜88年にCBSで放送されたトム・セレック主演のアクショ
ンシリーズ“Magunam P.I.”(私立探偵マグナム)の映画化
を、ロン・ハワードと共にイマジンを経営するブライアン・
グレイザーが進めていることが公表された。       
 オリジナルの物語は、元海軍情報士官のトーマス・マグナ
ムが、ちょっと変わり者の不動産王の保安責任者として雇わ
れる一方、私立探偵となって愛車の308GTSフェラーリを駆っ
て活躍するもので、かなり派手目のアクション作品となって
いる。因に、声だけの出演の雇主ロビン・マスターズのオリ
ジナルの声は、オースン・ウェルズが担当していたそうだ。
 この作品を今回は、『オースティン・パワーズ』の第2、
第3作の脚本をマイク・マイヤーズと共に手掛けたマイクル
・マクルーアスの脚本で進めるもので、製作にはグレイザー
と共に、シリーズの共同立案者だったドナルド・ベリサリオ
も参加している。                   
 なおこの計画では、一時期、セレックの大ファンを公言し
ていた作家のトム・クランシーがかなり熱心に映画化を目指
していたことがあったということで、その時は実現しなかっ
たが、今回はイマジンとユニヴァーサルの共同製作でようや
く実現に漕ぎ着けたというものだ。           
 この他のスタッフ・キャストは未定だが、最近、テレビシ
リーズからの映画化にちょっと勢いがなくなっているので、
ここらで一発しっかりした作品を決めてもらいたいものだ。
        *         *        
 後半は短い情報をまとめておこう。          
 まずは、『サラマンダー』のロブ・ボウマン監督が、第2
次大戦中に失われた財宝を追って南太平洋で繰り広げられる
冒険映画を手掛けることが発表された。作品の題名は“The
Last Buffalo Hunt”というもので、内容は、冒険仲間のグ
ループが、戦争中に失われた財宝の後を追う内に、傭兵部隊
に遭遇したり、怒り狂う原住民の部族や政府の殺し屋に命を
狙われるというお話。前作でも、かなり極限状態の冒険をう
まく描き、傭兵部隊的な登場人物を結構良い雰囲気で描いて
いたボウマン監督の腕に期待したいところだ。製作は、オリ
ヴァ・ストーン監督の“Alexander the Great”なども手掛
けているインターメディア。              
 『ファイト・クラブ』の脚本を執筆したジム・ウールスが
独自のプロダクションを設立し、ハイド・パークとの提携に
よる第1回作品の計画が発表されている。計画されている作
品は“Hard Hearts”という題名で、内容は、賞金稼ぎのカ
ップルが自らの結婚式を計画している間に、彼らが狙う最も
危険なターゲットを追いつめるというもの。もちろんウール
スの脚本で、内容的にはかなりコミカルな作品のようだ。撮
影は来年の春に行う予定で、監督や出演者などは未定だが、
製作もウールスが手掛けることになっている。      
 ウィリアム・フリードキンと共に『ハンテッド』を手掛け
た脚本家のアート・モンテラステリが、“Silver Strike”
という作品をフォックス2000と契約している。この作品は、
コマーシャル監督のジョン・ベニトが長編デビューを飾る予
定のもので、軍隊の1団が東ヨーロッパの戦線で戦う内、彼
らが対しているのが狼男の集団であることに気づくというも
の。詳細な計画は不明だが、吸血鬼に続いて今度は狼男が、
ちょっとブームになってきそうだ。           


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井口健二