井口健二のOn the Production
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2003年08月16日(土) サンダーパンツ、死ぬまでに・・、ジョニー・E、ティアーズ・オブ・・、レッド・サイレン、戦場のフォトグラファー、S.W.A.T.

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『サンダーパンツ』“Thunderpants”          
91年にキアヌ・リーヴスが主演した『ビルとテッドの地獄旅
行』を監督。この作品は続編だったがオリジナルより高い評
価を受けたピーター・ヒューイットの02年の新作。    
生まれたときからオナラが止まらない小学生と、多分天才だ
が周囲からは浮きまくっている発明家の小学生。この典型的
ないじめ対象の2人が、最後はどでかいことをやってしまう
というキッズムーヴィ。                
パトリックは、激しいオナラのために父親は家出し、母親は
アル中、姉は口も利いてくれない。小学校ではいじめの対象
で、校長までもがそのことをなじる。そんな彼の唯一の親友
は発明家のアラン。実はアランは嗅覚障害者でオナラは平気
なのだ。                       
そんなパトリックの夢は宇宙飛行士。しかしUS宇宙センタ
ーの所長は、宇宙飛行士になるには天賦の才能が必要だと言
っている。パトリックにとってその才能とは?      
ある日、アランは発明の傍らでサンダーパンツを作ってくれ
る。それはオナラを閉じ込めランチボックス風の容器に回収
する装置。それもいじめの対象になってしまうのだが、そこ
から発展してオナラで飛ぶ乗物サンダーパンツ2号が作られ
る。                         
ところがその直後、アランは何者かに連れ去られてしまう。
一方、パトリックは、オナラの発する音がテナーの最高音域
と同じだと気付いた世界2番目のテナー歌手によって、彼の
最高音域の代役として世界ツアーに出る。それはアランを探
す旅でもあった。                   
しかし代役がばれて大変なことになりそうになったとき、ア
ランを連れていったのと同じ男たちが現れる。      
何せテーマがオナラだから、一朝一夕に作られたら見るに耐
えないものになる。しかしこのテーマを完全に物語として消
化しているのだから、これは見事としか言いようがない。も
ちろんギャグとして扱われている部分も有るが、ほとんどは
ドラマになっているのだ。               
主演は、パトリック役に新人のブルース・クックと、アラン
役は『ハリー・ポッター』のロン役のルパート・グリント。
クックの自然体の演技も良いが、さすがにグリントが芸達者
なところを見せる。                  
これを、ネッド・ビーティはじめ大人の演技陣がしっかりと
受けとめる。大人の俳優たちも衒うことなく大まじめで演じ
てくれるところが、イギリス映画の厚さを感じさせる。  
もちろん御都合主義の物語ではあるけれども、監督たちの才
能と、何より映画に対する愛情の感じられる作品だった。な
お、エンドクレジットの最後にSpecial Thanks to としてキ
ーラ・ナイトレイの名前が出ているが、一体何をしたのだろ
う。                         
                           
『死ぬまでにしたい10のこと』“My Life Without Me” 
『トーク・トゥ・ハー』のペドロ・アルモドバル監督が製作
総指揮を勤めたヒューマンドラマ。           
主人公は、23歳の女性。17歳の時に初対面の男性の子供を妊
娠して結婚。その後2人目も誕生し、夫に愛されていること
は判っているが、その夫は現在失業中。そして彼女は大学構
内の夜間の清掃員をして家計を支えている。       
そんな夫に、久々に長期の仕事が見つかる。しかし同時に、
彼女は悪性の腫瘍に蝕まれていることが判明し、余命が2カ
月であると告知される。このとき彼女は、病気のことは夫に
も告げず、最後の2カ月を精一杯生きることを決意する。 
彼女は、死ぬまでにやりたいこととして、今は幼い娘たちが
18歳になるまでの誕生日ごとに贈る言葉を録音することや、
夫以外の男と愛し合うなど10の事柄を決める。      
ほっておけば、お涙頂戴のめろめろになりそうなお話。しか
し脚本家でもある監督のイザベル・コレットは、ニヤリとさ
せるポップシンガーや女優の話題などを配し、愁嘆場を作る
ことなく見事にまとめ上げる。             
特に、夫以外の男と愛し合うという辺りが女性作家らしさと
いう感じで、この男性との関係を通じて、単に死んでしまう
ことだけはでない大きな物語に膨らませて見せる。    
さすが『トーク・トゥ・ハー』の監督が認めた才能だけのこ
とはあるという感じがした。              
                           
『ジョニー・イングリッシュ』“Johnny English”    
『ミスター・ビーン』でお馴染みローワン・アトキンスン主
演のスパイパロディ。                 
『ミスター・ビーン』のお笑いは、はまれば強烈だが、滑る
とどうしようもなくなってしまうかなり際どいものがある。
今回の作品も、すでに何本もある007のパロディで、その
意味ではかなり際どい作品だ。             
ジョン・マルコヴィッチ扮するフランスの富豪は、実は200
年前に本来なら英国王室を継ぐところをフランスに渡ってし
まった一族の末裔。その男が王位を狙っていろいろな計画を
立てる。それをMI−7の見習いスパイのイングリッシュが
阻止するという物語。                 
正直に言って、アトキンスンのベタなギャグの連発だったら
どうしようと心配していたのだが、今回はそういう部分はあ
まりなく、かなり正統な笑いで楽しませてくれた。    
特に、物語の脇を固める部下の男とインターポールの女性捜
査官がかなり優秀な設定で、ある意味主人公のイングリッシ
ュはそれに踊らされているような感じなのが、納得しやすか
ったというか、見ていて引いてしまうところが少なかった。
その一方で、マルコヴィッチが見事な怪演を見せてくれる。
結末はかなりいい怪訝だが、そこをマルコヴィッチが無理矢
理押し切ってしまっている雰囲気もあり、このキャスティン
グはお見事という感じだ。               
アトキンスンであるから、当然臭い一人芝居も連発するが、
それもそれぞれ意味づけがされていて、浮いているようなと
ころがなかった。イギリスの興行成績では連続1位も記録し
たそうだが、なるほどうなずける感じもした。      
                           
『ティアーズ・オブ・ザ・サン』“Tears of the Sun”  
ナイジェリアの内戦を背景に、ジャングルに取り残された女
医の救出に向かったシールズ部隊が、命令違反をしてまで迫
害を受ける恐れのある現地人27名を保護し、国境までの血路
を開く姿を描いたブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチ共
演のアクション映画。                 
主人公は、一旦は救出してヘリコプターに載せた女医と共に
戦地に舞い戻る。そして戦乱の激化でヘリコプターの飛行は
不可能になり、残る望みは徒歩で国境までたどり着くことし
かなくなる。しかも背後には、彼らを執拗に追う300人以上
の現地兵が迫っていた。                
実は、元々はウィリス主演の“Die Hard 4”として計画され
たが、シリーズの製作会社が計画を放棄し、設定を多少作り
直して別の会社で映画化したものだそうだ。従って、物語の
中で主人公が行動を起こした動機を聞かれ、「俺にもわから
ん」と答えているのは、それが『ダイハード』だと思えば納
得できるものだ。                   
ということで、この主人公の動機がかなり薄弱なのは確かだ
が、それ以外のお話は結構納得できる展開で、戦闘シーンも
まともに描かれている。しかもちゃんとエンターテインメン
トしているところは良い感じだった。          
ヴェトナムは負け戦を描かなければならないし、中東は政治
がややこしくなりすぎた。その点ナイジェリアは、戦闘の起
きる状況もそれなりにはっきりしているし、これからシール
ズなどが活躍するには格好の場所になりそうだ。     
なお映画では、政治情勢に応じて作戦中の銃器の使用が禁止
されるなど、細かな指示が出されており、勝手に他国内で銃
器の使用を認める法律を作っているどこかの国の国会は、そ
んな認識で良いのかという感じがした。         
                           
『レッド・サイレン』“Red Siren”           
『グランブルー』のジャン=マルク・バールと、『トリプル
X』のアーシア・アルジェント共演によるフランス製アクシ
ョン作品。                      
男性の主人公は、ボスニアの戦乱の中でリヴァティ・ベルと
称する一団のスナイパーとして働いた男。しかしその作戦の
最中、誤って幼い少年を射殺してしまう。        
女性の主人公は、イタリアからフランス警察に出向している
女性刑事だが、仕事に限界を感じ始めている。その女性刑事
の許へ、1枚のDVDを持った少女が保護を求めてくる。そ
のDVDには彼女の母親が殺人を犯す場面が写されていた。
しかし、その母親は政界にも顔の利く実業家で、警察も迂闊
には手が出せない。そして少女の身柄の引き渡しを母親が求
めてきたとき、少女は警察の隙を見て逃亡。偶然遭遇したス
ナイパーだった男性と共に、実の父親が生きているはずのポ
ルトガルを目指す。                  
一方、その様子に母親の犯罪を確信した女性刑事は、少女を
保護するためにポルトガルに向かう。そして母親も、部下た
ちを引き連れてポルトガルに向かっていた。       
実はスナイパーだった男性が、離脱を希望しながらも以前と
同じ組織で活動していて、その組織のバックアップでとてつ
もない銃器を揃えている上に、滅法腕が立つというのが味噌
で、後半はこの男性、対母親の部下軍団の大銃撃戦が展開す
る。これに少女と女性刑事が巻き込まれている図式だ。  
それにしても見事なアクションで、正直に言ってお話自体は
かなり御都合主義だが、そんなことはどうでも良くなってし
まうくらい。実はせりふは英語の作品で、以前英語せりふの
フランスアクションは今いちと書いたが、本作に関しては前
言を撤回する。                    
原作はモーリス・G・ダンテックの“La Sirene Rouge”と
いう作品で、これを監督のオリヴィエ・メガトンを含む4人
が脚色しているが、その筆頭の名前がSF作家でもあるノー
マン・スピンラッドとなっていた。           
                           
『戦場のフォトグラファー』“War Photographer”    
ロバート・キャパ賞を5回受賞しているという写真家ジェー
ムズ・ナクトウェイの活動を追ったドキュメンタリー。  
最近25年間に起きた世界中の全ての戦場に立ったというナク
トウェイの姿を、彼のカメラに装着した小型ヴィデオカメラ
なども駆使して描いた作品。              
彼は戦場だけでなく、貧困問題でも、ジャカルタの鉄道ぞい
のスラムに住む一家や、硫黄鉱山で働く労働者、ごみ捨て場
の少年たちなども追い続けており、それらの姿も克明に描か
れている。                      
現場で撮影されたシーンと彼自身へのインタヴュー、さらに
写真雑誌の編集者や同僚、親友などの証言で構成されるが、
いろいろ考えさせられるところの多い作品だった。    
当然、批判の対象にもなりやすい職業だが、証言の中で、親
友という脚本家の「彼は、最後は善が勝ち、悪は滅びると信
じている」という言葉が、全てを納得させてくれた感じがし
た。                         
まあ、こういう作品を見ていると、戦争アクション映画はど
うなのよ、という感じにもなってしまうのだが、エンターテ
インメントは、それとして見るしかないと言うところだ。 
                           
『S.W.A.T.』“S.W.A.T.”           
ロサンゼルス市警に実在する特別狙撃部隊の活躍を描き、ア
メリカでは1975年から、日本でも76年から放送されたテレビ
シリーズの映画化。                  
実は、放送当時すでに就職していた僕は、帰宅時間の関係で
このシリーズはあまり見ていない。従って思い入れもそれほ
どはないのだが、今回の試写会で予想以上に周りの反応の良
いのに驚いた。                    
正直に言って、『チャーリーズ・エンジェル』より良いくら
いで、多分僕より若い人たちだから、放送当時は学生や子供
というところだろうが、今そこそこの年代になっているこの
人たちが動けば面白くなりそうだ。           
お話は、マフィアの跡目を継ぐ男が仕事のため不法入国し、
ちょっとしたことで捕まってしまう。最初は軽犯罪者と思わ
れていた男は、やがて世界中から指名手配されている重犯罪
者であることが知れる。                
ところがその情報がマスコミに流れ、報道機関が集まったと
ころで男は、自分を救出したら1億ドルを出すと宣言する。
この情報にロス中の危ない連中が警察を襲い始める。そして
マフィアの組織内では、男を救出するための周到な計画が練
られていた。                     
一方、SWAT隊に伝説の隊長ホンドーが復帰してくる。し
かし一癖ある連中を集めたがるホンドーに本部長との間は一
触即発。一つの失敗が、隊そのものの存続も危うくする事態
になっていた。そんな中、SWAT隊に男の護送の任務が下
される。                       
何たって100人で山分けしても1人100万ドルなのだから、本
当に一攫千金の有象無象が大挙して襲ってくる訳で、しかも
この連中がロケット砲まで使ってくるのだからたまったもの
ではない。この設定はかなり上手くできているし、さらにマ
フィアの計画も納得できる展開だった。         
のべつまくなしの事件発生で、その数は多分映画史上でも記
録的ではないかと思うが、それをまた1時間51分の上映時間
内で手際良く解決して行く訳で、テンポも良く面白い。  
なおホンドー隊長は、テレビのスティーヴ・フォレストから
映画はサミュエル・L・ジャクスンに変っているが、そのフ
ォレストが最後にカメオ出演しているのもご愛嬌。またオリ
ジナルのテーマ曲も上手く使われていた。        


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井口健二