井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2003年08月15日(金) 第45回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 いやはや、シュワルツェネッガーの出馬が本当に決まって
しまった。先月には一時断念したとの噂も流れたようだが、
実際には8月1日に、水曜日の“The Tonight Show”で重要
な発表をするという情報が流され、わざわざ「断念」を公式
に発表することはないだろうという観測になっていた。しか
し、これで当選すると、最近発表された映画製作の企画は全
て、最初の任期が終る2007年以降にせざるを得なくなるよう
だ。 
 なお、現在、発表されている主演の企画は“Westworld”
と“Big Sir”に2本だが、もう1本、ジョン・ミリウスが
監督する予定の“Conan”の続編については、シュワルツェ
ネッガーの推薦でザ・ロックことドゥエイン・ジョンスンが
彼の息子の役で主演の予定で、これも父親役のシュワルツェ
ネッガーの出演が不能だと延期になるようだ。世論調査はす
でに当確のようだが、10月7日の投票結果が注目される。
 また、今後の公開作品では、今秋ジョンスン主演の“The
Rundown”と、来年の夏公開予定のジャッキー・チェン主演
“Around the World in 80 Days”の2本にいずれもカメ
オ出演している。
 因に07年、シュワルツェネッガーは60歳になるそうだ。 
        *         *        
 以下は、いつものように製作情報を紹介しよう。    
 まずは、『レッド・ドラゴン』のブレット・ラトナー監督
の新しい計画が発表されている。といってもこの作品、実は
前任監督の降板で、急遽代打に立つことになったものだ。 
 作品の題名は、“After the Sunset”。前々回の“A Tale
of Two Sisters”の記事の中でも少し紹介したが、ニュー
ライン作品で、ピアーズ・ブロスナンとサルマ・ハエックが
共演、『ブルー・クラッシュ』のジョン・ストックウェルの
監督で、今年10月からの撮影が計画されていた。     
 ところが監督のストックウェルが、MGMで進められてい
る“Into the Blue”という作品への参加を表明。結局「創
造上の意見の相違」という形で降板してしまった。    
 そこでニューラインでは、代役の監督を探していたものだ
が、同社で“Rush Hour 3”を準備中のラトナーが、まだそ
の準備が整っていないということもあって、代役を務めるこ
とになったようだ。因に、ラトナーとニューラインの間では
“Rush Hour 2”の次の作品という形で契約が結ばれている
そうで、今回の監督をするとその契約条件は満たすことにな
るようだが、ラトナーは“Rush Hour 3”についても続けて
やる計画で、その公開は05年を目処としている。     
 なお“After the Sunset”のお話は、ポール・ゼビゼウス
キーのオリジナル脚本を、前々回紹介のクレイグ・ローゼン
バーグがリライトしたもので、カリブ海のリゾート地で優雅
に暮らす元宝石泥棒のブロスナンと、その女友達のハエック
が、泥棒稼業を続けていると睨むFBI捜査官の追求を受け
るという内容。そしてこの捜査官役を、『シン・レッド・ラ
イン』などのウッディ・ハレルスンが演じることも発表され
ている。                       
 因に、ハレルスンは、ジャック・ニコルスン、アダム・サ
ンドラー共演の“Anger Management”(N.Y.式ハッピー・
セラピー)にも小さい役で出ているようだが、最近の主演作
はほとんどインディーズ作品に限られていたということで、
ハリウッド作品で大きな役を演じるのは珍しいそうだ。なお
ニューラインでは、ハレルスンは96年製作の『ラリー・フリ
ント』などに主演している。              
        *         *        
 お次は、またまた往年のテレビシリーズの映画化で、1965
年から70年に掛けて、最初はNBC、後にCBSで放送され
た30分のコメディシリーズ“Get Smart”を映画化する計画
が発表されている。                  
 このオリジナルは、日本では『それ行けスマート』の題名
で、同じく30分シリーズの“Honey West”(ハニーにおまか
せ)とのカプリングで放送されていた。         
 内容はスパイもののパロディで、コメディアンのドン・ア
ダムス扮する合衆国の諜報組織CONTROLのエージェン
ト86号ことマックスウェル・スマートが、革靴の底にダイヤ
ルのある無線電話などのハイテクを駆使して、悪の組織KA
OSと戦う活躍を描いたもの。             
 実は、『ヤングフランケンシュタイン』などの監督のメル
・ブルックスと、『天国から来たチャンピオン』などの脚本
家バック・ヘンリーが協力して作り上げたキャラクターで、
その設定の上手さは群を抜くシリーズだった。      
 なお、80年にはアダムスの主演、クライヴ・ドナーの監督
で映画版“The Nude Bomb”が製作され、さらに89年には、
TVムーヴィ版の“Get Smart Again”も発表されている。
また95年にはマックスがチーフとなり、息子のザック・スマ
ートが活躍する続編シリーズも放送されている。因に、この
ときの無線電話は、スニーカーの底に着いていたそうだ。 
 という人気シリーズの映画化だが、今回これに挑むのは、
『サタデー・ナイト・ライヴ』出身コメディアンのウィル・
フェレル。彼は『SNL』の自演キャラクターを映画化した
98年の“A Night at the Roxbury”に主演した他、現在は、
ドリームワークスで製作中の“Anchor Man: The Legend of
Ron Burgundy”という作品に出演している。      
 製作はワーナーに本拠を置くアンドリュー・ラザーで、彼
は数年前からこの企画と取り組み、ようやく実現に漕ぎ着け
たということだが、フェレルの主演が決まったことで、今ま
でに準備された脚本などは全てキャンセルされ、これからフ
ェレルのキャラクターに合せた新マックスウェル・スマート
を誕生させることになるようだ。          
 因に、日本でカプリングで放送されていた“Honey West”
も、リーズ・ウィザースプーン主演による映画化の計画が、
2年ほど前にミラマックスから発表されていたが、その後ど
うなっているのだろう。                
        *         *        
 上の作品も、80年の作品からのリメイクと言えないことも
ないが、その他のリメイクの計画を少し紹介しておこう。 
 まずは、以前(第16回)に紹介した“Billy Jack”(明日
の壁をぶち破れ)のリメイク計画で、監督にピーター・ケア
の起用が発表された。                 
 ケアは、昨年公開されたジョディ・フォスター製作、キー
ラン・カルキン主演による“The Dangerous Lives of Altar
Boys”で長編監督デビューを果たしたばかりだが、元はミ
ュージックヴィデオの監督で、R.E.M.やティナ・ター
ナーなどの作品を手掛けている。また前作は、『スポーン』
のトッド・マクファーレンが制作したアニメーションが織り
込まれるなど、かなり奇抜な冒険映画だったようだ。   
 なおこの計画では、以前紹介したときにはドリームワーク
スの製作、キアヌ・リーヴスの主演となっていたが、今回の
報道ではインターメディアの製作となっており、状況は変化
しているようだ。また脚本は、“Hidalgo”などのジョン・
フスコが担当している。                
        *         *        
 続いては、1974年にバート・レイノルズ主演で映画化され
た“The Longest Yard”(ロンゲスト・ヤード)のリメイク
が、パラマウントとアダム・サンドラー主宰のハッピー・マ
ディスンから発表されている。因に、サンドラーはソニーを
本拠にしているが、今回はパラマウントに協力するものだ。
 同作からは昨年公開のイギリス映画『ミーン・マシーン』
がインスパイアされた作品であることを名乗っていたが、今
度は本家本元のリメイクが行われることになったもの。脚本
家は未定だが、物語はインターネットを取り入れるなど現代
化されたものになるということで、オリジナルよりコメディ
の要素を強くする計画だそうだ。            
 そしてキャスティングでは、パラマウント傘下のMTVか
ら若手ミュージシャンの起用が検討されている。オリジナル
に主演したレイノルズは、元カレッジフットボールの花形選
手だったし、イギリス作品も主演には元プロサッカー選手の
俳優を起用したものだが、それをミュージシャンの主演で、
さてどうなりますか。なお、本作はサンドラー主演の計画で
はないようだ。                    
        *         *        
 マイクル・ケインの主演で、先日公開された『ミニミニ大
作戦』にもそのワンシーンが登場していた1966年製作のイギ
リス映画“Alfie”(アルフィー)のリメイクがパラマウン
トで進められている。                 
 元々は舞台劇から映画化された作品だが、60年代の性革命
を背景に、奔放な生活を送る主人公が、ふと自分の行動やそ
の将来に疑問を持ってしまう、という内容のロマンティック
コメディ。そしてこの映画化の演技で、ケインはオスカーの
ノミネートも獲得している。              
 この作品のリメイクが、チェールズ・シャイヤーとエレイ
ン・ポープの脚色、シャイヤーの監督で進められているもの
で、主演にはジュード・ロウが先に発表されていた。そして
今回は、彼を取り巻く女性たちの配役で、オスカー女優のス
ーザン・サランドン、マリサ・トメイが登場する他、ニナ・
ロング、シーナ・ミラーらの共演も発表されている。   
 撮影開始は秋の予定になっているが、題名はオリジナルか
らは変更される計画でその新題名は未定ということだ。  
 因にサランドンは、現在ミラマックスで撮影中の日本映画
からのリメイク作品“Shall We Dance ?”に出演、リチャー
ド・ギア、ジェニファー・ロペスらと共演している。   
        *         *        
 1977年にマイクル・ウィナー監督で映画化された都会ホラ
ーの秀作“The Sentinel”(センチネル)のリメイクがユニ
ヴァーサルで計画されている。             
 オリジナルはジェフリー・コンヴィッツのベストセラー小
説を映画化したもので、ブルックリンのアパートに引っ越し
てきたファッションモデルの女性が、同じ建物の住人たちが
悪魔の信奉者で、彼女がその建物に開く地獄の門の次の守護
者であることに気付くというお話。           
 オリジナルでは、主人公をモデル出身のクリスティナ・レ
インズが演じ、その脇をエヴァ・ガードナー、バージェス・
メレディス、アーサー・ケネディ、ジョン・キャラダイン、
クリストファー・ウォーケン、イーライ・ワラック、ジェフ
・ゴールドブラム、マーティン・バルサム、トム・ベレンジ
ャーといった錚々たるメムバーが固めていた。      
 そして今回のリメイクでは、脚本を『コン・エアー』など
のスコット・ローゼンバーグが担当することになっている。
 なお、発表記者会見でローゼンバーグは、「大都会にやっ
てきた若い女性が悪魔の集団に遭遇するという基本の物語は
守るものの、他はほとんどオリジナルで展開させる」という
ことだ。またオリジナルではエロティックな描写が話題を呼
んだと言うことだが、そこに関しては「まだ言うべきときで
ない」という回答だったそうだ。            
        *         *        
 リメイクの最後に、第40回に既報のロアルド・ダール原作
“Charlie and the Chocolate Factory”の2度目の映画化
で、主演にジョニー・デップの名前が挙がっているようだ。
 この計画では、先にティム・バートンの監督が発表されて
いるが、デップファンの意見では、『シザーハンズ』以来、
バートン監督の計画には必ず名前が挙がるということで、期
待は半ばという感じのようだ。しかし今回は、デップには、
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の大ヒットを受けての時
期でもあり、製作のワーナー側も決まれば大喜びだろう。 
 ジーン・ワイルダーのオリジナルの演技は原作者の気に入
らなかったようだが、先日の『カリビアン』の製作者ブラッ
カイマーの記者会見でも、デップはかなり真剣に役作りを考
えてくれるということで、これでもしバートン+デップが実
現したら、一体どんなウィリー・ワンカを見せてくれること
だろうか。                      
 撮影は来年以降の予定になっている。         
        *         *        
 お次はSF映画の情報で、アメリカのSF作家アルフレッ
ド・べスターが1953年に発表した“The Demolished Man”の
映画化がパラマウントで進められている。        
 この原作小説は、日本では『破壊された男』または『分解
された男』の邦題で知れられるが、超能力(テレパシー)の
発達で犯罪が未然に防止されるようになった未来社会を舞台
に、殺人の完全犯罪に挑もうとする男の物語。設定は『マイ
ノリティー・リポート』に通じるところがあるが、もちろん
それより前に発表されたものだ。            
 そしてこの原作に対しては、実はかなり以前から映画化の
計画はあり、オリヴァ・ストーンらが計画にタッチしていた
のだが、テレパシーなどの映像表現がネックになって実現が
見送られてきた経緯がある。              
 この計画に今回挑戦するのは、2000年に“Chopper”など
の作品を発表しているオーストラリア出身の監督アンドリュ
ー・ドミニク。彼は脚本家と共に、新たな脚色に挑むとして
いるが、実は、彼の前作には当時スタンダップ・コメディア
ンとして知られていた『ハルク』のエリック・バナが主演し
ており、今回の計画では、バナの主演を視野に入れて脚色を
進めるということだ。                 
 以前、シルヴェスタ・スタローン主演の『デモリションマ
ン』の製作が発表されたときに誤解して、あとでがっかりし
たことがあったが、今回は間違いなくべスターが映画化され
る。確かに、テレパシーによる探査を巧みに逃れるというシ
ーンの映像化はかなり難しそうだが、実現に期待したい。 
        *         *        
 もう1本、SF作家ロバート・シルヴァバーグ原作による
“The Book of Skulls”の映画化が、『エクソシスト』のウ
ィリアム・フリードキンの監督で計画されている。    
 この原作は1972年に発表されたもので、内容は、4人の大
学生が古代の書物の中に、永遠の命の秘密を発見したことか
ら始まる恐怖を描いたもの。そしてこの原作から、昨年ディ
メンションに“Retribution”というオリジナルスリラーの
脚本を契約したばかりのジェフ・デイヴィスが脚色すること
になっている。                    
 なおフリードキンの参加を聞いたデイヴィスは、「フリー
ドキンのためにサイコホラー映画の脚本を書けるなんて…。
彼は、映画史上最高に恐ろしくて、不安感を掻き立てる映画
を監督し、この映画ジャンルを確立した人物だ。脚本家にと
って、これ以上に望めることはない」と語って興奮していた
ようだ。                       
 また製作は、パラマウントに本拠を置くアルファヴィルと
いうプロダクションで行われるが、同社のトップのダニエル
&ジム・ジャックス兄弟は、ユニヴァーサルの『ハムナプト
ラ』シリーズや、先に日本でも公開された『ハンテッド』な
どホラーとスリラーを専門に製作しているチームだそうだ。
        *         *        
 後半は、短いニュースをまとめて紹介しよう。     
 まずは、第38回で紹介したクライヴ・カッスラー原作によ
る“Sahara”の映画化で、スティーヴ・ザーンの共演が発表
されている。この映画化は、主人公のダーク・ピット役をマ
シュー・マコノヒーで進められているものだが、ザーンの役
柄はアルというピットの相棒の役だそうだ。ブレック・アイ
スナーの監督で、撮影は10月からイギリスとモロッコで行わ
れることになっている。なお今回の報道でも、シリーズ初の
映画化となっているようだ。              
 第3作の“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”
が撮影中の『ハリー・ポッター』シリーズで、第4作にして
初めてイギリス人の監督が起用されることになった。撮影中
の第3作は04年6月4日公開が予定されているが、第4作の
“Harry Potter and the Goblet of Fire”は05年に公開さ
れるもので、スケジュール的には第3作に続けて撮影の可能
性もある。そしてその監督に、『フォー・ウェディング』な
どのマイク・ニューウェルの起用が発表された。     
 ニューウェルは、ワーナーが配給するジュリア・ロバーツ
主演の“Mona Lisa Smile”を完成させたところで、それに
続けて交渉されたようだ。確か俳優は全てイギリス人に拘わ
ったはずだが、監督はアメリカ人のクリス・コロンバスに続
いて、メキシコ人のアルフォンソ・キュアロンだった訳で、
ようやくその後を受けてのイギリス人監督の登板となった。
なおニューウェルは、文芸作品では1977年製作の“The Man
in the Iron Mask”(鉄仮面)を手掛けたことがある。  
 もう1本、イギリス製のファンタシーの映画化で、イーデ
ィス・ネズビットが1902年に発表した“Five Children and
It”の撮影がケネス・ブラナーなどの出演で始まっている。
お話は、第1次世界大戦を背景に、ロンドンから海辺の町に
疎開してきた子供たちが、砂丘に住む願いを叶えてくれる妖
精を見つけて、いろいろな冒険をするというもの。日本では
『砂の妖精』の邦題で知られるが、確かBBCでドラマ化さ
れたことがあり、また、NHKが『お願いサミアドン』の題
名でアニメシリーズ化したこともある。         
 最後に、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の大ヒットを
受けて、いよいよ海賊映画の企画が出始めてきた。その1本
目は“Devil's Crew”という作品で、1718年を時代背景に、
黒髭と呼ばれた海賊を捕えるために派遣されたロバート・メ
ンバード大尉率いる王立海軍の物語。実話に基づく物語のよ
うだが、かなり過酷な作戦となった航海を描いたもので、ラ
ヴィ・バインズとアレックス・ハラキスの脚本をMGMが取
り上げて映画化を目指すことになっている。企画は、これも
大ヒットとなった“American Wedding”を手掛けたザイド/
ペリー・エンターテインメントが担当している。     


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二