2003年07月16日(水) |
ノックアラウンド・ガイズ、タイタニックの秘密、アララトの聖母、KEN PARK、閉ざされた森、バリスティック |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ノックアラウンド・ガイズ』“Knockaround Guys” 『トリプルX』などのヴィン・ディーゼルや、『ミニミニ大 作戦』にも登場し来春公開予定の『スクービー・ドゥー2』 ではメインの敵役を演じているセス・グリーンらが出演し、 さらにデニス・ホッパーやジョン・マルコヴィッチが登場す るマフィアもののドラマ。 と言っても、彼らの主演作ではなく、主人公を演じるのはデ ィーゼルと共に『プライベート・ライアン』に抜擢されたバ リー・ペッパー。しかし現時点での宣伝は、ディーゼルで行 くのが常道と言うところだろう。 物語の発端は、10数年前のブルックリン。マフィアのボスの 息子マティーは、とある地下室で拳銃を渡され、父を密告し た男の処刑を命じられる。しかし彼には引き金を引くことが できない。 10数年が経ち、青年になったマティーは就職活動をしている が、父親がマフィアのボスと知れると、ことごとく断られて しまう。自身は堅気の仕事を希望し、刑期を終え出獄した父 親もそれを理解しているが、現実はそう行かない。 そしてついにマフィアの仕事しかなくなったマティーは、父 の右腕の男の推薦もあって、西海岸の町から50万ドルを運ぶ 仕事を与えられる。しかし彼が送り出した男は仕事をしくじ り、経由した西部の町で大金の入った鞄を無くしてしまう。 48時間以内に鞄を取り戻さなければ、父親の命も危ない。か れは2人の仲間と共に、鞄の失われた町に乗り込んで行くの だが…。そこは、保安官が顔を利かす西部劇さながらの町だ った。 この父親役がホッパー、その右腕役がマルコヴィッチ、鞄を 無くしてしまうのがグリーン、そしてディーゼルの役はとい うと、ストリートファイトを500回戦ったという、ペッパー 演じるマティーの仲間の一人。ファイトシーンなどそれなり に見せ場はある。 お話は、マフィア事情を背景にした青春ものという感じで、 グリーンの役柄の馬鹿さ加減にはちょっと苛つく部分もある が、全体的な展開はかなりスマートで面白かった。 ニューライン製作。所詮B級の作品で、とやかく言うもので はないし、日本での公開規模もそんな感じなのは好感が持て る。ディーゼルのファンには見て損はないだろう。 『タイタニックの秘密』“Ghosts of the Abyss” 以前に2D版を紹介した作品のIMAX−3Dでの試写が行 われた。この作品は、すでに一般公開が始まっているので、 多く書くつもりはないが、一応前回のフォローアップだけし ておこう。 前回の紹介では、HD-24p撮影の画像がIMAXに耐えられる か否か心配していたが、本作は、海中撮影が主で、元々解像 度はそれほどよろしくない訳で、心配するほどのものではな かった。と言うか、充分に見られるものだった。 それから、60分→47分に短縮された部分は、オリジナルで登 場している女性生物学者のシーンと、実は中でロボットカメ ラの救出の行われたのが01年9月11日だったということで、 その後に一と下りあるのだが、今更という感じの部分だ。 後者については仕方ないと思うし、前者については、おかげ で参加メムバーが男だけのようになってしまい、女性から、 「こんな事するのは男だけよ」と言われてしまいそうだが、 そうではないということをここに記録しておきたい。 なお、キャメロンは、この後で戦艦ビスマルクの海中探査も 行っており、その撮影も同じシステムで行われているはずな ので、出来たら見てみたいものだ。 『アララトの聖母』“Ararat” アルメニアからの亡命者の子として生まれたアトム・エゴヤ ン監督が、失われた祖国の歴史を背景に描いた作品。 アララト山というと旧約聖書のノアの箱船が辿り着いた場所 として記憶されるが、その山麓で1915年トルコ兵による100 万人規模の人民大量虐殺が行われた。その出来事は、当時現 地で医療活動をしていたアメリカ人宣教師の手で記録された が、現トルコ政府はその事実を否定しているというものだ。 この作品は、その出来事の記録を残すことを第1目的として 作られている。しかしエゴヤンはそれを声高に言い張るよう なことはしない。その出来事を映画化しようとする監督を登 場させ、さらに虐殺で母親を失った後にアメリカに亡命した 画家の作品をモティーフにして、そこに現代の親と子の関係 を綴り込む。 再現部分を劇中劇とすることで、あえて残虐な描写を試みた 面はあるのだろうが、同時に国際的に微妙な問題を緩和する 目的もあったのかも知れない。確かにカンヌでは正式出品に 留まり、アルメニア亡命者の多いカナダのジニー賞を5部門 受賞というのも頷ける。 他にも、息子の同性愛に悩む父親なども登場させ、物語を複 雑にしながらも、その主となるテーマを外さない描き方は、 本当に見事としか言いようがない。 それにしても、歴史上の大虐殺事件とそれを否定する現政府 という図式は、どこにでも存在するようだ。真実がどちらに あるかを知ることは容易ではないが。 『KEN PARK』“Ken Park” 1995年に映画『KIDS/キッズ』でセンセーションを巻き 起こした監督ラリー・クラークと脚本家ハーモニー・コリン が再び手を組んだ新作。今回は共同監督に映画カメラマンの エド・ラックマンも参加している。 物語の中心は、4人の少年と1人の少女。いろいろな家庭環 境で暮らす彼らの内、1人の少年は自殺し、1人の少年は同 居していた祖父母を刺殺し、後の2人の少年と少女は乱交に 耽り続ける。 前作の『KIDS/キッズ』は見たかどうか記憶にないが、 当時の青少年の実態を描いて世間に衝撃を与えたものだ。今 回の作品も、そのような衝撃を覚悟したのだが、正直に言っ て、最近の中学生の犯罪を目の当りにしていると、衝撃と言 うほどではない。 それより僕は、彼らの親たちの行動の方にやりきれないもの を感じた。実の息子に暴力を振るうことでしか対応できない 父親や、娘のボーイフレンドとの情事に耽る母親、聖書に頼 ることしか出来ない父親など、ここに描かれた親の姿の方が 衝撃だった。 実は、クラークは今年60歳、ラックマン55歳ということで、 脚本のコリンは30歳だが、監督の2人はいずれも登場する親 たちよりも、さらに上の世代と言うことだ。 そしてどちらかと言うと監督たちの世代に近い僕は、何とな く、2人の監督は子供たちの世代の方に理解があるように感 じ、逆に親たちに「おまえら何をやってるんだ」と言ってい るような映画に感じた。 なお、自慰シーンやセックスシーンがかなり生々しくという か、実演で描かれるが、日本公開ではほとんどが霞みの彼方 になっている。まあこれらのシーンの修整がなかったとして も、衝撃と言うほどではないと思うが。 『閉ざされた森』“Basic” ジョン・マクティアナンの監督で、ジョン・トラヴォルタと サミュエル・L・ジャクスンが主演した軍隊ミステリー。と 言っても、軍部の腐敗を暴くような深刻なものではなく、あ る意味、エンターテインメントに徹した見事な快作だ。 パナマ駐留のアメリカ軍。その基地のレンジャー部隊が暴風 雨の中の訓練を敢行し、隊員のほとんどが行方不明になる。 そして3人が発見されるが、内1人は重傷を負い、他の1人 は残る1人と銃撃戦の上、救援隊の目前で射殺される。 しかし、唯1人無事に救出された隊員は、基地の女性取調官 の前に完全黙秘を続け、他の部隊のレンジャー隊員になら話 すとメモを記す。真相を求める基地司令は、元レンジャー隊 員で以前同僚だった麻薬捜査官(汚職で謹慎処分中)に取り 調べを依頼する。 そして現れた捜査官は、女性取調官と共に真相の追求に乗り 出すが、救出された隊員と傷の癒えた隊員の証言には、明ら かな食い違いが現れる。そして捜査の過程で現れる他の関係 者たちも次々に食い違う発言を始める。 何しろ、最終的な真相に達するまでに話が二転三転、最後は 主人公まで怪しくなってくるのだから、この展開は面白い。 トラヴォルタは、99年の『将軍の娘』でも軍隊内の謎に挑戦 したが、あれほど重くなく、小気味よく決まっている感じが 良かった。 一方、マクティアナンは初期の『プレデター』で同じような ジャングルを描いたが、こちらは初心に返ったと言うところ だろうか。前作『ローラーボール』では草原を舞台にしてち ょっとずっこけたが、これで立ち直ることを期待したい。 なお、プレスに見事なネタばれがあるが、いい加減な紹介者 がしたり顔で解説しないことを望みたいものだ。 『バリスティック』“Balistic: Ecks vs.Sever” アントニオ・バンデラスとルーシー・リューの主演で、タイ の若手監督カオスが演出したアクション作品。 物語は、ヨーロッパから帰国したばかりのアメリカ国防情報 局DIAの長官の息子が誘拐されるところから始まる。その 事件に隠されたものを察知したFBIは、元捜査官でその手 の情報に詳しいエクスを現場に呼び戻す。 エクスは目前で妻を爆殺されたことからFBIを離れたが、 今回の事件には殺されたはずの妻が関わっているという。そ してFBIは、誘拐犯が元DIAの暗殺専門エージェントの シーヴァーと割り出すが、その捜査に行く手にはDIAの妨 害が執拗に行われる。 実は、ヨーロッパで開発された暗殺用のマイクロマシンを息 子の体内に忍ばせてアメリカに運び込もうとしたDIAの陰 謀があり、息子の救出に見せかけたそのマイクロマシンの奪 還と、事件の隠蔽をDIAは画策していたのだ。 というのが大体のお話だが、これにバンデラス対リュー、対 レイ・パーク(ダース・モール)の格闘技アクションと、銃 撃戦アクション、さらには盛大な爆破アクションが華を添え るというものだ。 特に爆破アクションは、後半、操車場での車両数十両を吹き 飛ばすシーンが見せ場になるが、次から次へ手を代え品を代 えての爆発の連続で、タイ映画の監督というのはパン兄弟の 場合もそうだが、本当に爆破が好きなようだ。 なお、格闘技アクションでリューが演じるのは、またもやフ ィリピンのカリで、これで昨年の『ボーン・アイデンティテ ィー』から『ハンテッド』と3本目だが、よほど良いインス トラクターがハリウッドにいるのだろうか。 因にこの作品は2002年の公開で、『フルスロットル』の前に なるが、リューのアクションが決まっていた理由がこれで判 ったような気がした。また次回の『キル・ビル』がさらに楽 しみになってきたという感じだ。 最後に告知を一つ。 以前、4月2日に紹介した『クロー・オブ・エイダ』の公開 が8月2日から新宿武蔵野館に決定し、その公開中に映画館 で行われるトークショウの案内が送られてきた。 開催は8月中の土曜日21時10分からで、テーマと講演者は、 2日「クローン人間の現在と未来」(沼倉英晶・日本ラエリ アンムーブメント代表) 9日「女性クリエイターとSF映画」(小谷真理・SF評論 家) 16日「エイダ・バイロンと二つの世紀」(山田正紀・作家) 23日「ザ・レジデンツについて語ろう」(湯浅学・音楽評論 家+常盤響・デザイナー) ということなので、興味のある方はどうぞ。
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