井口健二のOn the Production
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2003年07月02日(水) チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル、ターミネーター3、ハルク

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』     
          “Charlie's Angels/Full Throttle”
前回、特別映像の紹介をしたが、いよいよ本編の試写が行わ
れた。                        
ホームページにアップするときには公開済みなので、いまさ
ら多く書いても仕方がないとは思うが、僕の印象を記録して
おく。その第1印象としては、テレビシリーズのファンの期
待も裏切らない出来ということは言えるだろう。     
前の紹介では、そのテンションが最後まで持つのかと心配し
たものだが、どうして最初から最後まで、ほとんど切れ目な
しのアクションの連続で、お見事という感じだった。   
特別映像で紹介されたモンゴルとモトクロスのシーンは、多
分編集でさらに刈り込まれて、テンポが上がっている感じだ
し、本来ならダレ場になるコメディーリリーフのシーンも、
ちょうど良い息抜きの感じで、その緩急の付け方も上手い。
それに監督のMcGはさすがにミュージックヴィデオの名手
らしく音楽の付け方も抜群。中でもオリジナルのテレビシリ
ーズのテーマが時々聞こえてくるシーンが最高で、特にゲス
トのジャクリン・スミスの登場シーンは、懐かしさで目が潤
んでしまいそうになった。               
物語は、重要犯罪証人保護プログラムの保護対象者リストが
奪われるところから始まる。そのリストは2つの指輪にホロ
グラムで刻印され、2つを重ねてレーザーを照射すると読み
出されるというもの。そして早速、その証人の一人が殺害さ
れ、FBIの指示で、チャーリーが下した命令により、エン
ジェルたちの捜査が始まる。              
エンジェルたちは、殺害現場に残されたワックスから犯人が
サーファーであることを突き止め、ビーチでの捜索が開始さ
れるが、そこに伝説のエンジェル、マディソンが現れる。そ
して過去のエンジェルの出現が呼び水になったように、現在
のエンジェルの過去も炙り出される。          
お話は、書いてみるとちょっと暗めだが、結局のところは、
奪われたリストが犯罪組織に売却されるのを阻止するという
展開で、ど派手なアクションが展開する。それと上にも書い
たコメディリリーフのタイミングの良さで、見ている間は気
にならなかった。                   
前にも紹介したモトクロスのシーンを始めとして、ディジタ
ル・エフェクツの見事さは、1億7000万ドルの製作費が伊達
でないことはよく判るし、おまけに『スパイダーマン』のパ
ロディまで惜しげもなく繰り出す気前の良さ。      
まあ、この辺はどっちもイメージワークスの仕事だから、や
り易かったかも知れないが、それにしてもやれることは全部
やりましたという感じがして、気持ちが良かった。    
                           
『ターミネーター3』                 
        “Terminater 3: Rise of the Machines”
1984年製作の『ターミネーター』、91年製作の『T2』に続
く12年振りのシリーズ第3作の登場。          
『ターミネーター』と言えばシュワルツェネッガーの代名詞
のようになっているが、僕にとっては、前2作の脚本監督を
手掛けたジェームズ・キャメロンのイメージの方が強い。今
回の作品も、権利関係をクリアにして当然彼が手掛けるはず
の作品だった。                    
しかし、某超大作を完成させるために、已むなく結んだ契約
を盾にとった某社の横槍で、今回はそれが叶わなかった。僕
は、いつの日かキャメロンが最終話を作ってくれると信じて
いる。従ってキャメロンの外れた第3作には、懐疑的な気分
が拭えなかった。                   
つまり、最終話をキャメロンが作るものとすれば、彼が外れ
た今回の作品は繋ぎの意味しか持たないものであり、結局の
ところは、派手なアクションだけが取り柄の、只のプログラ
ムピクチャーになってしまうと予想していたのだ。    
しかし予想は見事に覆された。確かに前半は、『T2』も霞
んでしまいそうな、ど派手なアクションが展開されて、その
辺はにやにやしながら見ていられたのだが…。それから後の
展開は、さすがに、シュワルツェネッガーが前言を翻して出
ただけのことはあるという感じだ。           
後は映画を見てもらうことにして、お話は、未来の人類の指
導者ジョン・コナーの抹殺のため、今回は武器内蔵型の究極
のターミネーターT−Xが女性の姿で送り込まれてくる。そ
れを追って、再プログラムされた旧型のT−101も時空を
越えて現れる。                    
一方、コナーは10年前の審判の日を阻止して以来、人生の目
標も定まらぬまま放浪生活を送っている。そしてバイク事故
の手当のため鎮痛剤を入手しようと忍び込んだ獣医院で、10
年前の女友達ケイトと巡り会う。そこに2体のターミネータ
ーが現れる。                     
その場は何とか逃げおおせた2人とT−101だったが、T
−101は10年前に破壊したはずのスカイネットの開発が軍
の中で継続されており、その責任者がケイトの父親であるこ
とを告げる。                     
そして、悪質なコンピュータウィルスに手を焼いた軍の上層
部が、その対抗策としてAI搭載のスカイネットの接続を命
令し、そのAIの意志によって3時間後に人類世界が破壊さ
れることを…。                    
ターミネーター本人は、前作ほどの人間味はない設定になっ
ている。しかし、車のキーの下りなど、前作からのファンも
楽しめる仕掛けもある。                
また、前半のアクションは、ほとんどCGIに頼らず、また
華麗なワイヤーアクションというものでもなく、唯々体力任
せのフィジカルアクションという感じの大迫力で、久しぶり
にこういうものが見られたという感じがした。      
さらに後半にもメカアクションや、2体のターミネーターの
死闘などのアクションが満載で、それだけでも充分に楽しめ
る作品になっているのは見事だ。            
それに加えてこの展開、ぜひとも早く続きが見たいというと
ころだ。                       
                           
『ハルク』“The Hulk”                
マーヴル・コミックスの『超人ハルク』を、アカデミー賞外
国語映画部門を受賞した『グリーン・デスティニー』のアン
・リー監督が映画化した作品。             
アン・リーには文芸監督の印象を持つ。その監督がたまたま
撮った武侠映画が評判になってしまった。だから彼がコミッ
クスの映画化を手掛けると聞いたときには、違和感を感じた
ものだ。ましてやハルクでは、華麗なワイヤーアクションと
いう訳にも行かない。                 
しかし出来上がった作品は、なるほどアン・リーが手掛けた
だけのことはあるという作品に仕上がっていた。     
物語は、ハルクの誕生を中心に描かれる。そもそもの発端か
ら、実験での事故、父親の登場、そして変身、逃亡、拉致、
再逃亡と展開して行くが、これをニック・ノルティ、ジェニ
ファー・コネリーらがしつこいほどにじっくりと描いてみせ
る。                         
もちろんアクションも見所にはなっている。砂漠地帯を縦横
に走り回っての戦闘ヘリとの戦いや、ゴールデンゲイトブリ
ッジを舞台にしたジェット戦闘機との戦いなどで、スピード
感溢れるシーンが展開する。              
しかしアン・リーが魅せてくれるのは、やはり人間関係を描
いたドラマの部分だ。そこにノルティ、コネリーらの起用の
意味がある。もちろんリーの起用の意味も。これを決めたプ
ロデューサーは、元ジェームズ・キャメロン夫人のゲイル・
アン=ハードだ。                   
ロバート・ワイズが監督した『スター・トレック』映画版の
第1作のように、重厚な第1歩が描かれた。後は、ここから
どのように発展させるのか。すでに第2作の準備はスタート
したようだ。                     
それにしても、サム・エリオットが演じるベティの父親の将
軍が、市街地でも平然とミサイルを発射させてしまうのには
参った。これはやはり、気に入らない娘のボーイフレンドに
対する父親の仕打ちということなのだろうか。      
それから、予告編にも入っていたハルクが元の姿に戻ってベ
ティと抱き合うシーンの台詞は、予告編ではかなり良い字幕
が付いていたように思ったが、本編では差し替えられて、何
か意味不明の字幕になっていた。僕は予告編の方が正解だと
思うのだが…。                    


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