井口健二のOn the Production
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2003年06月16日(月) チャーリーズ、コンフェッション、28日後、ミニミニ大作戦、シェフと素顔と、レボリューション6、10日間で男を、タイタニックの秘密

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『チャーリーズ・エンジェル(特別映像)』       
6月28日の日米同時公開で、本編の完成試写はまだ行われて
いないが、6月2日の主演3人の来日記者会見の前に41分の
特別映像が披露された。                
完成前なので批評はしないでくれという要請はあったが、見
たことの紹介だけはさせてもらう。           
00年に公開された前作は、言ってしまえば、まるでアクショ
ンの似合っていない主演の3人が、見事にアクションを決め
てしまうのが見ものだった訳だが、その前作を上回らなけれ
ばならない続編に、同じメムバーで再び挑むのだから、その
自信の程は相当のものだったのだろう。         
そしてその結果は、この3年間のVFXの進歩には長足のも
のがあることが、またしても証明された感がある訳で、一部
しか見ていない条件ではあるが、次々に繰り出されるアクシ
ョンは、実に上手く決まっている感じがした。      
実際、とてつもないアクションが、顔を隠したスタントマン
ではなく、見るからにディアス、バリモア、リューの顔で行
われているのだから、この進化は、『マトリックス』以上と
言えるかも知れない。                 
また、今回のアクションはかなりコミカルに演出されている
感じなのだが、かなりはちゃめちゃなアクションが平然と行
われているのには、感心と言うか、感動的ですらあった。 
もちろん完成品を見なければ最終的な判断は出来ないが、こ
の特別映像のアクションのテンションが保たれるのなら、か
なり楽しめそうだ。                  
それに加えて、3人のファッションやら、ダンスシーンやら
…、ということで、見所はかなりありそうな感じ。完成披露
試写は6月17日に予定されている。           
                           
『コンフェッション』“Confession of a Dangerous Mind”
『ゴング・ショー』が懐かしいチャック・バーリスが執筆し
た原作を、チャーリー・カウフマンが脚色、ジョージ・クル
ーニーが監督第1作として映画化した作品。       
テレビ創成期のどたばたを描いた自伝的部分と、実はバーリ
スがCIAの訓練で鍛えられた殺し屋だったというフィクシ
ョンが交錯する物語。                 
カウフマンは、『アダプテーション』ではノンフィクション
の脚色の難しさを訴えつつ、見事にフィクションとの融合を
実現して見せたが、本作では、最初からノンフィクションと
フィクションの入り混じった原作を脚色した訳だ。    
実は、僕はもっとコミカルなものを期待して行ったのだが、
かなりシリアスというか、真面目な雰囲気に驚いた。もちろ
ん笑いを取るシーンもあるのだが、全体的には、真面目な印
象が残る。                      
ところが、話自体はかなりいい加減というか、コミカルな物
語なのだから、実はちょっと困ってしまった。これをお笑い
として見られる感覚があればいいのだが、僕にはそれができ
なかった。多分、これが本当に実話だったら、これで納得で
きたのだろうが…。                  
ただし、真面目な物語としてみれば、かなりいいお話にはな
っている。いろいろなことに正面から真剣に取り組もうとす
るバーリスの美化されたイメージは、それなりに理解できる
し…、だから作品自体は気に入っている。        
正直に言って、僕自身、まだ混乱しているところなのだ。 
主演のサム・ロックウェルは、屈折した主人公をよく演じて
いるし、特に後半『ゴング・ショー』を再現した部分のバー
リスの姿は、自分で覚えている番組の中のバーリスそっくり
で感心した。                     
また『ゴング・ショー』時代のタレントたちや、最近のスタ
ーのカメオ出演も楽しめた。              
そういえば、昔Unknown Comicが出演する“Night Patrol”
という映画のLDを買って持っていたはずだが、どこにある
のだろう。                      
                           
『28日後...』“28 Days Later”            
『トレインスポッティング』などのダニー・ボイルが監督し
た2002年作品。ボイル監督、レオナルド・ディカプリオ主演
で映画化された『ザ・ビーチ』の原作者アレックス・ガーラ
ンドのオリジナル脚本の映画化。            
突然蔓延した人の凶暴性を増進させるウィルスによって、ほ
とんどの人間が28日間で死滅した後のイギリスを舞台にした
終末もの。                      
作者は、J・G・バラードをイメージして書き上げたストー
リーということだが、バラードというよりは、ジョン・ウィ
ンダムやジョン・クリストファーなど、もう一世代前のイギ
リスの破滅ものの雰囲気が感じられる。         
実際、この作品はイギリス映画であって、ウィンダムの『ト
リフィドの日』を映画化した『人類SOS』や、クリストフ
ァーの『草の死』を映画化した『最後の脱出』のような雰囲
気がよく出ていて、その伝統が守られている感じがした。 
最近のイギリスを舞台にした終末ものでは、先に公開された
『サラマンダー』があるが、VFX満載の作品に比べ、それ
に頼らなかった分だけ雰囲気は正統に近い。また、ケヴィン
・コスナーの諸作のように主人公がヒーロー振らないところ
も良い感じだった。                  
それにしても、イギリス軍の志気の低さと弱体さが描かれて
いるのは笑えるし、最後は、物語の流れからいって多分アメ
リカ軍に救われるというのも、皮肉っぽくて良かった。  
                           
『ミニミニ大作戦』“The Italian Job”         
69年に公開された同名のイギリス作品のリメイク。    
と言っても、オリジナルはイタリアのトリノが舞台で、本作
の舞台はロサンゼルス。それに犯行の手口も全く違うのだか
ら、わざわざリメイクとしなくても良さそうなものだが、ミ
ニクーパーを駆使した金塊強奪というアイデアだけで著作権
が成立しているようだ。                
しかし、一応はオリジナルに敬意を表したのか、発端はイタ
リアのヴェネチアというのが気が利いている。この水の都の
水路を駆使した作戦で、主人公たちは大量の金塊を盗み出す
のだが、裏切りで年長の金庫破りが殺され、金塊は奪われて
しまう。                       
そう言えば、オリジナルの映画は、飛んでもないクリフハン
ガーで終っていたものだが、当時に出たノヴェライズによる
と、主人公たちは金塊を持ってイギリスに帰り着くものの、
そこで奪われてしまうという結末になっていた。     
従って、本作の発端でイタリアで奪った金塊を奪われてしま
うという展開は、ある意味、オリジナルを引き継いでいると
言えないこともない。                 
そして1年後、金塊の行方を追ってロサンゼルスに潜伏する
裏切り者を見つけ出した主人公は、父親譲りの金庫破りの腕
を持つ娘を巻き込んで、金塊奪還の作戦を立てる。それはロ
サンゼルスに大渋滞を引き起こし、その中をミニで突破する
というものだった。                  
オリジナルは、イギリス映画らしいユーモアに溢れた、アク
ションと言うよりは小粋な犯罪コメディという感じで、カー
チェイスも円形断面の下水道の中をミニが左右に大きく揺れ
ながら突っ走るシーンが印象に残っている程度だ。    
このシーンは今回も再現されているが、オリジナルでは主人
公たちの後をやはり小型車のパトカーが追いかけたものが、
アメリカのパトカーではそうは行かず、バイクになっている
のはご愛嬌だ。                    
それに加えて今回は、地下鉄や小型ヘリコプターなど、いろ
いろなアクションが取り揃えられていて、さすがに21世紀版
のリメイクという感じがした。             
なお、映画の中でテレビに白黒映画が映っているシーンがあ
り、その作品が何かと思ったら『アルフィー』だった。これ
はオリジナルに主演したマイクル・ケインに敬意を払っての
ことだろう。                     
それからもう一つ、発端部分の老金庫破りの役でドナルド・
サザーランドが出ているが、彼が『M★A★S★H』でブレ
イクする直前に出演した『戦略大作戦』という作品は、本作
のオリジナルを執筆したトロイ・ケネディ・マーティンの脚
本によるものだった。                 
しかしこの作品は、僕にとっても期待外れだったもので、サ
ザーランドはある意味、その批判の矢面に立たされたところ
がある。それを考えると、サザーランドにとって本作は積年
の思いを遂げた出演というところかも知れない。     
ちょっと長めに書いてしまったが、実は本作がリメイクであ
ることは、試写会で配られたプレスシートにもほとんど触れ
られていない。このため翌日見に行った別の試写会でも、そ
のことを知らないで話している人がいて、思わず説明をして
しまったほどだ。                   
リメイクというのが、必ずしも宣伝にはならないのかも知れ
ないが、邦題もわざわざオリジナルと同じにして、話題のネ
タも沢山あるのに、もったいない感じもした。      
                           
『シェフと素顔と、おいしい時間』“Decalage Horaire” 
シャルル・ドゴール空港を舞台に、ストで足止めを喰った男
女の巡り会いを、ジャン・レノとジュリエット・ビノシェの
共演で描いたロマンティック・コメディ。        
男は、フランスの田舎町に店を開く同業の父のもとを飛び出
し、アメリカで成功した料理人で、ドイツで行われる元恋人
の母親の葬儀に向かう途中、天候の悪化で搭乗機がシャルル
・ドゴールに着陸、そのまま足止めを喰ってしまう。   
女は、コンテストの優勝経験もある美容師で、12年間耐えて
きた夫の暴力から逃れるために、アカプルコのホテルの美容
室に職を見つけ、無断で家を出て空港までやってきた。しか
し足止めとなったために、夫が追いかけてくる恐怖を感じて
いる。                        
そして彼女は、家に残した置き手紙を廃棄させようと、家族
に電話連絡を取るために、男の携帯電話を借りる。こうして
2人は巡り会い、ドラマが始まる。           
片や、ホテル客室の煙草の残り香まで気にする繊細な男と、
片や、厚化粧で香水を振り撒きながら、素顔は裸でいるよう
な気分と言い切る女。そんな生き方も考え方もまるで違う2
人が、出会いから恋を育んで行く様子が描かれる。    
まあ、特殊なシチュエーション、特別な境遇の登場人物と言
うことで、言ってみれば夢物語ではあるけれど、ルルーシュ
の『男と女』の昔から、フランス映画の伝統を守るロマンテ
ィックドラマと言うところだ。             
ただし、主演2人のキャラクターのお陰で、かなりコメディ
タッチなのが今風と言える。それに携帯電話の使い方が、実
に上手くて、その辺も良い感じで見られる作品だった。  
脚本は、監督も手掛ける女流のダニエル・トンプソンと彼女
の息子のクリストファー。因にトンプソンは、『大進撃』な
ど一連の往年のフランスコメディ映画の脚本を、父親で監督
のジェラール・ウーリーと共に手掛けたことでも知られる。
それにしても、ビノシェが厚化粧から素顔になったときの美
しさが見事。普通は化粧をして美しくなるものだが、その逆
をできるのは、女優でも中々いない。          
それとビノシェは、前作『ショコラ』ではチョコレートをい
ろいろ料理してみせてくれたが、今回は一つを除いてジャン
・レノが作る料理を食べるだけというのも良かった。   
                           
『レボリューション6』“Was Tun, Ween's Brennt?”   
現代のドイツの過激派の行動を描いたエンターテインメント
作品。                        
舞台は現代のベルリン。旧西ベルリン地区の一角の廃屋だっ
た屋敷で爆発が起こる。それは15年前に時限爆弾を仕掛けた
ものの、不発に終った装置が偶然作動したものだったが、現
代も残る過激派の行動に手を焼く警察は、それをきっかけに
一斉捜索に乗り出す。                 
そして、その内の2人が住むアパートから多量の映画フィル
ムが押収される。ところがそのフィルムの中に、15年前に時
限爆弾を作ったときの記録映像が紛れ込んでいた。その事実
に気付いた2人は、当時の仲間に連絡を取る。      
仲間達は2人を残して普通の生活に戻っており、シングルマ
ザーや各方面で活躍する人材になっていた。しかしフィルム
が警察の目に留まれば、彼らへの訴追は免れない。彼らは現
在の生活を守るためにフィルムを奪還しなければならなくな
る。                         
そして大人の知恵で警察内部に入り込んだ彼らは、フィルム
の保管場所は確認するが、そのままでは手出しができないこ
とを知る。そこで彼らは、新たに時限爆弾を作って、フィル
ムもろとも破壊してしまう計画を立てたのだが…。    
20歳前後の若気の至りの結果が、30代半ばの生活を脅かす。
しかし物語は、それほど深刻振らずに、こんなことがきっか
けで青春時代を取り戻してしまった男女の行動を、ちょっと
したメルヒェンタッチで描いている。          
当然、当時活動をしていた連中も現存している状況で、そん
な題材をメルヒェンタッチのエンターテインメントで描いて
しまうことには抵抗もあるだろうが、僕にとってはちょっと
ノスタルジックな青春ドラマという感じで好ましい作品だっ
た。                         
                           
『10日間で男を上手にフル方法』            
           “How to Lose a Guy in 10 Days”
今年の2月に全米で公開され、興行収入1億ドルを突破して
いるラヴコメディ。                  
女性の主人公は、女性雑誌の記者。コロムビア大学を卒業し
社会派ネタで勝負したいが、雑誌の性格はそれを許さない。
そんな彼女が、同僚のフラレ癖の女性の姿をヒントに、男を
10日間でフル方法の特集記事を、実体験でまとめることにな
る。                         
男性の主人公は、広告代理店のクリエイティヴ。彼はダイア
モンド業者の広告を獲得するために、10日間で初対面の女性
を恋人にしてみせるという賭けを受ける。        
こうして男をフルことに全力を上げる女と、彼女をものにし
なければならない男の勝負が始まるのだが…。      
正直言ってかなりシチュエーションに無理のある物語だが、
それでもアメリカで大ヒットしたのは、それなりに的を得た
描き方をしているからだろう。試写会の後でも「反省しなく
ちゃ」などといっている女性がいたから、そういう客層が動
けば面白くなりそうだ。                
男の立場からすれば、かなり嫌みな部分もあるが、それなり
に笑える部分もある。女性向けの映画だとは思うが、デート
ムーヴィとして使えば、女性が反省してくれるかも知れない
と言うところか?                   
主演は、マシュー・マコノヒーと、ゴーディ・ホーンの娘で
『あの頃ペニー・レインと』のタイトルロールを演じたケイ
ト・ハドソン。なお、ダイヤモンドなどの装飾品やファッシ
ョンも、かなり豪華なものが使用されているようだ。   
                           
『タイタニックの秘密』“Ghosts of the Abyss”
映画史上最高のヒット作『タイタニック』のジェームズ・キ
ャメロン監督が、映画の巻頭シーンでも登場させた、北大西
洋に沈む本物のタイタニック号の撮影に再び挑んだドキュメ
ンタリー。しかもIMAX−3Dで上映されるという作品。
ただし、今回僕が見せてもらったのは2Dのヴィデオ版なの
だが、実はIMAX版の45分より長い上映時間60分のヴァー
ジョンということで、公開版にはないシーンも含まれている
というものだ。                    
内容は、挑戦に同行した俳優ビル・パクストンのナレーショ
ンで進められ、母船上での準備の様子や、実際の水深3650メ
ートルの深海に横たわるタイタニック号の映像で綴られる。
ここまではよくあるスタイルだが、今回は、さらにこれにC
GIなどで再現した映像を合成して往時の姿を偲ばせる。そ
の演出の巧みさは、さすがにキャメロンの作品という感じだ
った。                        
実際、ロボットカメラで撮影された船内の映像などは、その
大きさが把握しにくいが、そこに往時の姿の再現が合成され
ることで、そのスケールが如実に感じられる。      
しかしそのためには大変な費用と手間暇が掛けられた訳で、
これはキャメロンにしかできなかったというところだろう。
彼のタイタニックに対する思いが感じられた。      
ただ、今回、本編の撮影はソニーのシネアルタ(HD-24P)シ
ステムで行われていて、それをIMAXで上映することには
一抹の不安がある。しかしそれは実際のIMAX上映を見な
いことにはなんとも言えないところで、それはまた改めて報
告することにしよう。                 


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井口健二