井口健二のOn the Production
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2003年06月15日(日) 第41回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずは新しい計画の話題から。            
 昨年公開された『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は、ち
ょっと日本人の嗜好には合い難かったようだが、アメリカで
はかなりのヒットを記録したウェス・アンダースン監督の新
作の計画が、前作と同じタッチストーンから発表された。 
 新作の題名は“The Life Aquatic”。コメディ・アドヴェ
ンチャー作品と紹介されているが、この新作に、『テネンバ
ウムズ』のビル・マーレイ、アンジェリカ・ヒューストン、
オーウェン・ウィルスンらに加えて、ジェフ・ゴールドブラ
ム、バッド・コートの出演が発表されている。      
 お話は、海洋学者のチームが深海底で神秘的な鮫を捕獲し
ようとしたことから、思いも寄らぬ災難に巻き込まれるとい
うもの。このお話を、上記のメムバーで描くという訳だ。 
 そしてさらにこの作品の制作に、ティム・バートン製作の
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『ジャイアント
・ピーチ』などのストップモーション・アニメーション作品
を監督したヘンリー・セリックが協力することが発表されて
いる。海の中の情景をセリックが担当するということだが、
CGIなどとは違うストップモーション・アニメーションの
映像が、どのように活かされるのだろうか。       
 撮影は、今年の9月からイタリアでのロケーションと、ス
タジオはローマのチネチッタを使って行われることになって
いるが、実写にストップモーション・アニメーションが絡む
となると、完成はちょっと先になりそうだ。       
        *         *        
 お次はライオンズ・ゲイトの製作で、“Final Cut”とい
うSFスリラー作品の撮影が6月29日に開始される。   
 この作品は、オマー・ナイムという新人の映画作家の脚本
監督によるもので、内容は、人の体内にその人物の行動を記
録するマイクロティップが埋め込まれ、死後、そのマイクロ
ティップを取り出して、その記録から人物の人生のハイライ
トシーンを映像化し、愛する遺族に贈ることになっていると
いう世界を舞台にしたもの。              
 何か、よく似たテーマの日本映画があったような気もする
が、ハリウッドリメイクが予定されているその作品の計画で
はなく、独自に計画されている作品のようだ。      
 そして、この作品の主演にロビン・ウィリアムスとジム・
カヴィエゼルが発表されている。            
 なおカヴィエゼル役柄は、そのテクノロジーに反対するグ
ループのリーダーということで、SFスリラーという紹介か
ら考えて、このテクノロジーには何か裏がありそうだが、カ
ヴィエゼル役柄は、単純な反対運動から、やがて政治的な陰
謀に巻き込まれて行くというようなものなのだろうか。  
 一方、ウィリアムスは最近悪役付いているが、今回の役柄
が善人か否か判らないのも味噌になりそうだ。      
 因にカヴィエゼルは、メル・ギブスンの監督でキリストを
演じた“The Passion”の撮影はすでに完了、ポストプロダ
クションに入っている他、8月23日全米公開でニューライン
配給の“Highwayman”という作品が控えているそうだ。  
        *         *        
 ジョン・マルコヴィッチとジョニー・デップの共演で、17
世紀のイギリス王宮を舞台にした作品が計画されている。 
 作品の題名は“The Libertine”で、内容は1647年に生ま
れ、80年に33歳で亡くなった詩人ジョン・ウィルモット・ロ
チェスターの生涯を描くというもの。元々はスティーヴン・
ジェフリーが発表した戯曲があり、その舞台ではマルコヴィ
ッチがロチェスターを演じていたということで、数年前から
その舞台劇の映画化が計画されていたものだ。      
 しかし、マルコヴィッチとデップの共演という陣容は初め
から発表されていたものの、なかなか製作体制が整わず。当
初は2300万ドルと言われた製作費を、1600万ドルにまで切り
詰めて、ようやく12月からの撮影が実現できそうだというこ
とだ。                        
 なお今回の発表で、マルコヴィッチはイギリス国王チャー
ルズ2世役を演じることになっており、ロチェスター役をデ
ップが演じることになるようだ。他に、サマンサ・モートン
の共演が発表されている。               
 またこの計画では、以前はマルコヴィッチの監督が期待さ
れていたものだが、今回の発表で監督には新人のロウレンス
・ダンモアが起用されることになっている。ダンモアはコマ
ーシャル監督として実績を上げており、マルコヴィッチとは
「ユーロスター」のコマーシャルで一緒になって、力量を見
極めたマルコヴィッチが抜擢を決めたということだ。   
 物語は、舞台劇からさらに脚色されるということで、マル
コヴィッチの発言によると「高度に文学的で、極めて猥褻、
セクシーで騒々しい断片からなる」そうだが、一体どのよう
な作品なのだろうか。                 
 因にロチェスターに関しては、チャールズ2世の側近など
も勤めた人物で、その作品は「知的で、懐疑主義的な風刺詩
に優れていた」ということだが、その一方で、本人について
は「性の競技者」などという表現もされており、かなり奔放
な生涯を送った人物のようだ。その役柄をデップがどのよう
に演じるかも楽しみだ。                
        *         *        
 続いては、続編の話題をいくつか紹介しよう。     
 まずは、1995年にジョン・トラヴォルタ、ジーン・ハック
マン、レネ・ルッソ、ダニー・デヴィートらの共演で映画化
された『ゲット・ショーティ』の続編の計画が、オリジナル
を公開したMGMから発表された。           
 実はこの計画は、前作のプレミアの行われた日に、当時の
MGMのトップだったフランク・マンクーソが、原作者のエ
ルモア・レナードに「続編のアイデアはないか」と話し掛け
たことから始まったというものだったが、紆余曲折の末によ
うやく実現に漕ぎ着けたということだ。         
 そして映画の主人公のチリ・パルマー役で、ジョン・トラ
ヴォルタの再登場も発表されている。          
 なお映画は、レナードがこのために書き下ろした小説“Be
Cool”に基づいて行われるもので、前作でマイアミからハ
リウッドに乗り込んできた主人公が、1作ヒット作は生み出
したものの、その後は凡作を連発。結局、映画をあきらめた
主人公は、今度はプロモーターになって、ロシアン・マフィ
アにつきまとわれる歌手のため、口八丁手八丁の活躍をする
というものだそうだ。                 
 さらに今回の計画では、前作を監督したバリー・ソネンフ
ェルドに代って、ブレット・ラトナーの参加が検討されてい
る。ラトナーは、『レッド・ドラゴン』を大ヒットさせたと
ころだが、以前に紹介したようにワーナーで進められていた
“Superman”からの降板は決まっており、次回作にはニュー
ラインで“Rush Hour 3”の計画を進めている。      
 従って、MGMとの交渉でも“Rush Hour 3”の次という
形で話し合われているようだが、実際は“Rush Hour 3”の
実現には、クリス・タッカー、ジャッキー・チェンの出演料
など、難問が山積みになっており、もしかするとMGMがニ
ューラインに申し入れをして、今回の計画を先行させる可能
性もあるようだ。                   
 一方、トラヴォルタは、現在撮影中の“Ladder 49”に続
いて前回紹介したコミックスの映画化“The Punisher”の敵
役が予定されており、さらにその後には“A Love Song for
Bobby Long”という作品が控えていて、それが片づくのは秋
口ということになるが、そこには以前紹介したディメンショ
ン製作“Harvey”のリメイクの計画が予定されている。  
 ということで、最終的にはトラヴォルタが、“Be Cool”
と“Harvey”のどちらを取るかということになるようで、い
ずれにしても事態は流動的なようだ。          
        *         *        
 お次は、昨年の東京ファンタスティック映画祭で上映され
た“Astérix & Obelix: Mission Cleopatra”に続く、同シ
リーズの第3弾の計画がちょっと危なくなっている。   
 “Astérix & Obelix”のシリーズは、元々はレネ・ゴシェ
ニーとアルバート・ウダーゾが1961年に第1巻を発行したフ
ランスの人気コミックスに基づくもので、古代ガリア人戦士
のアステリックスとオベリックスを主人公に、この2人が、
ポパイのほうれん草のような秘薬を武器に、フランスからロ
ーマ帝国、エジプト、アメリカ、果てはアトランティス大陸
までを旅して、いろいろな歴史上の人物と共に、奇想天外な
騒動を巻き起こすというもの。原作コミックスは、僕の手持
ちの資料では96年までに30巻が発行されているようだ。  
 さらにこのシリーズは、1967年に原作コミックスの第1巻
“Astérix le Gaulois”が、ゴシェニーの脚色でアニメーシ
ョン化されたのを皮切りに、フランスとドイツで94年までに
7作が製作されている。                
 そして1999年に、満を持しての実写シリーズがスタートし
たもので、ジェラール・ドパルデューとクリスチャン・クラ
ヴィエを主演に迎えた第1作の“Astérix & Obelix contre
César”では、さらに、ゲスト出演者にロベルト・ベニーニ
を招く豪華版で映画化されている。           
 また、2001年に製作された第2作では、クレオパトラ役で
モニカ・ベルッチが登場し、この作品はフランスだけで1450
万人の動員を記録して、2002年度の最大のヒット作になって
いるということだ。                  
 そのシリーズの第3弾の計画が発表されたのは、昨年の11
月。その英語題名は“Asterix 3: Asterix in Spain”と発
表され、これは1969年に発行された原作コミックスの第14巻
“Astérix en Hispanie”に基づくものになるようだった。
 また、製作は前2作も手掛けたクロード・バリのレン・プ
ロダクションとパテ。監督は毎回交代して今回はジェラルド
・ジュノー。さらに配役では、一時降板が伝えられたアステ
リックス役のクラヴィエも再登場が発表されたのだが…。こ
の製作計画は、著作権を持つウダーゾと77年に亡くなったゴ
シニーの遺族、それに出版社ら権利者たちの了承を得られて
おらず、現状では製作が不可能になっているということだ。
 一方、フランスのM6というプロダクションが、英語題名
“Asterix and the Vikings”というアニメーション作品の
計画を発表。こちらは権利者たちの了承を得られているよう
だが、この計画は、デンマーク人の監督と、ベルギー人の脚
本、俳優によるもので、実写版を計画しているフランス映画
人への当て付けとも見られている。           
 パテにとっては、ヒット間違いなしの作品を失うことにな
る訳だが、これは1社だけの問題ではなく、ドパルデュー、
クラヴィエを迎えた作品は、フランス映画界にとっても久々
のヒットシリーズだった訳で、それを失う痛手はかなり深刻
なようだ。恐らくは、前2作の儲けの分配辺りで揉めている
のだろうが、早く決着してもらいたいものだ。      
        *         *        
 続編の3つめの話題は、98年に第1作が公開され、昨年第
2作が公開されたニューラインシネマの“Blade”(ブレイ
ド)シリーズ第3弾の計画が発表された。        
 このシリーズは、70年代にマーヴル・コミックスから発表
されたマーヴ・ウルフマン原作の“Tomb of Dracula”に登
場するアフリカ系アメリカ人の脇役キャラクターを主人公に
据えて、脚本家のデイヴィッド・S・ゴイヤーが作り上げた
もので、前2作は、製作も担当するウェズリー・スナイプス
が主演し、ワールドワイドの合計では2億7700万ドルを稼ぎ
出しているということだ。               
 その第3弾が計画されているものだが、製作主演はもちろ
んスナイプス、そして監督を第1作のスティーヴン・ノリン
トン、第2作のギレルモ・デル・トロに替って、脚本家のゴ
イヤー自身が担当すると発表されている。なおゴイヤーは、
先にスナイプスとジョン・レグイザーモ共演の“Zig Zag”
という作品を脚本監督で発表して、限定公開ながら高い評価
を得ているということで、その力量は実証済みのようだ。 
 ということで、シリーズ第3弾“Blade III”が製作され
ることになった訳だが、現実的な契約はまだなされていない
ようだ。しかしニューラインでは、今年の夏にカナダのヴァ
ンクーヴァでの撮影を期待しているそうだ。昨年の『ブレイ
ド2』はチェコのプラハで撮影され、ちょっと古びた町並が
登場したが、ヴァンクーヴァはニューヨーク・ロケの代わり
にも使われる近代的な町並で、その近代的な背景でのブレイ
ドの活躍も楽しみだ。                 
 今年の夏の撮影ということは、公開は来年の春頃が期待で
きそうだ。                      
        *         *        
 お次は、またまたリメイクの話題を紹介しておこう。  
 最初は、以前にも紹介したと思うが、アーノルド・シュワ
ツェネッガーの製作でワーナーが進めている“Westworld”
(ウェストワールド)のリメイクで、脚本に『ターミネータ
ー3』を担当したマイクル・フェリスとジョン・ブランケイ
トの起用が発表された。                
 オリジナルは、73年にマイクル・クライトンの脚本、初監
督で製作された作品だが、ロボットテクニックを駆使して西
部劇の舞台を模して作られたアミューズメントパークが、コ
ンピューターの暴走でパニックに陥るという内容。特に、感
情のないロボットのガンマンに扮したユル・ブリナーの演技
が評判になったものだ。                
 このMGMで製作された作品の再映画化の権利は、現在は
ワーナーが所有しており、その権利に基づいたリメイクを、
シュワルツェネッガーが以前から希望していた。そしてその
脚本に『T3』のコンビが起用されたもので、この起用は、
『T3』に出演したシュワルツェネッガーが強く要望したも
のだそうだ。                     
 なおこのリメイクで、シュワルツェネッガーが演じるのは
ロボットガンマンの役ではなく、ワールドを訪れてパニック
に巻き込まれる観客ということで、共同製作を担当するジェ
リー・ウェイントルーブは、「ワールドの規模はオリジナル
よりずっと大きくなる。そして、できればアーノルドの次回
作にして、彼が州知事になってしまう前に完成させたい」と
いうことだ。                     
 因に、脚本家の2人は、ハーヴァード大学の出身で、学生
時代はパロディ雑誌Harvard Lampoonの執筆陣にも加わって
いたようだが、脚本家としては、『ゲーム』や『ザ・インタ
ーネット』などの知的なスリラー作品を発表している。そし
て『T3』には、監督のジョナサン・モストウがハーヴァー
ド時代の同級生ということで、監督の要請で参加したものだ
そうだ。                       
        *         *        
 もう一つリメイクは、76年にジョン・カーペンターの監督
で映画化された“Assault on Precinct 13”(要塞警察)の
リメイクが計画されている。              
 オリジナルは、ハワード・ホークスの名作西部劇『リオ・
ブラボー』にインスパイアされた作品で、ロサンゼルスの半
ば放棄された警察署を舞台に、警察に不満を持つギャング団
との壮絶な銃撃戦を描いたもの。最終的には、警察スタッフ
側に収監されていた容疑者までもが協力して、ギャング団と
の戦いを繰り広げるというものだ。           
 そしてこの作品の再映画化権をフォーカス・フィーチャー
ズが獲得して、ユニヴァーサルとの間で配給を確立してリメ
イクに臨むものだ。                  
 物語は、舞台を現代化し、警察署内の設備も21世紀にマッ
チしたものにするということだが、オリジナルにはかなりの
カルト的なファンがいるということで、彼らを納得させる作
品を造り出すことはかなり至難の技になりそうだ。    
 しかし製作者は、「カーペンターは西部劇を都会に持って
くることで成功させた。我々はさらにそれをより洗練され、
スピード感に溢れた面白い作品にする」として、成功を確信
しているようだ。                   
        *         *        
 最後にキャスティングの情報で、マーティン・スコセッシ
が監督し、レオナルド・ディカプリオがハワード・ヒューズ
を演じる伝記映画“The Aviator”に、ケイト・ブランシェ
ット、ジョン・C・ライリー、ケイト・ベッキンセイル、グ
ウェン・ステファーニの共演が発表されている。     
 この内、ブランシェットが演じるのはキャサリン・ヘップ
バーン、ベッキセイルの役はエヴァ・ガードナー、そしてス
テファーニはジーン・ハーロウの役だそうだ。またライリー
は、ヒューズの右腕だったノア・ダイエットリッチを演じる
ことになっている。                  
 なお、ステファーニは本業ロックシンガーだそうで、俳優
としての映画出演は初めてのようだが、昨年公開されたベン
・スティラー監督主演の『ズーランダー』には、本人の役で
出演していた他、テレビドラマのゲスト出演の経験はあると
いうことだ。                     
 撮影は7月にカナダのモントリオールで開始され、製作費
は1億ドル以上が予定されているそうだ。        


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