井口健二のOn the Production
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2003年06月01日(日) 第40回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずは待望の、この監督の新作の話題から。      
 『シックスセンス』『アンブレイカブル』『サイン』の3
作品をディズニーから発表しているM・ナイト・シャマラン
監督が、新たにディズニーと2作品の契約を結び、その1本
目の計画が発表された。                
 発表された作品の題名は、“The Woods”。1897年を時代
背景に、森に囲まれ、因習で固められたような部落で暮らす
人々と、その森に棲む不思議な生物との交流を描いた物語と
いうことで、もちろん脚本もシャマランが執筆している。 
 そしてこの作品には、00年公開『レインディア・ゲーム』
などに出演したアシュトン・カッチャーと、『サイン』でメ
ル・ギブスンの弟役を演じたジョアキン・フェニックスが主
役を務めることが発表された。             
 一方、シャマランの作品では、今まで女性が重要な登場人
物になることは少なかったが、今回は初めてヒロインが登場
するということで、その女優には、当初はキルスティン・ダ
ンストの起用が発表されていた。これはシャマラン自身が彼
女を想定して脚本を執筆したというものだったのだが…。 
 ところがダンストは、撮影中の“Spider-Man”の続編に続
いて“Wimbledon”への主演が決まっており、さらにキャメ
ロン・クロウ監督の次回作への主演も予定されているという
ことで、この秋に撮影される計画のシャマラン作品への出演
は不可能ということになってしまった。         
 このため急遽キャスティングが検討され、後任にブライス
・ダラス・ハワードという21歳の新人の抜擢が発表された。
なおハワードは、昨春までニューヨーク大学の演劇プログラ
ムに在籍し、その後は各地の劇場で演劇活動を続けてきたと
いうことだが、名前から気付かれた人もいると思うが、実は
『アポロ13』などの監督ロン・ハワードの娘ということで、
血筋は抜群の新人のようだ。              
 因に、ロン・ハワードは俳優出身の監督だが、彼の父親の
ランス・ハワードも、舞台演出なども手掛ける俳優兼脚本家
で、ブライスは俳優一家の3代目ということになる。   
 “The Woods”の撮影は10月にフィラデルフィアで開始さ
れ、公開は04年夏の予定になっている。         
 ということで、シャマランとディズニーの2本契約の1本
目を紹介したが、実は、ディズニーが監督と2本契約を結ぶ
場合には、その2本は連続で製作することが条件とされるの
が通常なのだそうだ。しかし今回の契約では、すでにシャマ
ランがディズニーで3本連続で監督していることも考慮され
たのか、連続という条件は付けられていない。      
 そしてシャマランは、「魅力を感じる原作本」のオファー
があったら、“The Woods”とその次のディズニー作品との
間に他社の作品も監督する可能性があると発言している。実
際、シャマランは以前にコロムビアで、E・B・ホワイト原
作の『スチュワート・リトル』の脚色を手掛けたことがある
訳で、オリジナル作品は難しいが、原作ものの映画化なら、
今回は監督も含めて可能性があるようだ。        
 ただしシャマラン自身は、すでにディズニーで次に手掛け
るオリジナル作品の構想もまとめ始めているという話もある
ようで、そこに割り込むには、かなり魅力的な原作を用意す
る必要がありそうだ。それからシャマランは、今回のディズ
ニーとの契約では1本当り8桁($)の金額が記載されてい
るということで、その金額も用意する必要があるようだ。 
        *         *        
 続いても待望の情報で、以前から紹介しているロアルド・
ダール原作“Charlie and the Chocolate Factory”の2度
目の映画化に、ティム・バートンの監督が発表された。  
 因にバートンは、現在はロンドンに居住して、コロムビア
製作“The Big Fish”の仕上げに掛かっているが、その後に
はワーナーで2作品の契約を結んでおり、その1作目に予定
されているストップモーションアニメーション作品の“The
Corpse Bride”に続いて、本作に取り掛かる計画のようだ。
 なおダールの原作は、71年にジーン・ワイルダーの主演で
1度目の映画化がされているが、実は、原作者のダールはこ
の映画化が気に入らなかったのだそうで、このため91年頃に
ワーナーがリメイクの計画を立上げたものの、90年に亡くな
ったダールの著作権を管理している遺族の許可がなかなか得
られなかったということだ。              
 そして98年にようやく許可が下り、直ちにスコット・フラ
ンクや、パラマウントで同じくダール原作の“The BFG”の
脚色を手掛けたグイン・ルウリーらが脚色を行ったものの、
これらの脚色では遺族側の了解を得られなかったものだ。 
 一方、バートンは、93年に製作したストップモーションア
ニメーション作品の“The Nightmare Before Christmas”が
ダールの考えに近いものと評価され、さらに96年には正真正
銘ダール原作の“James and the Giant Peach”の製作も手
掛けている。なおこれらの作品は、いずれもヘンリー・セリ
ックが監督したものだが、その基本的なヴィジョンはバート
ンが提供したものということだ。            
 ということで、ワーナーとしては、すでに遺族側の評価も
得ているバートンを迎えることで、一気に映画化を進めたい
という思惑のようだ。またワーナーでは、映画化に続けてブ
ロードウェイでのミュージカル化も期待していると伝えられ
ている。                       
 ただしバートンは、監督するに当っては、当然のことなが
ら先に作られた脚本を採用せず、原作を自ら再イメージ化す
るということで、まずはその脚本の執筆に掛かることにして
いる。そしてロンドンで“The Corpse Bride”の製作を進め
ながら、本作の撮影を行うとしており、この計画だと、2作
品は同じ時期に製作されることになるようだ。      
 なお“The Corpse Bride”の製作は、マイク・ジョンスン
という監督がバートンのヴィジョンに従って行うことになっ
ている。                       
 いずれにしても、この計画はバートンの脚本待ちというこ
とになりそうだが、ワーナーとバートンでは、以前にも脚本
待ちのままになってしまった企画があり、ワーナーとしては
戦々恐々というところだろう。もっとも今回は、バートンと
ダールは考え方が近く、バートンは自然体で脚色に当れるの
で、以前のようなことはないだろうということだが。   
 なお“Charlie and the Chocolate Factory”の映画化の
製作は、ブラッド・グレイ、ブラッド・ピットとジェニファ
ー・アニストンが、最近ワーナーに設立したプロダクション
「プランB」が担当することになっている。       
        *         *        
 お次はちょっとレトロなヒーロー復活の話題で、20世紀の
初頭に一世風靡した“Arsene Lupin”を、本家本元のフラン
スで映画化する計画が発表された。           
 怪盗アルセーヌ・ルパンは、1905年にフランスの作家モー
リス・ルブランによって創造された盗賊であり、また探偵と
しても活躍したヒーローだが、ルブランは41年に亡くなるま
でに全部で56編のルパン・シリーズを発表している。   
 同時にルパンは、無声映画時代からスクリーンに登場し、
その第1作は、1917年にアメリカでアール・ウィリアムス主
演による映画化が記録されている。なおこの作品は、それ以
前に発表された舞台劇を映画化したものだったそうだ。  
 さらに18年にはロシアでも映画化され、19年、20年にアメ
リカ、そして23年には、日本の溝口健二監督が『813』を
映画化するなど、今回報告された記事によると、今までに15
本の長編映画化と、3回のテレビシリーズ化が記録されてい
るということだ。                   
 そのルパンが、映画では1962年にフランスで映画化されて
以来の復活になるというものだが、今回の発表では、ルパン
役を、最近フランスで“Europudding”という作品が評判に
なったルメイン・デュリスという俳優が演じ、相手役には、
クリスティン・スコット=トーマスが、カリオストロ伯爵夫
人役で共演するということだ。             
 伯爵夫人が登場するということは、1924年に原作が発表さ
れた“La Contesse de Cagliostro”を映画化することにな
りそうだが、20世紀初頭のパリとノルマンディを舞台に、青
年時代のルパンが活躍する物語に、ちょっと新しい解釈を加
えて脚色されているということだ。           
 監督は、ソフィー・マルソー主演の“Belphegor”などを
手掛けたジャン=ポール・サロメが担当し、8月からの撮影
が予定されている。                  
 なお、話はちょっと変わるけれど、現在撮影中のシリーズ
第3作“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”で、
今回のゲストキャラクターとなる新任の先生の名前は、原書
ではLupinと表記されているが、日本版の翻訳ではルーピン
となっている。これは明らかに間違いだと思うのだが、来年
公開の映画の字幕や吹き替えでは、やはり翻訳書に合わせな
くてはいけないのだろうか。              
        *         *        
 怪盗ルパンに対抗するのは、やはり名探偵シャーロック・
ホームズという訳で、その映画化の計画も発表されている。
 といっても今回計画されているのは、現代のニューヨーク
を舞台にしたお話で、NY市警察の新米刑事が、実は自分が
名探偵の曽々孫であることを発見するというもの。そして難
事件を次々に解決し、一躍マスコミの寵児となって持て囃さ
れるのだが…。                    
 そこに、小説に描かれた通りの犯罪を実行する犯罪者が現
れ、曽々孫に挑戦するという展開。これにより、現代ニュー
ヨークを舞台に、コナン・ドイルの名作が次々に再現される
ということだ。                    
 題名は未定だが、脚本はマーク・ディステファーノという
脚本家が執筆したもので、これをニューライン・シネマが契
約して、映画化が進められることになっている。     
 ホームズの曽々孫ならルパン3世とも対決してもらいたい
気もするが、ドイルが描いたヴィクトリア朝時代の犯罪が、
現代のニューヨークでどのように展開されるかというのも面
白そうだ。それにしても、主人公の心意気は、やはり「じっ
ちゃんの名に賭けて」ということになるのだろうか。   
        *         *        
 怪盗、探偵の後は殺人鬼の話題で、これはレトロではない
が、時代は少し昔を描くことになりそうなディノ・デ=ラウ
レンティス製作による“The Lector Variations: The Story
of Young Hannibal”の計画が発表された。       
 この作品は、『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』を製作
したデ=ラウレンティスが、シリーズ第3弾として計画して
いるもので、副題の通り若き日のハンニバル・レクターを描
くもの。リトアニア生まれのレクター少年が、パリを経由し
てアメリカに現れるまでの物語が描かれるということだ。 
 『レッド・ドラゴン』は『ハンニバル』の前々日譚だった
訳だが、さらにその前日譚ということになる。つまり時間が
どんどん遡っている訳だ。               
 そしてこの脚本を、レクターシリーズの原作者トマス・ハ
リスが自ら執筆するということで、常々古くからの友人だと
語っていたディノとハリス2人の話し合いの中で生み出され
た物語が、直接脚本の形で執筆されることになっている。 
 なお製作は、『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』の配給
を手掛けたユニヴァーサルが、今回は共同製作の形で直接参
加するということだが、さらに製作が開始された場合には、
『羊たちの沈黙』を製作したオライオンを引き継ぐMGMが
今回もチームに加わることになるということだ。     
 脚本以外のスタッフ及びキャストは未発表だが、いくらな
んでも少年時代のレクターをアンソニー・ホプキンスが演じ
る訳には行かないだろうということで、その配役にも注目が
集まりそうだ。といってもこの配役、最後は殺人鬼を演じる
ことになる訳で、その葛藤を演じるにはかなりの演技力が要
求されることになりそうだ。              
 それから、以前に日本で行われた記者会見では、アジアを
舞台にした『ハンニバル』の後日譚を作るという話があった
が、そちらの方はどうなってしまったのだろうか。    
        *         *        
 またまたコミックスの映画化で、『ブレア・ウィッチ』な
どのアーチザンとマーヴルスタジオの共同製作が契約され、
その第1弾としてジョナサン・ヘンスレイ脚本、監督による
“The Punisher”の計画が発表された。         
 お話は、FBIの潜入捜査官を主人公としたもので、最後
の任務を終えた主人公が帰宅すると家族が全員惨殺されてい
たというところから始まる。そして復讐の鬼と化した主人公
は、その犯人を追い求める。              
 一方、一度は裏社会を抜けたものの、こちらも息子を殺さ
れて舞い戻った男がいる。しかし運命はこの2人を互いに敵
対するものとして、闘いの場に導いて行く、というものだ。
 そしてこの元潜入捜査官を、『ドリームキャッチャー』の
トーマス・ジェーンが演じ、その敵役のハワード・セイント
という役にジョン・トラヴォルタの出演が発表されている。
 なおトラヴォルタは、最近悪役での映画出演が目立ってい
るが、その中でもこのセイント役は、一筋縄では行かない現
実的な悪役で、面白くなりそうだ。           
 また、マーヴルコミックスの映画化では、すでに第2作が
公開された『X−メン』、『スパイダー・マン』に続いて、
この夏には『ハルク』の公開が近づいているが、これらの大
作路線とは別に、今回の作品には、ニューラインで製作され
ている『ブレイド』シリーズのような規模での映画化と成功
が期待されているようだ。               
 撮影は7月に開始され、公開は04年夏に予定されている。
        *         *        
 後半は短いニュースを紹介しよう。          
 まずは続報で、前々回報告した『スクービー・ドゥー』の
続編に関し、題名が“Scooby Doo 2: Monsters Unleashed”
と発表され、さらにオールドマン・ウィックルズという役で
ピーター・ボイルと、TVダッドという役でレイ・ロマーノ
の出演が発表された。ボイルは、最近では『チョコレート』
の主人公の父親役などでも登場しているが、『ヤング・フラ
ンケンシュタイン』のモンスター役などコメディでも抜群の
存在感を見せる役者で、若手の俳優相手にその存在感を見せ
てもらいたいものだ。                 
 因に、ボイルが演じるウィックルズは、テレビシリーズの
第1回にも登場する『スクービー・ドゥー』では最も人気の
ある敵役の1人ということで、テレビのエピソードでは、美
術館の館長でありながら、実は裏でいろいろやっていること
を「ミステリー社」に暴かれたようだが、映画ではどうなる
のだろうか。                     
 もう一つ続報で、すでに何度か報告したジャッキー・チェ
ン主演の“Around the World in 80 Days”のリメイクで、
新たにオーウェン&ルーク・ウィルスン兄弟のカメオ出演が
発表されている。オーウェンは、『シャンハイ・ヌーン』の
シリーズでチェンと共演している間柄で、その関係で今回の
出演となったようだが、映画の中で彼らはライト兄弟の役を
演じるということだ。                 
 また撮影は、すでにタイでのロケーションを終えて、ベル
リン郊外のバベルスバーグ撮影所に移動しているが、ここで
はヴィム・ヴェンダース監督の出演シーンも撮影されるとい
うことで、監督はエキセントリックな芸術家の役を演じる計
画だそうだ。                     
        *         *        
 最後に新しい話題を1つ。              
 『スター・ウォーズ』や『ハムナプトラ』などの映画に基
づく小説シリーズの作家として知られるデイヴィッド・ウル
ヴァートン(ペンネーム:ファーランド)が、オリジナルで
発表している“The Runelords”という小説シリーズの映画
化とヴィデオゲーム化が進められることになった。    
 このシリーズは、1997年に第1作が発表され、その後2作
が出版されて、今年の秋には第4作が発行される予定という
ことだが、お話は、アースキングという統治者が支配するア
ースという世界が舞台の異世界ファンタシーのようだ。  
 そしてこのシリーズの第1作の映画化を04年秋の劇場公開
を目指して進め、同時にロールプレイング・ゲームの開発も
04年のクリスマスシーズンの発売を目指して進めるという計
画になっている。                   
 なおこの計画には、『グラディエーター』や『マトリック
ス』の新作2本のVFXなどにも名を連ねているという特撮
マンのジョン・ネルスンが参加しており、VFX主導の映画
化が行われるようだ。また、原作者のウルヴァートンが製作
にも加わっており、原作者のヴィジョンに忠実な映画化を実
現できる体制となっている。              
 ウルヴァートンは、過去の仕事の実績から見て映画製作の
裏事情にも詳しそうで、その手腕も期待される。計画では、
2〜6千万ドルの予算で、今後4年間に3作品を製作すると
しており、Daily Variety紙などにも1面広告が掲載されて
いたが、さてどうなりますか。             


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井口健二