井口健二のOn the Production
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2003年05月01日(木) 第38回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずは、新ヒーローの誕生となるかという話題で、アメリ
カの冒険小説作家クライヴ・カッスラー原作“Sahara”の映
画化計画が発表された。                
 この作品は、ダーク・ピットという名前の主人公が登場す
るシリーズの1篇で、実は同じシリーズでは、1980年にシリ
ーズ第4巻の“Raise the Titanic!”がイギリスで映画化
されている。この作品は、日本でも『レイズ・ザ・タイタニ
ック』の題名で公開されているが、ジェイスン・ロバーツ主
演、アレック・ギネスの共演で、クライマックスの巨大船体
の浮上シーンの特撮などがかなり評価された作品だった。 
 従って、今回の計画はシリーズ再開ということになるが、
今回の映画化は、パラマウントと契約しているアメリカのク
ルセイダーという製作会社が行うもので、このためアメリカ
の報道では、「(アメリカ映画としては)初めての映画化」
と位置付けられているようだ。             
 因に、今回映画化が計画されている作品は、シリーズの第
14巻、日本では『死のサハラを脱出せよ』という邦題で翻訳
され、日本冒険小説協会大賞を受賞するなど、シリーズの最
高作と言われているものだ。              
 そして、この新作の主人公ピット役に、マシュー・マコノ
ヒーの起用が発表された。マコノヒーは、先にパラマウント
配給で公開されたコメディ作品“How to Lose a Guy in 10
Days”が、今年封切りの映画では第1号の興行成績1億ドル
突破を記録したばかりで、続いてパラマウント製作の“Dear
Delilah”への出演契約も結んでおり、その勢いに乗せての
出演となるようだ。                  
 本編の物語は、現代を舞台にして、クラシックカーでサハ
ラ砂漠横断旅行中のピットが、北アフリカで蔓延する疫病と
闘うWHOと協力し、最後は世界的な海洋汚染の発生を阻止
するというもの。これに過去のいろいろな出来事が絡むよう
で、現代版「インディアナ・ジョーンズ」という謳い文句も
付けられている。かなり冒険色の強い作品になりそうだが、
パラマウントとしては、多分次回が最後の『インディ』に続
けて、『トゥームレイダー/ララ・クロフト』と並ぶ新シリ
ーズにしたいところだろう。              
 なお原作は、本家シリーズが16巻と、傍系シリーズもスタ
ートしているが、評価は1作ごとにまちまちのようで、シリ
ーズ化する場合には、脚本家の腕の見せ所ということになり
そうだ。                       
 撮影は今年の秋に開始の予定。また、本作の日本配給権は
ギャガが獲得しているようだ。             
        *         *        
 お次は続編の情報で、昨年夏に日本でも公開された、ワー
ナー配給『スクービー・ドゥー』“Scooby-Doo”の続編の撮
影が、4月14日、カナダのヴァンクーヴァーで開始された。
 この続編については、昨年、第21回で報告した記者会見で
も作られることは決まっていたが、スタッフでは、前作に引
き続き、脚本はジェームズ・ガン、監督はラジャ・ゴズネル
が担当。キャストでは、サラ・ミッシェル・ゲラー、フレデ
ィ・プリンズJr.、マシュー・リーランド、リンダ・カーデ
リーニの「ミステリー社」の面々も全員再登場している。 
 そしてこの続編の敵役に、前作のローワン・アトキンスン
に替って、『オースティン・パワーズ』や、6月日本公開の
『ミニミニ大作戦』にも出演しているセス・グリーンの登場
が報告されている。                  
 お話は、昨年の記者会見では、「ミステリー社」によって
過去に退治された化物たちが結集して街を占拠しているとい
うことだったが、今回報告されたグリーンの役柄は、パトリ
ックという名前の「クールソニアン(Coolsonian)犯罪学
博物館」の館長というものだそうで、この役柄が前回の報告
とどう関わるのだろうか。                
 さらにこの続編には、『バットマン&ロビン』でバットガ
ールを演じたアリシア・シルヴァストーンの出演も発表され
ている。彼女の役柄は、ヘザーという名前の冷酷なレポータ
ーで、館長の支援者ということだが、元々シルヴァストーン
は、映画デビュー作では「悪役賞」も受賞しているというこ
とで、コメディもこなせる彼女の演技にも期待したい。  
 全米公開は、来年3月26日ということだ。       
        *         *        
 『スクービー・ドゥー』の「ミステリー社」で重要な5人
(?)目のメムバーといえば、タイトルロールでもある犬の
スクービーだが、この他にも、犬を主人公にした映画の企画
が相次いでいる。それらをまとめて紹介しよう。     
 まずは、リヴォルーション製作で“Carlos and Jeff”。
チワワとバセットハウンドの2匹の喋る犬を主人公にしたも
ので、2匹がサンタクロースを探しに行くという冒険を描い
たコメディタッチの作品だそうだ。計画は昨年の10月頃から
進められていたもので、ここに来て『シンプソンズ』の脚本
家のダナ・グールドが脚本を契約している。登場犬の撮影は
実写で行われ、『ベイブ』で成功したようにCGIによって
口の動きを付けるということだ。            
 2本目は、ニューラインの計画で“Show Dog”。この作品
はソニー製作の“Not Another Teen Movie”などを手掛け
たマイク・ベンダーの脚本を映画化するもので、「ドッグシ
ョウ」に登場する純血種のチャンピオン犬が、野良の雑種犬
と立場を入れ替えるというもの。マーク・トウェインの『王
子と乞食』の犬版といった感じお話のようだが、撮影は実写
とCGIの合成で行われることになっている。       
 そしてもう1本もニューラインの計画で“Lucky”。この
作品は、ニューラインのトップのマーク・カウフマンのオリ
ジナルアイデアに基づくもので、先に“Centaur”という作
品を手掛けたサム・ブラウンとジャック・アンジェロの脚本
家コンビが脚本執筆の契約を結んでいる。お話は、世間を知
らずに育った映画のスター犬が、逃げ出して少年の愛を得る
というもの。実写での映画化が計画されているようだ。  
 CGIのおかげで、この手の作品の制作は極めて容易にな
ったということだし、昔から子供と動物には勝てないという
話もあるようで、これからもこの種の作品は増えていくこと
になりそうだ。                    
        *         *        
 『チャーリーズ・エンジェル/フル・スロットル』の公開
が近付いてきたが、製作元のソニー=コロムビアでは、さら
に2本のテレビシリーズの映画化の計画を発表している。 
 その1本目は、“Fantasy Island”。オリジナルは1978
年から84年に放送されたもので、リカルド・モンタルバン扮
するリゾートアイランドの支配人ロアークと、その助手のタ
トゥーを狂言廻しに、島を訪れる人々の夢が叶えられる様子
を描いている。しかしその展開には、いろいろな皮肉やしっ
ぺ返しも含まれているというものだ。なおテレビでは、98−
99年のシーズンに、マルカム・マクダウェル主演によるリメ
イクシリーズも放送された。               
 その映画版が計画されている訳だが、今回はその脚本に、
『アンツ』などのトッド・オルコットの契約が発表されてい
る。なおオルコットは、「支配人のロアークは、『白鯨』の
エイハブ船長とサンタクロースを一緒にしたような存在だと
考えている。夢が叶う物語。しかしアクションコメディの要
素も多分にある」ようにするということだ。       
 ただし、オリジナルシリーズの後半では、魔法の秘薬が出
てきたり、悪魔が登場したりと、かなりファンタスティック
に展開していたようで、その辺をどう処理するかも面白くな
りそうだ。                      
 因にオルコットは、この春の大ヒット作“Bringing Down
the House”のアダム・シャンクマン監督の次回作として、
ディズニーで進められている実写とアニメーション合成作品
の“Enchanted”の脚本を担当している他、5月初旬にニュ
ーヨークで開催されるトライベカ映画祭に“Grasshopper”
という短編の監督作品を出品しているそうだ。      
        *         *        
 そしてもう1本は、コロムビア傘下のリヴォルーションが
計画しているもので、オリジナルは1982年から86年に放送さ
れた“Knight Rider”。                
 このシリーズは、主人公のマイクル・ナイトと、搭乗者と
会話する能力を持った黒塗りのポンティアックが、協力して
様々な悪と闘うというもの。元々は警官だったマイクル・ヤ
ングという主人公が顔面を銃撃され、彼を助けた大富豪のウ
ィルトン・ナイトが、整形手術で風貌を変えさせると共に、
Knight Industries Two Thousand(K.I.T.T.)と名付けた
車を与えて、活躍を始めさせるという設定になっている。  
 因に、オリジナルの自動車の制作は、『グリーン・ホーネ
ット』のブラック・ビューティや、『バットマン』のバット
モーヴィルを手掛けたチームが担当したということだ。  
 またこのシリーズも、97−98年シーズンに“Team Knight
Rider”の題名で続編が放送されている。         
 そして今回の情報は、この計画にデイヴィッド・エリオッ
トとポウル・ラヴェットという新人の脚本家チームが契約し
たというものだ。なおこのチームは、先に同じリヴォルーシ
ョンで進められている“Neighborhood Watch”というコメ
ディ作品の脚本にも契約しているそうだ。         
 映画のカーアクションも激しさを増している中で、分厚い
壁も平気でぶち破るK.I.T.T.の活躍が期待される。    
        *         *        
 続いては製作再開の情報で、一昨年の9/11の影響で製作
が延期されていたコロムビア製作の“Dreadnaught”で、主
演にヴィン・ディーゼルを迎えることが発表され、製作が再
開されることになった。                
 この作品は、元は『チャリーズ・エンジェル』を手掛けた
マックGの監督作品として計画されていたもので、物語は、
海軍の最新鋭スティルス戦艦に着任した新人の艦長が、部下
が誤って引き起こしたジェット旅客機撃墜事件を隠蔽するた
め、上層部から生存者抹殺の命令を受けるというもの。もち
ろん主人公は正義のために闘うことになるが、最初の旅客機
撃墜のシーンが9/11を想起させるということで製作が延期
されていた。                     
 そしてマックGは、『チャーリーズ・エンジェル』の続編
を進めることになり、本作の製作からは降板してしまった。
 しかし物語の全体のテーマは公開に値すると判断した会社
側は、新たに『アリ』『ニクソン』の脚本家のスティーヴ・
J・リヴィールとクリストファー・ウィルキンスンと契約し
て、脚本の改訂を開始。さらに『ソードフィッシュ』のドミ
ニク・セナを監督に招いて準備を進めていた。そして今回、
ディーゼルの主演が発表されたものだ。         
 なお、ディーゼルは6月にユニヴァーサルで撮影開始予定
の“Riddick”の後に本作に掛かる計画で、コロムビア側は
今年の秋からの撮影を望んでいるということだ。     
        *         *        
 一方、マックGは『チャーリーズ・エンジェル』の続編の
製作はほぼ完了しているはずだが、それ以降の作品として、
ソニーが今年の1月に玩具メーカーのマテル社と結んだ契約
に基づく“Hot Wheel”という計画が進められている。   
 この作品は、マテル社が、35年前の発表以来販売を続けて
いるダイキャスト製のミニカーをモティーフにしたもので、
実物サイズに作られた車が活躍する実写作品。そしてその脚
本に、フォックスで製作されるコミックスの映画化“League
of Extraordinary Gentlemen”を手掛けたジェームズ・ロ
ビンスンの契約が発表されている。なお、具体的な物語はロ
ビンスンに任されているということで、現在はまだその素案
作りが進められている段階のようだ。          
 因に、コロムビアでは、夏向けの作品として自動車をテー
マにした作品を連発する計画で、その04年作品には、以前に
紹介した“RPM”が予定されている。そして今回発表の“Hot
Wheel”は、05年の夏のテントポール作品として期待されて
いるものだ。                     
        *         *        
 もう1件、製作再開の情報で、ニコラス・ケイジ主演で計
画されていたマーヴェルコミックス原作“Ghost Rider”の
映画化計画も再開されることになった。         
 この作品は、闇の力に魂を売り渡したオートバイレーサー
の主人公が、彼を愛する女性を守るために闇の力に反抗し、
彼らとの闘いを始めるというもので、一時は、スティーヴ・
ノリントンの監督で、ディメンションが製作し、同社の最高
製作費の作品として計画が進められていた。       
 ところが途中で、ノリントンが“Tick Tock”の監督に引
き抜かれ、結局この作品は9/11によって製作中止になった
ものの、同時にケイジがワーナーで計画されていた、やはり
コミックス原作の“Constantine”に参加するなどで計画は
頓挫、高額の製作費も問題となってディメンションは計画を
断念することになってしまった。            
 その計画をコロムビアが買い取ったもので、同社はVFX
に重点をおいたシリーズ化を目指す作品として、計画を再検
討し、そして今回、その監督を決定して、さらにニコラス・
ケイジの主演も再契約することが決まったものだ。    
 なお監督に決まったのは、やはりコミックス原作の『デア
デビル』が公開されたばかりのマーク・スティーヴン・ジョ
ンスン。監督とケイジの両者が、コロムビア側が提示した脚
本に基づく計画の契約書にサインしたということだ。   
 ただし、今回提示された脚本は、以前にシェーン・サレル
ノが執筆したもので、ジョンスンは撮影開始までに書き直し
をするということだ。また、映画化はコミックスに描かれた
ラヴストーリーの要素を基調にして、レイティングはPG-13
が想定されているそうだ。               
 撮影は、03年末か04年初頭が予定されている。     
        *         *        
 新着の情報で、ブレット・ラトナー監督の次回作としてニ
ューラインから、トッド・ロビンスン脚本による“The Last
Full Measure”という作品が発表されている。      
 この脚本は、リドリー・スコットが96年に監督した『白い
嵐』などを手掛けたロビンスンが、昨年末にニューラインと
契約したもので、名誉勲章も受けたことのある空軍士官が、
自らのリスクも承知で、ワシントンの内幕を暴いたという実
話に基づく物語。ラトナーにとっては『レッド・ドラゴン』
で見せたようなシリアスな演出が期待されているようだ。 
 なおニューライン側は、本作については今年中の製作開始
を期待しているようだが、同社とラトナーの間では、ヒット
シリーズの“Rush Hour 3”の計画も先に発表されている。
ただし後者については、主演2人のスケジュールの都合もあ
り、その都合次第で製作の順番が決まることになりそうだ。
 ということで、ラトナーの次回作の情報だったが、実はこ
の発表の前にはラトナーの“Superman”からの降板も報告さ
れていた。因にこの降板は、ラトナーとワーナーとの契約期
間の満了に伴って生じたものだが、契約を更新しなかった理
由について、ラトナーは主演俳優の決まらなかったことを挙
げていた。                      
 実際“Superman”の主演については、ここでも何度も報告
したが、最近の情報ではジョッシュ・ハートネットに対して
3作で1億ドルというオファーがされているというものの、
拘束期間が10年に及ぶ契約には、慎重にならざるを得ないよ
うだ。ただ、ハートネット側が最近軟化してきたという情報
もあり、ワーナーでは早急に監督を決定してハートネットの
確保に乗り出したいとしている。            
        *         *        
 最後は、短いニュースをまとめておこう。       
 まずはちょっと訂正というか追加の情報で、前回ロバート
・A・ハインライン原作“The Moon Is a Harsh Mistress”
(月は無慈悲な夜の女王)の記事の中で、配給は未定と書い
たが、製作会社のフェニックスは、アメリカではソニー及び
ブエナヴィスタと契約を結んでおり、新作の“Basic”はソ
ニー、“Holes”はブエナヴィスタが配給している。ただし
日本では、前作の『シックス・デイ』は東宝東和が配給して
おり、今回の作品がどうなるかは未定のようだ。     
 また、一緒に書いた“Have Space Suit-Will Travel” 
(スターファイター)については、デイヴィッド・ヘイマン
の製作で、ワーナーが配給権を獲得したことが発表されてい
る。どちらの作品も製作が早く進むことを期待したい。  
 もう一つ、最近は娘アーシアの活躍が目覚ましいアルジェ
ントの、父ダリオが77年に監督した“Suspiria”のリメイク
計画がディメンションから発表されている。発表されたのは
脚本家で、00年にジョン・マルイコヴィッチ、ウィレム・デ
フォーの共演で、映画『ノスフェラトゥ』の製作秘話を描い
た“Shadow of the Vampire”のスティーヴン・カッツが、
このチラー作品のリメイクを担当するということだ。オリジ
ナルはジェシカ・ハーパーの主演で、イタリアのバレー学校
に留学したアメリカ人女性の恐怖体験を描いたものだが、そ
の鮮烈な恐怖をどのようにリメイクしてくれるだろうか。 


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井口健二