井口健二のOn the Production
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2003年03月01日(土) 第34回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回は、ちょっと野次馬的なこの話題から。      
 まずは、ソニー傘下のコロムビアから、42年に公開された
ルネ・クレール監督作品“I Married a Witch”を、トム・
クルーズの製作主演、ダニー・デ=ヴィートの監督でリメイ
ク計画が発表された。                 
 オリジナルは、フレデリック・マーチ、ヴェロニカ・レイ
ク主演で映画化されたもので、セーラムの魔女狩りで火炙り
になった魔女が復讐のため甦るが。現代社会に振り回される
内に、自分を火炙りにした男の子孫の政治家に恋をして…、
というコメディ作品。日本では、51年に『奥様は魔女』とい
う邦題で公開されたが、アメリカのガイドブックでも星3つ
の評価を得ている作品だ。               
 この作品を、クルーズの主演でリメイクする計画だが、当
然クルーズの役は、マーチが演じた政治家ということになる
のだろう。リメイクの脚本は、デ=ヴィートの監督第2作の
『ローズ家の戦争』も手掛けたマイクル・リースンが担当。
相手役は未定だが、デ=ヴィート監督の次回作として、今年
の年末からの製作を予定している。           
 とまあ、これはちょっと楽しめそうな期待作なのだが…。
 実は、コロムビアにはもう1本魔女ものの計画があって、
こちらは64年から72年まで放送されたエリザベス・モンゴメ
リー主演の人気テレビシリーズ“Bewitched”を映画化しよ
うというもの。                    
 このシリーズは、日本では『奥様は魔女』の題名で放送さ
れ、今でも再放送が絶えないほどの人気シリーズだが、この
邦題からも判るように、元々極めて似通った設定の作品で、
一部にはテレビ版リメイクという情報もあるほどのもの。少
なくともインスパイアされた作品であることは間違いない。
 そしてこの映画化の計画では、『めぐり逢えたら』などの
ノーラ・エフロンが脚色と監督を担当し、ニコール・キッド
マンの主演が予定されているというものだ。       
 ここでこのように似た企画が、しかも同じ製作会社で計画
された場合には、これらを一本化してしまうのが通例なのだ
が、今回の企画ばかりは主演者の関係でそういう訳には行き
そうにない。                     
 コロムビアとしては、クルーズの製作主演作品は絶対に手
放せないし、一方、キッドマン+エフロンの計画は、かなり
以前から進められていたもので、特に今年もオスカー候補に
なって、今乗っているキッドマンの主演は外せないところ。
さてこの結末は、一体どういうことになるのでしょうか。 
        *         *        
 お次はキャスティングの情報で。           
 まずは、前回報告した“Superman”の主演の行方がまた判
らなくなっているようだ。               
 前回は、カナダ出身のヴィクター・ウェブスターの抜擢が
有力と報告したが、その後ワーナー側は、やはり有名スター
の起用を希望、その候補としてジョッシュ・ハートネットの
名前が再浮上してきている。              
 ハートネットは、最近は『パールハーバー』や『ブラック
・ホーク・ダウン』などで活躍しているが、その前には『パ
ラサイト』などでジャンルのファンにも馴染み深い。風貌な
どは、確かにクリシトファー・リーヴにも似て、特にあごの
張っている辺りはスーパーマンにピッタリというところだ。
 ウェブスターの風貌は判らないが、大体この2人には絞ら
れてきているようだ。前回も書いたように、2作の続編も計
画されているということで、いずれにしても早く決めて、再
開第1作の製作に取りかかってもらいたいものだ。    
 なお、監督のブレット・ラトナーに関しても、一時期別の
監督名が上がったようだが、こちらはほぼ決定のようだ。 
        *         *        
 続いては、これもワーナー作品で気になる“Harry Potter
and the Prisoner of Azkaban”の配役で、故リチャード・
ハリスが演じたダンブルドア校長役の後任には、やはりイギ
リス俳優のマイクル・ガンボンの起用が発表された。   
 ガンボンは、日本では昨年公開された『ゴスフォード・パ
ーク』での館の主人役などで知られるが、98年にナイトの称
号を受けるなどイギリス演劇界の重鎮。また、ロバート・ダ
ウニーJr主演の映画版リメイクがサンダンス映画祭で上映さ
れた“The Singing Detective”のオリジナル版テレビミニ
シリーズの主演でも人気があるようだ。              
 なお、この配役には、イアン・マッケランやクリストファ
ー・リー、それにハリスの親友ということでピーター・オト
ゥールらの名前も挙がっていたが、結局は落ち着くべきとこ
ろに落ち着いた感じだ。またこの情報は、昨年末にネット上
に登場したが、今回はワーナーが公式に発表したものだ。 
 その他のレギュラーは前作と同じで進むようだが、さらに
今回、新たに登場するタイトルロールのアズカバンの囚人、
ことシリウス・ブラック役には、『ハンニバル』などの名優
ゲイリー・オールドマンが発表されている。ブラックは、と
りあえず次回の“Harry Potter and the Goblet of Fire”
でも活躍する役なので、この配役には期待したいところだ。
        *         *        
 もう1本、シリーズの新登場キャラクターの配役で、4月
に撮影開始予定の第2作“The Amazing Spider-Man”の新
敵役がドック・オック、ことドクター・オットー・オクタヴ
ィアスに決まり、その配役として、『ブギー・ナイツ』や、
今年のアカデミー賞で主演のサルマ・ハエックなど6部門の
候補になっている“Frida”に、主人公の夫ディエゴ・リヴ
ェラ役で出演したアルフレッド・モリナの起用が発表された。
 実はこの敵役についてはかなり早くから噂に上っており、
その配役にはロビン・ウィリアムスなども期待されていたよ
うだったが、それは叶わなかったようだ。なおこの敵役は、
日本ではドクター・オクトパスの方が通り易そうだが、胸に
自在に動く8本の腕を付けたマッドサイエンティストで、こ
のキャラクターはCGIには持ってこいと言えそうだ。  
 キャラクターの使用権を巡って、ソニーと原作者のスタン
・リーと発行元のマーヴルで三つ巴の裁判もあるようだが、
第2作の映画化はそれとは関係なく、トビー・マクガイア、
キルスティン・ダンスト、ジェームズ・フランコの主演、サ
ム・ライミの監督で行われる。             
        *         *        
 キャスティングの最後は新作で、3月に撮影が開始される
ジョナサン・フレイクス監督作品“Thunderbirds”の映画化
の主な配役が発表された。               
 それによると、まず国際救助隊の創設者でメムバーの父親
のジェフ・トレイシー役には、『フレイルティー/妄執』で
監督デビューを果たした『ツイスター』などのビル・パクス
トンが発表されている。                
 これに対して、5人の息子の内の4人はいずれも新人で、
スコットは『パトリオット』にちょい役で出ていたというフ
ィリップ・ウィンチェスター。ジョンは『K−19』でロシア
クルーの一人を演じていたレックス・シュラプネル。ヴァー
ジルはBBC放送の“The Lost Prince”に小さい役で出て
いたというドミニク・コレンソ。ゴードンは全く資料無しの
ベン・トーゲスンとなっている。            
 一方、レディ・ペネロープ役にはソフィア・マイルズ、パ
ーカー役にはロン・クックという配役も発表されている。 
 そして、国際救助隊の頭脳でもあるブレインズ役に、テレ
ビシリーズ『ER』のグリーン医師役で人気のアンソニー・
エドワーズの出演が発表された。            
 なお、もう一人の息子のアランと、悪漢フッドの配役はま
だ判明していないが、3月から撮影は、『スコーピオン・キ
ング』などのウィリアム・オズボーンの脚本で、ロンドンの
シェパートン撮影所とインド洋のセイシェル諸島で行われる
ことになっている。                  
        *         *        
 前回は、『シュレック』を製作したヴァンガードがディズ
ニーと手を結んだことを紹介したが、今回は逆に、『トイ・
ストーリー』などを製作したCGIアニメーションの老舗ピ
クサーからディズニー離れの情報が伝わってきた。    
 ディズニーとピクサーでは、95年の『トイ・ストーリー』
以来、『バグス・ライフ』『トイ・ストーリー2』『モンス
ターズ・インク』を発表して、その総興行収入は17億ドルに
達していると言われている。そして今年の夏には“Finding
Nemo”が公開され、さらに04年には“The Incredibles”、
05年には“Cars”と続くのだが、実は両社の契約はここまで
で、06年以降の契約はされていないのだ。        
 これに対してピクサーから、新たにエミリー・クックとキ
ャシー・グリーンバーグという脚本家の起用が発表され、2
人が執筆した大型レストランの中でのネズミ達の冒険を巡る
物語について来年度に最優先での製作を行うこと、そのため
2人をピクサー社の本拠のあるサンフランシスコに呼び寄せ
て、アニメーション制作者達との関係を密にして製作を進め
るという計画が発表された。なおこの計画についてピクサー
からは、物語のキーポイントはおろか、題名も発表されない
という、完全な秘密主義で製作が進められるというものだ。
 そしてこの新作について、その配給をディズニーが行うか
否かは決定しておらず、場合によっては他社からの配給もあ
り得るということだ。                 
 とは言うものの、ピクサー作品の過去の製作費は7500万ド
ルから1億2500万ドルが掛けられているということで、今回
の計画もその最高レベルの製作費が見込まれているというこ
とだが、前回紹介したヴァンガード製作費は1本当たり3000
〜4000万ドルということでその差は余りにも大きい。経費を
削って、劣った作品を作られるのは願い下げだが、それにし
てもこのままでディズニーがすんなりとOKしてくれるかど
うかは判らないし、他社がそれを引き受ける可能性も…とい
う感じなのだが。                   
 どこの世界でも、事業の効率化は難しいところに来ている
ようだ。                       
        *         *        
 次も続報で、前々回04年の公開予定で紹介したトム・クル
ーズ主演、パラマウント製作の“Mission: Impossible 3”
の監督に、昨年末にアメリカで“Narc”という作品が公開さ
れたジョー・カーナハンという監督の抜擢が発表された。 
 なお、この“Narc”という作品は、日本では5月の公開が
予定されているが、レイ・リオッタとジェイソン・パトリッ
クの主演で70年代を背景にした警官スリラー。かなりハード
な切れ味の良い作品と紹介されていた。そして、実はこの作
品の製作総指揮を勤めたのがクルーズということで、その手
腕を認めての今回の抜擢となったようだ。        
 それで一方、当初予定されていたデイヴィッド・フィンチ
ャーだが、実は彼にはその前にソニー製作の“The Lords of
Dogtown”という作品の計画が発表されており、このときの
説明では“M:I 3”の撮影は04年になってからとされていた
のだが、結局04年5月の公開が優先されることになったとい
うことなのだろう。                  
 因みに、フィンチャーの作品は、70年代のロサンゼルスを
舞台に、サーフィンやスケートボードのカルチャーのルーツ
を探るもので、フィンチャー自身がニューラインで計画を立
上げ、このときはプロデューサーの立場だったようだが、そ
の企画をソニーが買い上げて、フィンチャーの監督作品とし
て立て直したものということだ。            
 またソニーも、同じテーマの“Dogtown and Z-Boys”と
いうドキュメンタリー作品を01年にクラシックレーベルで配
給しており、当時のカルチャーリーダー達とのコンタクトも
あったということだが、その内のスケートボードの創始者と
いわれるペラルタがフィンチャー企画の初期のドラフトを手
掛けるなど、両者の思惑の一致した作品になったようだ。な
お撮影台本は、ロジャー・アヴェイリーが執筆している。  
 ということで、フィンチャーの計画も“M:I 3”も進むこ
とになった訳だが、ちょっと気になるのは、第29回で紹介し
た“Rendezvous With Rama”(宇宙のランデブー)の映画
化で、パラマウントでの製作が決まったこの作品は、果たし
てフィンチャーの監督で進められるのだろうか。      
        *         *        
 続いては、テリー・ギリアム監督の動向で、第32回で紹介
した新作“Brothers Grimm”の撮影を、6月にプラハの撮
影所で開始することが発表された。            
 この計画では、先にプラハの撮影所が準備に入っているこ
とが報じられていたが、今回はその出演者として、ヤーコブ
とウィルヘルムのグリム兄弟にマット・デイモンとヒース・
レジャー、他に悪漢役でロビン・ウィリアムスとジョナサン
・プライスという豪華な顔合せが実現し、製作開始が正式に
発表されたものだ。なお、ウィリアムスは『バロン』、プラ
イスは『ブラジル』の出演者でもある。         
 また、脚本は『ザ・リング』のアーレン・クルーガーが手
掛けたもので、ジェイクとウィルと名乗る兄弟が、村から村
へ民話を集める旅を続け、その間にいろいろな怪物や神秘に
出会うという、かなり物語化されたお話になるようだ。しか
も全体のジャンルは、コメディックアクションと紹介されて
いる。                        
 まあ、虚実を取り混ぜるのはギリアムの一番得意とすると
ころで、今回は彼自身の脚本ではないが、その意味で好適な
作品に出会えたと言えるだろう。配給はMGM、製作は『12
モンキーズ』を手掛けた人たちのようだ。しかし、これで第
32回に書いた“The Man Who Killed Don Quixote”の製作
再開は、少し先に伸びることになりそうだ。        
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 『フレイルティー/妄執』の脚本を手掛けたブレント・ハ
ンリーが、ニコラス・ケイジの製作主演でニューラインで計
画進行中の“The Volunteer”という作品の脚本のリライト
に招かれている。この作品は、テレビの『アウター・リミッ
ツ』などの製作者サム・イーガンが原案を書いたもので、主
人公は地球の人口がすでに異星人によって侵食されているこ
とを発見する、というもの。前の作品から考えてコメディと
は思えず、そうなるとかなり恐い作品が期待できそうだ。製
作時期は未定。                    
 アメリカのSF作家ピアズ・アンソニーが発表した全7冊
のファンタシーシリーズ“On a Pale Horse”の映画化権を
ディズニーが獲得し、ジェイミー・フォックスの主演で製作
することが発表された。物語は、自殺しようとしたが死に切
れず、しかもパニックの中で早く現れ過ぎた死神を撃ってし
まった主人公が、死神に替って仕事をする羽目に陥るという
もの。一種のスーパーヒーローもののようだが、脚色は、ジ
ム・キャリー主演『ライアーライアー』などのポール・ガイ
が担当。また、製作はアメリカ第3位のコミックス出版社ト
ップ・カウとの共同で行われ、トップ・カウでは併せてコミ
ックス化も進めるという計画だそうだ。         
 昨年第2作が公開された『スパイ・キッズ』シリーズの第
3弾“Spy Kids 3-D: Game Over”に、敵役としてシルヴェ
スタ・スタローンの出演が発表された。スタローンの役柄は
トイメーカーと呼ばれる敵の首領で、主人公のコルテス一家
の永年の敵だったというもの。この男が、一家の長女カルメ
ンを罠に掛け、ヴァーチャル・リアリティのゲームに閉じ込
めるところから物語が始まるようだ。なお、父親役のアント
ニオ・バンデラス、姉弟役のアレクサ・ヴェガ、ダリル・サ
ハラはすでに参加が決定しており、母親役のカーラ・グギノ
も契約は済んでいるそうだ。監督は、もちろんロベルト・ロ
ドリゲス。公開は今年の7月に予定されている。     


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