井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2002年12月01日(日) 第28回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は、久々に記者会見の話題から。         
 第22回で作品を紹介したフランス映画『8人の女たち』の
11月23日公開を前に、監督のフランソワ・オゾンと、出演者
のヴィリジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ
の来日記者会見が11月18日に行われた。この内のサニエは、
第24回で報告したように、製作中の実写版“Peter Pan”で
ティンカー・ベルを演じており、僕としてはそのことを聞き
たかったが、他の映画の記者会見でそういう質問をするのは
失礼というものだ。                  
 ところがこの日は、記者会見の後でパーティがあって、そ
こでサニエのそばに行くチャンスがあり、その時、「ティン
カー・ベル?」と呼びかけたところ、笑顔で服の袖を上げて
フィギュア付きのブレスレットを見せてくれた。ほんの一瞬
で、細かいところまでは見えなかったが、フィギュアは多分
ディズニーのアニメーションのティンカー・ベルで、それを
見せてくれたときの嬉しそうな顔は、本当に役が気に入って
いるようだった。                   
 実はこの日の彼女の服装は、普通では手首が袖に隠れてい
るもので、このとき以外は袖を上げることはなかったから、
そのブレスレットを目撃したのは、僕とその時に近くに居た
2、3人だけだと思うが、サニエの嬉しそうな笑顔とかわい
い仕種で、一層“Peter Pan”への期待が高まったという感
じがした。来年、“Peter Pan”のプロモーションでの来日
があったら、その時はちゃんと質問をしてフィギュアを確認
したいものだ。                    
        *         *        
 以下は、いつものように製作情報を紹介しよう。    
 まずは人気シリーズの続編の情報で、ユニヴァーサル配給
“Jurassic Park”の第4作の計画が発表された。     
 このシリーズは、マイクル・クライトンの原作に基づいて
1993年にスティーヴン・スピルバーグが監督した第1作に始
まり、1997年にはクライトンが新たに執筆した続編に基づく
“The Lost World: Jurassic Park”がスピルバーグ監督で
映画化された。さらに2001年には、ピーター・バックマン他
脚本で、ジョー・ジョンストン監督による第3作“Jurassic
Park III”が製作され、このときスピルバーグとクライトン
の名前が外れたことで、新たにシリーズとしての再出発が切
られたものだ。                   
 そして今回発表された計画では、製作は第1作から変らず
キャスリーン・ケネディだが、脚本はウィリアム・モナハン
が担当することになっている。因にモナハンは、リドリー・
スコットの監督で予定されている18世紀を舞台にした歴史ド
ラマ“Tripoli”の脚本も担当しているということだ。   
 監督やキャスティングは未定だが、流れから行くとスピル
バーグが監督することはなさそうだ。また出演者では、前2
作の主演は、共に第1作に出演したジェフ・ゴールドブラム
と、サム・ニールが別けているが、今度はどちらが主演する
のか、それともまったく別の主人公が登場するのだろうか。
 なおシリーズは、第3作からは純粋にアドヴェンチャムー
ヴィとなっており、今回もその中での手を替え品を替えての
展開になるのだろうが、僕自身は、いつの日かクライトン、
スピルバーグによる本当の結末が見たいと思っている。また
シリーズ3作目までの全世界興行収入の合計は、19億ドルに
達しているということで、本作で合計20億ドル突破の期待も
あるようだ。多分達成は間違いないだろうが。      
        *         *        
 お次は、またまた往年のシリーズからの映画化の情報が届
けられた。                      
 今回、映画化されるのは“Mighty Mouse”。日本のテレ
ビでも一時期放送されたスーパーネズミが活躍するアニメー
ションによるアクションシリーズで、これをオールCGIで
映画化する計画が、パラマウントと、今年のアカデミー賞で
初の長編アニメーション作品賞の候補3本の内の1本に選ば
れた“Jimmy Neutron: Boy Genius”や、“The Rugrats
Movie”などを手掛けるニッケルオディオンの製作で進めら
れるというものだ。                      
 “Mighty Mouse”は、元々は1944年にスタートしたカート
ゥーンと呼ばれる劇場用アニメーションシリーズで、当時は
全部で74本が製作され、これらの作品は1955年以降にCBS
が権利を獲得してテレビ放映された。日本でもこれが輸入さ
れて放送されていたものだ。また、この内の“Gypsy Life”
というエピソードが、1945年のアカデミー賞短編アニメーシ
ョン賞の候補にもなっているそうだ。さらに1979年にはフィ
ルメーションでテレビ用に48本の新作が製作されている。 
 因に、テリートゥーンでは1942年発表の“Supermouse”
という作品があり、最初はこれをシリーズ展開しようとした
のだが、全く同じ月にコミックスで同名の作品が発表され、
キャラクターの展開でコミックスに遅れを取ったために名称
を変えたのだそうだ。しかしこれによって、最も有名な動物
のスーパーヒーローが誕生したと言われている。      
 そして今回の計画は、この映画化を、『M:I−2』を監
督したジョン・ウーの製作で進めるというもので、ウーのパ
ートナーのテレンス・チャンと、ニッケルオディオンのトッ
プが共同で製作。またコンセプトデザインは、バリー・ジャ
クスンとニッケルオディオンのアニメーションスタッフが行
うと発表されている。ただし、脚本と監督は未定のようだ。
 なお、発表の席で製作担当のチャンは、「サイズはちっぽ
けなヒーローが活躍する点に魅力を感じている。実にクール
な設定だし、これを“Jimmy Neutron”や“Rugrats”のス
タッフと共にやれることは最高だ」と語っている。     
 設定では、このヒーローは、「光より速く空を飛び、力は
軌道を外れた地球をパンチ一発で元の軌道に戻すほど。また
地上にいて冥王星からの助けを呼ぶ声を真空中を伝わる音波
で聴くことができ、X線や遠隔地を見る視覚を持つ。さらに
世界中や月面にも情報を収集するための基地がある。」とい
うことだ。これでネズミの世界を守るために戦っているとい
うのだが、さて、この設定を映画化ではどのように活かすの
だろうか。                      
 それからジョン・ウーの関係では、以前、1990年代前半に
映画化もされた人気テレビシリーズ“Teenage Mutant Ninja
Turtles”をオールCGIで復活させるという発表もあった
が、その方はどうなっているのだろう。         
        *         *        
 ついでにもう1本、パラマウントとニッケルオディオンの
話題で、日本でもお馴染みの絵本“Where's Waldo?”(ウォ
ーリーを探せ!)の映画化の計画が発表されている。   
 この作品は、マーティン・ハンフォードが発表している子
供向けのシリーズ絵本に基づくもので、原作は大判見開きに
展開する絵の中から主人公のウォーリーを探すというゲーム
形式になっている。これは、かなり事細かに描かれた絵の中
から主人公を探すことも大変だが、その他にも絵の中にはい
ろいろな情報が描かれていて、それらをヒントに従って探し
出すという楽しみもあるものだ。            
 そしてこの映画化の計画は、昨年の6月頃から報告されて
いたものだが、以前の報道では、脚本を『スモール・ソルジ
ャー』や『マウスハント』のアラン・リフキンが担当するこ
とが紹介されていた。これに加えて今回は、この映画化の監
督に、今年夏に公開されて全米で5,100万ドルの興行成績を
上げた“Like Mike”という作品のジョン・シュルツの起用
が発表されたもので、いよいよ実写による映画化が進められ
ることになるようだ。                 
 ゲーム感覚の原作を、リフキンがどのように脚色している
かも興味津々だが、原作のシリーズは各巻のテーマがそれぞ
れ異なっており、歴史ものやSF、確か1冊は映画がテーマ
のものもあったはずだ。今回はその内のどの巻が映画化され
るのか、またシリーズ化を目指すのかなど、これからの情報
が楽しみだ。                     
 それと、上にも書いているように主人公の名前は、原作で
はウォルド、日本版ではウォーリーとなっており、この辺を
どうするのかも気になるところだ。           
        *         *        
 『ザ・リング』のハリウッドリメイクは成功を納めたよう
だが、それに続いて今度は韓国映画からのハリウッドリメイ
クの話題が相次いでいる。               
 まず1本目は、英語の題名が“My Wife Is a Gangster”
というもので、この作品は、日本語で検索できるサイトでは
『粗暴の女房』という題名で紹介されているようだが、韓国
では2001年の秋に公開されて大ヒットを記録した作品。お話
は、暴力組織の女ボスが、最愛の妹の遺言に応えるために結
婚しなければならなくなり、彼女は何も知らない男を見付け
て結婚に漕ぎ着けるが、男は結婚後に真実を知り、女は結婚
後に本当に彼を愛していることに気付く、というラヴコメデ
ィ仕立ての作品のようだ。               
 そしてこの作品の再映画化権が、『ザ・リング』の製作に
も関ったロイ・リーとダグ・デイヴィスンが主宰するヴァー
ティゴという会社を通じてミラマックスにもたらされ、同社
では“Serendipity”の脚本家のマーク・クレインと契約し
て、ハリウッド版の脚本を執筆させるということだ。なお、
ヴァーティゴは、リメイク版の製作も担当することになって
いる。またミラマックスでは、オリジナルの韓国映画のアメ
リカ配給権も100万ドルで獲得しているそうだ。      
 もう1本は、英語の題名が“Marrying the Mafia”とい
うもので、この作品は検索サイトでは見つからなかったが、
こちらはワーナーがリメイク権を獲得している。      
 お話は、弁護士の男が一夜の相手を見つけるが、その女は
マフィアのボスの娘で、男は彼女と結婚するか、抹殺される
かの選択を迫られるというもの。上の作品とよく似た題材の
ようにも思えるが、この作品もヴァーティゴの仲介でワーナ
ーとの契約が結ばれた。                
 因に、韓国映画のリメイク権は、今年だけで5作品の契約
が結ばれているということで、ワーナーではこの他に、日本
でも話題になった“Il Mare”のリメイク権を先に契約して
いるということだ。                  
 また、韓国だけでなく、香港映画の“Hitman”のリメイク
権がワーナーと契約されており、さらにタイ香港合作で、ダ
ニー&オキサイド・パン兄弟監督の“The Eye”は、トム・
クルーズ主宰のクルーズ/ワグナーが映画化権を獲得。パラ
ウントでのリメイクが計画されているそうだ。      
 日本映画だけでなく、アジア映画の才能をハリウッドが注
目し始めているということだ。             
        *         *        
 続いては、前回“The Phantom”のリメイクに関ることを
紹介した脚本家のスティーヴン・E・デ=スーザの情報で、
彼が執筆した“Blast!”という脚本が、“Hellraiser III”
のアンソニー・ヒコックスの監督で映画化されることが発表
された。                       
 デ=スーザは、1988年『ダイ・ハード』の脚本で一躍注目
され、その後は1994年『ストリート・ファイター』で監督デ
ビューを果たすなど活躍したものだが、最近はあまり名前が
聞かれなかった。そのデ=スーザの復活が始まった訳だが、
今回発表された作品は、『ダイ・ハード』のオイル・リグ版
と言われているもので、彼お得意のスペシャル・イフェクト
満載のアクションムーヴィとなりそうだ。        
 主演は、先にユニヴァーサルから公開された“Undercover
Brother”でブレイクしたエディ・グリフィン。撮影は今月
中に南アフリカで開始され、製作費は2,000万ドルが計上さ
れている。                      
 なお、この作品の製作はMPCA(Motion Picture Corp.
of America)という会社で行われているが、同社ではキュー
バ・グディングJr.主演による“Boat Trip”というコメディ
作品の公開が、来年3月にアーチザンから予定されており、
また“American Pie 2”のデイヴィッド・スタインバーグの
脚本で“Barely Legal”というティーンズコメディの撮影も
完了しているということだ。              
 一方、主演のグリフィンは、彼自身の脚本、主演によるコ
メディ作品“My Baby's Mama”が、ミラマックスの製作で、
来年公開が予定されているそうだ。           
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 『スパイダーマン』を製作したローラ・ジスキンが、オス
カー受賞者の特撮マン、スタン・ウィンストンと組んでファ
ンタシー映画を製作する計画が発表されている。この作品は
“Me and My Monster”という題名で、ウェブサイトなどで
展開する“Greg the Bunny”という作品のクリエーター、ダ
ン・ミラノと、“Playing Mona Lisa”の監督を手掛けたマ
シュー・ホフマンの脚本を映画化するもの。お話は、子供時
代に普通でない怪物と友情を結んだ少年が、大人になって彼
の人生を変えて行くというもので、ウィンストンは、製作だ
けでなく怪物の創造者としての出演も考えられているという
ことだ。製作はコロムビア。なおウィンストンはすでにホラ
ー映画などの製作を手掛けたことがある。        
 1966年にマイクル・ケインとシャーリー・マクレーンの共
演で映画化された“Gambit”(泥棒貴族)のリメイクがユニ
ヴァーサルで進められている。お話は、美しい女性が大金持
ちの家にあるお宝を盗み出す計画を立て、大金持ちに接近す
るが…。この後、どんでん返しが何度も登場するというコメ
ディ作品。実は、当初はヒュー・グラントの主演で、ジョエ
ル&イーサン・コーエン兄弟の脚本によるリメイクが予定さ
れていたものだが、現在はその線は無くなっているようで、
代って“Igby Goes Down”という作品を監督したバー・ステ
ィールスが、脚本のリライトと監督のために7桁($)の契
約を結んでいる。ただしスティールスは、コーエン兄弟の脚
本を尊重して監督する気持ちだそうだ。         
 ワーナーからまたまたスーパーヒーローものの計画で、ワ
ーナー傘下のDCコミックス発行の“Ball & Chain”という
作品の映画化が発表されている。といってもこの作品、実は
離婚したカップルが、2人一緒でなければスーパーパワーが
発揮できないという設定で、ちょっと捻ったロマンティック
コメディのようだ。コミックスの原作者のスコット・ロブデ
ルが映画化の脚色も手掛けている。           
 俳優のアンディ・ガルシアが監督デビューする計画が発表
されている。作品の題名は“The Lost City”。キューバの
首都ハヴァナの黄金時代を背景にしたもので、脚本はキュー
バ出身の作家G・カブレラ・インファンテが自身の複数の小
説を元に脚色したものだそうだ。ガルシアは主演もし、共演
者には、ロバート・デュヴォール、ダスティン・ホフマン、
ベネチオ・デル=トロ、ベンジャミン・ブラットらの名前が
挙がっている。配給は未定だが、製作費の2,000万ドルは、
すでにロサンゼルスにあるプラティナムという会社の全額出
資が決っており、撮影準備は万端整っているようだ。なお、
ガルシアはここ10年ほどキューバ音楽を題材にしたドキュメ
ンタリー作品の監督を続けており、正しく満を持しての劇映
画監督デビューとのこと。そしてその作品として、どうして
もこの物語が撮りたかったのだそうだ。         
 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリ
アーの監督でニコール・キッドマンが主演し、来年のカンヌ
映画祭でのプレミア上映が予定されている“Dogville”が、
3部作になることが発表された。この作品は、アメリカの小
さな町に現れたキッドマン扮する女性が、地元の人々の先入
観を覆して行くという物語で、キッドマンはすでに同じ役で
後2作に主演することを了承しているということだ。そして
第2部は“Mandalay”という題名で来年8月の撮影が予定さ
れているが、この予定は、キッドマンが次回作の“The Step
ford Wives”と、その次の“Birth”の撮影を終了した後と
いうことで、しっかりと1年間の予定が立っているようだ。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二