※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回もリメイクの情報から紹介しよう。 まずは、以前から計画されていた75年製作のパラマウント 作品“The Stepford Wives”(日本未公開)の再映画化に、 ニコール・キッドマンの出演が発表されている。 この作品は、『ローズマリーの赤ちゃん』などのアイラ・ レヴィン原作の映画化で、内容は、郊外の町に引っ越してき た一家の妻が、町の様子の異常さに徐々に気付いて行き、町 の謎に迫って行くというもの。75年の映画化では、イギリス 出身のブライアン・フォーブスが監督、『卒業』や『明日に 向かって撃て!』などのキャサリン・ロスの主演で、脚色は 『明日に…』のウィリアム・ゴールドマンが担当していた。 そしてその後この作品は、80年以降のテレビで“Revenge of the Stepford Wives”“The Stepford Children” “The Stepford Husbands”という続編が3本も作られる程 の長い人気を保っている。因に最後の作品は、ルイーズ・フ レッチャーらの出演で96年に製作されたものだ。 オリジナルはサスペンスタッチで作られていて、キッドマ ンにとっては『アザーズ』や、途中降板した『パニックルー ム』の系統を期待したいところだが、実は今回の映画化は、 監督が元マペッツで、『リトル・ショップ・オブ・ホラー』 などのフランク・オズになっており、ブラックコメディの色 を濃くした作品にするということだ。 なお、キッドマンは来年1月に撮影開始予定の“Birth” という作品の次に本作に入ることになっている。因に、先行 する作品は、35歳の女性が10歳の少年から恋を打ち明けられ るが、その少年は彼女の死んだ夫の生まれ変わりを主張し、 彼女と夫との過去の出来事を語り始めるというもの。ニュー ライン傘下のアート作品ブランド、ファインラインで製作さ れる作品だが、同ブランドでは過去最高の2,000万ドルの製 作費が計上されているという作品だ。 * * お次は人気コミックスの映画化で、“The Phantom”。 原作のコミックスは、1936年2月17日にスタートした最初 のコスチュームヒーローと呼ばれている作品で、この後の、 38年スタートの『スーパーマン』や、39年の『バットマン』 の誕生の元になったとも言われている。特に『バットマン』 については影響が強いと言われているようだ。 また、物語の紀元も古く、初代のファントムは、元はアメ リカを発見したコロンブスの部下で後に海運で成功したサー ・スタンディッシュという人物の息子というのだから、400 年以上の歴史の描かれた作品ということになる。 なお、設定では、父親と共にインド洋を航海中に海賊に襲 われ、唯一人の生き残りとなった息子のキットが、ピグミー 族の助けを借りて神秘の森の奥深くに基地を設け、そこから 世界の悪との戦いを繰り広げるというもの。従って本人は普 通の人間で、その使命は代々引き継がれているのだが、コス チュームで素顔を隠しているために、一般には不死身のヒー ローと思われているという物語だそうだ。 そしてこの原作は、43年に15巻の連続活劇として最初の映 画化がされているが、実は、96年にパラマウントの製作で、 サイモン・ウィンサー監督による長編映画化もされている。 この96年版は、『メンフィス・ベル』などのビリー・ゼー ン主演、共演者にはキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ケリー =ヒロユキ・タガワ、サマンサ・エッガー、パトリック・マ ッグーハンの名前が並んでいるという大変な作品だったのだ が、ガイドブックの紹介では、「『インディ・ジョーンズ』 の流れを狙ったが、スタントなども中途半端で、お金の掛け 方で失敗した」と言われているものだ。 その作品がリメイクされる訳だが、今回の計画は、前の映 画化とは全く関係のない新たな計画として進められているも ので、脚本には『ダイ・ハード』などのスティーヴン・デ= スーザが契約、製作は、MGM及びディズニーと業務提携し ているハイド・パークが行う。なお同社の首脳は、「子供の 頃から原作のファンだったが、前の映画化には本当にがっか りした。今回は、『マトリックス』や『スパイダー・マン』 のような路線を目指す」としている。 因に、映画化権はすでに原作コミックスの権利を所有する 会社に戻されており、今回はその会社との契約に基づいて映 画化が行われるものだが、実は共同製作でクルセーダーとい う会社が参加していて、こちらが前作を製作したパラマウン トと契約しているということで、アメリカ公開はパラマウン トが配給することになりそうだ。 * * もう1本はリメイクと呼べるかどうか微妙なところだが、 “Shangri-La”という作品が、ソニー・ディジタル・エンタ ーテインメントの製作によるフルCGIアニメーションで進 められている。 この作品の具体的な内容については明らかにされていない が、「シャングリ・ラ」と言えば、ジェームズ・ヒルトンの 原作で映画化もある“Lost Horizon”(失われた地平線)に 登場する理想郷の名前で、その37年の映画化がソニー傘下の コロムビアで行われていることから、この作品もその流れと いうか、リメイク、若しくは続編のような作品ではないかと 言われているようだ。 ところがここにきて、この作品の脚本に、『ワイルド・ス ピード』のゲイリー・スコット・トムプスンの起用が発表さ れた。確かに原作の要素の一つは秘境冒険ものだから、アク ション作品として映画化することは可能とは思うが、原作に 描かれているシャングリ・ラは、争いのない理想郷というこ とになっていて、あまりアクションという雰囲気ではない。 それでこの脚本家の起用は一体何を意味するのか、かえって 注目を集めているようだ。 因に、37年版はフランク・キャプラ監督の名作だが、オリ ジナルの2時間12分(Variety紙の記録では2時間5分)と いう上映時間は当時としては破格のもので、このため一時は 再編集された短縮版が配給されたために、現在、完全なフィ ルムは保存されていないのだそうだ。これに対して、最近、 失われたフィルムの一部が発見されて復元が行われたようだ が、それでも未だに一部は、残っていたせりふの音声とステ ィル写真で補ったものになっているということだ。 また、73年にはハル・デイヴィッド、バート・バカラック の作詞作曲による2時間23分のミュージカル版も作られてい るが、物語と映像はともかく、音楽の面であまり評価はされ ていないようだ。 * * 前回、アンジェリーナ・ジョリー主演による“Bitten”と いう作品を紹介したが、続けてウェアウルフ(狼人間)もの の話題が届いている。 今回の作品は、ウェス・クレイヴン監督の計画で、『スク リーム』の脚本家ケヴィン・ウィリアムスンと再びチームを 組む“Cursed”というもの。製作は、『スクリーム』のディ メンションで、同社の発表では、来年8月8日の公開日を決 定済み、シリーズ化も目指すそうだ。 なお計画は、ディメンションの共同経営者のボブ・ウェイ ンスタインと、クレイヴン、ウィリアムスンが話し合ってい るときに生まれたもので、彼らはここ数年、新たなホラー映 画の企画を検討して、幽霊ものや、連続殺人鬼ものなどと話 し合っているうちに、あるときウェインスタインが「ずっと 狼人間ものが好きだった」と発言すると、ウィリアムスンが 「それなら今すぐに企画を提出できる」と答え、届けられた 企画を見て直ちにゴーサインを出したということだ。 なお作品は、「『スクリーム』と同様に第1に恐がらせる ことを目的としたものだが、その上お楽しみも一杯詰まって いる」ということで、特に「スペシャルエフェクトを駆使し て、今までの観客が見たこともないような映像を展開、今ま での作品とは違った捻りのある作品をお見せする」というも のだそうだ。 ということで、来年8月公開を目指して年内にも撮影が開 始されるようだが、実はクレイヴンの計画では、この時期に は黒沢清監督の『回路』をリメイクする“Pulse”の計画も 発表されていた。しかし前回報告したように主演をオファー されていたキルスティン・ダンストが出演しないことが判明 し、その上今回のクレイヴン側の発表で、『回路』のリメイ クの計画は当分お預けということになりそうだ。 * * アメリカでは今年が中間選挙の年ということで、これから 2年後の大統領選挙に向けて政治のシーズンの開幕だが、こ の時期を狙って大物スターによる政治家を主人公にした作品 の計画が目立ってきている。 そんな中で、76年の『大統領の陰謀』で共演したロバート ・レッドフォードとダスティン・ホフマンが相次いで政治家 を主人公にした映画に主演する計画が発表されている。 まずはロバート・レッドフォードで、72年に製作主演した “The Candidate”(候補者ビル・マッケイ)の後日談を描 く計画が発表されている。具体的な内容は明らかにされてい ないが、オリジナルで上院議員を目指し、メディアを活用し た選挙戦を繰り広げたマッケイのその後を描くものというこ とだ。レッドフォードは同じ役での製作主演と、監督も担当 することになっている。製作はワーナー。 一方、ホフマンの主演作は、“Mooseport”という作品。 こちらは、前大統領の主人公(ホフマン)が引退後に東海 岸の小さな町に引っ越してくるが、その町の市長の席が空席 だったことから、周囲の期待を集めてしまうというもの。そ して対抗馬には、今年のエミー賞を受賞したレイ・ロマーノ 扮する地元の商店主が立候補するのだが…、というコメディ タッチの作品のようだ。『いまを生きる』のトム・シュルマ ンの脚本で、監督はロッド・ルーリィ。製作は“T3”も手掛 けているインターメディアで、配給はこれから交渉されると いうことだ。 * * カートゥーン・ネットワークで人気の“Johnny Bravo”と いう30分アニメーションシリーズの実写による映画化権をワ ーナーが獲得し、これを『スコーピオン・キング』が好調の ザ・ロックこと、ドウェイン・ジョンスンの主演で検討して いることが発表された。 元々カートゥーン・ネットワークとワーナーは協力関係に ある会社ということで、すでに両社の間では『パワーパフ・ ガールズ』の劇場版も製作公開されているが、実写映画化を 共同で進めるのはこの作品が初めてになるということだ。因 に、この夏の大ヒット作『スクービー・ドゥ』もカートゥー ン・ネットワークで放送されていたものだが、この映画化は ハナ=バーベラの権利に基づいて行われたもので、ネットワ ークは映画の製作にはタッチしていなかった。 そして今回計画されている“Johnny Bravo”は、97年にス タートしたカートゥーン・ネットワーク製作のオリジナル番 組で、最も成功した看板番組だそうだ。内容は、エルヴィス ・プレスリー似で筋骨隆々、そして母親を愛するフェミニス トの主人公が、彼を狙う悪と対決するという一種のヒーロー ものだが、実はジョンスン自身が以前から大ファンだったと いうことで、今回は彼の希望で映画化が進められているとい うことだ。 なおジョンスン主演では、『ハムナプトラ2』『スコーピ オン・キング』に続いて、新作の“Helldorado”もユニヴァ ーサルの製作で、その間にはコロムビアで企画された“King Kamehameha”も立ち消えになるなど、ユニヴァーサルの専 属のような感じになってきていたが、思わぬ方向から突破口 が開けることになりそうだ。 * * 後半は短いニュースをまとめておこう。 『ザ・メキシカン』の脚本家ジョエル・ワイマンと製作者 のジョン・バルディッチのチームで、“R.P.M.”という作品 が計画されている。 題名は自動車などで使われる回転数の意味で、ヨーロッパ が舞台のカーレースを背景にしたものだが、ちょっとアウト ローなブッチとサンダンスのような2人組を主人公にしてい るということだ。なお、映画にはメルセデス、アストン・マ ーティン、ランボルギーニ、フェラーリなどの名車が続々登 場し、舞台はロンドン、モナコ、パリ、そしてドイツに跨が るそうだ。来年早々に準備を開始して、撮影は来年5月開催 のモナコ・グランプリで、挿入シーンの撮影から始めるとし ている。 監督は『トゥームレイダー』のサイモン・ウェスト。製作 はコロムビアで、同社では、04年夏に公開される“The Ama zing Spider-Man”と並べる作品にしたいようだ。 * * 好調なスタートを切ったハリウッド版『ザ・リング』の脚 色を担当したアーレン・クルーガーがユニヴァーサルと契約 し、2作品の計画が発表されている。 その1本目は“Skeleton Key”という題名で、20代の女性 を主人公にしたゴシックホラーもの、『ザ・リング』の流れ を汲む作品のようだ。『光の旅人』のイアイン・ソフトリー の監督が期待されている。 そしてもう1本は、“The Talisman”。スティーヴン・キ ングとピーター・ストラウブ共作による少年が主人公の異次 元世界を巡るファンタシー小説の映画化で、数年前からステ ィーヴン・スピルバーグの監督作品として計画されているも のだ。すでにいろいろな脚本家が参加しても完成に至らなか ったが、今度こそクルーガーの手腕に期待したい。 * * 『ウエディング・シンガー』をヒットさせたドリュー・バ リモアとアダム・サンドラーのコンビ再会による新作が、コ ロムビアで計画されている。 題名は“Fifty First Kisses”というもので、短時間の 記憶しかもてない女性と、彼女に恋してしまった男の物語。 彼女がすぐに記憶をなくしてしまうために、いつも最初の出 会いから始めなくてはならないという、ちょっと切ないロマ ンティック・コメディだ。 サンドラーとバリモアは製作も担当しており、製作状況は ジョージ・ウィングという人のオリジナル脚本から、現在ロ ーウェル・ガンツとババルー・マンデルがリライト中。ただ し監督は、当初はジェイ・ローチが発表されていたが、彼が 降板したために新たな監督を選考中だそうだ。 なお、バリモア主演の『チャーリーズ・エンジェル』の新 作は、“Charlie's Angels 2: Full Throttle”の題名で、 すでに撮影を終了したようだ。 * * 『ビューティフル・マインド』のロン・ハワードの次回作 がようやく決定したようだ。 今回、発表された作品は、映画の題名は未定だが、トーマ ス・エジソンという作家の“The Last Ride”という長編小 説を映画化するもので、内容は女性を主人公にした西部劇。 時代は1886年で、主人公の女性は、無法者たちに誘拐された 娘の救出のために、長く疎遠だった父親と協力することにな る、というもの。そしてこの主人公と父親を、ケイト・ブラ ンシェットとトミー・リー・ジョーンズが演じることになっ ている。脚本は、ジョーンズが出演した『スペース・カウボ ーイ』のケン・カウフマン。製作はリヴォルーションで、来 年3月の撮影開始予定が発表されている。 なおハワードの計画で、先に紹介した“The Serpent and Eagle”は、本作の後で監督する予定だということだ。 * * 最後に、キネマ旬報の記事でちょっと気になることがあっ たので、一言、書かせてもらう。 11月下旬号の「幻の映画」の特集の中で、岡本喜八監督の 『日本アパッチ族』についてクレージー・キャッツ主演とあ るが、これにはちょっと疑問を感じた。実際このときの脚本 は、当時の雑誌に掲載されたものを読んでいるが、どちらか というと、社会派のシリアスなもので、クレージーが主演す るような雰囲気のものではなかった。 そこで、この経緯について原作者の小松左京氏に聞いたこ とがあるが、小松氏の発言では「脚本が意に沿わなかったの で映画化をストップさせた」ということだった。しかし同時 にSF作家の平井和正氏に脚色の依頼をしたということで、 その依頼した内容が「クレージー・キャッツが主演するよう な作品」だったというのだ。 従って小松氏の発言からすると、クレージー・キャッツ主 演の『日本アパッチ族』という企画はなかったようにも思え るのだが、どうなのだろうか。 なおこの話には、平井氏への依頼が多忙のため断念され、 その結果、『日本アパッチ族』がなるはずだった日本人プロ パーのSF作家原作による映画化の第1号が、平井氏の『狼 の紋章』になったというおちがつく。
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