井口健二のOn the Production
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2002年08月16日(金) オースティン・パワーズ ゴールドメンバー、プロフェシー、9デイズ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※
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『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』     
            “Austin Powers in Goldmember”
マイク・マイヤーズ脚本、主演のスパイ・パロディシリーズ
第3弾。                       
実は、僕は第1作は見ていなくて、第2作のときには、確か
『M:I2』に続けての東京フォーラムAでの試写会という
ことで、配給会社の力の入れようは感じたのだが、余りに下
品なギャグの連発にいささかげんなりしてしまったものだ。
従って今回は、ちょっと不安を感じながら試写を見に行った
のだが、これがなかなかの出来。特にプロローグでかなりぶ
っ飛ばしてくれるので、後はその勢いに乗せられて、あれよ
あれよという感じで見てしまった。           
もちろん下ネタもかなりあるにはあるのだが、前作ほど下品
ということもなく、何と言うかかなりスマートな作品になっ
ていた。もっともこれは僕の方が、マイヤーズのペースに馴
れてしまったという可能性もないではないが。      
物語は、またぞろ宿敵Dr.イーブルの悪事で、今回は小惑星
を誘導ビームで地球に衝突させ、人類を滅亡させようという
計画を巡って、過去と現代を股に掛けたオースティンの活躍
が繰り広げられるというもの。しかも今回は舞台の一つが、
東京なのだ。                     
この物語を、下ネタから真面目(?)なパロディまで満載し
て綴って行く訳だが、今回は父親役でサー・マイクル・ケイ
ンが登場。ハリー・パーマーのパロディには気付かなかった
が、エンディングには『アルフィー』の替え歌が流れるとい
った具合で、まあその程度にスマートだったということだ。
なお、東京のシーンでは、日本語の台詞が英語だとどう聞こ
えるかというギャグが連発されるのだが、この部分は字幕を
見ていると台詞が聞き取れなくなるし、台詞に集中すると字
幕が読めないしで、ちょっとフラストレーション。    
アメリカ人は字幕だけで面白がっているのだから、それでも
いいのだが、日本人としてはやはり気になる。どこかでシナ
リオの再録が出ることを楽しみにしたい。後は、福美と福代
という双子のギャグで、字幕はフクユとしなければならない
のも辛いところだ。まあ、末節のことではあるが。    
それから、トム・クルーズ始め、グウィネス・パルトロウ、
ケヴィン・スペイシー、ダニー・デヴィート、ジョン・トラ
ボルタらのカメオ出演が、これがただの通行人という程度で
はなく、半端でなく本当に物凄い。これだけでも一見の価値
はあると言えそうだ。                 
                           
『プロフェシー』“The Mothman Prophecies”      
ウエスト・ヴァージニア州ポイントプレザントのシルヴァ橋
で、1967年12月15日に発生した橋崩落の惨事をクライマック
スに、「蛾男の予言」と呼ばれる超常現象を追ったサスペン
ス作品。監督マーク・ペリントン、主演リチャード・ギア。
ワシントンポスト紙の記者の主人公は、妻の運転する車で事
故に遭う。そのとき妻は何かを見たと言い、やがて事故が原
因ではなかったが脳に腫瘍が見つかり、間も無く亡くなって
しまう。そして後には妻が病床で書いた無数の無気味な天使
の絵が残されていた。                 
2年後、主人公は取材に向かう途中で突然600kmもの空間移
動に遭遇、ポイントプレザントの町に到着する。そして最近
不思議なことが起り続けているという婦人警官の証言から、
自身の異状体験と妻の死との関連を思い取材を開始する。 
しかし憑かれたように取材する主人公に、デスクも匙を投げ
てしまうのだったが…。                
「蛾男」はチェルノブイリの事故も予言していたと言われ、
一説には宇宙人説も言われているそうだが、映画では結局そ
の謎は明かされない。しかし『隣人は静かに笑う』でも、圧
倒的な現実感を演出してみせた監督は、本作でも見事にその
手腕を発揮している。                 
ただし『隣人…』では、余りに冷酷な結末に唖然とさせられ
たが、本作では何となく希望が見えてくるところが好ましく
感じられた。                     
それから、クライマックスの橋の崩壊のシーンは、『ターミ
ネーター』などのFantasy IIのミニチュアワークで描かれて
おり、なかなかの迫力だった。             
                           
『9デイズ』“Bad Company”              
ソ連崩壊後、行方不明になっているポータブル型核爆弾。そ
の取り引きを巡る典型的な巻き込まれ型スパイストーリー。
CIAの潜入捜査官ケヴィンは、プラハで核爆弾回収の取り
引きに漕ぎ着ける。しかしその直後に襲われ、核爆弾の奪取
を狙う組織に殺されてしまう。ところがその死は隠され、C
IAは身代わりに任務を遂行させることを計画する。   
実はケヴィンには生まれてすぐに生き別れた双子の兄弟がい
たのだが、その男ジェイクはチェス・ハスラーとダフ屋を生
業とするお気楽な奴。しかしチェスの抜群の腕前と、メモも
取らずに切符を捌く様子はただものではない。      
そしてCIAに拉致されたジェイクは、ケヴィンの上司だっ
たオークスの指揮の下、9日間でケヴィンに成り済ます訓練
を始めるのだが…。                  
このケヴィン/ジェイク役をコメディアンのクリス・ロック
が演じるので、お笑いになるのかと思いきや、オークス役を
アンソニー・ホプキンスが演じて、軽妙な中にもしっかりと
した、しかもアクション映画になっている。       
確かにミスマッチの面白さみたいなものもあるが、全体とし
ては緊張感も心地よい上出来のスパイアクションと言えるだ
ろう。                        
特に、最初は素人を巻き込むことに反対というか、多分ケヴ
ィンへの思い入れの強すぎるオークスが、徐々にジェイクを
認めて行く変化の演じ方は、さすがにホプキンスが演じただ
けのことはあるという感じがした。           
それにしても、『トータル・フィアーズ』といい、この作品
といい、こんなにも簡単に核爆弾が取り引きされてしまって
良いのだろうか。                   


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井口健二