井口健二のOn the Production
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2002年08月15日(木) 第21回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回は久しぶりに記者会見の話題から。        
 8月5日に、17日から公開される『スクービー・ドゥー』
の主演シャギー役のマシュー・リラードとヴェルマ役のリン
ダ・カーデリーニ、監督のラジャ・ゴズネル、それに製作者
による来日記者会見が行われた。いつものように本編に関わ
る話題はここでは扱わないが、本作では前々回にも紹介した
ように、すでに続編の情報が解禁になっており、会見でもそ
の質問が出たので、その話題を紹介しておこう。     
 この続編では、前々回紹介したように主演の4人と監督に
ついてはすでに契約が結ばれているということだが、前々回
の情報と異なっていた点では、題名が“Scooby Doo 2”では
なく“Scooby 2”になっているようだ。         
 そしてその内容について振られた製作者は、「元々は完全
に秘密の計画で進めていたものだが、監督があちこちで勝手
に喋ってしまったので、後は監督に聞いてくれ」とのこと。
これに対してゴズネルは、ちょっと恐縮したような雰囲気で
「物語は、ミステリー社が過去にテレビシリーズなどで退治
したモンスターたちが復活し、一つの町を占拠している。そ
れを彼らが解決する」ものになるということだ。つまり、テ
レビアニメーションの2Dのモンスターが大挙して3Dで復
活してくる訳で、これは面白くなりそうだ。       
 一方、リラードは、本作が4度目の共演になるというフレ
ッド役のフレディ・プリンズJrとの関係について聞かれた際
に、「お互いそろそろ別々の道を歩みたいと思っているが、
5度目の“Scooby 2”と、できたら6度目の“Scooby 3”
はやりたい」ということで、どうやら『スクービー・ドゥー』
が3部作になる可能性は高そうだ。           
 それにしても、リラードは凄いハイテンションで会見をリ
ードしていたし、カーデリーニも映画の中のヴェルマとは違
って華のある、それでいてしっかりした感じをみせて、なか
なか良い雰囲気の会見だった。             
        *         *        
 以下はいつものように製作情報で、まずは待望の第3作の
監督が決定した。                   
 『ハリー・ポッター』シリーズの映画化で、現在製作中の
第2作“Harry Potter and the Chamber of Secrets”に
続く第3作“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”
の監督に、以前に紹介したアルフォンソ・キュアロンの抜擢
が正式に発表された。                  
 このシリーズでは、第2作までの監督はクリス・コロンバ
スが担当しているが、結局毎年1作ずつの監督を続けるため
には、その間ずっとロンドンでの生活が続くことになり、帯
同している家族がアメリカに戻りたいと言い出したのが降板
の理由のようだ。しかしコロンバスは、今後の作品に関して
も製作者として責任は負い続けるということで、言ってみれ
ば『スター・ウォーズ』の映画化におけるジョージ・ルーカ
スのような存在になるようだ。             
 ということで、コロンバスが後を預けられる監督の選考が
進められていた訳だが、最終的に当初から最有力と言われて
いたキュアロンに決着したものだ。これについてコロンバス
は、「アルフォンソのような、才能があって、人を興奮させ
ることの出来る監督に引き継いでもらえたことには、スリル
を感じている」という談話を発表している。       
 キュアロンは、以前にも紹介したように公開中の『天国の
口、終りの楽園。』での大胆な演出で話題を集めているが、
ハリウッドでは95年の『リトル・プリンセス』と97年の『大
いなる遺産』の成功が評価されており、これらの作品が共に
名作の映画化であったことも今回の抜擢に繋がったようだ。
 それと、実は『天国…』の公開に併せて監督の来日記者会
見があり、その時は他の作品に関する質問は封じられてしま
ったのだが。ちょうどワールドカップ開催中のときで、『天
国…』の中でもサッカーに興じるシーンがあるが、本人もサ
ッカーフリークであることを表明していた。その感覚が第3
作のクィディッチのシーンに活かされることを期待したい。
 なお、撮影は来年早々に開始され、公開は04年の夏の予定
になっている。                    
        *         *        
 お次は、またまたリメイクの話題がまとめて届いている。
 まず最初は、カナダの映画作家デイヴィッド・クローネン
バーグの出世作“Scanners”のリメイクが、『ブレア・ウィ
ッチ・プロジェクト』などのアーチザンの製作で行われるこ
とになった。
 81年に発表されたオリジナルは、相手の心を読むと同時に
相手の脳を爆発させることもできる超能力者たちの闘いを描
いたもので、当時の同系の作品の中では群を抜くセンスを持
った作品と言われ、その後の多くのフィルムメーカーの手本
となっている。しかし当時のクローネンバーグ作品は、いず
れも監督自身は権利を持っておらず、この作品を含む初期の
“The Brood”“Videodrome”などは、カナダで大手プロダ
クションを経営するピエール・デイヴィッドとレネ・モロと
いう人物が権利を保有しているということだ。      
 従って91年以降シリーズ化された作品にはクローネンバー
グは一切関与していないものだった。そして今回の計画も、
実は状況は変わっておらず、アーチザンとカナダの権利者た
ちとの間で契約されたものだ。因に、権利者たちは当初オリ
ジナルに基づくテレビシリーズの企画を練っていたところ、
アーチザンからリメイクの申し入れがあり、「オリジナルを
知らない観客にも受け入れられるような作品を作る」という
ことで契約が結ばれたそうだ。             
 脚本、監督などは未定だが、アーチザン側は「この手の作
品は観客を読み易い」とのことで、製作費は中級映画のレヴ
ェルで行くとしている。といってもオリジナルは典型的な低
予算作品だし、VFXの進化は20年前とは比べものにならな
いので、まあそれなりの作品になりそうだ。後は作り手のセ
ンスの問題ということだろう。             
 なお、アーチザンは『ブレア・ウィッチ』の大ヒットで一
躍注目され、その後は海外作品の配給やかなり意欲的な作品
も作っているのだが、いまだに「『ブレア・ウィッチ』の」
と前置きされる状態は変わっていない。その原因の一つは、
『ブレア・ウィッチ』の大ヒットの直後に即席で製作した続
編の失敗も影響しているということだが、現在はその失敗を
反省し、オリジナルの作家たちと再契約して『ブレア・ウィ
ッチ』の第3弾を作る計画も進んでいるそうだ。     
 それに併せての今回の“Scanners”のリメイクの計画とい
うことで、新たなジャンル映画のプロダクションという期待
もされているようだ。                 
        *         *        
 2本目は、以前にも1回紹介していると思うが、66年製作
のジョン・フランケンハイマー監督作品“Seconds”のリメ
イク計画で、同じパラマウントの製作で11月1日に全米公開
予定のSF大作“The Core”のジョン・アミエル監督の起用
が発表された。                    
 オリジナルは、ロック・ハドスンの主演で、整形手術で風
貌を変え、自分自身を抹殺して買い取った他人の人生を歩も
うとした男が、結局他人にもなり切れず、自分自身に戻るこ
ともできなくなって苦悩するというサイコスリラー。題名は
「2度目」という意味だが、それが複数形になっているとこ
ろがオリジナルの無気味さだった。           
 そしてこのリメイクの計画では、最初はリック・ジャフェ
の脚本から、アマンダ・シルヴァ、ロジャー・エイヴァリ、
さらにジョン・ブランカト、マイクル・フェリスらの脚本が
検討され、監督にも一時はジョナサン・モストウの名前も上
がっていたということで、決定までにはかなりの曲折があっ
たようだ。                      
 なお、今回発表されたアミエル監督は、93年の『ジャック
・サマースビー』、95年の『コピーキャット』、99年の『エ
ントラップメント』などの作品歴があり、そして新作は、ヒ
ラリー・スワンク演じる宇宙パイロットとアーロン・エック
ハート演じる科学者による地底探検という、かなり本格的な
SF映画。まあいろいろな傾向の作品をそつなくこなしてい
る感じだ。因に、93年の作品はフランス映画がオリジナルの
リメイクでもある。                  
 キャスティングなどは未定だが、来年早々の撮影が予定さ
れている。                      
        *         *        
 3本目は、68年イギリス製作のスパイスリラー“A Dandy
in Aspic”のリメイクをソニー傘下のコロムビアと製作者の
メイス・ニューフェルドが計画している。        
 このオリジナルは、日本では『殺しのダンディ』の邦題で
公開されているが、実は監督のアンソニー・マンが製作中に
死去したという曰く付きの作品。映画自体は主演のローレン
ス・ハーヴェイが引き継いで完成させたが、ベルリンを舞台
にした二重スパイの物語で、主人公は自分自身への暗殺命令
を受けてしまうというもの。元々話が複雑なところへ、それ
ぞれの側を描くシーンの切り替えが速すぎて、ガイドブック
によると「物語を追うのがほとんど不可能」という飛んでも
ない作品になってしまっている。            
 それでも、ガイドブックでは星2つが付いているというこ
とは、まずまずの評価ということになる訳だが、さてリメイ
クではこれをどのように料理してくれることか。脚本は、ア
シュレイ・ジャド主演の『ハイ・クライムズ』などを手掛け
ているユリ・ツェルツァーとカリー・ビックリーが6桁半ば
($)の契約金で担当することになっている。      
        *         *        
 コロムビアでは、もう1本、63年製作のミュージカル映画
“Bye Bye Birdie”のリメイクも検討されている。この作品
は、先日亡くなったジョージ・シドニー監督の絶頂期の作品
の一つで、元々はエルヴィス・プレスリーが兵役にとられた
際の騒動にヒントを得たとも言われるブロードウェイ・ミュ
ージカルから映画化されたもの。オリジナルは『アラビアの
ロレンス』に次いで70mmで製作された。なお、95年にはテレ
ビ化もされているようだ。ただし、オリジナルの内容をその
ままリメイクしてもピンと来ないような気がするが、どうす
るのだろうか。                    
        *         *        
 続いては、学園ものの映画の話題が2本届いている。  
 まずは、『スクービー・ドゥー』にダフネ役で出演してい
たサラ・ミッシェル・ゲラー主演で“A Semester Abroad”
という計画が発表されている。この作品は、ゲラーが出演中
のテレビシリーズ“Buffy the Vampire Slayer”の02−03
年シーズンの撮影終了後に予定されているもので、多分ゲラ
ーにとってはこれが最終シーズンとなった後での、本格的な
映画女優として歩み始める第1歩の作品になるということだ。
 物語は、ニューヨークの下町クイーンズで育った負けん気
の強い少女が、奨学金を得てロンドンのエリートが集う大学
に留学するというもの。当然そこでのカルチャーギャップな
どが描かれるものだが、紹介文では、「現地の勿体振った男
の子」などという表現もあるので、これをダフネのキャラク
ターで全部ぶっ飛ばしてしまうような作品になりそうだ。も
ちろんコメディ作品で、脚本はニナ・コールマン。    
 なお、製作はディープ・リヴァーという会社が担当。00年
に設立された同社では、ピアーズ・ブロスナン製作によるロ
マンティックコメディの“Laws of Attraction”という作
品を、ようやくこの秋に第1作として製作に漕ぎ着けたとこ
ろで、本作はその第2作として計画されているものだ。   
        *         *        
 学園ものもう1本は、00年の映画『ハイ・フィデリティ』
などにも出ていたギター奏者で歌手のジャック・ブラック主
演による“School of Rock”という作品が計画されている。
 この作品は、先に“Orange County”という作品が公開さ
れた主演のブラックと脚本家のマイク・ホワイト、それに製
作者のスコット・ルーディンが再びチームを組むコメディ作
品。物語は、ミュージシャンの主人公が、自分の母校で厳格
な校風の私立学校に代用教師として赴任することになり、そ
こで、彼のミュージシャンの雰囲気と、反骨精神が生徒たち
にいろいろな影響を与えるというもの。         
 何だか日本のテレビドラマにありそうなお話だが、いよい
よハリウッドがそういう作品を作り始めるということだ。製
作会社はパラマウント。監督は未定だが、早急に決定して来
年夏の公開を目指すことになっている。         
 因に、ブラックとゲラーは今年のMTVムーヴィアワード
の司会を共同で務めたそうだ。             
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは上でも紹介したアーチザンの情報で、『ビューティ
フル・マインド』の脚本家のアキヴァ・ゴールズマンの製作
で、ヴィンセント・ヌゴーという脚本家による“Tonight,He
Comes”という作品が計画されている。この作品は、12歳の
問題児の少年と、堕落した元スーパーヒーローの関係を描い
たダークドラマということで、ヌゴーが最初に書き上げた長
編作品。そしてこの監督には、トニー・スコットの名前が上
がっているということだ。実はヌゴーは、以前にスコットが
製作したテレビシリーズ“The Hunger”でいくつかのエピソ
ードの脚本を担当したということで、その繋がりで今回の計
画となったようだ。なおアーチザンの首脳は、この脚本につ
いて「新世代のスーパーヒーローを生み出すような、不思議
な雰囲気に溢れたシナリオ」と評している。       
 『シュレック』に続くドリームワークスの長編アニメーシ
ョンで、05年公開予定の“Over the Hedge”という作品に、
ジム・キャリーが声優で初挑戦することになった。この作品
は、マイクル・フライとT・ルイスによる同名の人気新聞連
載マンガをアニメーション映画化するもので、脚色はビル・
マーレーのデビュー作の『ミートボール』などを手掛けたレ
ン・ブラム、監督は『アンツ』のティム・ジョンスンが担当
する。なおキャリーは、主人公の悪戯好きのアライグマで、
ちょっと悪のR.J.というキャラクターの声を演じる。また同
じく主人公で神経質なカメのヴァーンの声は、こちらも初挑
戦のゲイリー・シャンドリングが演じることになっている。
因に、ドリームワークスの長編アニメーションでは、03年に
“Sinbad”、04年に“Sharkslayer”が予定されている。  
 またまたヴィデオゲームからの映画化で、83年から続くミ
ッドウェー社のゲーム“Spy Hunter”の映画化権をユニヴァ
ーサルが獲得し、ザ・ロックことドウェイン・ジョンスンの
主演で映画化する計画が発表された。なお、オリジナルのゲ
ームは昨年PS2とXboxにも移植されたそうだが、元は
アーケードゲームで、一応のストーリーは、元戦闘機パイロ
ットの主人公が変形機能を持ったインターセプターを駆って
危険なスパイや暗殺者を捕まえて行くというもの。脚本はこ
れから検討されるということだが、ユニヴァーサルとしては
準備中の“Helldorado”に続く作品としたいということで、
以前に紹介したコロムビアで計画中のカメハメハ大王の計画
を阻止したい意向のようだ。              
 最後に続報で、以前に紹介したダレン・アロノフスキー監
督、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、エレン・
バーンスティン共演のSF超大作“The Fountain”に、ワー
ナーからついにゴーサインが出た。僕はこの前の報道でゴー
サインが出たものと思っていたが、さすがに製作費7,000万
ドルに達する作品には慎重にならざるを得なかったようで、
その後も検討が繰り返されていたようだ。しかしついに計画
が承認されたもので、10月末からオーストラリアのシドニー
とクイーンズランドで撮影が行われることになっている。な
お物語は、ピット扮する一人の男の、過去から現在、そして
未来に続く500年間の愛と死の遍歴を描くものだそうだ。  


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井口健二