井口健二のOn the Production
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2002年08月02日(金) ジェイソンX+ミーン・マシーン+カット!+スズメバチ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『ジェイソンX』“Jason-X”              
スプラッターホラーの代表作の一つ『13日の金曜日』のシリ
ーズ第10作。                     
と言っても、80年に第1作が発表されてから1、2年と置か
ずに続いていたシリーズが、前作の公開が93年ということは
9年ぶりの復活となったものだ。            
という訳で、この9年間ジェイソンは何をやっていたのか、
ということになるのだが、これがあっと驚きの冷凍保存で、
ついでに物語は、一気に400年後の未来へと行ってしまうの
だ。                         
一応、物語の発端を紹介しておくと、シリーズの都合上不死
身という設定になってしまったジェイソンには死刑の判決も
無意味となり、確実に殺せる時代が来るまで冷凍保存するこ
とが決定される。                   
しかし手違いで、ジェイソンの冷凍は行われるものの、一緒
に女性の研究者も冷凍され、さらに他の関係者が全滅したた
めに、その出来事自体が忘れ去られてしまう。      
そして400年後、今や人の住めなくなった地球に研究班が降
り、冷凍状態の2人が回収されるのだが…。       
この後の物語は、第2の地球に戻る宇宙船の中で勝手に解凍
したジェイソンが、『エイリアン』張りの恐怖をまき散らす
ことになる、というものだ。              
ところが、宇宙船を脱出しなければならなくなったときに、
解凍された女性が「転送ビームはないの?」と発言した辺り
から、おや?という感じになり、後は万能のアンドロイドが
活躍したり、ホロデッキ(ヴァーチャル装置)が登場したり
と、ほとんど『新・スタートレック』のパロディ。    
とは言うものの、随所にスプラッターシーンは有るが…。 
製作総指揮のショーン・S・カニンガムは第1作の監督から
ずっとシリーズに関わってきた人で、その愛情が込められて
いると言うか、バイオ装置でジェイソンを新たな姿に変身さ
せてみたり、ホロデッキでクリスタルレイクの湖畔を再現し
て大暴れさせるなど、お楽しみも盛り沢山で面白かった。 
                           
『ミーン・マシーン』“Mean Machine”         
身を持ち崩した元イングランド代表チームのキャプテンだっ
た男が、収監された刑務所で看守相手のサッカー試合に挑む
というイギリス映画。                 
このストーリーから、おやと思う人もいるかも知れないが、
実は本作は74年にロバート・オルドリッチ監督、バート・レ
イノルズ主演で映画化された『ロンゲスト・ヤード』からイ
ンスパイアされた作品。そのことは初めのタイトルにも明記
されている。                     
オリジナルは、アメリカンフットボールの花形選手だった男
が主人公で、それを実際にカレッジ時代に選手だったレイノ
ルズが演じたものだが、本作の主演のヴィニー・ジョーンズ
も元プロサッカー選手だったということで、披露されるテク
ニックは中々なものだ。                
それにしても、アメリカ映画がイギリス映画になって、アメ
フトからサッカーに変わるというのは判りやすい。そして試
合のシーンは、さすがサッカー母国イギリスの作品らしくル
ールの解釈は正確だし、ゲーム展開も理に叶っていて見てい
て気持ち良かった。                  
といっても、その試合が囚人たちにとって日頃のうっぷんを
晴らすものであることには変わり無く、かなりえげつないプ
レーの続出となるのだが、それでも何となく納得できるもの
になっているのも見事だ。中に登場する23の秘技というのを
全部知りたくなった。                 
イギリス映画らしく、ユーモアも決してからっとしたものば
かりではなく、内容的にかなり重たいものを持っているとこ
ろも、結構見応えが有る。『少林サッカー』とは違った意味
で、面白いサッカー映画だった。            
                           
『カット!』“Familia”                
スペイン映画界の登竜門と言われるゴヤ賞で、96年に最優秀
新人監督賞を受賞した作品。              
スペインの監督では、『アザーズ』のアレハンドロ・アメナ
ーバルの人気が高いが、本作のフェルナンド・レオンもかな
り捻った題材を自らの脚本でうまく作り上げている。   
父親の55歳の誕生日、その準備に忙しい家族たち。しかしち
ょっとおかしい。それもその筈、実は家族は一人暮しの男に
雇われた劇団のメムバーで、その日1日だけの家族を演じよ
うとしているのだ。                  
やがて開演、目覚ましのベルの音と共に男が登場し、家族は
予め渡された脚本に沿って芝居を始める。ところが男は脚本
にない質問をし始め、芝居は混乱、そこは何とかアドリブで
破綻無く切り抜けて行くのだったが…。         
予定外の展開で右往左往する劇団員たちの姿に、最初は場内
に笑いが沸き起こるが、やがて演じられている内容が、普通
の家庭でも起こる話であることに気付かされる。しかしそれ
は決して嫌みな感じのものではなく、常に暖かい雰囲気なの
が素晴らしい。                    
                           
『スズメバチ』“Nid de Guepes”            
12,000発の弾丸が飛び交うという02年製作のフランス製アク
ション映画。                     
飛び交う銃弾の数だけなら、ハリウッド映画ではもっと多い
ものも有るかも知れないが、フランス映画でここまでハード
なアクションが描かれるとは思わなかった。       
物語は、アルバニアマフィアの大ボスでヨーロッパ中の売春
組織を仕切る男が逮捕され、フランスで裁判を行うために護
送されてくる。空港で特別仕様の装甲車に移された男は、女
性でありながら特殊部隊の中尉というヒロインの指揮の下、
裁判の行われる町まで移動することになっているのだが…。
一方、町のチンピラを集めて関税倉庫に眠るラップトップを
強奪する計画が進行。近隣の携帯電話を不通にするなどの準
備万端、軽業まがいの進入方法で数千台のパソコンの奪取に
成功する。しかし、そこにマフィアの策略で追いつめられた
装甲車が逃げ込んでくる。               
外には重武装した数百人のマフィア、携帯電話は不通で本部
との連絡は取れない。                 
シチュエーションは問題なしとは言わないが、そこそこ理に
叶っているし、まあ通常のアクション映画ならこんなものだ
ろう。                        
それより、『クリムゾン・リバー』のナディア・ファレス、
『ピアニスト』のブノア・マジメル、『TAXi』のサミー
・ナセリの顔合せが良く、特にファレスのヒロイン像は、新
しいフランス映画を象徴しそうだ。           


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