井口健二のOn the Production
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2002年07月15日(月) 第19回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずは、ちょっと期待が膨らむこの情報から。     
 ワーナーで長らく中断している『スーパーマン』と『バッ
トマン』の両シリーズについて、これらを合体した“Batman
vs.Superman”という作品をウォルフガング・ペーターゼン
の監督で製作する計画が発表された。この計画ではすでに、
『セブン』のアンドリュー・ケヴィン・ウォーラスの脚本も
契約されており、04年夏の公開に向けて製作が準備されてい
るということだ。なおペーターゼンとワーナーでは、前々回
紹介のSFシリーズ“Ender”の計画が先に発表されている
が、この状況では今回の作品が先行することになりそうだ。
 一方、ワーナーからは、J・J・エイブラムス脚本、『チ
ャーリーズ・エンジェル』のMcG監督で“Superman”の復
活作。また、フランク・スタック脚本、『π』のダレン・ア
ロノフスキー監督で、“Batman: Year One”の計画がすで
に発表されているが、これらの計画はそのまま進められると
いうことで、今回の計画は、それらのシリーズ復活の前祝い
的な作品になるようだ。                  
 とは言え、この作品の出演者がそのまま復活シリーズの出
演者になることは当然考えられることで、その辺りの選考も
気になるところだ。これに関してペーターゼンの発言では、
「スーパーマンにはマット・デイモンが希望」のようだが、
これはあくまでも希望ということで、さてどうなることか。
これに対してバットマンの主演者に関する発言は無かったよ
うだが、こちらはジョージ・クルーニーで決まりなのだろう
か。だとするとアロノフスキー監督の“Batman: Year One”
は若き日のバットマンの物語だということなので、出演者は
変更になる可能性も有りそうだ。            
 また関連でこちらはちょっと残念なニュースだが、『バッ
トマン』からスピンオフされる計画の“Catwoman”で期待さ
れていたアシュレー・ジャドの主演がキャンセルされたよう
だ。降板の理由はスケジュールの調整ができなくなったとい
うことだが、映画の方も直ちにということでもなくなってい
るようなので、その内スケジュールの調整もつくようになる
かも知れない。差し当たって代役の発表はないようだ。  
        *         *        
 お次はファン待望と言うか、計画が発表されてからすでに
6年が経っていると言われるジョン・グリシャム原作“The
Runaway Jury”の撮影が、9月16日に開始されることが発
表された。                       
 この作品は、『ザ・ファーム』や『ペリカン文書』などの
ベストセラー作家グリシャムの同名の原作を映画化するもの
だが、実は、96年にやはりグリシャム原作の『評決のとき』
を映画化したニュー・リジェンシーとワーナーが、1,500万
ドルという当時最高額の契約金で映画化権を獲得。前作と同
じジョエル・シュマッチャーの監督、出演者には、エドワー
ド・ノートン、ショーン・コネリー、グウィネス・パルトロ
ウという布陣で映画化が発表されていた。        
 ところが翌年になって、シュマッチャーとコネリーの間で
意見の相違が表面化。これを切っ掛けに、ノートンが『ファ
イト・クラブ』に引き抜かれるなど、計画は多難を極める。
これに対してニュー・リジェンシーでは、監督にアルフォン
ソ・クワロンや、フィリップ・カウフマンらを招請するが、
いずれも途中で降板。さらに共同製作のワーナーも離脱を発
表して、遂に計画は空中分解してしまった。       
 しかし諦めないニュー・リジェンシーは、昨年新たにマイ
ク・ニューウェル監督を招請して、ウィル・スミス主演によ
る計画を再発表。ところが今度は原作者のグリシャムが配役
に難色を示し、計画は白紙に戻された。この事態に、遂にニ
ュー・リジェンシーも計画を断念、一旦はグリシャムとの契
約の破棄を通告したのだったが、結局グリシャムとの間で再
契約が成立。今度はニュー・リジェンシーがフォックスで製
作した『サイレンス』のゲイリー・フレダー監督を迎えて、
映画化が進められることになったものだ。        
 そして出演者には、ジョン・キューザック、ジーン・ハッ
クマン、ダスティン・ホフマンが契約、さらに女性の主役に
レイチェル・ワイズが発表されて、遂に9月16日の撮影開始
となっている。                    
 なおワイズは、『ハムナプトラ』シリーズでの活躍が話題
だが、近日公開の『アバウト・ア・ボーイ』ではヒュー・グ
ラントの相手役を務め、さらにダスティン・ホフマン共演の
“Confidence”と、製作も務める“The Shape of Things”
の公開が控えている。さらに現在は、ドリームワークスでク
リス・ロック製作、バリー・レヴィンスン監督によるコメデ
ィ作品の“Envy”に出演中で、その撮影が終り次第、今回の
作品に参加するということだ。             
 因に、今回の製作費は全額をニュー・リジェンシーが調達
しており、このためアメリカ配給権は未定ということだが、
内容はマイクル・マン監督の『インサイダー』などでも話題
になったタバコ訴訟に関するもので注目度も高く、しかも出
演者の顔ぶれも揃ったということで、配給権の行方も面白く
なりそうだ。常識的には、ニュー・リジェンシーが現在本拠
を置くフォックスが有力だが、前回紹介した“Fountain”の
ではワーナーとの関係も修復されているようなので、どうな
るか。なお海外は個別に契約されているようだ。     
        *         *        
 続いてはリメイクの話題を3つ。           
 まずは、これもファン待望だったジェームズ・バリー原作
『ピーター・パン』“Peter Pan”の実写版のリメイクが、
『ベスト・フレンズ・ウエディング』のP・J・ホーガン監
督の手で、今年の秋からオーストラリアのクィーンズランド
の撮影所で開始され、03年クリスマスの公開を目指すことが
発表された。                     
 この計画もここ数年に亘って噂が絶えなかったものだが、
元々は53年のアニメーションを製作したディズニーと、俳優
のメル・ファーラーが所有していた映画化の権利を継承した
コロムビアとの間に、元ディズニー社々長だったジョー・ロ
スのリヴォルーションが加わって、3社での共同製作が計画
されていた。                     
 しかし総額9,000万から1億ドルと予想される製作費を巡
っては、3社で折半ということで決着したものの、その後の
配給権を含む権利の分け方で話し合いが着かず、遂に今年の
1月にディズニーが離脱を発表していた。        
 これに対して残った2社がパートナーを探したところ、新
たにユニヴァーサルが参加を表明、コロムビア、リヴォルー
ション、ユニヴァーサルでの製作が発表されたものだ。因に
配給権は、ユニヴァーサルは北米とイギリス、オーストラリ
ア、南アフリカおよびその他の英語圏、リヴォルーションが
北欧とポルトガルとイスラエル、そしてその他の地域がコロ
ムビアとなっている。従って日本はコロムビア=ソニーとい
うことになるようだ。                 
 脚本は、ホーガンとマイクル・ゴールデンバーグが担当。
ジェームズ・バリーの原作から生じる全ての権利は、1937年
以降、ロンドンの小児病院が管理することになっているが、
その担当者は、「2人のシナリオは、原作が求めた観客との
コミュニケーションなどの思想を、現在の感覚で見事に表現
しており、素晴らしい作品だ」と高く評価している。一方、
ホーガンは、「ここに描いたピーター・パンは、英雄的で、
魔法的で、決して歳を取らない本物の少年が、海賊と戦い、
子供たちを救い出す、バリーが描いた通りのものだ。自分の
個人的に好きなものを、世界中の観客に見せることにスリル
を感じている」とコメントしている。          
 この他のスタッフでは、撮影監督をドナルド・マッカルパ
イン、装置をロジャー・フォード、衣装をジャネット・パタ
ースン、音楽をジェームス・ニュートン・ハワードが担当。
視覚効果は『コクーン』でオスカー受賞のスコット・ファー
ラーがILMを率いて担当することになっている。因にティ
ンカー・ベルはCGIで描かれることになるそうだ。   
 一方、出演者では、『ブラックホーク・ダウン』や『ハリ
ー・ポッターと秘密の部屋』では敵役のルシウス・マルフォ
イ役を演じているジェイスン・アイザックスがフック船長を
演じることが発表されているが、その他のピーターやウエン
ディーたち子供の配役については、これから世界中でオーデ
ィションを行って決定するということだ。        
        *         *        
 2本目のリメイクの話題は、56年に史上初の70ミリ映画と
して製作されたジュール・ヴェルヌ原作『80日間世界一周』
“Around the World in Eighty Days”で、このリメイク
をジャッキー・チェンの主演で行うことが発表されている。 
 オリジナルは、デイヴィッド・ニーヴンとカンティンフラ
スの主演以下、40人を越すゲストスターが登場するオールス
ター映画で、ニーヴン扮するイギリス紳士フォッジがクラブ
での賭けの為に80日間で世界一周する旅に出かけるというも
の。これに対してリメイクでも賭けは行われるが、その前に
チェンはフォッジの家で盗品の仏像を発見し、フォッジに世
界の異文化との交流の大切さを教え、その心を開かせるため
に、旅の案内を引き受けるという展開が加わるそうだ。  
 脚本は、マイクル・D・ウェイスとデイヴィッド・チッチ
ャー。監督は『ウェディング・シンガー』のフランク・コラ
チが担当することになっている。            
 撮影開始は今年の秋で、チェンが出演中の『シャンハイ・
ヌーン』の続編“Shanghai Knights”の製作が終了し次第
開始されるということだ。                
 なお製作はニューヨークに本拠を置くウォルデン・メディ
アというところで、同社では、先にジェームズ・キャメロン
監督のI−MAX3−D映画“Ghosts of the Abyss”を
製作し、この作品はディズニーの配給が決まったようだが、
基本的に配給先は1本ごとに決めるということで、今回の作
品もこれからその争奪戦が始まるようだ。因に同社では、す
でに長編第1作としてルイス・サッチャー原作のニューベリ
ー賞受賞作“Holes”の映画化を、シゴウニー・ウィヴァー、
ジョン・ヴォイドの共演で進めている他、さらにアン・ホル
ム原作の“Freaks and Geeks”、C・S・ルイス原作“The
Chronicles of Narnia”シリーズなどの映画化も進めるこ
とになっている。                    
        *         *        
 もう1本のリメイクは、87年にジェニファー・グレイ、パ
トリック・スウェイジ主演で公開された青春ドラマ『ダーテ
ィ・ダンシング』“Dirty Dancing”のリメイクというか、
この作品から想を得た作品の計画が発表されている。   
 オリジナルは、60年代を背景にニューヨークのリゾートホ
テルに宿泊する一家の少女が、激しいダンスを通じて自分に
目覚めて行く姿を描いたもので、主題歌がオスカーを受賞し
た他、テレビシリーズ化もされた。またサウンドトラックア
ルバムは2,200万枚を売り上げて、発売元のRCAのベスト
セラーの一つに数えられており、さらにヴィデオとDVDは
今でも毎月157,000巻が出荷されているということだ。   
 そして今回の計画は、題名が“Havana Nights”と発表さ
れ、59年のキューバの首都のホテルを舞台に、17歳の少女が
キューバ革命の激動の中をダンスを頼りに生きて行く姿を描
くというもの。オリジナルとはかなり違った印象だが、報道
では“Dirty Dancing”の第2作と紹介されているものだ。
 監督は、最近のシアトル映画祭で観客賞を受けた“Bang,
Bang, You're Dead”のガイ・ファーランドが抜擢されてい
る。製作はミラマックスと、オリジナルのヴィデオ/DVD
を発売しているアルチザンの共同で、配給は米国内がアルチ
ザン、海外はブエナ・ヴィスタの担当になるようだ。   
 今年の秋に準備を開始するということで、出演者は未発表
だが、因に、この計画では数年前から動きがあり、一時はリ
ッキー・マーティンとナタリー・ポートマンの共演という計
画も有ったようだ。                  
        *         *        
 リメイクの次は続編の話題で、こちらは短いニュースを2
つまとめて紹介しよう。                
 まずは、今回試写会で見た作品の紹介もしている『スクー
ビィ・ドゥー』の続編“Scooby Doo 2”の計画が早くも発表
されている。この作品は、アメリカでは公開2週間で1億ド
ル突破の大ヒットだから続編の製作は当然の話だが、実はこ
の作品の俳優に対する出演契約では最初から続編のオプショ
ンがつけられており、さらに監督のラジャ・ゴズネルに対し
ても先に続編の契約が結ばれたということで、監督と「ミス
テリー社」のメムバーは全員が再結集。製作開始は来年早々
で、公開は04年の春を目指すということだ。また脚本は、第
1作を手掛けたジェームズ・ガンがすでに契約して執筆を開
始しているそうだ。                  
 お次はこれも今年春の大ヒット作『スパイダーマン』の続
編“Spider-Man 2”では、前回脚本をアルフレッド・ゴーと
マイルズ・ミラーが手掛けることを紹介したが、この続編に
クリフ・ロバートスンが出演をアピールしているそうだ。ロ
バートスンは第1作で主人公に名文句を残して死ぬ叔父の役
で、その死が主人公が正義に目覚める切っ掛けにもなってい
る訳だが、ロバートスンは「『スター・ウォーズ』のアレッ
ク・ギネスも第1作で死んだが、その後の2作にも登場した
じゃないか」ということで、何としても出演したいというこ
とだ。アカデミー賞受賞スターにここまで言わせるこの作品
の魅力についても聞きたいところだ。          
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは、ニューラインから、82年の“Tender Mercies”
でオスカー受賞のロバート・デュヴォールと、99年の『サイ
ダーハウス・ルール』でオスカー受賞のマイクル・ケインが、
99年の『シックス・センス』でオスカー候補になったハーレ
イ・ジョエル・オスメントに人生を教えるという“Secondha
nd Lions”という作品の計画が発表されている。しかも『タ
イタニック』でオスカー受賞のディジタル・ドメインが視覚
効果を担当するという作品。一体どんな作品なのだと言いた
くなるが、実はディジタル・ドメインが10年前から温めてき
た企画で、発表では「宇宙船も星の爆発もないが、全ての人
に愛される物語」なのだそうだ。            
 『スコーピオン・キング』でブレイクしたザ・ロックこと
ドウェイン・ジョンスンの次回作にはすでに“Helldorado”
が決まっているが、新たな企画としてハワイのカメハメハ大
王を描いた作品がコロムビアからオファーされている。カメ
ハメハは18世紀にハワイ諸島を支配し、西欧文明の襲来に対
抗した人物だが、コロムビアではポリネシア版『ブレイブハ
ート』のような物語を作るとしている。そしてその主演者に
は、メル・ギブスンやケヴィン・コスナーは到底無理で、こ
の役はザ・ロック以外には考えられないということだ。  
 一部の年代の人にはフォークの神様として知られるアメリ
カのシンガーソングライター、ボブ・ディランが主演する映
画が製作されている。題名は“Masked & Anonymous”。ど
ことは判らない全体主義的な国家を舞台に、そこでカリスマ
的な人気を得た歌手の最後のコンサートを巡る物語だそうだ。
監督はラリー・チャールス。また共演者には、ジェフ・ブリ
ッジス、ペネロペ・クルス、ジョン・グッドマン、ジェシカ
・ラング、ルーク・ウィルスン、アンジェラ・バセットが並
ぶ他、ブルー・ダーン、ヴァル・キルマー、ミッキー・ロー
ク、クリスチャン・スレーターらがゲスト出演している。公
開は03年前半の予定で、配給はインターメディアとBBCフ
ィルムス。                      
 因に、ディランは00年の『ワンダーボーイズ』に楽曲を提
供してオスカー主題歌賞を獲得した他、製作中のアメリカ南
北戦争の最初の2年間を描いた作品“Gods and Generals”
にも音楽を提供しているそうだ。            


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