井口健二のOn the Production
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2002年07月01日(月) 第18回+DRIVE、クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 まずは訂正で、前回ワーナー製作、ウォルフガング・ペー
ターゼン監督の計画として紹介したオースン・スコット・カ
ード原作の“Ender”シリーズは、85年発表の長編第1作が
『エンダーのゲーム』の題名で翻訳されている他、かなり長
大なシリーズになっているものだった。今回の映画化がそれ
をどこまでやるのかは不明だが、一応、アメリカの報道では
シリーズということが繰り返し書かれているので、映画化も
シリーズになることは間違いないようだ。後は映画化がヒッ
トするか否かということになるが…。ということで、前回は
ちょっと古い資料で書いてしまったので訂正しておく。  
        *         *        
 というのが前置きで、実は同じくワーナーからこれも異星
人の地球侵略から始まる新たな3部作の計画が発表された。
 この3部作は、グレッグ・ベアの原作で87年に発表された
“The Forge of God”(天空の却火)と92年発表の“Anvil
of Stars”(天空の殺戮)を映画化するもの。2作しかない
じゃないかと言われそうだが、実は現在ベアが第3作を執筆
中だそうだ。物語は、地球上に異星人の手になる謎の通信装
置が多数飛来し、それが人類を絶滅に追い込んで行く、とい
うところから始まる。当然それに人類が反撃するという展開
で、さらに第2作では地球人が異星人の星にまで向かうとい
うもの。これから第3作はどのように展開するのだろうか。
 そしてこの原作に対しては、『ブラックホーク・ダウン』
の脚本を手掛けたケン・ノーランが、70ページの脚本の素案
‘scripment’を執筆、この素案がワーナーを含む3社の間
でオークションとなり、結局7桁($)の金額でワーナーが
権利を獲得したものだ。この契約によりノーランは、すでに
本格的な脚本の執筆に取りかかっているということだ。因に
ノーランは、『ブラックホーク・ダウン』の後に続く作品の
素材を探していたということで、そこに前作を見た原作小説
のエージェントが連絡を入れ、送られた原作を読んだノーラ
ンが直ちに素案を書き上げたものだそうだ。       
 それにしても前回紹介の“Ender”や、前々回に紹介した
“War of the World”のリメイク(スティーヴン・スピル
バーグが監督に興味を示しているそうだ)など、異星人によ
る地球侵略を描いた作品が競作になって来ている(他にもフ
ォックスで、ローランド・エメリッヒ監督による“Day After
Tomorrow”という作品も進んでいる)が、これもある意味
で01年9月11日の影響と言えないこともないようだ。    
        *         *        
 続いては続編の情報を紹介しよう。          
 まずは正真正銘の続編ということで、00年に公開されたジ
ェリー・ブラッカイマー製作の“Coyote Ugly”(コヨーテ
・アグリー)の続編が計画されている。         
 オリジナルは、ニュージャージー出身の主人公ヴァイオレ
ットが、シンガーソングライターを目指す傍らニューヨーク
の女性だけのバーに勤め、その中でのいろいろの出来事が綴
られたもの。製作費は4500万ドルだが、全世界での配給収入
が1億ドルを突破、その他にサウンドトラックCDやヴィデ
オの発売もトップセールスを記録したという大ヒット作だ。
 そして今回は、このオリジナルの脚本を執筆したジーナ・
ウェンドコスが続編の原案を書き上げたもので、ブラッカイ
マーは直ちにこれを取り上げて、映画化を進めることを発表
している。オリジナルとは異なる女性たちによる第2話が作
られることになるようだ。因にウェンドコスは、このオリジ
ナルが第1作だったようだが、その後、パラマウントで製作
される“Tulip”や、ワーナー製作の“Amanda's Wedding”
などの作品も手掛けている。              
        *         *        
 お次は、第1回で紹介したユニヴァーサル製作、ヴィン・
ディーゼル主演の『ピッチ・ブラック』の続編で、この脚本
と監督をオリジナルと同じデヴィッド・トゥーヒ−が手掛け
ることになり、さらに複数の作品を作る計画が発表された。
 この計画については、第1回ではトゥーヒーに代ってデヴ
ィッド・ハイターが脚本を担当すると紹介したものだが、実
はこの時トゥーヒーには、ミラマックスで“Below”という
ゴーストストーリーを監督する計画があり、またハーラン・
エリスン原作の“Demon With a Hand of Glass”という作
品の脚色監督の計画もあって、これらの準備のために続編へ
の参加が見送られたとされていたものだった。       
 しかしその後、これらの計画はいずれも中断されることに
なり、一方、ユニヴァーサル側は、ハイターと、さらに『ビ
ューティフル・マインド』のアキヴァ・ゴールズマンにも依
頼して、“The Chronicles of Riddick”と題された続編の
脚本を書かせたものの、主人公の魅力を充分に活かせなかっ
たということだ。                   
 そこで改めてトゥーヒーへの要請となったようだが、実は
トゥーヒーは最初から3部作を狙っていたようだ。因にトゥ
ーヒーの証言によると、「2年前に続編の企画書を提出して
いたのだが、当時会社側はそれを取り上げてくれなかった。
しかしその後の『ロード・オブ・ザ・リング』のヒットで、
複数の続編という考えに賛同を得られるようになった」とい
うことで、主演のディーゼルもシリーズ化を理解していると
いうことだ。そしてついにトゥーヒーが復帰を決断したとい
うことで、これでオリジナルと同じ体制での続編の製作が実
現されることになりそうだ。              
 ということで、続編は少なくとも2本が製作されることに
なるようだが、その1本目は“Riddick”という題名で、内
容は第1回で紹介したように『ピッチ・ブラック』の前日譚
になるということだ。夜目の利くアンチヒーロー、リディッ
クが一体どんな冒険を繰り広げるのか、非常に特殊な設定だ
けに、オリジナルのアイデアを生み出したトゥーヒーには誰
も太刀打ちできなかったということだろう。       
        *         *        
 もう1本は、前回、試写会で見た作品を紹介した『トータ
ル・フィアーズ』(The Sum of All Fears)の続編で、原
作者のトム・クランシーがシリーズの新作を発表、この作品
が次の映画化の原作になりそうだ。            
 クランシーが描くジャック・ライアンの活躍はすでにかな
りの数の小説が発表されているが、実はこの8月に最新作の
“Red Rabbit”が出版されることになっている。そしてこの
新作の全容はまだ発表されていないが、情報では映画化され
た第1作の『レッドオクトーバーを追え!』の前日譚で、当
時のソ連のエージェントがローマ法王の暗殺を企むというも
のだということだ。                  
 そこで今回の映画化で、ベン・アフレックが演じたジャッ
ク・ライアンは前回紹介したように駆け出しの情報分析官と
して描かれている訳で、これはちょうど話が合ってしまうの
ではないかという観測が成り立つのだ。もちろん映画化に当
って物語の現代化は必要だろうが…。映画シリーズ製作者の
メイス・ニューフェルドはすでに新作の映画化権の契約をし
たというとで、同時に製作総指揮にはクランシーが加わるこ
とは間違いないところだから、これはこの新作が次のライア
ンの活躍になる可能性はかなり高いといえそうだ。    
 因にパラマウントでは、『トータル・フィアーズ』にも登
場したジョン・クラークが活躍する“Rainbow Six”の映画
化も進めているが、以前に計画されていたライアンシリーズ
の『クレムリンの枢機卿』の計画は消滅しているようで、現
状でライアンの次回作は白紙の状態になっており、この線で
も、新作が次回作になる可能性は高いといえる。     
 実際のところ小説のライアンシリーズは、その後ライアン
がアメリカ大統領になったり、『日米開戦』なんていう題名
もある訳で、これを映画化するのはかなり抵抗がありそうだ
が、クランシー自身が新たにシリーズの立直しを図っている
のなら、映画化はその線で行ってくれることになりそうだ。
        *         *        
 次は続編ではないのだが、96年に公開された『スペース・
ジャム』で活躍したバッグズ・バニーたちルーニー・トゥー
ンズの面々が、またまた大活躍する新作が計画されている。
 今回計画されている作品は、題名が“Looney Tunes: Back
in Action”というもので、前作と同じく実写とアニメーシ
ョンの合成で製作され、今回の人間側の主人公にはブレンダ
ン・フレーザーが参加、監督は『グレムリン』のジョー・ダ
ンテが当ることになっている。             
 内容は、前作では実写のマイクル・ジョーダンがルーニー
・トゥーンランドに連れて行かれたが、今回は逆にルーニー
の面々が実写ワールドに出現、ハリウッドやラスヴェガス、
そしてアフリカを舞台に大騒ぎを繰り広げるというもの。そ
してメインのストーリーは、フレーザー扮する主人公の行方
不明になっている父親と、神秘のブルーダイアモンドを、主
人公とルーニーの面々が捜すというものだそうだ。    
 脚本は人気アニメーションの『シンプソンズ』を手掛ける
ラリー・ドイルで、製作総指揮は『キャッツ・アンド・ドッ
グ』のクリス・デファリアとドイルが担当。7月29日の撮影
開始で、03年11月の公開が予定されている。       
 またワーナーでは、その前にドイルの総指揮の下で複数の
ルーニー・トゥーンズの短編を製作してワーナー配給の他の
作品に併映することも計画しており、以前の映画館で上映さ
れて評判だったチャック・ジョーンズやテックス・アヴェリ
ーの伝統を復活させるということだ。          
        *         *        
 この他の続編関係の短いニュースを紹介しておこう。  
 まずは、大ヒットした『スパイダーマン』の続編“Spider
-Man 2”で、脚本の担当が前作を手掛けたデヴィッド・コー
プから、『シャンハイ・ヌーン』などのアルフレッド・ゴー
とマイルズ・ミラーのコンビに変更されることになった。こ
れはコープが、やはりソニーで進められているスティーヴン
・キング原作“Two Past Midnight: Secret Window,Secret
Garden”の映画化で監督デビューすることになったためで、
その準備で続編の脚本が執筆できなくなったということだ。
しかしコープはすでに続編の原案を書き上げており、今後は
その原案に基づいて、ゴーとミラーの手で来年1月からの撮
影までに脚本が書かれることになる。          
 同じくソニー製作の『チャーリーズ・エンジェル』の続編
“Charlie's Angels 2: Halo”は8月撮影開始の予定だが、
前作で3人の女優たちとの確執が噂されたボスレー役のビル
・マーレイは結局復帰せず、替ってテレビのコメディシリー
ズなどで人気のあるバーニー・マックという黒人スターが出
演することになった。この役柄がボスレーそのものかどうか
は不明だが、いずれにしてもチャーリーとエンジェルたちと
の連絡役ということではあるようだ。因にマックは、その前
にビリー・ボブ・ソーントン主演のコメディ“Bad Santa”
に共演し、さらにクリス・ロックが監督主演する“Head of
State”という作品にも共演が発表されている。8月末から
は自身のテレビシリーズの撮影も始まるということで、それ
までにこれらの作品を終わらせる予定のようだ。     
        *         *        
 後は普通の短いニュースをまとめておこう。      
 まずは新作“Enough”の公開が迫っているジェニファー・
ロペスの次回作として、再びソニー製作による“Shrink”と
いう作品が計画されている。この作品は、元マーヴル・コミ
ックスのクリエーターだったロブ・リーフェルドがインター
ネット上で発表している同名のコミックスを原作にしたもの
で、一度はスーパーヒーローでありながら、心に負った傷の
ためにパワーを封印してしまった女性の物語。『MIB』と
『アナライズ・ミー』を合わせたような作品ということで、
一応コメディ仕立てのようだが、シリアスな面も持った作品
になるということだ。                 
 『ブレイド2』のギレルモ・デル=トロ監督の計画で、ド
リームワークスから“Sleepless Knights”という作品が発
表されている。この作品は、“Batman: Arkham Asylum”と
いう作品でグラフィックノヴェルの歴代トップの販売記録を
持っているグラント・モリスンが脚本を執筆し、ドリームワ
ークスで“At the Mountains of Madness”を準備している
デル=トロにもたらされたものだそうだ。物語は、タイムマ
シンの実験の失敗で、幽霊や霊魂が現実化してしまった世界
を舞台に、スリープレスナイツと名乗るゴーストバスターズ
が活躍するお話ということだ。             
 『誘惑のアフロディーテ』で95年のアカデミー助演女優賞
を獲得したミラ・ソルヴィノが、自らの製作で“The Beauty
of Jane”という作品を計画している。この作品は、ダン・
アイルランドの脚本監督によるもので、1912年のイギリスを
舞台に、聡明な30代の女性が、20代の頃に愛し別れてその後
失明した芸術家の男性の基へ、言葉の訛りを変え看護婦兼秘
書として仕えるという物語。なお監督は、96年にヴィンセン
ト・ドノフリオとルネ・ゼルウィガーの共演で、『コナン・
ザ・グレート』の原作者ロバート・E・ハワードの逸話を映
画化した“The Whole Wide World”などの作品で知られる。
因にこの作品は、ゼルウィガーが『ザ・エージェント』に抜
擢される切っ掛けになったものだそうだ。        
 98年に発表された『π』などの監督ダーレン・アロノフス
キーの作品で、ブラッド・ピットとケイト・ブランシェット
の共演が予定されている“Fountain”という作品が、ワーナ
ーとニュー・リジェンシーの共同製作で実現されることにな
った。この作品は元は“The Last Man”という題名で紹介さ
れていたものだが、未来もののSFということで、製作費に
は7000万ドルが計上されている。元々はワーナー傘下のヴィ
レッジ・ロードショウが持っていた企画で、実は昨年の秋に
撮影の予定だったが、諸般の事情で延期されていた。しかし
その間に製作費が膨張し、結局同社では賄い切れなくなり、
本来はフォックス傘下のニュー・リジェンシーが参加するこ
とになったということだ。因に、アロノフスキー監督の今ま
での作品は製作費 500万ドル以下ということで、一気に10倍
以上の作品を手掛けることになる訳だが、ワーナーとしては
『マトリックス』での同じようなギャンブルに成功した実績
を踏まえて、今回の賭けに出ることにしたということだ。 
                           
                           
                           
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『DRIVE』                    
96年の『弾丸ランナー』以来、話題を蒔き続けている監督S
ABUの第5作。                   
実はこの監督の作品は今までも試写状は貰っていたのだが、
何となく時間が合わなかったりで見ていなかった。しかしこ
ういう一部で絶賛を浴びている映画作家の作品と言うのに後
から入って行くのはかなりきつい。そんな訳で益々足が遠の
いてしまったのだが…。                
ところが今回、たまたま時間が空いて初めて見ることになっ
た。で、初めて見た感想は、これが結構オーソドックスなコ
メディで面白い。                   
僕自身は、北野武のようなどぎつい描写で来られたら嫌だな
と思っていたのだが、主人公たちに結構あくの強い俳優を揃
えている割りには、展開がそれにおぶさるようなところもな
く、話自体がそれなりに理詰めの展開なのにはちょっと見直
した感じだ。                     
物語は、几帳面な性格で、車を運転していても交通法規を完
全に守らなければ気が済まない主人公の車に、突然3人の男
たちが乗り込んでくる。彼らは銀行強盗をしたところなのだ
が、4番目の男の裏切りに合って、奪った金を持ち逃げされ
ている。                       
そこで男たちは主人公の車で4番目の男を追おうとするのだ
が、男たちがいくら飛ばせといっても、主人公は交通法規通
りにしか車を動かせない。そして主人公と3人の男の奇妙な
ドライブが始まる。                  
3人の男が誰も運転をできないというのはちょっと無理があ
るかも知れないが、その点を除けば、結構ギャグもスマート
だし、面白かった。最近この手の映画の試写会で馬鹿笑いす
る奴らには辟易していたが、今回は僕自身も結構笑わせても
らった。                       
途中のヘビメタでラップを歌うシーンが口ぱくなのがちょっ
と残念だったが、エンディングもそれなりに良い感じだった
し、僕は気に入った。                 
                           
『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』         
                “Queen of the Damned”
94年に公開された『インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア』
の続編の映画化。                   
前作に主演したクルーズ、ピット、バンデラスらは一人も出
演していないが、本作では、昨年8月に飛行機事故で亡くな
った歌手アリーアの出演が話題になっている。でも、宣伝で
アリーアばかり売り込むのは、他の俳優たちにちょっと可哀
想な感じがした。                   
本作でアリーアが演じているのはタイトルロールのクイーン
ではあるけれども、本作には他に、ヴァンパイアに魅かれて
行くジェシーというヒロインがいる訳で、彼女の存在の方を
もっとアピールしてもらいたいものだ。         
実際ジェシーというのは、ヴァンパイアの研究組織の研修生
という役柄で、ヴァンヘルシンク教授の女性版なのだが、全
てを判った上で、ヴァンパイアと対決するヒロインというの
は、『エイリアン』のリプリーみたいなもので結構魅力的な
存在なのだが。                    
物語は、前作でクルーズが演じたレスタトが 200年の眠りか
ら覚めたときのお話で、つまり前作の前日譚。この目覚めの
理由がロック音楽に魅かれてということで、ヴァンパイアと
ロック歌手の組み合わせというのは、上手い着想だ。   
まあ原作がしっかりしていて、ヴァンパイアの描き方も破綻
がないから、安心して面白く見られた。前作のようなオール
スター大作ではないが、ホラー映画としては良い方だろう。


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井口健二