井口健二のOn the Production
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2002年06月16日(日) クライム&ダイヤモンド+トータル・フィアーズ+ファイティングラブ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『クライム&ダイヤモンド』“Who is Cletis Tout ?”  
この邦題で、試写状の紹介文が「ホテルの一室…。突きつけ
られた銃。語り始めた男。」というのでは、これはてっきり
カナダ版のフィルムノアールかと思いきや…。      
銃を突きつけているのが『ギャラクシー・クェスト』のティ
ム・アレンで、役柄は悪徳刑事なのだが、これが無類の映画
ファン。そしてクリスチャン・スレーター扮する詐欺師の男
が語る物語を、全て往年の映画の台詞に準えて行くという脚
本が、まずは映画ファンの心をくすぐってくれる。    
といっても、これが全て映画のタイトルと製作年度を言って
くれるので、あまり映画に詳しくない人でも大丈夫というの
が、この映画の親切なところだ。            
本筋の物語は、スレーター扮する詐欺師は服役中に知り合っ
たマジシャンの宝石泥棒の脱獄を手助けし、行きがかりで一
緒に脱獄してしまうのだが、逃亡のために名前を借りた死人
の男が、実は組織に狙われていたために、まだ生きていると
思い込んだ組織から命を狙われることになる。      
果たして主人公はマジシャンが隠したダイヤモンドを取り戻
し、組織の手から逃れ、さらにマジシャンの娘の愛を得るこ
とができるのか…というもので、これがマジシャンの盗みの
手口といい、落ちの付け方といい、結構しっかりしている。
つまりドラマもパロディも、どちらを取っても面白い作品な
のだ。映画ファンなら、題名は気にせずにぜひ見てもらいた
い。でも、実は泥棒マジシャン役がリチャード・ドレイファ
スなのだが、マスコミ試写の会場で、若い女性が「誰それ」
といっている声が聞こえたりして、映画を売り込むのもなか
なか大変な時代になっているようだ。          
なお巻頭で往年の映画について語るシーンがあり、その後に
時間が戻る形式は、昨年公開の『ソードフィッシュ』とそっ
くりだが、実は本編は00年製作のカナダ映画で、01年秋のト
ロント映画祭でも上映されている。つまりぱくりではないと
いうことだ。                     
                           
『トータル・フィアーズ』“The Sum of All Fears”   
トム・クランシー原作の『恐怖の総和』を原作者自らの製作
総指揮で映画化した架空事件アクション。        
ロシアの大統領が急死。それまで名前の挙がっていなかった
男が新大統領に就任する。アメリカ政府は謎の男の登場に混
乱を隠せない。そしてその直後にチェチェンに対する化学兵
器攻撃が行われる。その命令を下したのは誰か? 早くから
その男に注目し、分析していたCIAの情報分析官ジャック
・ライアンは、彼が命令を出すことはないと信じるが…。 
次いで、アメリカ大統領を迎えたスーパーボウルの会場が核
攻撃され、辛くも難を逃れた米大統領は、ロシアへの総攻撃
の命令を下してしまう。しかしその裏には、米露を直接対決
させ、その隙に勢力を拡大しようとするファシストの陰謀が
あった。                       
ジャック・ライアンシリーズの映画化は、アレック・ボール
ドウィン主演の『レッド・オクトーバーを追え!』、ハリス
ン・フォード主演の『パトリオット・ゲーム』『今そこにあ
る危機』に続いて4作目になるが、本作からライアン役はベ
ン・アフレックになり、一気に若返った。そして物語の展開
でも、まだライアンは駆け出しの分析官という設定で、シリ
ーズそのものが一から出直しという雰囲気になっている。 
物語は、ちょっとしたボタンの掛け違いから生じた恐怖の総
和が、最悪のシナリオへ進んで行く過程が、クランシーお得
意のハイテクを絡めた展開で見事に描かれている。原作は米
ソ対決の時代に書かれたはずだが、今でも通用する辺りはさ
すがと言える。                    
それにしても、プロローグのイスラエル戦闘機の墜落から、
ボルチモアの壊滅、露空軍の米空母攻撃まで、迫力に満ちた
映像のつるべ撃ちで、これもさすがに原作者自らが製作総指
揮を執っただけのことはあるという感じがした。     
アメリカではテロ攻撃を描いているということで、一旦は公
開が躊躇されたが、蓋を開けて見れば、興行成績2週連続の
トップという記録になっている。さて、8月10日公開の日本
は…?                        
                           
『ファイティングラブ』“同居蜜友”          
ウォン・カーウァイ監督『花様年華』でカンヌ主演男優賞を
獲得したトニー・レオン主演の香港製ラヴ・コメディ。  
レオンはカンヌ受賞後の第1作。日本に紹介されている他の
作品とは違ったコミカルな演技でファンは驚かされるという
ことだが、元々香港映画はアクションとコメディが中心で、
当然レオンにもこのような作品があっても不思議ではない。
ついでに言えば、レオンは、ウッチャンナンチャンの内村に
通じるような風貌だから、コメディをやっていても違和感は
なかった。真面目な演技では風貌も変ってくるのだろうが。 
物語は、繁盛している牛もつ鍋屋の若旦那とキャリアウーマ
ンが主人公。2人は互いの自動車の接触事故で最悪の出会い
をするが、その示談の交渉の席で和解、盛り上がった2人は
そのままホテルで関係を持ってしまう。         
そして女は男を気に入るが、男にはテレビタレントの恋人が
いた。果たして彼女は、彼の真心を獲得することができるの
か…。まあ他愛もないお話だが、展開は結構最後まで捻りが
あって、案外面白かった。               


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井口健二