井口健二のOn the Production
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2002年01月15日(火) 第7回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回はまずこの話題から、1月8日に『ハリー・ポッター
と賢者の石』の日本での大ヒットを記念して、第2作を撮影
中のロンドン郊外リーヴスデン・スタジオと東京のホテルを
衛星回線で結んで、主演の若手俳優3人と、監督、プロデュ
ーサーによる記者会見が行われた。           
 因に日本での興行成績は、公開28日間で 100億円を突破。
これは『千と千尋の神隠し』の出足を上回っているというこ
とだ。そして会見の出席者には「大入り」の記念品としてシ
リアルナンバー入りの置き時計が配られた。案内状には「ポ
ッターからのお年玉があります」とあり、「百味ビーンズ」
でも貰えるのかと思っていたが、大違いだった。     
 ということで会見の内容だが、会見はまず主演の3人がそ
れぞれ「アケマシテオメデトウゴザイマス」と日本語で挨拶
したのに始まり、最初は他愛もない質問が続いたが、僕が注
目したのはやはり第2作に関する発言からだ。      
 その中で、ポッター役のダニエル・ラドクリフは「第1作
はオブザーバー的だったが、第2作ではより自発的になる」
と言い、ハーマイオーニ役のエマ・ワトスンは「フレンドリ
ーになる」ということだが、ロン役のルパート・グリントは
「ジニーが入学してくるのでその世話をする」と言って笑わ
せてくれた。なお3人の印象は、ラドクリフは声変わりして
いるせいもあるのか終始口ごもりがちでシャイ、ワトスンは
何にでもはきはきと答えて活発な感じ、グリントは発言の度
にcoolの連発でやんちゃっぽく、物語の3人そのままという
感じだった。                     
 続いてクリス・コロンバス監督の発言では、第2作はより
ダークでアドヴェンチャラスになるということ、またCGI
に関しては、クディッチのシーンがよりスピーディーで見応
えのあるものになるということだった。         
 一方、第1作でMrピーヴスが登場しなかったことについて
の質問が出たが、これについてコロンバスは、シークェンス
の撮影はしたが、ピーヴスのデザインにどうしても満足でき
ず、最終的に全部カットしたということだ。しかしその後に
満足できるデザインが出来上がったということで、第2作に
は登場させるということ。また第1作についても将来発売さ
れるDVDや再公開の時には、新しいデザインのピーヴスを
登場させて完全版を出したいということだった。また原作を
完全に映画化するには6時間掛かるとも言っていたが、それ
を実現したいような口振りでもあった。         
 それから原作者のJ・K・ローリングに関しては、「最高
のコラボレーションだ」ということで、物語に関するどんな
質問にも完璧に答えてくれるということだが、実はいくつか
の問いに関しては「それはbook 7に関わることだから」と言
って回答を拒否されたそうだ。そしてあるとき、スネイプ先
生役のアラン・リックマンがちょっと奇妙な演技をし、なぜ
そんな演技をしたのかという問いに対して「book 7を読めば
判る」と答えたのだそうで、スタジオではこの「book 7」と
いう言葉が流行りになっていたようだ。         
 以上、中継はリーヴスデン・スタジオのホグワーツの大広
間のセットから行われたが、最後にコロンバスの指示でカメ
ラが周囲を写して見せ、天井の照明が写ったときに「魔法の
天井は今は働いていない」と言ったのが良い感じだった。 
         *       *         
 お次は年明けで、いろいろ統計や各賞の下馬評なども出始
めているのでその話題を紹介しよう。          
 まずはアメリカでの映画興行成績で、昨年2億ドルを突破
した作品は5本。第1位は『ハリー・ポッターと賢者の石』
の2億9160万ドルだった。11月中旬封切りのこの作品は3億
ドルの突破は確実で、後は歴代1位の『タイタニック』(6
億ドル)に何処まで迫れるかというところだったが、それは
ちょっと厳しくなってきたようだ。しかし4億ドルは超えて
『スター・ウォーズ』には迫ってもらいたいものだ。なお、
上記の記者会見での紹介によると、全世界での興行収入はす
でに8億ドルを突破しているそうだ。          
 続く第2位は『シュレック』の2億6770万ドル、第3位は
『モンスターズ・インク』の2億3920万ドルとCGIアニメ
ーション作品が並んでいる。この2作では11月初旬封切りの
『モンスターズ…』が最終的には何処まで追い込めるかで、
今年新設されるアカデミー賞長編アニメーション部門の史上
最初の受賞者の行方と共に注目される。         
 さらに第4位は『ラッシュアワー2』の2億2610万ドル。
アジアの代表ジャッキー・チェンが快挙を成し遂げた。そし
て第5位は『ハムナプトラ2』の2億 200万ドル。この作品
が、『パール・ハーバー』(1億9854万ドル)や『ジュラシ
ック・パーク3』(1億8110万ドル)、『猿の惑星』(1億
7930万ドル)を押さえたのはある意味笑えるところだ。  
 この他、12月封切りの『ロード・オブ・ザ・リング』は、
年末までに1億7412万ドルを記録しているということで、こ
の作品も2億ドル突破は確実のようだが、実は先に候補の発
表されたゴールデン・グローブ賞でも、作品、監督、音楽、
歌曲の4部門で候補に挙がるなど評価も高く、意外と賞争い
のダークホースにもなっているようだ。         
         *       *         
 というところで、先にも書いたアカデミー賞長編アニメー
ション部門だが、すでに9本の予備候補が発表されている。
 その作品は、上記の2作の他に、ソニー配給の『ファイナ
ル・ファンタジー』、パラマウント配給の“Jimmy Neuton:
Boy Genius”、ワーナー配給で実写シーンもある“Osmosis
Jones”、フォックス配給の“Waking Life”。さらに独立
系の配給で“Marco Polo: Return to Xanadu”“The Prince
of Light”“The Trumpet of the Swan”が選ばれている。
 なお事前審査では、デンマーク製の『トビ★ウォーズ』も
入っていたが、年度内のアメリカ公開が決まらなかったため
にキャンセルされた。また“Jin Roh: The Wolf Brigade”
と“Vampire Hunter D: Bloodlust”も事前審査の対象だっ
たようだが、いずれも規定に合わず外されたそうだ。因に選
定の条件は、年度内に初公開された作品で、且つアメリカ国
内で一般上映されていること。また長編アニメーションの基
準は、上映時間70分以上で、アニメーションシーンが75%以
上を占める作品となっている。             
 そしてもう1本、ディズニーの『アトランティス』だが、
この作品については、結局ディズニー側が勝負を『モンスタ
ーズ・インク』1本に絞り込んだために外されることになっ
たようだ。つまりディズニーとしては『シュレック』相手に
2作品が候補になると投票が分散されてしまうことを避ける
ため、あえて1作品を降ろしたということのようだ。   
 従って2月11日に発表される3本の最終候補は上記の9本
の中から選ばれることになった訳だが、この内、『シュレッ
ク』と『モンスターズ…』は間違いないところとして、3本
目の候補が注目されることになる。もちろん受賞の可能性は
限りなくゼロだが、映えある第1回の候補に残る3本目は一
体どの作品になるのだろうか。なお、事前審査段階で候補が
16作品以上の場合には最終候補は5作品に拡大され、候補が
8作品未満の場合には最終候補は選出しないということだ。
         *       *         
 一方、もう一つ気になる視覚効果部門には8本の予備候補
が発表されている。                  
 その作品は、『A.I.』、“Black Hawk Down”、『キャッ
ツ&ドックス』、『ワイルド・スピード』、『ハリー・ポッ
ターと賢者の石』、『ジュラシックパーク3』、『ロード・
オブ・ザ・リング』、『パール・ハーバー』ということで、
SFからファンタシー、怪獣(恐竜)映画に戦争映画、自動
車アクションまで、実にヴァラエティに富んだ作品が並んだ
が、話題になった作品の中では、『ハムナプトラ2』と『猿
の惑星』は選から漏れたようだ。因にこの予備候補は、アメ
リカ映画アカデミーの視覚効果部門の40人のメムバーによっ
て選ばれている。                   
 感じとしては、『ハリー・ポッターと賢者の石』と『ロー
ド・オブ・ザ・リング』のファンタシー2作品の争いになり
そうだが、他にSF映画がない分、『A.I.』にも目があるか
も知れない。これも2月11日に発表される3本の最終候補次
第になりそうだ。                   
         *       *         
 続いて、今年7月までのアメリカ封切り日が決定されてい
る主な作品を列記しておくと。まずH・G・ウェルズの名作
を映画化する“The Time Machine”が3月8日。未公開シー
ンの追加もある『E.T.』の20周年記念の再公開が3月22日。
『ハムナプトラ』の第3弾でもある“The Scorpion King”
が4月19日。続いてシリーズ化も期待される“Spider-Man”
が5月3日。そして“Star Wars Episode II:The Attack of
the Clones ”が5月17日。チェン主演の“The Taxedo”が
6月7日。ディック+スピルバーグ+クルーズの“Minority
Report”が6月28日。待望の続編“Men in Black 2”が7月
3日。同じく“Stuart Little 2”が7月19日。さらにシリ
ーズ第3弾の“Austin Powers in Goldmembers”とディズニ
ーランドの人気アトラクションを映画化する“The Country
Bears”が7月26日の封切りとなっている。       
 いまさら言うまでもなく、今年は『スター・ウォーズ』の
公開年だが、その前後に“Spider-Man”“Men in Black 2”
“Stuart Little 2”をぶつけるソニーの成果は如何にとい
うところになりそうだ。                
         *       *         
 さて後半はいつものように製作情報を紹介しよう。   
 上で紹介した興行成績で2位3位を占めた2作品を始め、
アカデミー賞の予備候補でもメイジャー系の作品はいずれも
何らかの形でコンピューターの補助を受けているということ
で、CGIアニメーションの勢いは留まるところを知らない
感じだが、以前に紹介した“Astro Boy”“The Cricket in
Times Square”“Curious George”に加えて、またもや新た
なCGIアニメーションの計画が発表された。      
 発表したのはミラマックス傘下のディメンションで、題名
は“American McGee's Alice”という作品。この題名に冠さ
れたAmerican McGeeについては、ゲームマニアにはご存じの
方も多いかも知れないが、“Doom”や “Quake”などのシリ
ーズ作品で、アメリカでは2000年度の10 game godsの1人に
も選ばれているゲームクリエーター。そして今回の計画は、
そのAmerican McGeeが00年12月に発表した最新のパソコン用
ヴィデオゲーム“Alice”を映画化するというものだ。   
 ゲームの内容は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリ
ス』をゴシック風に再構成したものということで、ゲームの
ジャンルはアクションファンタシーゲーム。ストーリー的に
は、成長したアリスが、マッド・ハッターやチェシャキャッ
ト、それに赤の女王らと闘うというものだそうだ。    
 そしてこの計画では、実は昨年の5月にディメンションと
American McGeeとの間で映画化権の契約が結ばれ、同時にウ
ェス・クレイヴンの製作監督で、『チャーリーズ・エンジェ
ル』のジョン・オーガストが脚本を担当することが発表され
ていた。しかしこの時の発表では、具体的な映画化がどのよ
うに行われるか示されていなかったが、今回の発表で、この
作品をオールCGIで製作することになったようだ。   
 なおクレイヴンは今回の発表でも、作品について「21世紀
の視点で見たアリスを描きたい」と語っており、製作監督は
変わらないようだ。『スクリーム』から『ミュージック・オ
ブ・ハート』まで幅広いレパートリーのクレイヴンだが、俳
優の登場しないCGIアニメーションの監督でどのような手
腕を発揮してくれるだろうか。             
 またディメンションでは、“Doom”と“Quake” について
も、今後に映画化を計画しているそうだ。        
         *       *         
 お次は、上の今年の公開予定でも紹介した“The Country
Bears”に続いて、ディズニーランドの人気アトラクション
を映画化する計画が続々発表されている。        
 因に“The Country Bears”は、ディズニーお家芸のオー
ディオアニマトロニクスを実地に応用したアトラクションの
Country Baer Jamboree を映画化するものだが、クリストフ
ァー・ウォーケンが主演し、クマの声の出演にはハーレイ・
ジョエル・オスメントが参加するなど期待の作品で、すでに
続編の計画も進められているということだ。       
 それに続いて今回発表されたのは、まず“Pirates of the
Caribbean”=「カリブの海賊」の映画化。この計画には、
ジェイ・ウォルパートという脚本家が参加してアトラクショ
ンからインスパイアされた脚本が執筆されているということ
だが、さらにこの計画の製作者として『アルマゲドン』など
のジェリー・ブラッカイマーの参加が発表された。    
 ブラッカイマーは昨年の『パール・ハーバー』も製作して
いるが、ディズニー映画の中では超大作部門を担当している
感じで、そのブラッカイマーが参加する「カリブの海賊」が
一体どのような作品になるのか興味を曳かれる。またハリウ
ッドでは数年前から海賊映画ブームの期待があるが、この作
品がその起爆剤になってくれることも期待したいところだ。
 そしてもう1本、“Haunted Mansion”=「ホーンテッド
・マンション」の映画化の計画も発表された。この計画には
デイヴィッド・ベレンバウムという脚本家と、製作者にはア
ンドリュー・ガンの参加が発表されているが、脚本家のベレ
ンバウムは、ニューラインで映画化される “Elf”という作
品の他、『ラブ・バッグ』のリメイク版“Herbie the Love
Bug”の脚本も担当しているということだ。       
 ディズニーランドのアトラクションの映画化となれば、当
然Gレイトの作品となるのだろうが、かなりの大作も期待さ
れそうで面白くなりそうだ。              
         *       *         
 後は短いニュースをまとめておこう。         
 前回、ディズニーとの共同で“The King of the Elves”
の映画化を紹介したジム・ヘンスン・ピクチャーズからもう
1本“ Thumb”という計画が発表されている。この作品は、
グリム兄弟の童話『親指トム』を映画化するもので、この原
作は58年にジョージ・パルの監督で“Tom Thumb”(邦題・
親指トム)として映画化されているが、今回は物語を現代版
にするということだ。そしてこの脚色に、00年にマドンナの
主演で映画化された『2番目に幸せなこと』などのトム・ロ
ウペルスキーが契約されている。なお製作は、パル版を製作
したMGMとの共同で行われるが、多分パル版のリメイク権
は、現在はワーナーが所有しているはずなので、その辺の調
整が微妙になりそうだ。                
 第5回で紹介したジョナサン・モストウ監督、アーノルド
・シュワルツェネッガー主演“Terminator 3: Rise of the
Machines”の映画化で、視覚効果をILMが担当することが
発表された。このシリーズでは『T2』もILMが担当して
いるが、監督は変わっても視覚効果は同じになったというこ
とだ。因にこの映画のアメリカ配給権はワーナーが獲得した
が、アメリカ以外の配給権はソニーが契約した。ただし、日
本と韓国の配給権については東宝東和が先に契約している。
また、ワーナーとソニーの契約には、“T4”以降の契約に関
する優先権も含まれているそうだ。           
 最後にもう一つ、以前から注目されていたスティーヴン・
スピルバーグ監督の“Memoirs of A Geisha”の映画化の話
題が再燃してきている。製作者の発言によると、アキヴァ・
ゴールズマンの手掛けていた脚本がほぼ完璧に完成されたと
いうことで、早ければ今年の夏にも撮影に取りかかれそうだ
ということだ。ただしキャスティングは白紙に戻されている
ということで、その作業からの再開になるようだ。    
                           
                           
                           
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを公開に合わせて紹介します。※
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 このページについては今年になって見た試写の分からは、
公開時期に合わせて紹介することにします。したがって今回
は作品の紹介はありません。              
 なお1月12日封切りの『ヴィドック』は東京国際映画祭の
特集、19日封切りの『ハートブレイカー』は第1回、『息子
の部屋』は第4回、『バスを待ちながら』は第5回、26日封
切りの『プリティ・プリンセス』は第3回にそれぞれ紹介が
あります。                      



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