2001年12月01日(土) |
第4回+スパイ・キッズ、恋ごころ、スパイ・ゲーム、息子の部屋、アザーズ、マルティナの海、ヘドウイッグ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 最初はリメイクの情報で、往年のB級ホラー映画作家の作 品をシリーズでリメイクする新たな計画が発表されている。 アメリカではすでに、ロバート・ゼメキスとジョール・シ ルヴァらが、60年代に活躍したウィリアム・キャッスルの作 品をリメイクするダークキャッスルを設立し、ここからは01 年にも60年に製作された“13 Ghosts”のリメイクが発表さ れているが、今度はヨーロッパから、60〜70年代にイタリア で活躍したマリオ・バーヴァの監督作品13本をリメイクする 権利が、ロサンゼルスに本拠を置くキスメット・グループと 契約され、その第1作として、72年製作の“Baron Blood” をリメイクする計画が発表された。 バーヴァは、キャッスルと同じ14年の生まれで、最初はカ メラマンとしてイタリア映画界入りしたが、60年の『血ぬら れた墓標』から長編監督として活躍を始め、77年の“Baby Kong”まで、僕のチェックした範囲では17本の監督作品があ るようだ。そして80年、その前年に後継者ともいえるダリオ ・アルジェント監督の『インフェルノ』の特殊効果を手掛け たのを最後にこの世を去っている。しかしアメリカでは、ウ ェス・クレイヴンやクェンティン・タランティーノらにも影 響を与えたと言われ、最近特に再評価が進んでいたようだ。 そこでキスメットでは、先にインターナショナルメディア との共同で、イタリアのプロデューサー、アルフレッド・レ オーネが持つバーヴァ作品のリメイク権を獲得、さらにこれ にセヴンアーツ・ピクチャーズが資金面で参加して今回の計 画発表となっている。なお、今回計画の発表された“Baron Blood”は、日本では『処刑男爵』の題名でヴィデオリリー スがあるようだが、ジョセフ・コットンとエルケ・ゾマーの 主演で、貴族の男のリインカーネイションを巡る物語。紹介 記事ではサディスティックな描写があるということだが、公 開当時のレイティングはPGになっている。 今回の計画の詳細は不明だが、キスメットとセヴンアーツ では、先にサミュエル・L・ジャクスン、ミラ・ジョヴォヴ ィッチ共演の“No Good Deed”などの作品も手掛けており、 実績のある会社なので期待ができそうだ。因に、“No Good Deed”の日本配給はGAGAが契約しているということで、出来 たら今回のリメイク作品もお願いしたいものだ。また今回の 発表でキスメットは、アルフレッド・レオーネから、バーヴ ァ監督作品以外にも同時期にイタリアで製作されたホラー、 SF、冒険映画など14本のリメイク権を獲得したということ で、正直言ってB級どころかC級の作品も多いイタリアSF だが、現代のVFXを駆使して面白い作品を期待したい。 * * リメイクの次は続編の情報で、ソニー傘下のコロムビアか ら95年に公開された『ジュマンジ』の続編が製作されること になるようだ。 実はこの計画は、第1作の公開直後から検討されていたも のだが、前作を受け継ぐ物語をどのようなものにするかでな かなかまとまらず、最近では00年8月に『ビッグ・ママス・ ハウス』の脚本家のドン・ライマーが契約して脚本の改訂が 行われているとの発表があったものの、その後の情報は跡絶 えていた。なおこのときの情報で、当時考えられていた物語 は、大洋に沈んでいたゲーム盤を副大統領が釣り上げ、これ によってまたまた大混乱が始まるというものだったようだ。 ところが最近になって、原作者で前作の脚色も務めた絵本 作家のクリス・ヴァン=オールズバーグが続編となる新作を 発表、この新作の映画化権をコロムビアが獲得したことが発 表された。しかしこの新作は題名が“Jumanji 2”ではなく “Zathura”と名付けられており、物語の中心は、実はジュ マンジのゲーム盤の裏側に描かれていた別のゲームという設 定で、ジュマンジの舞台はジャングルだったが、今度は宇宙 空間が舞台となるというものだ。 この展開にコロムビアとしては、当然この新作の方を続編 の“Jumanji 2”として製作する意向で、すでにMTVの企 画製作などを手掛けるエリック・フォーゲルと契約して脚色 を依頼、02年秋の製作開始を目指して準備を進めることにし ている。一方、宙に浮いてしまったドン・ライマーの計画に 対しては、さらにこれを“Jumanji 3”にしようという方向 で計画が進められることになるようだ。ただしライマーの計 画を“Jumanji 2”として残し、 “Zathura”は独立の作品 として進める可能性も考えられているということだ。 最近、また『ハリー・ポッター』の大ヒットで、各社は単 なる続編よりさらにシリーズ化を狙える作品を血眼になって 探している状況だが、元々シリーズになっている場合は別と して、原作者本人がシリーズ化を進めてくれるケースは、ト マス・ハリスの『ハンニバル』のような場合を除いては珍し い訳で、今回、予想外の展開でシリーズ化が実現できること になった『ジュマンジ』について、コロムビアではこのチャ ンスを大事に活かしたいとしている。 なお、コロムビアではもう1本、“Charlie's Angels 2” の計画も進み始めている。こちらは前作の監督の McGの再登 板が発表された他、キャメロン・ディアスの出演交渉もまと まったということだ。また、他の2人のエンジェルの出演は ほぼ決まっているということで、これで続編の製作に障害は 無くなったようだ。なお McGは、先に計画されていた“Drea dnought” という作品の中にジェット旅客機を撃墜するシー ンがあり、9月11日の事件との関係で製作延期となったため に、替りにこの作品が選ばれたそうだ。 * * 続いて、前回は『マッハ Go!Go!Go!』の情報をお伝えした が、今回もまた日本製テレビアニメーションからの映画化の 情報で、今度はコロムビアで計画されている“Astro Boy” こと、手塚治虫原作『鉄腕アトム』の映画化に強力な助っ人 が参加することになった。 この計画は、コロムビアが97年のアメリカ版『ゴジラ』に 続いて発表したもので、ちょうど『スチュアート・リトル』 の製作も進められた頃ということもあって、アトムをCGI で制作するなどの概要が発表されていた。しかしその後は、 脚本を『アンツ』のトッド・オルコットが手掛けているとい う情報があった程度で、具体的な話はなかなか伝わって来な かった。この計画に、先にフォックスからジョニー・デップ 主演の“From Hell”を発表して2600万ドルの興行収入 を記録したプロデューサー、ドン・マーフィの参加が発表さ れたもので、これでいよいよ本格的な製作がスタートするこ とになるようだ。 なおマーフィは、元々はコロムビアに本拠を置いて98年の 『ゴールデン・ボーイ』なども手掛けていたが、最近では外 部の仕事が目立っていた。因に、今回のコロムビアの発表で は、ドン・ウィンスロー原作のミステリー作品“A Cool Bre eze on the Underground”の映画化計画と一緒に報告されて いるが、この他にニューラインでマーヴェルコミックス原作 の“Iron Man”を計画しており、また、ジム・ヘンスンとの 共同で、岩明均原作の和製コミックス『寄生獣』(アメリカ 題名“Parasyte”)の計画も進めているということだ。 さらにマーフィは、ニッケルオデオンでクライヴ・バーカ ーの原作による“Ecto-Kid”の計画も進めている。この作品 は、マーヴェルコミックスから発表されていたものだが、超 能力を持つ女性と殺人被害者の男の幽霊との間に生まれた少 年デックス・モンゴを主人公にした物語で、デックスは片方 の目で生者の世界、もう一方の目で死者の世界を見ることが でき、現世とこの世ではない2つの世界をさまよう物語だそ うだ。何だか『シックス・センス』に似ているようだが、コ ミックスは93年に発刊されており、この時のストーリーはラ リー・ウォシャウスキーが共同で執筆したものだそうだ。 * * 後半は短いニュースをまとめておこう。 まずは続報で、前々回に紹介したコーエン兄弟とジョージ ・クルーニーのコラボレーションによる“Intolerable Cru elty”の計画で、キャサリン・ゼータ=ジョーンズの共演が が発表された。前の記事でジュリア・ロバーツを口説いてい るらしいと書いたのは、実は前回紹介した“Confessions of a Dangerous Mind”の方だったらしく、いくらなんでも同じ 女優と3作連続というのは無かったようだ。 次は、日本では正月映画で公開されたロベルト・ロドリゲ ス監督、アントニオ・バンデラス主演の『スパイ・キッズ』 (試写の感想は下のページを見てください)の続編“Spy Ki ds 2”の製作がすでに開始され、この続編には前作の主人公 達が顔を揃えた他、ロメロという謎のキャラクター役でステ ィーヴ・ブシェーミの出演が発表されている。ブシェーミと バンデラスはロドリゲス監督の『デスペラード』で共演して おり、メムバー勢揃いという感じだ。他に14歳のマット・オ レアリーという俳優も共演しているそうだ。 最後にドリームワークスから、こちらも正月映画で公開さ れた『シュレック』(試写の感想は第2回を見てください) の製作チームが、ビヨルン・ソートランドの原作、ラーズ・ イーリング挿絵による絵本“The Dream Factory”をアニメ ーション化する計画が発表されている。この作品はクリスマ スストーリーで、お話は2人の子供がイヴの夜に、叔父さん の家の屋根裏部屋で出会ったチャーリー・チャップリンの後 を追いかけて行く内、不思議な映画の世界に迷い込み、いろ いろな映画のセットを訪問して、そこでオースン・ウェルズ やマルレーネ・ディートリッヒ、さらにはターザンやキング コングらと出会ったりするというもの。具体的な計画は未確 定だが、ハリウッド映画の歴史的なセットやキャラクターが CGIで再現されるというのは面白そうだ。なお映画の物語 は、ソートランド&イーリングの他の作品“Anna's Art Adv enture”と “The Story of the Search for the Story”も 加味して作られるということだ。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『スパイ・キッズ』“Spy Kids” 『デスペラート』のロベルト・ロドリゲス監督と、主演のア ントニオ・バンデラスが再び組んだスパイアクション映画。 と言ってもバンデラスは、スパイ同士で結婚して引退した元 スパイの役で、この元スパイ夫婦が緊急事態で呼び戻される が敵に捕まってしまい、それを救出に向かう2人の子供が大 活躍するというお子様映画だ。 しかしこの作品がアメリカでは、2月に公開されるや3週連 続のトップに輝き、すでに1億ドル以上を稼ぎ出すという大 ヒットを記録している。 『デスペラート』は、銃を撃って撃って撃ちまくるという激 烈な映画で、その監督と主演の映画は一体どんなものかとい うと、これが完璧なお子様映画に仕上げられている。監督は ロアルト・ダールの『チョコレート工場の秘密』を映画化し た“Willy Wonka”を引き合いに出しており、この作品は僕 もヴィデオで見ているが、子供の喜びそうなものを選りすぐ りで寄せ集めたような雰囲気は実にそっくりだった。 子供は絶対に喜ぶし、大人もそれなりに楽しめる作品になっ ている。 『恋ごころ』“Va Savoir” ヌーヴェル・ヴァーグの旗手の一人だったジャック・リヴェ ット監督の最新作。今年のカンヌ映画祭に正式出品され、秋 のニューヨーク映画祭ではオープニングを飾った。 恋人を捨ててパリを去った女優が、イタリアで参加した劇団 と共にパリに戻ってくる。その公演中に起きるいろいろな出 来事が描かれる。 といっても、別段人生の機微と言うような大げさなものでは なくて、ちょっと予測の付かない物語と、その中でいろいろ な人物が絡み合う様が面白い。 女優を主人公にしたせいもあってか、概して女性が堅実で、 男性が奇人に描かれているのは、監督の考え方がそうなのだ ろうか。 ハリウッド流にアクションや台詞の連発で笑わせるのではな く、上品な笑いで久しぶりにフランスのコメディを「観た」 という感じがした。 劇中演じられる『あなたのお望みのまま』という演劇が気に なった。ルイジ・ピランデッロの作品で、グレタ・ガルボ主 演の映画化もあるということなので観てみたくなった。 『スパイ・ゲーム』“Spy Game” ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット共演、トニー ・スコット監督によるスパイ映画。 レッドフォードが演じるのは、CIAからの引退最終日を迎 えた老スパイ。しかしそこにかつての教え子だったピットが 中国での作戦中に逮捕されたという報が入る。 老スパイは作戦室に呼ばれ、教え子の取った行動の解析を始 めるが、折しも大統領の訪中を控える政府は中国との関係悪 化を怖れて救出を諦め、事件のもみ消しを図る。それは24時 間後に処刑が行われることを意味していた。 解析が進む中で、ヴェトナム、ラオスからベルリン、ベイル ートへと続く15年に亙る2人の行動が語られ、非情なスパイ の世界が描かれる。その一つ一つが息詰まるようなスパイ作 戦の記録なのだから、それこそ「007」を何本かまとめた ような見応えだ。 レッドフォードとピットは、『リバー・ランズ・スルー・イ ット』での監督と俳優以来のコラボレーション。レッドフォ ードの最近の姿は大体こんなものだが、2人の出合いのシー ンでは、久しぶりに初々しい雰囲気のピットの姿が出てくる のが面白かった。 『息子の部屋』“La Stanza del Figlio” 01年度カンヌ映画祭でパルムドール(最優秀作品賞)を受賞 したイタリア映画。 両親と息子、娘のごく普通の4人家族。その息子が潜水中の 事故で亡くなり、父親はその日急に入った仕事のために約束 を破り、息子を行かせてしまったことを悔やみ続け、家族は 崩壊して行く。そんな一家の再生までの姿が描かれる。 映画は父親を中心に描かれており、自分自身、同じように娘 と息子のいる父親として考えさせられることは多々ある。試 写室では、若い女性達の嗚咽があちこちから聞かれたが、僕 自身は泣くよりも、見事に立ち直って行く一家に羨望すら感 じていた。 映画はこの題材を、完全に時系列で描き切っており、その構 成に上手さにも感心した。途中回想シーンはあるが、それも 時系列の中の回想であることに注目してもらいたい。 『アザーズ』“The Others” 98年東京グランプリを獲得した『オープン・ユア・アイズ』 のアレハンドロ・アメナーバル監督の最新作。 受賞作は、トム・クルーズ主演で“Vanilla Sky”としてハ リウッドリメイクされているが、この作品はそのクルーズの 製作総指揮で、撮影当時妻だったニコール・キッドマンの主 演で作られている。 物語は、1945年、チャンネル諸島の島に建つ館を舞台に、第 2次世界大戦の欧州戦線に出征した夫の帰りを待つ妻と、光 アレルギーのために暗闇の中に暮らす幼い姉弟を巡って進め られる。 その館の使用人が急に居なくなり、代わりに3人の男女が現 れる。その頃から館に謎の侵入者が現れ始め、最初幼い姉に だけ見えていた少年の姿が、やがて館中に出没するようにな る。そしてついには…。 ぞくぞくする恐怖感が久しぶりに心地よく、結末もいろいろ 言う人はいるだろうけど救いが感じられて、僕は気に入って いる。 『マルティナは海』“Son de Mar” スペイン語で書かれた小説が対象の「アルファグアラ賞」を 99年度に受賞したマヌエル・ビセントの小説の映画化。 主人公は、下宿屋を営む夫婦の一人娘。そこに下宿人の新任 の教師が現れ、2人は恋をし子供を身籠もって結婚する。そ してある日、夫は小船で海に出て無人の船だけが浜に打ち上 げられる。 やがて主人公は、教師と出合う前から想いを寄せられていた 資産家と再婚し、子もその資産家を慕い平穏な生活が続いて いる。しかしそこに男が戻ってくる。男は2人が出合った頃 の官能の物語を囁き、女はその官能に引き寄せられて行く。 情熱的なスペインならではの物語というところだろうが、そ の心情は日本人でも判らないことはない。初々しい少女から 官能に溺れる女までを見事に演じた主演のレオノル・ワトリ ングの今後にも注目したい。 『ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ』 “Hedwig and the Angryinch” オフブロードウェイで2年半以上のロングランを記録したロ ックミュージカルが、演出主演を舞台そのままに映画化され た。 主人公は東ベルリンに生まれ、アメリカ軍の軍曹に見初めら れて結婚によってアメリカへ脱出するために性転換手術を受 ける。しかし手術は失敗、股間には1インチの痕跡が残って しまう。だから結成したバンドの名前が、「アングリーイン チ」。イッチじゃないというのは台詞にも出てくる。 基本的にオカマというのが余り好きではなくて、最近増えて きたオカマ映画は見ていなかったのだが、この作品はオリジ ナルの舞台の評判と、東京国際映画祭での招待上映を見逃し たこともあって見に行った。 で感想は、テーマはオカマではなくて、自分の失った片割れ を求める主人公の流浪の物語という感じで、オリジナルのロ ックミュージックも心地良く、納得の行く作品だった。
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