2001年11月18日(日) |
第3回+ロードオブザリング(特)、美女と野獣、快盗ブラックT、プリティプリンセス、ハリーポッター賢者、ぼくの神様、オーシャンズ11 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは国内での試写も始まった『ハリー・ポッターと賢者 の石』の最終報告から。 前回の記事で上映時間が最終的に2時間半を超えることを 報告し、子供向けには長すぎるのではないかと心配したが、 これについてクリス・コロンバス監督曰く、「我々の観客の 子供たちは、700ページの本を読む能力があるのだから、 2時間半ぐらい劇場の椅子に座っているのは大丈夫だ」との ことで、自信は満々のようだ。 また、公開版の上映時間は2時間32分になっているが、実 はこれでもリック・メイオールが演じたポルターガイスト・ ピーヴスの登場シーンが全てカットされていたり、他にも予 告編に登場したシーンがないなど、撮影されながら最終編集 でカットされた部分はかなりありそうなので、やはりヴィデ オでもいいから完全版が見たいということにはなるようだ。 なお、11月18日に撮影開始された第2作“Harry Potter and the Chamber of Secrets”の公開は、02年11月15日と発 表された。(試写の感想は下のページを見てください) * * お次は、9月11日にニューヨークで起きた連続テロ事件関 連の情報で、この事件に関連しては、公開の延期や、製作の 延期、中断などいろいろあるが、この事件で最も大きな影響 を受けたと思われる作品が報告された。 それはフランシス・フォード・コッポラが計画を進めてい る “Megalopolis”という作品で、この計画はコッポラが15 年近く前から温めていたということだ。内容は、近未来のニ ューヨーク市を舞台に、災害に襲われた大都市が再興して行 く姿を描いたもの。その再興計画を巡っていろいろな階層の 人々が織りなすセシル・B・デミル調の物語だそうだ。 そしてコッポラはこの映画の撮影を来年の秋に予定してい るが、すでにその準備としてニューヨークの実景が9月11日 以前から撮影されており、その撮影は事件後も続けられてい るということだ。しかし物語の方は事件を踏まえたものにせ ざるをえず、その物語の再構築に苦慮しているという状況の ようだ。 事件の直後にコッポラは、「歴史が自宅の玄関口に来たよ うな気持ちだ」と印象を語っていたということだが、紹介文 を読んだ感じでは、映画自体はかなり明るい未来を展望した 作品だったようで、逆に事件の衝撃が大きく覆い被さってい るようだ。 なお撮影は、『スター・ウォーズ:エピソード2』の撮影 にも使用されたHD−24Pのディジタルカメラで行われてお り、ジョージ・ルーカスに続くコッポラの採用で、このカメ ラの定着が一気に進みそうだ。 * * 9月11日関連の情報では逆に、計画通りに製作が進むこと になったという話題も入ってきている。 この計画は、ジェニファ・ロペスとベン・アフレックの主 演、レヴォルーション製作による“Gigli ”という作品で、 この作品の12月からの撮影が発表されている。 実は、この計画では当初からロペスの主演が期待されてい たものだったが、同じくロペスが主演する“Tick Tock”と いう作品の撮影と重なるために、一時はハーラ・ベリーの主 演で準備が進められていた。ところが9月11日の影響で、爆 弾事件を扱った“Tick Tock”の撮影が延期になり、一方の ベリーは“X-Men 2”の撮影が決まって降板ということにな って、めでたくロペスの主演が実現したということだ。 お話は、ロペス扮する名うての女性拳銃使いが、アフレッ ク扮するさえない殺し屋の手助けをするというもので、その 過程で2人の間に愛が芽生えるという展開。この2人でこの 役柄というのは面白くなりそうだ。脚本、監督は、『セント ・オブ・ウーマン』のマーティン・ブレスト。 この他に9月11日の関連では、事件直後に公開延期が発表 されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演“Collateral Damage”の公開は、02年2月8日と発表されている。 また、クライマックスシーンが世界貿易センタービルで撮 影されていたため撮り直しが決定された“Men in Black 2” では、事件には直接関係ないがマイクル・ジャクソンのカメ オ出演が発表されている。ジャクソンは前作で、「実はエイ リアンが変身している」として名指しされていたものだが、 今度は本人が登場するということだ。 * * 続いては久々に復活した話題で、日本製のテレビアニメー ション『マッハ Go!Go!Go!』をワーナーが実写で映画化する 計画に新たな展開が出てきた。 この計画は、アメリカで放送されたときのシリーズ名“Sp eed Racer”の題名で進められているもので、この計画には 過去、ジュリアン・テンプルやガス・ヴァン・サント、アル フォンソ・クアロンらの監督が名を連ね、一時はかなり大掛 かりな作品になるという情報もあった。しかしその時点で計 画の見直しが発表され、その後は音沙汰が無かった。 その計画に再び動きが出てきたもので、今回発表されたの は、脚本を最高120万ドルの金額でクリスチャン・グーデ ガストとポール・ショイリングという2人が契約したという もの。この2人はニュー・ラインで計画中の“El Diablo” の脚本も手掛けているが、他にも“Black Flag”という脚本 がワーナーと契約されており、この作品はサイモン・ウエス ト監督で製作される予定とのことだ。 お話は、マッハ5と名付けられたレーシングカーを駆る主 人公が、ガールフレンドや幼い弟、ペットの猿など共にいろ いろな悪漢と戦うというもの。しかも主人公が乗る車は、水 陸はおろか、水中や森の中も自在に走り抜ける性能を持って いるというものだ。 製作はジョール・シルヴァとドナー・カンパニー。監督に は、ミュージックヴィデオやトヨタのコマーシャルなども手 掛けているハイプ・ウィリアムスの抜擢が発表されている。 * * お次も久々の話題で、ベストセラー作家のスティーヴン・ キングが99年に交通事故被害に遭って以後に執筆した最初の 長編で、01年3月に発行された小説“Dreamcatcher”の映画 化を、キャッスルロックの製作で行うことが発表された。 キャッスルロックとキングは、過去に『スタンド・バイ・ ミー』『ショーシャンクの空に』『ミザリー』『グリーン・ マイル』の映画化を行っており、最も多くの成功作を生み出 している。そして今回はさらに、『ミザリー』と、キング映 画化の最新作“Hearts of Atlantis”を手掛けたウィリアム ・ゴールドマンがオリジナルの脚色を担当。これをさらにロ ーレンス・カスダンがリライトして、カスダンの製作、監督 で映画化するというものだ。 物語は、幼なじみの4人の男達が、毎年同じ時期に少年時 代を思い出しながらの山での狩りを続けているが、中年に差 し掛かった彼らは一様に人生に疲れ始めていた。しかしある 年、同じように山に向かった彼らの前に、全く未知の敵が現 れる。その強力な敵に立ち向かう彼らに残された手段は、少 年時代に培った正義感と勇気しかなかった…、というもの。 『スタンド・バイ・ミー』と『エイリアン』を合わせたよう な作品だということだ。 そして02年1月に開始予定の撮影には、モーガン・フリー マンとトム・サイズモア、それにトーマス・ジェーンの出演 が発表されている。なお、フリーマンは4人に対抗する陸軍 の将校役で、サイズモアはその下士官。4人の内の1人がジ ェーンだということだ。 また、未知の敵の視覚効果をILMが担当することになっ ている。 * * 最後に前回の記事の続報で、キャスティングの情報を2つ 紹介しておこう。 まずはパラマウント製作のSF映画“The Core”で、アー ロン・エッカートの相手役として、オスカー女優のヒラリー ・スワンクの出演が発表された。スワンクが演じるのは、本 来は宇宙パイロットだが、緊急事態のためにエッカート演じ る科学者の要請で急遽地底探検に駆り出されるパイロットの 役。女優だから何でもできるとは思うが、それにしても思い 切った役柄を選んだものだ。 またこの作品には、新人のD・J・クェイルズの出演も発 表されている。クェイルズはテネシー出身、00年に“Road Trip”という作品でデビュー以来、1年間で5本の作品に連 続で主演しているということで、今注目の新人だそうだ。 もう1本はジョージ・クルーニーの監督デビュー作“Conf essions of a Dangerous Mind”で、『オーシャンズ11』で 共演したばかりのジュリア・ロバーツの出演が発表された。 クルーニーとロバーツは、前回紹介したコーエン兄弟の作品 にも共演が期待されているが、本当に仲が良いということな のだろうか。 また、主人公のチャック・バーリス役をサム・ロックウェ ルが演じていることが判明した。ロックウェルは前回出演を 紹介したドリュー・バリモアの公私に渡るパートナーとして 知られるが、実はバリモアが演じる役は元々ニコール・キッ ドマンにオファーされていたもので、それが突然バリモアに 変更になった理由がこれで判ったというところだ。 お話は、ゲームショウのプロデューサーのチャック・バー リスが実はCIAの捜査官で、そうとは知らないガールフレ ンド(バリモア)と、CIAの同僚(ロバーツ)の2人の女 性の間を上手く切り抜けるというもの。これにCIAの担当 官(クルーニー)が絡むのだそうだ。つまり、バリモアとロ ックウェルの関係は、『チャーリーズ・エンジェル』のとき の逆ということになるようだ。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ロード・オブ・ザ・リング(26分特別版)』 12月に世界公開(日本は3月)される“The Lord of the Rings”の、今年のカンヌ映画祭で上映された26分の特別版 が上映された。これから3年に亙って公開される本編のプレ ヴュー版だが、これだけでも製作にどれだけの手間暇が掛か っているかが窺えた。 実は主演にイライジャ・ウッドが決まったときには、主人公 を敢えてホビットにしなくても、普通の若者の成長物語でも 描けると想像したのだが、何とちゃんとホビットになってお り、イアン・マッケラン扮するガンダルフとの身長差などが そのまま映画になっている。 この他にも特別版では、戦闘場面や危機一髪の脱出場面など も紹介されたが、どこも全く手を抜かずに原作の雰囲気を出 しており、今から公開が楽しみになった。 日本では、敢えて『ハリー・ポッター』の後を狙う作戦が功 を奏することを期待したい。 『美女と野獣』“Beauty and the Beast” 『ファンタジア2000』に続いて、ディズニーがアイマッ クス用に再製作したアニメーション。 オリジナルは91年に製作されたが、当時の製作段階でカット され、その後のステージ公演で復活した楽曲『ヒューマン・ アゲイン』のシーンが新たに加えられており、上映時間はオ リジナルの85分から90分になっている。 基本的にはオリジナルと同じ作品だが、新たに加えられた楽 曲のシーンはステージでも評判になっただけあって素晴らし い。それに視野一杯に拡がるアイマックスの効果は臨場感に あふれ、奥行き感も活かされて、全体の完成度は高まったと 言って良いだろう。 『快盗ブラック・タイガー』(タイ映画) 早打ちガンマンが登場する西部劇のようでありながら、恋人 達のデートの場所が蓮池で、少女は水牛に乗って登場すると いうタイ映画。 タイ映画は今年の東京国際映画祭でもコンペと特別招待が1 本ずつ上映されているが、実はこの作品も、今年のカンヌ映 画祭の「ある視点部門」で上映されたということで、カンヌ で公式上映された初めてのタイ映画だそうだ。 お話は、農夫の息子と知事令嬢の悲恋というメロドラマで、 そんなものを今時恥ずかしげもなくやれるものかと思われる だろうが、実は監督の狙いは伝統的なタイ映画を再現したい ということで、人工着色を思わせる色使いなど工夫が凝らさ れている。 本作の脚本も手掛ける監督は、『ナン・ナーク』の脚本家で もあり、無茶な展開の割に物語に破綻が無いのは良い。監督 も万人向きではないと言っているが、伝統的なタイ映画を知 る上では貴重な1本だろう。 『プリティ・プリンセス』“The Princess Diaries” メグ・キャボット原作のヤングアダルト小説の映画化。サン フランシスコに住む15歳の少女が、実はヨーロッパの王国の 王女であることが判り、普通の高校生の生活をあきらめて王 女になるかどうかの決断を迫られる。 まあ典型的なシンデレラストーリーでありますが、アメリカ の少女向けのヤングアダルト小説というのは、つまりハーレ クィンということなので、こういうお話もありということの ようだ。 かといってお話が古臭いと言うようなこともなく、いかにも ありそうな感じに作られているところが、アメリカでもヒッ トした要因なのだろう。祖母の女王役でジュリー・アンドリ ューズが久しぶりにスクリーンに登場、雰囲気を造り出して いる。 『ハリー・ポッターと賢者の石』 “Harry Potter and the Philosopher's Stone” この正月の最大の期待作の試写を観てきた。観た感想は、一 言で言えば、上手いというか、見事な映画に仕上がってた。 もちろん原作を知る者にとっては、もっと観たかったシーン は沢山あるし、アメリカの覆面試写会での「もっと観ていた かった」という反応は多いに頷けるところ。2時間32分の上 映時間は、本当にあっという間に過ぎたという感じだった。 映画は、原作を見事にダイジェストしてあって、必要なシー ンは全部入っている。原作を知っていればその間を補うこと ができるし、原作を読んでいなくてもちゃんと判るという実 に見事なバランスで作られている。 しかも原作にはなかったプロローグや、原作では会話に出て くるだけのシーンが映像化されていたりで、原作の読者に対 するサーヴィスも満点というところ。この辺は映画の作り手 達のセンスが光っている。 ワイド画面で、ドルビーサラウンドEX、あるいはSDDS 8チャンネルの音響は、やはり映画館で観て欲しい作品だ。 なお、試写会は丸の内ピカデリーの1、2を同時に使って行 われたが、その間に設けられて入口を9・3/4入口と称し ていた。良いアイデアなので、本番の公開でも、ぜひともシ ネコン辺りでやって欲しいものだ。 『ぼくの神さま』“Edges of the Lord” ハーレイ・ジョエル・オスメントが『A.I.』の前に主演し た作品。 1942年、ナチス占領下のポーランド。ユダヤ人の教授を父に 持つ主人公の幼い少年は、ナチスの目を逃れるため、カソリ ックの教えを叩き込まれてポーランド人の農夫の元に預けら れる。農村地帯のそこには、一見平和でのどかの風景が拡が っていた。 その場所で繰り広げられる子供同士の冒険や喧嘩、淡い恋。 しかしその上にも、戦争のナチスの影は着実に落ちていた。 そして少年の暮らす一家の弟がキリストになって世界を救う と言い出し…。 ユダヤ人の少年が生き残るためには決して綺麗ごとだけでは すまなかったという現実や、ポーランド人の住民同士の裏で 行われていたことなど、本当の意味での戦争の悲惨さが見事 に描かれていた。 『オーシャンズ11』“Ocean's Eleven” シナトラ一家が揃った最初の作品と言われる60年の『オーシ ャンと11人の仲間』を、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ ピット、マット・デイモン、ジュリア・ロバーツ、アンディ ・ガルシアのオールスターキャストでリメイクした作品。 ラス・ヴェガスのカジノの資金を盗み出すという展開は同じ だが、その手口は最近のアクション映画の流れを受けてかな りトリッキー。といっても『M:I2』ほどではないが。 オールスターキャストなので、それぞれに見せ場を作るなど 苦労はあったのだろうし、2月に行われた撮影は俳優ストを 控えてかなり厳しい状況だったようだが、そんな中で、出演 者が結構楽しんでやっているのが伝わってくるのが楽しい。 いろいろと遊びもあるようだが、何せアメリカでもまだ試写 は行われておらず、今回が世界初の外部向けの上映というこ となので、プレス資料もほとんど無い。これから徐々に楽屋 落ちなどの情報も出てくることだろうし、そうなってからも う一度見直したい。 それにしても、突然「ビンラディン」ネタが出てきたのには 驚いた。
|