せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2009年03月28日(土) 舞台と映画と

 夜、N.G.A. 4th Attack! 子ども創作劇 「世界をかえろ!〜色のない空の下で〜」を見に、武蔵野芸能劇場へ。
 富士見丘小学校の去年の卒業生、仁比祥太くんが、オムニバスのうちの一本を作・演出、出演している。
 開演前に去年の卒業生、イナバさん、クロセくんに会う。久しぶりなクロセくんは、背が伸びてすらっとした印象。
 午後、富士見丘小学校での近藤芳正さんによるワークショップのあとの平田さんと合流。ワークショップに参加していた、去年の卒業生カラサワくんの4年生になる妹さんとお母さんにご挨拶。
 この出演は4歳から中学生までの子どもたち。作・演出も子供たち。5つの作品のオムニバスの最後の一本が仁比くんの作演出によるもの。
 お話は、不思議な本の力で異世界にタイムスリップしてしまった子供たち。そこの世界は、「感動してはいけない」というきまりがあり、人前で笑ったり泣いたりすると罰せられてしまう。
 現代からやって来た子供たちは、町の広場で演劇を上演することにする・・・という枠組み。
 この枠の中で、演じられるオムニバス。なかなかおもしろかった。
 初めの4本「異世界劇団カンパーナ」「あいつのハートを射止めろ作戦開始!」「OUT OVER」「三百円事件」、どれもなかなかおもしろい。子どもらしい発想が素直な芝居になっている。
 演じている子供たちの年齢差が役柄にそのまま反映していないので、ものすごく年齢差のありそうなクラスメイトとかが当たり前に登場する。身長差も当然あるので、見ていると、不思議な感覚。
 子どもらしいなあと思っていたら、最後の仁比くんの作品「いのちのたび」でびっくりした。
 冒頭、一人の子どもが「いやだ、いやだ、ぜったいにいやだ!」と叫んでいる。なんだかよくわからないのだけれど、そのうち、交通事故で死んだ彼が死ぬのはいやだ!と言っているのだということがわかってくる。この導入のうまさ。演じている子(後から聞いたら5年生だとのこと。小柄なのでもっと幼いのかと思った)の演技、言葉のまっすぐさに圧倒される。
 そして、彼(カイトという役)は、天使に会い、天国へ行くのを拒んで、同じように天国に行けないでいる仲間の所へ行くことになる。
 この仲間というのは船を操っている、嵐に出会い、みんなで力を合わせたりしているうちに、友情が芽生える。
 この設定もうまい。言ってみれば成仏できない幽霊たちが、船に乗っているというだけでなく、嵐に出会うというのもおもしろい。そして、船を操る彼らの芝居のいきいきとしていることといったら。
 カイトは一人一人から、身の上話を聞く。なぜ死んだのか、一人一人の理由。ここで、作演出の仁比くんはリューという役で、戦争で家族を殺された男を渋く演じていた。
 地上では、カイトのガールフレンドが自殺をはかり、船にやってくる。カイトは、彼女に「ここはお前のくるところじゃない」と冷たく言う。それでも・・と食い下がる彼女。このシーンは、なんだかすごいラブシーンだった。小柄なカイトと大柄な(たぶん高学年or中学生)な彼女のやりとりは、魔法にかけられて子どもになってしまった若者のように見えてきた。
 説得されて彼女は生き返り、カイトもまた天国へ向かうことを決心する。
 いいセリフがたくさんで、きっちり伝わる言葉がいっぱいで、ただだまっているだけの人物もみんな生き生きとその場を生きていて、ほんとうにすばらしかった。
 子どもがやっているということが、なんの言い訳にもなっていない、すばらしい舞台だった。いっぱい泣かされた。
 そして、この芝居を書いて演出した仁比くんの中にある芝居のセンスがとてもうれしかった。なんでこんなに芝居っていうものを知ってるんだろう?とびっくりしながら、富士見丘小の演劇授業がこんなふうに彼の中に息づいているのだということに感動した。
 終演後、仁比くんに挨拶。お疲れ様でした!
 その後、平田さん、仁比くんのお父さんと三人で、仁比くんが出演している映画を見に渋谷まで出る。
 今日が上映会だというのは聞いていたものの、ソワレの舞台を見たら間に合わないとあきらめていた。それが、21時15分開映とのことなので、急遽、ご一緒させてもらうことにした。
 えんぶゼミの卒業制作映画「ひととき」渋谷シアターTSUTAYA 監督:石渡彩人
 「中学二年の隼人は、英語の教師・優子に恋をしていた。ただ優子を見ていることが幸せだったが、そんなひとときの幸せもだんだんと崩れていき・・・」(公式サイトより)
 ひたすら先生が好きで、体育館での部活の様子をのぞき見したり、授業中、ビデオを隠し撮りしたりしてる中学二年生の学ラン姿の仁比くん。
 小テストでカンニングをしたのがばれてしまい、かばんの中に隠していたビデオが見つかり、何を撮影していたかも知られてしまう。優子の「きもちわるい」という言葉に対して、泣くのではなく、薄く笑うラストが印象的だった。
 平田さんと遅い夕食をご一緒しながら、今日は仁比くんの日だったねと言い合う。舞台も映画もとてもおもしろかった。まだ中学1年の彼がこれからどうなっていくのか、とても楽しみだ。
 富士見中の演劇部での活動、がんばってほしいと思う。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加