せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2001年11月28日(水) 「ビューティフル・サンデイ」 「夜曲」稽古

 朝方まで、ビデオを見てしまう。
 いったんやめた「グリークス」第一部を「全部」と、こないだの「TOGETHER」でシナノさんに貸してもらったサードステージの「ビューティフル・サンデイ」。
 「グリークス」は「アキレウス」と「トロイアの女」を。
 「アキレウス」は田辺誠一がなかなかがんばってる。だけども、すごかったのは、「トロイアの女」麻実れい!!
 自分の子供が殺されるってことがわかってからの苦悩と絶望の深さ。
 「さあ、連れて行きなさい! 私の子供は死にました」と言って、子供を渡してしまってからの、何かが滅んでしまったようなかんじ。それは、「悲」とか「哀」とかじゃなくって、やっぱり「滅」ってかんじだった。
 ビデオで見て、もうぼろぼろになってしまう。
 すっかり目が覚めてしまったので、「ビューティフル・サンデイ」に突入。
 この芝居は、以前、「せりふの時代」に掲載された戯曲を読んで、むちゃくちゃ感動して、去年の今頃、稽古したもの。
 ていうか、僕が札幌に行ってた間、稽古しといてねって言って残していった「宿題」の台本。
 「すっげえ!」と思った時には、もう公演は終わってて、いつか見たいと思ってた念願の舞台。
 おおよそのお話は……、ゲイのカップルが住んでるマンションの一室にその部屋に以前住んでた女が転がり込んできた日曜日、一日の物語。
 って、これは全然「正確な」紹介じゃないんだけど、くわしく書くと「ネタバレ」になるので、このくらいで。
 作者は中谷まゆみ。元もと第三舞台の演出部にいた人で、今はシナリオを書いてる。テレビの「ぽっかぽか」とかね。
 この人の書く本が、むちゃくちゃいいんだ!
 とっても「今」で、「ここまで拾うか?」っていうくらい、網羅してて、「あんたハッテン場行ったことあるんじゃない?」ってくらい、生っぽくって、それでいて、全然「勉強しました感」がない。
 これは、日本のゲイを扱った芝居の中ではダントツにすばらしいと思う。
 出演は、小須田康人と堺雅人と長野里美。
 この三人もとってもいいんだ。
 いやあ、よくできてる。
 まあ、「深く」はないんだけどね。とっても「ウェルメイド」なことは確か。
 ほんとたくさんの人に観てもらいたいわ。
 ていうか、負けてられない。
 真剣に、そう思ったんでした。

 夕方から「夜曲」の稽古。
 昨日やったラストまでの場面をさらってから、通してみる。
 と、なんだかちぐはぐな芝居になってしまった。
 こういう通しもありだと思って、とにかく最後までやってもらう。
 終わってダメ出し。
 セリフとセリフの受け渡しの間に、余計な「ひと間」がある。
 それは、「何かしてやろう」とする間で、それがあるせいで、見ている僕たちには、実際に何かが起こる前に、何が起こるのかがわかってしまう。
 聞いたセリフの反応がすぐに起こるのを、一度、ためてしまうから、やりとりがはずんでいかない。
 積み重なっていかないで、ただただ「並んで」いるだけで、初めと終わりで何の変化もない。
 こんなんでおもしろいわけがない。
 ちゃんとやりとりをするように、説明しようとしないこと、それから、相手がやりやすいよういやることが、結局自分がやりやすくなることなんだと、結局、いつもの稽古で話したことを、また話して、もう一度通してもらう。
 二回目は一回目よりは良かったんだけど、どうもうまくいかない。
 桜澤さんは、「回転」させようとするんだけど、意識だけが回って、カラダがついていかない。
 イライラしてるのがとってもよくわかる。
 ようやく、後半、いつものペース、小返しで丁寧にやってる芝居に近くなる。
 本当は、もう一度、通すつもりだったんだけど(短い芝居だからね)、さすがに疲れたようなので、通し稽古はこれでおしまいにする。
 中盤のシーンを小返しする。
 何度かやってうちに、いつもの調子に「ふっと」戻った。
 丁寧にというわけじゃない。たっぷりというんでもない。
 すごい勢いの中で、複雑なニュアンスがどんどん盛り込まれていく。
 おもしろい芝居に、立ち戻った。
 すごく力を入れて、複雑なことをやってるわけじゃない。
 ふっと、軽い気持ちでいて、だからこそ、のびのびと軽々と、気持ちやカラダが動いていく。
 しばらく、いろいろとやってもらって、自信を取り戻してもらった。
 できるときと、できないときの違いが、とってもよくわかる、今日の稽古だった。
 すごく微妙なことのような、わかりすぎるくらいはっきりしてることのようなそんな、芝居の「命」のようなもの。
 小返しではできてることが、通しではできなくなるのは、「全体」を相手にしようとするからだ。「全体」は結局、「一瞬」の積み重ねでしかない。一瞬一瞬を、正直に生きて、積み重ねていくことでしか、「全体」は立ち上がってこないんだよと話す。
 そんなまとめをして今日はおしまい。
 明日は最後の稽古。
 明後日は初日だ。
 帰り道、新井薬師駅前のラーメン屋「一徹」で晩ご飯。
 こってり系でボリューム満点。とってもおいしかった。
 帰りは、中野の駅まで、上村くんと山崎くんの道案内(?)で歩く。
 抜け道をずっと辿る、ほとんど猫の通り道。
 カーナビで「最短距離」を選んだみたいなかんじ。
 部屋に戻って、「グリークス 第二部 殺人」を結局見てしまう。
 全三部の中でも、ここが一番好きだ。見るのはもう何度目だろう。
 「ヘカベ」のラスト、復讐を遂げた後、気が狂い、犬のようにうなるヘカベ=渡辺美佐子がいいなあ。
 第一部では、「小者」っぽかったアガメムノン=平幹二郎が、ここではとっても大きい人物になってる。
 今日はここまで、続きは明日。


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