せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2001年11月24日(土) |
大野一雄 「夜曲」稽古 FS稽古 葛飾柴又 |
昼前、ぼんやり見ていたテレビで、舞踏の大野一雄さんのことをやっていた。 NHKの「関東ネットワーク」とかそんな番組。 去年、公演中に足を怪我して、ずっとリハビリを続けてたんだけど、老人性のアルツハイマーになってしまって、それでもまだ、踊ろうとしている95歳の現役ダンサー。 すごいものを見てしまった。 カラダが動くとかそういうことじゃなくて、彼の踊りが何かをちゃんと伝えてくれることにびっくりする。 日本舞踊で、すっごい高齢の踊り手さんが見せるどこか達観してしまった「枯れた芸」とは違う、即興で動いているからこそ、その時々でいっぱいいっぱいのそれがすべてである表現っていうのが、なんともいえないものを生み出している。 「何はともあれ、カラダを動かすことは楽しい。それは間違いないことです」っていう大野さんのコメントにも重みがあったなあ。
夕方から「夜曲」の稽古。 鷺宮の稽古場。 僕と桜澤さんは、養成所時代の同級生なんだけど、そのときに一緒に録った写真を持っていく。 今から15年前。 最後の演習の課題だったテネシー・ウィリアムズの「ロング・グッドバイ」。その中の兄妹ジョーとマイラの場面をやるにあたっての小道具にした写真だ。 それは家族の肖像で、父と母と兄妹が写ってる。 僕はジョーをやっていて、桜澤さんは、お母さんだ。 芝居には全然関係ないんだけど(登場もしない)、僕が考えた演出(!)プランでは、この「家族の写真」っていうのがとっても大事だったんだ。 で、隣のクラスの桜澤さんに「お願い、お母さんやって」とお願いした。 父親は、今も劇団にいる石住さんだ。 写真を見た、丁田くんと山崎くんは、僕が「やせてること」に驚いてた。 そうだと思う。僕もびっくりだよ。 桜澤さんは、今の方が若々しいくらいだ。 こないだ、二人で、「あの頃ってほんとに生意気だったよね」と話した。 「自分たちくらいうまい役者はいないって思ってた」って。 二十歳そこそこなのにね……。 いつか、こんなふうに一緒に芝居をやる日が来るなんて思ってなかったよ。 十五年も経ってさ。
今日の稽古は、昨日の続き。 昨日、とってもうまくいかなかったところを、もう一度さらってみる。 エチュードのように、つくっていく。 僕がよくやる「違くやって」というダメ出しをしてみる。 と、急にのびのびとしてきた。 で、じゃあ、こうしようか?と、あれこれ、おもしろがって、アイデアを言い合っているうちに、出来てしまった。 昨日、あんなに苦労したのに、あららってかんじ。 途中からやってきた上村くんも驚いてた。 いいかんじなので、そのまま先に進む。 さくさくさくと進んで、ラスト近くの静かな場面の直前まで行く。 僕は、フライングステージの稽古のため7時に稽古場を出なくてはいけない。 ぎりぎりの時間に、それまで軽くさらっただけの場面に、「これだけはやって」という指示を出して、少し通してもらう。 と、これも出来てしまった。 びっくりだ。そして、また感動してしまう。 タイトな稽古スケジュールの中で、今日の稽古では、何としてでも、ここまでは作り上げておきたいと思ってた。 でも、昨日の稽古で、思わぬ壁にぶつかって、ちょっとムリかなと思ってたところだった。 が、きっちりできてしまった。たどりついた。これで最後まで行ける。目途がたった。 もちろんまだ荒いんだけど、方向性は間違ってない。 後半の稽古を上村くんにお願いして、稽古場を後にする。
三軒茶屋の稽古場へ。 やっぱり一時間ちょうどかかってしまう。 みんなで、ゲームをしているところだった。 少人数で緻密に作っていく稽古場の後で、のびのびと笑う大人数の稽古場はとっても新鮮だ。くったくなく笑う声が外にまで聞こえてた。 なんてかわいいんだろうと思う。もちろん「夜曲」組だってみんなかわいいんだけど。 今日は、gaku-GAY-kaiの稽古に入る前の最後の稽古なので、「エレクトラ」の発表をしてもらう約束だ。 2人組になって、ずっとやってきた53場を見せてもらう。 人数が半端だったら、僕も何かやろうと思ってたんだけど、ジャスト偶数だったので、僕は完全に見てるだけだ。 演出だけをずっとしていると、何かやりたくてしかたなくなる。 でも、その欲求不満をきっちり積み上げて、別のものにしていかないとダメなんだよね。 今日は、みんなとってもよかった。 「夜曲」の稽古場で僕がよく言う「相手のセリフをちゃんと聞いて、それからちゃんと相手に話す」ということを、うちの連中はちゃんとやっているんだなと思う。 セリフは全然うまくないけど、やりとりだけは、なんとかちゃんと成り立っている。 同じ目で、二つの違う現場を見るのはおもしろかった。 帰り道は、フッチーと細川くんにダメ出しをしながら。 それも「聞かれたから答える」かんじで。 ノグは、祐天寺の「みやぢ」の15周年のパーティへ。 みやぢさんは、フライングステージのお客さんで、僕の昔からの知り合いだ。 是非伺いますと言っていたんだけど、ノグによろしく伝えてねとお願いする。
帰ってから、録画しておいた「アド街ック天国」の「葛飾柴又」を見る。 寅さんがいっぱい。 懐かしい店がいっぱい出てくる。 コンセプトはやっぱり「おかえりなさい」だ。 なんていい言葉なんだろうと改めて思った。
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