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■ 葉桜の季節に
「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野昌牛
※ねたばれあり
あーくそっだまされた! と後半のページでは言い続けていた。 ちなみにだまされた!と夜中の3時に一人連発する前には、 この狭いワンルームで女子大生が一人 わけがわからん・・・どういうことだ? と連発していた。
それくらい、最後の最後だけは根底を覆される。 くそう。
ただ変わらず伝えるものというのは、成瀬の生き方を通して 伝えられる、年齢なんて関係ない、いつだってやる気さえあれば、青春だ。 という力強い生きる力だ。
成瀬の口から発せられる言葉にうそはない。 彼は人生の花時はいつなのか勝手に決め付けている 読者の固定観念をあざ笑う。 確かに、一言も書いてない。 彼が70なんて書いてない。 けれどそれ以外は克明に生活、過去から今に至るまで物語は詳細に描かれている。
固定観念をもって葉を見ず勝手に散っていたのは自分のほうなのだと あとから気づかされる。
くそうだまされた!と言ったあとは、もう真剣に成瀬の言葉にしびれるだけだ。 二十歳の頃は、恋愛は若者だけに与えられた特権だと思っていた けれど今も桜は生きている。
二十歳の私が、人生を見限っていた自分の浅はかさを感じる一冊だ。
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追記
成瀬と節子は、安藤とさくらという人物を使い、読者の中で描かれるような 若者の人生を生きてたのではないかと思う。 本来の自分の年齢と、ふた役目の自分。 最後の、今も桜は生きている。という一文の「桜」には 成瀬の言う人生の花ざかりである「桜」と 若者のように惜しみなく甘酸っぱい恋愛をする「さくら」も 重なって見える。
作者の意図が最後の一文まで見てようやっとわかる。 それでいて冒頭から最後までを駆け抜けて読ませる力。 くそう、楽しかったぞ!
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2008年06月24日(火)
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