「文明の衝突」
TVや新聞の見出しとして、使いやすいすっきりした言葉。なんだかすべてを説明してくれているような気になれる言葉。でも、それを言うすべての人に訊いてみたい。
あなたはどれだけイスラム教徒のことを知ってるの? 彼らの生活をどれだけ共有したことがあるの? アメリカの文明を、ヨーロッパの文明を、 どれだけほかの文明と冷静に比較したことがあるの? そもそも文明ってなに? あなたにとっての文明の定義は?
フランスの報道では「アメリカの物質主義の象徴が倒された」とは言っているけれど、「欧米の文明の象徴が」なんて言っていない。
わたしの友人に、イスラム教徒の人がいる。彼はサンドイッチ屋さんに行けば、中身のハムをチーズか卵に変えてくれないかと頼む。1月には、たとえ窓のない密室で肉体労働をしていたとしても、日没まで食事をしない。密室で太陽なんてみえないのに、時間を気にしている。隣にいるフランス人が、今日の日没は○時×分だから、おまえもう食べられるよ、と声をかける。ほんとに?ちゃんと調べた?と不安そうな顔。ちゃんと新聞で調べた時間だから大丈夫と、太鼓判を押されて、ようやっと彼は食べ始める。
彼は奥さんとうまくいっていないとき、なぜだか突然「ぼくは奥さんと別れて、かなと結婚するんだ」と言いだした。わたしは現実的に彼に訊く
「わたしは日本人で、たいせつなビタミン源としても豚肉を食べる。わたしが豚肉を食べたお皿や、料理に使ったお鍋で、あなたの食事はできるのかしら?」
みんなで一緒に食事をしていても、ハムのお皿があるところには絶対に近づかない。でも彼は1日に5回も礼拝したりなんてしない。NYで生まれ育った彼の奥さんもイスラム教徒だけれど、髪をショールで隠したりはしない。頻繁に家に招いてくれて、手料理で厚くもてなすのが大好きな人たち。
イスラームだっていろんな人がいるし、彼らには彼らの生活のしかたがある。それだけのことなんだ。
いま、パレスチナや、タリバーンやパキスタンにいる人たちをイスラム教徒としてひと括りにするのは無理がある。彼らは生まれたときから戦争に囲まれて暮らしてきた。目の前で父親と兄を殺され、目の前で母親と妹がレイプされる、それが日常だった人たちだ。近所中がみんなそんな目に遭ってきた、十分な食料も、医療も教育もなかった人たちだ。そして、父と兄を殺した武器は、母と妹を犯した男が載っていたジープは、アメリカのお金で買ったものだと知って、怒っている人たちだ。
こんなことを偉そうに書いているわたし自身、パレスチナとタリバーン、パキスタンのそれぞれの事情の違いまではよくわからない。想像できるのは、戦争のなかで生まれ育った人たちは、わたしとは全く違うものの見かた、考えかたをするだろうということ。1日1回の食事(しかも具のないスープや固いパンだけの)にありつくのが精いっぱいの人たちが狡猾になったり、嘘をついたり約束を守らなかったとしても、ちっとも責められないこと。家族・友人以外の人の命が大事だなんて、彼らが考えなかったとしても、それは無理もないこと。彼らを責めたり、裁いたりする権利はわたしにはないこと。
文明の衝突というよりは、貧富の衝突、国境のない革命というべきだろう。貧困のどん底にいる人たちが、金持ちの横暴さに腹を立てているとき、わたしは貧しい人たちへの同情を禁じえない。
ましてや、わたしはまだ彼らがやったという証拠を見ていない。
一般人やタリバーンには見せられない証拠ってなに? (非合法の諜報活動で得た情報だからと、アメリカは説明したんだろう) 証拠を見せるのに、あれだけ時間がかかったのはなぜ? (解読にかかった時間だとアメリカは言うだろう) (でも、ねつ造していた可能性はゼロではない) あれだけの大掛かりなテロを実行できた組織が大型機の手動運転までできた組織が最後に使ったホテルにわざわざコーランを残していくようなまぬけなことをするだろうか?
クリントン元大統領と関係のあった女性が大統領の精液のついた洋服を保存しておいた。 (複数の女性に尋ねたけれど、やっぱりみな、それは変だという) ゴア大統領候補はへんな票の集計トラブルで落選。 ブッシュ氏が大統領になってから、イスラエルはやたらと強気な軍事行動をとり始めた。
アメリカのなかで、だれかがずっとまえから戦争をしたがっていたのではないか? その人は戦争に Yes! という大統領が必要だったんじゃないか?
なぜ報道されることを真に受けることに、とまどいを覚えるのだろう?
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