Scrap novel
INDEX|past|will
ゆうべはさすがに眠れなかった。 ので、今日の太陽はやたらと目に痛い。 それでも、なんとなく、そのままにはしておけなくて、バンドの練習もサボって弟の部活が終わるのを待って、正門のところまで向かえに行ったんだ。 いつもなら、そんな風にゲリラ的に待ち伏せされてたりすると、一瞬おどろいたような顔をした後、満面の笑みになるんだよな・・。 が、今日は思い切り「困った」という顔をされてしまった。 ・・・あたりまえか。 それでも、一緒にいたトモダチと別れて俺のとこにやってきて。 けど、別に用があるわけじゃなかったから、ぶらぶらと、街並みをちょっと離れて歩くだけで。 何というか、何を言って良いやら、あんな後に。 顔を見るのすら、なんだか照れくさい。 それどころか、会ってからずっと目も合わしてねえや。 ちらっと見ると、向こうもちらっと見上げてくる。 ぱっと目が合い、ばっと離す。 うわ〜顔熱い・・。 誰か、どうにかしてくれよ・・・。 まいった。 マジで、なんでいきなり告ったりしちまったんだろう。 ずっと言わないでおくはずだったのに。 しかも、誕生日でもなければ、何の記念日でもないフツウの日に、しかも勢いで。 だって、コイツが・・。 コイツが、クラスの女の子から俺あてのラブレターなんか預かってくるから。 しかも、それを、なんだか苦しそうな顔で「付き合って上げてよ」なんて手渡すから。 つい・・・。 はっきり言って、この気持ちを言ってしまったら、今までの兄弟としての時間はすべて無になってしまうほどに思っていたから。 (きっと弟は俺を軽蔑するだろうし。そんな風に、実の兄に自分が見られていたってことに) 絶対に言っちゃいけないと思っていた。 もし、打ち明けるならそれは、すべてをカクゴした時だと。 だから、その時のことは、自分の頭でイメージしたことはあったけれど、まさかその先があるなんて思わなかったから・・。 こういう事態をまったく予測できなかったんだ。 両想い、つーか。そういうの。 ねえだろ、フツウ。兄弟で。 ・・どうすりゃ、いいんだ? 兄弟で、しかも色恋沙汰で両想いになった時って。
き、キスとか・・・そういうの、 しても、いいもんなのか・・?
いや、小さい頃ならキスとかさ、そういうの、たぶんしたこともあったような気がするけど。 でもそれは、単に唇と唇をくっつけただけのもんだったから。
「あの・・・」 「え? ええ?」 「ええ?って・・」 「あ、悪い。な、なんだっけ?」 つーか、キスどころか、まともに顔も見れないじゃん・・! 昨日まで、ごく自然にふれられてた肩とかも、昨日までは、まだ、ただの兄弟だったから平気だった。 髪にさわったり、軽く腕を握ったりとか、そういうのも兄弟のコミュニケーションの延長だったから。 いや、別に、離縁したわけじゃねーから、今日だってもちろん兄弟なんだけど。 「えと」 「んー?」 なんか、問い返すこういう声も、妙に甘くねえか、俺。 「あのね」 「うん?」 「さっきからね」 「ああ」 「同じとこ、ぐるぐる回ってない?」 「・・・え?」 そういや、同じスーパーがずっと角を曲がったらあるってのは変だよなと思ってた。 スーパーの角を曲がって、また曲がって、また曲がって、同じとこに帰ってきてたらしい。 やれやれ・・・。 一人で、くくっと笑う俺に、ちょっと赤い顔をしたオマエがくすっと笑う。 「なんか買って帰って、一緒に作るか?」 「うん」 「何、食いたい?」 「何でもいいよ、お兄ちゃんの作ってくれるものだったら」 「おまえも一緒に手伝うんだよ」 「え? あ、そうか」 「今日からはな」 「うん、今日からは」 答えて、タケルがにっこりする。 ああ、そういう笑顔にすんげえ弱い・・。 それに微笑み返して、カートを取りに行って横に並んだ背中を軽く押した。 その、微かにふれた指先がびりっと熱くなったけれど、それでも離すのには惜しくて、そのまま軽く肩に手を置いた。 オイ、恥ずかしそうに、ぽっと赤くなるなって。 こっちも、恥ずかしくて、ひたすら熱いよ。
いったいこの先、どうなっちまうんだろう。 でもまー。いいか。 どうなっても。 タケルが、俺のこと想ってくれてるってわかったから。 それだけで、充分だ。
それよりさ。 兄弟で、キスとかって、 マジでしても、大丈夫なものなのだろうか・・・?
一応。END
なんと、ここの更新を2ヶ月もしてないってことに気がついてね、何か軽いものをちょこっと書いてみようと思ったら、こんなことになりました。 ははは・・。 いや、しばらくなんとなく重いヤマタケを書いていたような気がするので、甘いのもいいかなあと。 ちなみに、この兄弟は、両想いになったばかりで、もちろんキスもまだで、とにかく顔を見るだけでドキドキという、大変かわゆらしいヤマタケであります。 中2と小5くらいかな? だんだん接近してくとこを書くというのも、またいいかなーとかって。フフフv 内容はないんです、甘いだけです、ハイ。
|