Scrap novel
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2002年10月23日(水) 甘いセイカツ2

なんというか。
今日は一日、地に足がついてない状態だった。
もしかして、本当に浮かんでるんじゃないかと錯覚するくらい、足の裏に感覚がなかった。
大輔君には、おまえ、今日、気持ちわりーなんて言われるし。
何がだよ?と聞き返すと、なんか妙にへらへら笑ってて、とかって。
いつも笑ってるだろ。
そりゃあ、無理して笑ってるだろうと言われれば、当たらずとも遠からじな部分もあるけど。
まあ、自覚はあるけどね。
いつもが顔を緊張させて微笑んでいる状態でキープしてるんだとすると、今日は、ぼけ〜っとしてても顔が勝手に笑ってしまうというか・・・。
なんとなく、そんな自分が我ながら、らしくなくて変だ。
つまり、大輔くんは結構スルどいんだ。
自分の方こそ、普段はへらへらしてるくせにね。
でも、と思う。
そんなに浮かれてていいのか? 
だいたい、手紙の彼女には何て言おう。
昨日の今日じゃなんだから、いっそ来週に入ってからにしようか・・・。
それよりも。
昨日のこと・・。
あれは、本当に、本当のことなのだろうか?
なんかこう、イキオイでというか、行き当たりバッタリというか、そんな感じで言ってしまったけど、もしかして「なんであんなこと言ったのか」
と後悔してるんじゃないだろうか・・?
そんなことを給食のすんだあたりから思い始めて5時間目を向かえ、クラブが終わって帰るころには気持ちはかなり下降線を描いていた。
そんな時だったから。
正門を出たところに待っていた人影に、心臓が胸を突き破って飛び出そうなほど驚いた。
とりあえず、一緒だったトモダチと別れて、追いかけるようにして先を歩く兄の後をついていく。
何か話、あるのかな?
もしかして。
きのうのことは間違いだったから。
なかったことにしてくれ。
忘れてくれ。
つい、イキオイで言ったけど、よく考えたら弟を好きだなんて、そんなのおかしすぎるよな。
本当に悪かったよ・・・。
そう言われるんじゃないかと、胸がどきどきしてきた。
いつもだったら隣を歩く時、さりげなく肩とかに置かれる手も今日はなく、ほとんど目も合わさずに先を歩くのは、本当にそういうことなのかな・・?
目があった瞬間に、ぱっと視線をはずしてしまうのも?
僕はそれでも、自分が赤くなってるのがわかる。
もしも、そうだとしても、いいんだよ、お兄ちゃん。
僕は、本当に本当に嬉しかったんだから。
世界中のすべてに感謝したいほど、嬉しかったんだ。
「オマエのことが好きなんだ」とそう言われて、頭がぼーっとなるくらい幸福だった。
だから、責めたりしないから、間違いなら、早くそう言って。
僕が、期待をしてしまう前に。

買い物をして帰ることになって、何が食べたいかと聞かれた。
お兄ちゃんが、僕のために作ってくれるなら、何だっていいよ。何だって嬉しい。
そういう意味で、そう答えた。
そうしたら、お兄ちゃんは照れくさそうに笑って、今日からはオマエも一緒に作るんだよとそう言った。
それって。
今日からは、って?
考えるよりも前に、うんと頷いて笑っていた。
カートを押す僕の肩に、やさしくあたたかい手が添えられる。
「あ、あの・・」
「ん?」
「ところで、どっちに帰るの・・?」
「え? あ、そうか。オレんち来るか? オヤジ帰ってくるの遅いし」
え? 遅いから、何?
「や、遅いからってことはねえけど」
ぼそっと言って、ちょっと赤くなる。
やだな、お兄ちゃん。変なとこで赤くならないでよ。
「風呂とか、入って帰れば?」
「え・・っ。お風呂って」
そこに反応するな、僕も!
「あ、着替えねえか」
「う、うん。あ、でも、お兄ちゃんの貸してもらってもいいけど・・」
いつも、突然に寄ってご飯ごちそうになって、お風呂もって時にはそうしてる。
もう、少し小さくなったお兄ちゃんの服を、そのままもらって帰ったりして。
上の兄弟のお古をもらうなんてことがなく育った僕にとっては、そんなことでも嬉しかった。
違う意味でも、もちろん嬉しかったんだけども。
「いや、貸してやっけど? パンツでもなんでも」
「え? ぱ、パンツ?」
だから、そこに反応するなって、僕!!
顔を見合わせて、真っ赤になる。
「いや、まあパンツはともかく・・・」
「う、うん」
そんなことを話ながらなので、何を買ったのかよくわからないまま、レジを過ぎて袋に買ったものをとりあえず詰め込んだ。
・・・・・お兄ちゃん、どうして土しょうが三袋も買ってるんだろう?
何に使うの?
ま、いいんだけど。
全部詰め終わって、あたりまえのように袋を持とうとするお兄ちゃんに、慌てて僕が手をのばす。
「僕が持つよ!」
「いいよ、俺が持つって」
「いや、僕が」
「だから俺が」
「・・・あ」
スーパーの袋を取り合ううちに、手がふれあってビク!と思わず手をひっこめた。
「あ、ごめん」
「あ、いや、俺の方こそ」
なんだか兄弟でこんなことで真っ赤になり合ってるなんて、他人から見たらきっと変にうつるだろう。
でも。
偶然ふれあってしまった指先が熱い。
今、どんな顔してるんだろう、僕。
お兄ちゃんが、手をひっこめたまま固まってしまった僕を見て、少し笑って言う。
「一緒に持つか?」
心の中に、ふわっと流れてくるものがある。
あったかい何か。
そっと手を出して、こくんと頷いた。
いっしょにスーパーの袋の手のとこに指をかける僕らは、お母さんと小さい子みだいたね。

外に出ると、きれいな夕焼けだった。
その中を、スーパーの袋を間において、歩道をゆっくりと歩いて帰る。
少しだけ、触れてる手の一部が、じ・・んとあたたかい。
泣きたくなるようなあたたかさだ。
そのまま何も言わずにただ歩いていると、ふいにお兄ちゃんが前を見たまま静かに言った。
「あのな・・」
「うん・・?」
「おまえのことだから、なんか、こう・・・。聞き間違いとか、思いちがいとかそんな風に考えてんじゃねえかって・・」
「・・え・・・?」
「そういうんじゃなくて、イキオイで言っちまったのは、ま、本当だけど。嘘はねえから」
前を見ているお兄ちゃんの頬が赤く染まって見えるのは、夕焼けのせいだろうか?
まっすぐに夕日を睨むようにしてそれだけ言うと、肩越しに少し遅れて歩く僕を振り返る。
「おまえのこと、好きだから。誰よりも一番、大切に想ってるから」
うん・・と頷くけれど、胸でつまって声にはならなかった。
甘酸っぱいものが溢れてきて、お兄ちゃんの照れくさそうな笑顔を見上げていると、なんだか夕日が目にしみた。
「泣くなよ、馬鹿・・」
一緒に持っていた荷物を僕の手から取り上げて、片方の手で軽々と持って、空いた手でそっと目元を拭ってくれる。
「お兄ちゃん・・」
「んー?」
「・・・・に・・・・・・ちゃん・・・」
「だから、泣くなって・・」
「うん・・」
「手、とか繋ぐか?」
「う、うん・・」
ぽろりと頬を伝ってきた涙を慌てて拭って、差し出された手に自分の手を差し出す。
なんて、あったかくて大きな手なんだろう。
やさしくて、あったかい。
心ごと、包み込んでくれるみたいだ。
僕もずっと好きだったんだよと言いたいのに、言葉にしたら、また涙が溢れそうで。
唇を震わせて一生懸命見つめていると、わかってるよ、と笑ってくれた。

そのまま、僕らは手を繋いで、なんだかつきあい始めたばかりのカップルのように(いやマジで、実際そうなんだけど)、恥ずかしそうに互いの顔をちらちら覗き見ながら、マンションまでの道のりをほかほかしながら歩いた。


ところで、兄弟でコイビトになってしまった場合でも。
その・・。
・・・・キスとかそういうの。
やっぱり、するもんなんだろうか・・・・・。

いや、したいわけじゃないけど!
いやいや、したくないわけでも、もちろんないけど!


す、するのかな・・。
いつか・・。




END



しあわせなタケルを読ませろ!・・・いや、読みたいというリクに答えてみました。
どうよ、こんなで。一応、幸せだと思うんだけど。
なんかヤマタケで「あ〜〜〜もう恥ずかしい!」ってぐらい甘いのって、まだ書いてない気がしたんだけど、私が忘れているだけでしょうか?
なので、このシリーズはこんな感じで。
タケルからの一人称にするとどうも暗くなりそうで、ちょっと最初は危なかったけどね。持ち直しました、よかった、よかった。
出来上がっていくヤマタケというのもいいもんですv


つうわけで、これ読んで元気出せ!v(余計に出ないか?)
しかし、本当、人づかい荒いよお!(爆笑)
私も癒されたいよ〜 癒しあいっこしようよー >以上、私信デシタv 


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