Scrap novel
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2002年04月20日(土) good morning! 3

「ふわぁ・・・」
奈津子は眠そうにアクビを一つすると、どっかとリビングのソファに腰をお
ろした。
やれやれ。
気まぐれな作家の都合ですっかり日曜日のスケジュールが狂ってしまったわ。
今日を逃すと当分時間がとれないっていうから、ゆうべからわざわざ泊まりで出かけたのに。
まあ、いいわ。
締め切りにはまだかなり時間あるし、だったら、日程のつまってるあっちの方を先にやっちゃうか。
家事の方は、なんだかすっかり息子たちがやってくれてるみたいだし。
ふう・・と肩で息をついて、ベランダの外で翻る白いシーツを幸せそうに見、それからぐぐっと伸びをした。
当の息子たちはシャワーを終えたらしく、脱衣場で楽しそうに話す声がする。
それをソファの背越しに振り返って、奈津子はちょっとドキ・・とした。
兄と戯れるようにして出てきたタケルが、いつも母には見せたことのないような屈託のない笑みを浮かべていたから。
おとなしくて、母想いのやさしいいい子だけれど、そういえば微笑んでいることはあっても、あんまり大きな声で笑っているのを最近聞いたことがない。
やっぱりお兄ちゃんがいいかなあ・・・と思いつつ、様子を窺っていると、まだ濡れたタケルの髪をヤマトがタオルを被せてごしごしと拭き、タケルが「やめてよぉ」と言いながら、けらけら笑っている。
そこから、ぷはっと顔を出すと笑いながら、ふと兄と見つめあった。
ヤマトの手がそっとタケルの頬に触れ、タケルが少しはにかむようにヤマトを見上げる。
そのまま、ゆっくりと唇を・・
おいおい。
「あのー」
「うわ、は、はい! お母さんおかえり!!」
「・・・さっきから、帰ってるんだけど」
「あ。そうだよね。ははは。ゴメン」
奈津子の声に我に返ったように焦るタケルとは対象的に、ヤマトが余裕の笑みで言う。
「あ、朝メシの洗いもの、まだ置きっぱなしなんだ。それ終わったら、お茶でも入れるからゆっくりしてて」
「あ・・・ありがと」
やさしい息子の言葉に、つい先ほどの「ん?」をさっさと忘れ、じーんと胸をつまらせて、キッチンにたつ長男を見つめる。
何もしてやれなくて、後悔と自責ばかりの気持ちが先立って、なかなか今までは自然に接することができず苦しんだけど、成長したヤマトが最近はもう、ただ眩しくて。
いい子に育ててくれてありがとう。と、別れたダンナにも素直にやっと言えるようになった。
キッチンの流しで皿などを洗うヤマトの横にきて、タケルが手伝うよ、と声をかける。
「おまえ、まだ髪の毛濡れてるぜ?」
「いいよ、これくらい」
「風邪ひくだろ」
「平気だったら」
「ちゃんと乾かせよ」
「もお。いいったら」
「タケル」
「・・・・だって」
「いい子だから、言う事ききな」
叱るように言って、メッ!という顔をつくるヤマトにタケルが渋々「はーい・・」と返事を返す。
「だって、一緒に洗いものしたいのに」
「だったら、待っててやるから」
「本当?」
「ん。だからちゃんと」
「はい、乾かしまーす」
「よろしい」
言って二人で笑い合うと、お互いの額をコツンとぶつける。
「・・・・あのー・・・」
「あ、じゃあ、お兄ちゃん乾かしてよ」
今度は奈津子の視線に気づきもせず、タケルがにっこり笑ってヤマトに言う。
しょうがねえなあ・・と、いかにも可愛い弟の甘えには弱いと目尻を下げながら、ヤマトがタケルを促して洗面台の所までついていく。
思わずテーブルの上にあった新聞を手に取り、広げた状態にして、兄弟の様子を窺うと、洗面所のドアの前で、さりげなくヤマトの手がタケルのお尻のあたりに添えられる・・のを見た。
(あああああ、あのう!!)
焦る母をよそに、ドアの中からはブォー・・とドライヤーの音が聞こえ、ドアがばたんと閉じられた。
ま・・・ま・・・・まぼろし・・・かな?
そ、そうよね、気のせいよナツコ!
ほ、ほら、だいたいボーイズラブ作家のとこに取材に行くからって、知識を蓄えておくために、そういう小説ばかり読みすぎたからさ!
感化されてるわ、イカンイカン。
自分の息子になんてこと。
お尻くらい、ほら、野球選手とかだって、さわるもんね、ピッチャーんとこ行ってさ、ほらほらっ。
ふつーよ。うん。
こんなもんよ。兄弟なんて。
スキンシップよ、スキンシップ!
絶対。た、たぶん・・・きっと・・
あっというまに髪を乾かし終えたタケルが、母の混乱など知るよしもなく、すっきりした顔でキッチンに戻ってくる。
後に着いてきたヤマトがそれに並び、仲むつまじく洗いものを始めた。
母の胸中はしかし、もお新聞どころではない。
文字は素通りして、耳だけはダンボにして聞き耳を立てていると、皿などを洗いながら、2人でこしょこしょと小さな声で何事か話している。
ヤマトがタケルの耳元に小さく何かを囁くと、タケルが肩をすくめてくすくすっと笑い、ちょっと踵を上げて、ヤマトの耳にその返事を返す。
カンペキに2人の世界に入っている兄弟に、なんだか息子がお嫁さんをもらって、その新婚家庭にお邪魔したような居心地の悪さを感じる・・。
いや、それもなんか違うか・・。
「あのー・・」
「あ、もうすぐ終わるから。お茶待ってて」
お茶じゃねえよ、と言いたい気持ちをぐっと堪えて、奈津子はなんだか得体の知れない感情と疑惑に苛まれて行く自分を感じていた。
まさか・・・・
まさか。そんな・・・・・。
でも・・・・!
そんなこと、あるはずがないじゃないのぉ!!
思いっきり否定をしようとした、まさにその瞬間。
タケルの耳に何かを囁いたヤマトが、含み笑いをしながら、つい。
つい。
いつもの癖で。
ちゅ・・とその耳の下の窪みにキスをした。
・・・・してしまった・・・・。
「あ・・・・」

しまった・・と同時に固まる兄弟がおそるおそる母を見ると、母はまさにピキ―・・ンという効果音が良く似合う状態で、瞳を見開いて硬直していた。
「あ・・・かあさん、凍ってる・・・・」
慌てつつも、なぜか棒読みになってしまうタケルの台詞に、ヤマトが思わず頭を抱えた。


そんな兄弟を前に、錯乱していく奈津子の脳裏が同じ言葉をぐるぐる繰り返していく。
まさか・・・・・・
まさか・・・・・・
そんな・・・・・
そんなあぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヤマトがホモだなんて!



END



タケルはちゃうんかい!



失礼をいたしました。なんだか一回消えてしまってから、話の筋は覚えて
いるんだけども、なぜかオチを忘れてしまって・・・
これ、どうやって終わるつもりだったのでしょう?
ま、いいか。あくまでもコメディなので、本気にしないでください。
いや、本気にするなってどゆことよ? 
奈津子さんのキャラが変でも許してくだされってことで。
しかし、こんな性格の母なら、タケルもまた違った育ち方をしてたであろ
うという気も・・。
つづくかどうかはわかんないですー。
ここで終わったほうがいい気もしてみたり〈笑) 
ちなみにヤマトとタケルは、これでも本人たちはせいいっぱいフツウの兄
弟を演じてるつもりなのです。・・・・マヒしてるんですね・・・。
〈風太)


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