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2002年04月12日(金) のっと ふぁうんど

その日、僕は眠かった。
やたらめったら、眠かった。
だから、本当は約束は丁重にお断りしようかと思ったんだけど。
彼、大輔くんが「新しいゲームソフト買ったんだぞー! なあ、一緒にやろうぜえ」としつこく・・いや、熱心にさそってくれたから。
だから、断れないまま彼のうちに来たんだけれども。
欠伸をかみ殺しているだけで、せいいっぱい。
ぼけ〜と画面を見て淡々とゲームを進める僕に、彼は「おまえっくらい、つまんなそうにゲームする奴見たことねえよ・・」と言うけれど、もう画面の文字もぼやけてるんだもん。
しょうがない。
どんなゲームなんだろう、これって。
それでもキミの誘いを断りきれない僕を、少しはエライと思おうよ。
・・・・あー・・眠い。
もう、お兄ちゃんち泊まった次の日は、いつもこうだよ。睡眠不足。
寝かせてくれないんだから。
でも。
まあ。
拒めない僕も悪い。
拒む気も、まあ、ないといえば、そうなのだし。
なんかでも、ゆうべは特に・・。
いつもより、なんていうか、激・・・
「あのさ、タケル」
「うん?」
ちょっと昨夜のことを思い出し、顔が赤くなっていないか心配しつつも、平静を装い、顔は画面に向けたまま返事を返す。
「ヤマトさんて、でかい?」
「うん。・・・・・・・・え?」
え? え? 
えええええええ〜〜〜〜!!! 
今なんて!?
「だから! でかい?」
「で、で、で・・・・・いや、そんな、なんていうか、ふ、ふつーというか、の、のーまるサイズというか、いや、誰かと比べたことなんかないし・・ええ?」
「そか? おまえ、自分のと比べたりしねえ?」
「し、し、しない! いや、しないっていうか、いや、そりゃああ僕よりは・・ていうか! だから何! それが何!」
ナニっていうのも何だけど。
いやしかし、なんでそんなこと! 
だいたい、キミに関係ないじゃないかあ!
「俺もさ」
「う、うん」
「ヤりたい」
「へえ?」
「ヤりてえなって思って」
「・・・は? はい?」
「なあ、どう思う?」
「どどどどどどどう、って! どう思うと言われても、あの!」
「俺、まだ下手だしさ」
いや、下手でいいんじゃない。
僕たち、まだ小学校卒業したとこだし! 
まだそんなに上手くなくてもいいんじゃないかな! 
そういうのって、テクニックより、むしろ愛情の問題だと思うし。
ていうか、誰とそれをその・・。ヤりたいって!
まさか僕と???
いや、まさかそんなはずは。
寝不足の頭で思わずいろいろ連想してみるけど、なんだかパニックになっていくばかりだ。
なんで、いったい、何がどうなってるんだ? 
変だよキミ! 
大輔くん、しっかり。
いや、しっかりするのは僕の方かも。
「変かな、俺」
「うん!」
「力いっぱい頷くな!」
「だって!」
「頑張って練習すりゃ、そのうち上手くならぁ」
「そ、そりゃ、そりゃそうだろうけど」
練習って、何?
どうやって??
「俺、無器用だし」
「うん」
「だから、頷くなって」
「あ、ゴメン」
「ヤマトさんみたいに、カッコよくねえし」
「うん」
「オイ」
「あ、だって」
「似合わねえってわかってるけど」
「う、ううん」
何が似合わないんだろう。
キミと僕が?って、まさかそんなはずはないよね。
「京にも言われたし」
「ううん。・・・へ?」
京さん?
「京さんに、何を?」
「ヤマトさんみたく、でかくねえとダメだって」
〜〜〜〜〜〜!!?? 
な、な、な、なんで京さんが!!!
なんで京さんが、お兄ちゃんの、ソレ、そんな、そんなコト知って、知ってるってどういう???
ま、まさか、お兄ちゃんと京さんが・・。
そういえば、結構知らないうちに会ってるみたいだけど。
でも、そんな、まさか!
「嘘だ!」
「は?」
「信じない、そんな!」
「なんでえ?」
「なんでって! み、み、見たの!?」
「おう。けど、そんな血相変えるようなコトじゃねえんじゃあ・・」
「そんなことって! だって普通見ないでしょ! そんなとこ」
ヒトが泣きそうになってるのに、なんで大輔くんてば、ぽかんとしたアホ面してんだよ! 
だいたいお兄ちゃんは女クセが悪すぎるんだから! 
ちょっとバンドやっててモテると思って、でもだからって何も京さんにまで・・。
「でも見えんだろ」
「見えないでしょ!」
男同士なら、トイレでも見えるだろうけど、女の子が見えるっていったら。
「手なんか」
「・・・・へ?」
・・・・・・
何???
「だから、手見たくらいでそんな大騒ぎすることじゃあ」
「・・・・て?」
「この前、大きさ比べしたら、思ったよりすんげえでかかったって」
「はあ」
「やっぱ、ギターやんのって手でけえ方がいいんだろうなあ」
「ぎ、ぎたー・・」
「この前ちょっとだけ弾かせてもらったんだけどさ」
「・・・・はい」
「結構ハマっちまって。けど俺無器用だしさあ、ルックスも今いちってか、まあソコソコいけてる方じゃねえかとは思うんだけど、まあヤマトさんみたくはカッコよくはねえし、肝心のギターも下手くそでなかなかうまくなんねえし。でもまあ、そのうち、バンドやりてえなあなんて。そしたらおまえも、キーボードとかやんねえ? ピアノちょこっと昔やってたって言ってたじゃん。なあ、だからさあ。聞いてるか? タケル?」
調子に乗ってしゃべりまくる大輔くんをよそに、僕の頭の中はどんどん真っ白になっていき・・。
ああ、キミの声がなんかすごく遠くに聞こえるよ・・。
そうだ。
やっぱり寝不足はよくない。
うん。
とにかく寝た方がいいよ、僕は。
しかし。
ああもう、何恥ずかしい勘違いしてんの、カッコ悪すぎ・・。
キミがニブくてよかった・・。
好きだよ、大輔くんのそういうとこ。
「おい、どこ行くんだよ、タケル?」
「悪いけど、ちょっとベッド貸して・・・。寝る」
「は?」
僕はフラフラとベッドに行きつくと、大輔くんの匂いのする布団の中に潜り込んだ。
寝よう、とにかく。
気絶寸前。

・・・あ、そか。
今わかった。

『ヤマトさんて、でかい?』(×)→『ヤマトさん、手でかい?』(○)

は〜・・・。
ぐったり疲れて布団に潜り込む僕の耳元で、布団の外から大輔くんが言う。
「何、おまえ誘ってんの?」
「ん・・」
ゴメン、もう意識朦朧で何がなんだか・・・。
「襲うぞー」
「どうぞ、どうぞ」
大輔くんが何をいったかわからないけど、僕は適当に答えると瞬く間に深い眠りに落ちていった。
あー。
疲れた。
もう知らない。
お兄ちゃんのバカ(←八つ当たり)



そんな僕が寝ている間に何かが起こったか?
爆睡していたから、僕は知らないけど。



END






ダイタケ、評判良かったのでダイタケを・・。って全然ダイタケちゃうやん!
このあと、大輔に襲われたとしても「ああ、僕また勘違いしてる・・」と思ってそうです、タケルさん。
え、いや、なにをでかいと勘違いしたかは私は知りませんけど。
前の夜に何があったかも、ご想像におまかせします、ハイv(風太)


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