Scrap novel
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その日、僕は眠かった。 やたらめったら、眠かった。 だから、本当は約束は丁重にお断りしようかと思ったんだけど。 彼、大輔くんが「新しいゲームソフト買ったんだぞー! なあ、一緒にやろうぜえ」としつこく・・いや、熱心にさそってくれたから。 だから、断れないまま彼のうちに来たんだけれども。 欠伸をかみ殺しているだけで、せいいっぱい。 ぼけ〜と画面を見て淡々とゲームを進める僕に、彼は「おまえっくらい、つまんなそうにゲームする奴見たことねえよ・・」と言うけれど、もう画面の文字もぼやけてるんだもん。 しょうがない。 どんなゲームなんだろう、これって。 それでもキミの誘いを断りきれない僕を、少しはエライと思おうよ。 ・・・・あー・・眠い。 もう、お兄ちゃんち泊まった次の日は、いつもこうだよ。睡眠不足。 寝かせてくれないんだから。 でも。 まあ。 拒めない僕も悪い。 拒む気も、まあ、ないといえば、そうなのだし。 なんかでも、ゆうべは特に・・。 いつもより、なんていうか、激・・・ 「あのさ、タケル」 「うん?」 ちょっと昨夜のことを思い出し、顔が赤くなっていないか心配しつつも、平静を装い、顔は画面に向けたまま返事を返す。 「ヤマトさんて、でかい?」 「うん。・・・・・・・・え?」 え? え? えええええええ〜〜〜〜!!! 今なんて!? 「だから! でかい?」 「で、で、で・・・・・いや、そんな、なんていうか、ふ、ふつーというか、の、のーまるサイズというか、いや、誰かと比べたことなんかないし・・ええ?」 「そか? おまえ、自分のと比べたりしねえ?」 「し、し、しない! いや、しないっていうか、いや、そりゃああ僕よりは・・ていうか! だから何! それが何!」 ナニっていうのも何だけど。 いやしかし、なんでそんなこと! だいたい、キミに関係ないじゃないかあ! 「俺もさ」 「う、うん」 「ヤりたい」 「へえ?」 「ヤりてえなって思って」 「・・・は? はい?」 「なあ、どう思う?」 「どどどどどどどう、って! どう思うと言われても、あの!」 「俺、まだ下手だしさ」 いや、下手でいいんじゃない。 僕たち、まだ小学校卒業したとこだし! まだそんなに上手くなくてもいいんじゃないかな! そういうのって、テクニックより、むしろ愛情の問題だと思うし。 ていうか、誰とそれをその・・。ヤりたいって! まさか僕と??? いや、まさかそんなはずは。 寝不足の頭で思わずいろいろ連想してみるけど、なんだかパニックになっていくばかりだ。 なんで、いったい、何がどうなってるんだ? 変だよキミ! 大輔くん、しっかり。 いや、しっかりするのは僕の方かも。 「変かな、俺」 「うん!」 「力いっぱい頷くな!」 「だって!」 「頑張って練習すりゃ、そのうち上手くならぁ」 「そ、そりゃ、そりゃそうだろうけど」 練習って、何? どうやって?? 「俺、無器用だし」 「うん」 「だから、頷くなって」 「あ、ゴメン」 「ヤマトさんみたいに、カッコよくねえし」 「うん」 「オイ」 「あ、だって」 「似合わねえってわかってるけど」 「う、ううん」 何が似合わないんだろう。 キミと僕が?って、まさかそんなはずはないよね。 「京にも言われたし」 「ううん。・・・へ?」 京さん? 「京さんに、何を?」 「ヤマトさんみたく、でかくねえとダメだって」 〜〜〜〜〜〜!!?? な、な、な、なんで京さんが!!! なんで京さんが、お兄ちゃんの、ソレ、そんな、そんなコト知って、知ってるってどういう??? ま、まさか、お兄ちゃんと京さんが・・。 そういえば、結構知らないうちに会ってるみたいだけど。 でも、そんな、まさか! 「嘘だ!」 「は?」 「信じない、そんな!」 「なんでえ?」 「なんでって! み、み、見たの!?」 「おう。けど、そんな血相変えるようなコトじゃねえんじゃあ・・」 「そんなことって! だって普通見ないでしょ! そんなとこ」 ヒトが泣きそうになってるのに、なんで大輔くんてば、ぽかんとしたアホ面してんだよ! だいたいお兄ちゃんは女クセが悪すぎるんだから! ちょっとバンドやっててモテると思って、でもだからって何も京さんにまで・・。 「でも見えんだろ」 「見えないでしょ!」 男同士なら、トイレでも見えるだろうけど、女の子が見えるっていったら。 「手なんか」 「・・・・へ?」 ・・・・・・ 何??? 「だから、手見たくらいでそんな大騒ぎすることじゃあ」 「・・・・て?」 「この前、大きさ比べしたら、思ったよりすんげえでかかったって」 「はあ」 「やっぱ、ギターやんのって手でけえ方がいいんだろうなあ」 「ぎ、ぎたー・・」 「この前ちょっとだけ弾かせてもらったんだけどさ」 「・・・・はい」 「結構ハマっちまって。けど俺無器用だしさあ、ルックスも今いちってか、まあソコソコいけてる方じゃねえかとは思うんだけど、まあヤマトさんみたくはカッコよくはねえし、肝心のギターも下手くそでなかなかうまくなんねえし。でもまあ、そのうち、バンドやりてえなあなんて。そしたらおまえも、キーボードとかやんねえ? ピアノちょこっと昔やってたって言ってたじゃん。なあ、だからさあ。聞いてるか? タケル?」 調子に乗ってしゃべりまくる大輔くんをよそに、僕の頭の中はどんどん真っ白になっていき・・。 ああ、キミの声がなんかすごく遠くに聞こえるよ・・。 そうだ。 やっぱり寝不足はよくない。 うん。 とにかく寝た方がいいよ、僕は。 しかし。 ああもう、何恥ずかしい勘違いしてんの、カッコ悪すぎ・・。 キミがニブくてよかった・・。 好きだよ、大輔くんのそういうとこ。 「おい、どこ行くんだよ、タケル?」 「悪いけど、ちょっとベッド貸して・・・。寝る」 「は?」 僕はフラフラとベッドに行きつくと、大輔くんの匂いのする布団の中に潜り込んだ。 寝よう、とにかく。 気絶寸前。
・・・あ、そか。 今わかった。
『ヤマトさんて、でかい?』(×)→『ヤマトさん、手でかい?』(○)
は〜・・・。 ぐったり疲れて布団に潜り込む僕の耳元で、布団の外から大輔くんが言う。 「何、おまえ誘ってんの?」 「ん・・」 ゴメン、もう意識朦朧で何がなんだか・・・。 「襲うぞー」 「どうぞ、どうぞ」 大輔くんが何をいったかわからないけど、僕は適当に答えると瞬く間に深い眠りに落ちていった。 あー。 疲れた。 もう知らない。 お兄ちゃんのバカ(←八つ当たり)
そんな僕が寝ている間に何かが起こったか? 爆睡していたから、僕は知らないけど。
END
ダイタケ、評判良かったのでダイタケを・・。って全然ダイタケちゃうやん! このあと、大輔に襲われたとしても「ああ、僕また勘違いしてる・・」と思ってそうです、タケルさん。 え、いや、なにをでかいと勘違いしたかは私は知りませんけど。 前の夜に何があったかも、ご想像におまかせします、ハイv(風太)
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