Scrap novel
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2001年10月29日(月) |
メール2(タケルの逆襲) |
中間テストが終わってほっとしたのも束の間、今日から一週間またびっしり授業がある。テスト中に出来なかったバンドの練習も、今週は毎日詰めてやる予定なので、週末までは最愛の弟に会えない。 はあ・・・と、何気にぼんやり窓の外を眺めていると出てくるのは溜息ばかりだ。そんな時。 ヤマトのポケットの中で、ケイタイがメールの着信を小さく告げた。 「おい、誰だ? 授業中はケイタイの電源切っておけよ!」 先生の声に慌ててケイタイを机の中に隠しながら、こっそりとメールを読む。 「タケル・・・」 思わず呟くように呼んでしまい、フシギそうに見る隣の席の女の子に、ヤマトは何でもないというように愛想笑いを浮かべて見せた。
『お兄ちゃんへ さっきはメールありがとう。 今、先生がちょっと教室を出ていったので、その隙に書いてます。 昨日は、ポトフごちそうさま。とてもおいしかったよ。 それから、土曜の夜は・・・』 土曜の夜。という言葉にドキリとする。さっき送ったメールの返事か? そう思って先を読んで、思わず赤面してしまった。
『土曜の夜は、 すっごぉく、 キモチよかったよ。』
・・・・ぼた、ぼた、ぼた。
「おい、ヤマト! ちょっと定規貸し・・! うわああ」 前の席から振り返った太一が、思わず立ち上がって叫んだ。 「い、石田くん、大丈夫!?」 「ティッシュ、誰か、ティッシュ!!」 「せんせー、石田がケイタイでエロサイト見てて鼻血出しましたー」 「うるせえ!!違う!!」 あちこちから差し出された山のようなティッシュで、ぼたぼた落ちる鼻血を押さえていると、男子生徒らが“イヤラシイ事考えてたろー”と口々に冷やかす。 それをムスっとした顔で睨みつけると、呆れたような口調で先生が言った。 「おい、八神。ちょっと石田を保健室つれていってこい」 「は〜い」 授業が公然とサボれて嬉しい太一は、ヤマトの腕を取ると教室を出、廊下を1階の保健室に向かって歩き出す。 「ったく、しょうがねえなー なんでまたおまえ、授業中にエロサイトなんか見てんだよ」 「見てねえって!・・・タケルからメールが来ただけだ・・」 「・・・おまえな、弟からメールもらって鼻血出すか。フツー」 呆れたような、疲れたような言い方にヤマトがむっとする。 「うるせえな、おまえの方こそ・・!・・・あ?」 「何だ?」 「いや、別に」 片手でティッシュを押さえ、もう片方の手にケイタイを握り締めていたヤマトは、ふと、さっきのメッセージのあとに続きがあるのを発見した。そして、思わずがっくりと肩を落とす。 (そーいや、アイツ、バスバブル初めて使ったって言ってはしゃいで、いつまでも風呂から上がってこなかったっけ・・・) いきなり落ち込んで廊下の壁になつくヤマトを、太一が“大丈夫か、おまえ”心底あきれたような声で言う。
石田ヤマト。 クールで口数少なくて、けどやさしくてカッコイイ。と女子生徒に絶対の人気を誇るお台場中学一モテる男。 けど実態は、まだまだ血気盛んな純情一直線の、中学2年生であった。
『土曜の夜は・・ すっごぉく、キモチよかった。
・・・泡のお風呂v 』
(チクショー・・・ タケルの奴・・・)
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