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2001年11月05日(月) あなたの存在(番外編)

何時間か眠り込んでいたらしい。ソファにもたれていた首が少し痛い。
ヤマトは首を振りながら身を起こすと、膝の上で眠っているはずの弟を
見下ろした。
タケルは、いつのまにか目を覚ましていて、上体を少し起こし、なんだか
もぞもぞとしている。心なしか、頬が赤い。
「タケル?」
呼びかけるなり、ぎくっとしたように兄を見上げる。
「どうした? 足が痛むのか?」
聞かれて、ううんと首を振る。
「なら、どうした? 顔赤いぞ。熱が上がったのか?」
言って、タケルの頭の後ろに手をやって、自分の方へ引き寄せると、自分
の額とタケルの額をそっと合わせる。
「あ、熱下がったみたいだな。よかったじゃん。・・・ってことは」
考えて、心ここにあらずという感じでまだモゾモゾしているタケルを見て
なるほど、そういうわけか、と思い当たって納得する。
「我慢してると、体に悪いぜ?」
「え、な、なななに・・・???」
急に腕に抱き上げられて、タケルがあたふたと慌てたように身をよじる。
「トイレだろ」
「え・・・・」
あっさり言われて、真っ赤になる。
「ちちちちちがうよ!」
「じゃあ、なんだよ」
「え・・・・えと」
「ま、とりあえず、一回いっておけよ。おまえ全然行ってないだろ」
「で、で、でも、どう・・・・」
どうやって、と言いたいらしいタケルに、言われてみれば、なるほど立って
するには足は包帯で覆われている状態だし、片足で立つのも、今日はまだ
それすら難しそうだ。
「じゃあ、俺が後ろで支えててやろうか。ついでに手も添えてやるぜ」
いやらしげな笑いを浮かべる兄に、上目使いにタケルが見上げる。
「手を添えるって・・・何に?」
「xxx」
「なななななに言ってるのもう!!!!お兄ちゃんの変態!」
「なんだよ、その言い方は! 人がせっかく・・・! あ、そうか」
トイレの前で言い争っていても埒があかず、しかしよく考えてみれば坐って
すれば何も問題はないわけで。
ヤマトは一人納得すると、トイレのドアを開け、タケルを抱いたまま、中へ
と入った。
しかし。
蓋をあげて坐らせたまではよかったが、パジャマのズボンを脱がそうとして、
ウエストのゴムに手をかけるなり、また大騒ぎとなってしまった。
「おおおお兄ちゃん、やだ、やめて!」
「やめてって! おまえ、どうでもいいけど、早くしねえと漏れるだろうが」
「だって、いやだったら!」
慌ててズボンを押さえて、ヤマトの手を引きはがそうともがくタケルと、もう
待てないと強引に、またそのタケルの手をはがそうとするヤマトとの間で争い
は続き、しまいにはタケルが泣き出しそうな声をあげる。
「いやあああっ!」
「・・・・それじゃあ、まるで俺が襲ってるみたいじゃねーか・・・」
疲れた声でそう漏らすと、とりあえず横向いてるからと固い約束をして
「絶対見ないでよ!」とまだ念を押され、とにかくパジャマのズボンとパンツ
を下ろしてやると、今度は退室を命じられる。
ヤマトはタケルを残してトイレの外へ出ると、ずるずると疲れたようにドアに
もたれて坐りこんだ。
(なんで、こんなことで疲れなきゃなんねーんだ・・・)
考えて、余計どっと疲れる。
母さんしかいなかったら、どうするつもりだよ、まったく。
別にやましい心がないわけではないわけではないわけではないが。
<どっちだよ・・>
だからといって、あそこまで抵抗されると、妙に興奮するじゃねえかよ。
なあ・・・・
そう思いつつも、平常心平常心と自分に言い聞かせてゆっくりと立ち上がる。
その途端、中から遠慮がちなタケルの声が聞こえた。
「お兄ちゃん・・・・パンツ一人で上げらんない・・・」
その言葉に、ヤマトは大きくため息をつくと、脱力したかのように再び、ズル
ズルとその場に坐りこんだ。
(挑発すんなって、もう・・・)




えと、これはキリリクのお話に入り損ねた(だってコメディだもん;)番外編
でございました。こういうの書いてると楽しいわ。書くのも早いし。
なんか小5くらいって、一番恥ずかしがりそうだもんね。うふふ。
というわけで、これもついでによろしかったら777HITリクのうみさんに。
さすがにこれはいらないって言われるかも(笑)




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