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2001年10月17日(水) 運動会

今日は、秋空の雲ひとつない晴天で、絶好の運動会日和だ。
日曜日ということもあって、観客席は家族の姿でにぎわっている。
縦割りで、紅白チームに分かれての対抗戦は、今のところほぼ互角と言う感じだ。
僅差で、大輔たちがいる赤組がやや優勢になっているが、最後の最後までわからない。目が離せない状況だ。
午後のプログラムも残す所2つほど、見せ場である6年生の紅白リレーの時間も近づいて、そんな状況なだけについつい子供たちの緊張も高まってしまう。
入場門のところで出番を待つ6年生たちは、整列するように言われて、走者順に並び始めた。
「げ〜っ! 青バトンのアンカーはやっぱりてめえかっ、タケル!」
「そっちこそ、赤組赤バトンのアンカーなんだ?やっぱりね」
「なんだよ、その余裕はよ〜!」
「タイムは大輔くんの方が早いじゃない。余裕ないよ」
さらりと言って、それから待ち時間のあいだに足首を回したりちょっとウォーミングアップに身体を動かすタケルを”カッコつけちゃってよ”と大輔が横目で睨む。ふと、その体操ズボンの下からスラリと伸びた細くて長い脚に目が止まると慌てたように視線をそらせた。
「? どうしたの?」
「どうもしねえよ!」
「何怒ってるのさ、もう。なんかクラス変わってから、僕の顔見るたびに怒ってない? 大輔くん」
「・・・そうか?ってか、そんなことねえよ!」
「ほら、怒ってんじゃん」
言いながら、小さく肩で息をついて、それからふっと観客席の方に視線を巡らせる。ふと、ビデオを構えて手をふる母と目が合って、笑ってカメラに向かってVサインを出す。母もそれに答えてVサインを返してくる。その周辺をチラリと見て、タケルは小さく溜息をついた。
「なんだ?」
「ん?ううん。なんでもない」
「なんだよ!」
「また怒る。ああ、大輔くんちは賑やかだね。応援」
「姉貴か? ったく、アイツ来るなって言ってんのに」
「一乗寺くんも来てるね。いいとこ見せないと」
「ななななんで、一乗寺が来てっといいとこ見せねえとってことになんだよ」
「だって。サッカーのライバルでしょ? ヘタな走り見せられないじゃない」
「・・・・・あ、そういう意味か」
「他にどういう意味があるの?」
「いや、どういう意味って、おまえなあ・・」
なぜか真っ赤になってタケルに掴みかかる大輔に、ヒカリがにっこりとその肩を叩いて笑う。
「あ、赤バトンアンカー、大輔くんなんだ。ちゃんと受け取ってねv」
「えええ、ってことはヒカリちゃんが女子のアンカー? ってことは、オレ、ヒカリちゃんからバトンをもらうんだ〜 えへへ、ってことは、その瞬間に手がふれあったりしてええぇ・・vvv」
一人でうるさい大輔は放っておいて、なんとなく今日は元気のないタケルに(それでも相当点数に貢献はしている大活躍だが)ヒカリが、小さく耳打ちした。
「よかったね」
「え? 何?」
「さっき、6年の女子が騒いでたよ、ヤマトさんが来てるって」
「え・・・」
「ライブ終わるの予定より早かったみたい」
タケルの顔がぱっと明るくなって、頬が少し紅潮する。
「ありがと、ヒカリちゃん」
「お互い、がんばろうね」
「うん」
その横で、一人騒いでうるさいと先生に注意された大輔が、やっと2人に気づいて焦り出す。
「なんで見つめあって、しかもタケルが赤くなってんだよ!」
喚く大輔に、タケルはにっこり笑むと、大輔を真っ直ぐに見つめて言った。
「絶対に負けないからね」
「お、おう! こっちだって、おまえにだけは負けないからな!」
「おまえにだけじゃなくて、他のヒトにも負けないでよね、大輔くん」
ヒカリの言葉に、大輔ははっとなると、“おう、絶対一番になってやらあ”と宣言して、ヒカリに拍手を貰って大いに照れまくった。

『最後は、6年生のリレーです。応援をお願いします』
その放送を合図に、タケルたちは整列したまま入場門を出、トラックへと向かった。(つづく?・・かな)


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