Scrap novel
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今日は秋晴れで天気がいい。 そのうえ、窓際の席だから、ついつい授業よりも頭がよそに行ってしまう。 (でも・・・まいったなあ・・・体育あるなんて忘れてた・・・) 時間割の変更があったことをうっかりしていた自分に、こそっと溜息をつく。 しかも跳び箱だなんて。 (足のつけ根が、まだ痛いよ・・・ もう、お兄ちゃん、無茶苦茶広げるから・・・) 考えてハッとなる。 今、すごいこと言わなかった? いや、言ってないか。 考えただけ。でも考えるだけでも恥ずかしいよね。 クラスの中に超能力があるとかいう人間はいないと思ってるけど、 今、頭の中を覗かれたりしたら、大変だよ。 ・・・と、机の中で、Dターミナルが小さく音をたて、先生に気づかれないよう、あわてて開いてメールを確認する。 噂の、兄だ。 『タケル。 きのうは無理させて悪かったな』 そうだよ、まったく悪すぎ・・・ 胸中でツッコミを入れつつ、何行か改行された後に出てきた言葉にぎょっとする。 『けど、気持ちよかったろ・・・?』 「き・・・!」 「じゃあ、高石。次、読んで」 (授業中だとわかってて、も〜っ! お兄ちゃん!) 「高石?」 真っ赤になって俯いたまま聞いちゃいないタケルに、後ろの席の子がちょんと肩をつつく。 「高石!!」 席のすぐ後ろまで来て轟いた先生の怒号に、タケルが驚いて反射的に立ち上がった。思わず、大声で返事を返してしまう。
「はい!!気持ちよかったです!!」
教室はどっと笑いにつつまれて、タケルは茹であがったタコのように真っ赤になってしまった。
・・・こんなこと、教室で発表してどうするんだよ。 もう、お兄ちゃんのバカバカ!
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