国民なら一度は目にしたことであろうヒーローウルトラマンそのウルトラマンを生みだした円谷プロの6代目社長だった円谷英明氏の書いた著書『ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗』(講談社現代新書)を読みました。内容紹介1960年代から80年代にかけて、多くの子どもたちが夢中になったウルトラシリーズ。ミニチュアや着ぐるみを駆使して、あたかも実写のように見せる独自の特撮技術を有し、日本のみならず世界の映像業界をリードしてきたはずの円谷プロから、なぜ、創業者一族は追放されたのか。「特撮の神様」と呼ばれた円谷英二の孫にして、「円谷プロ」6代社長でもある円谷英明氏が、「栄光と迷走の50年」をすべて明かします。-------------------------------------------------------------------われわれ円谷一族の末裔は、祖父が作った円谷プロの経営を全うすることができませんでした。現存する円谷プロとは、役員はおろか、資本(株式)も含め、いっさいの関わりを断たれています。これから、約半世紀にわたる円谷プロの歩み、真実の歴史を明かそうと思います。その中には、今もウルトラマンを愛してくださる皆さんにとって、あまり知りたくないエピソードも含まれているかもしれません。成功と失敗、栄光と迷走を繰り返した末に、会社が他人に渡ってしまった背景には、一族の感情の行き違いや、経営の錯誤がありました。私も含め、どうしようもない未熟さや不器用さがあったことは否めません。 (「はじめに」より) 円谷プロ誕生から50年の栄光と挫折が、円谷英二氏の孫で経営者だった英明氏によって赤裸々に書かれています。人気コンテンツを同族経営の中小企業が活かしきれなかったという、あまりにもずさんすぎる経営体制で財政破綻し、今はパチンコ機器メーカーに買収された円谷プロ。円谷プロとして名前が残っているだけでプロダクションから円谷一族は追放されてしまっています。円谷英二監督が数々の名作特撮映画を作りそれを上映していた東宝とあることがきっかけにして発生した絶縁状態、ウルトラシリーズを放送していたTBSとの軋轢と、円谷プロは製作した作品を上映や放映して頂く手段として重要なものを自らのワガママにもよって手放してしまうという大失態。他にも1話製作の製作費がバカ高いことによってテレビ局が製作を嫌がる点、著作権ビジネスの難しさ、タイのチャイヨー裁判で敗訴、アメリカや中国進出の失敗、中国でビジネスを展開する際の恐ろしい話など、噂レベルのまことしやかに伝えられていたことがやはり本当であったり、またそれ以上の驚嘆すべきことが円谷プロの歴史を通していろいろ書かれています。恨み節が多いので全てを鵜呑みにするわけには行きませんが、ウルトラシリーズを通して子供たちに夢を届けるしかし、その裏では大人の事情で翻弄されるウルトラマン。円谷プロの崩壊、ウルトラシリーズの埋没はなるべくしてなったと、目を覆いたくなる惨状ばかりで暗い気持ちになります。ところで、私が子供の頃は特撮ヒーロー番組は、小学生から中学生ぐらいまでを対象に作られていましたが、少子化とテレビゲームの誕生などで子供の興味が多様化した今はグッと対象年齢を引き下げて3〜6歳を対象年齢として製作され、その年齢の子供達に刷り込みを仕掛けるために、仮面ライダーシリーズも戦隊シリーズもシリーズを中断させることなく1年ごとに新作を放送していることが重要なのですが、『ウルトラマンネクサス』から全国ネットではなくなったウルトラシリーズは、数年間のブランクを繰り返すなどあって、またライダーも戦隊もオモチャメーカーのバンダイが一番力を持って製作に関わってくるので、変身するための小道具、武器や乗り物など多種多様に新しいネタが登場し、番組そのものがオモチャを買わすための宣伝に使われているみたいなもので、巨大ヒーローのウルトラマンでは戦闘機のオモチャかソフビ人形ぐらいしか商品展開が出来ない弱さもウルトラ人気を低下させる一因となり、製作費を回収できるオモチャ商戦でも苦戦を強いられているの現状で、だからなのか来月10日からスタートする『ウルトラマンギンガ』は今まで以上にバンダイが商品展開に大きく関わってきて、ウルトラシリーズのオモチャで一番売れるソフビ人形を変身する道具として使うようになっています。ギンガに変身する主人公が変身道具で怪獣のソフビをスキャンしその怪獣に変身し敵の怪獣と戦う設定になったりします。この先、ウルトラマンはどう変わっていくのか、ウルトラシリーズが好きなだけに見守っていくしかありませんが、読了後、複雑な気持ちになった本であったことは確かです。ウルトラマンがこれからの子供達にも夢を与えられるヒーローであり続けることを祈っています。