今なお現役にして日本漫画界の驚異、水木しげる御大の米寿(88歳)を記念して3,500冊限定の『屁のような人生』が発売されました。記念本は、角川書店のサイトで予約すると、京極夏彦さんデザインの特製函に入って送られてくるのですが、函ありは限定500冊のみで、そのことを知ったのは予約締め切り後だったのです。フハッ!一生の不覚・・・。内容は、水木御大自身のエッセイ、水木さんを知る方々のコメント、そして子供の頃や美術学校時代に描いたスケッチや本邦初公開の10代の頃に描かれた童話絵本、紙芝居作家時代の絵から、貸本時代、「ガロ」時代、メジャー系マンガ雑誌で活躍し始めて以後の作品と、今では読めない作品を含めた貴重なマンガが収録され、88年の軌跡を代表作とともに辿ります。「屁のような人生」と振り返るだけあって、これまでの人生に触れられている部分は少なく、マンガがほとんどです(笑)漫画家として頂点に君臨する手塚治虫先生よりも壮絶で濃密な人生経験を送っている水木御大の、88歳を記念して出版される記念本だけあって、もっと深い内容の本となるかと予想していただけに、水木マニアにとっては、ちょっと拍子抜けでしたけど、水木御大自身の様に“ゆるい感じ”が出ているのではないでしょうか。アホなのか天才なのかと言われた子供時代、総員玉砕せよと命じられた南方ラバウルでの地獄のような戦争体験、爆撃で左手を失い、何度もマラリアに襲われ死の淵をさまようも、ギリギリのところで絶対に助かる超が付くほどの強運の持ち主で、終戦後、日本へ帰国し、いろいろな職業を転々とし、紙芝居作家、貸本作家時代の餓死寸前の赤貧生活、雑誌連載から目の回るような忙しさとなった昭和40年代、そして、幸福と健康のために好きなことだけをやろうと考えて、マンガを描くペースを落とし、世界中の妖怪や不思議を探し求めて旅する自由奔放な生活を楽しむ現在に至るまで、壮絶な人生だったのに、それを「屁のようなもの」と言い切れる水木御大はやっぱり普通じゃないです(笑)あとがきで、水木御大は、88歳になったけど心と体は8歳であると述べています。健康第一、よく食べよく寝て、いつまでも8歳の純粋な子供頃を忘れず、会えばみんなが楽しくなるという幸福菌を振りまきながら、90歳、100歳、120歳となっても、幸福の探求を楽しめる健やかな日々をお祈りしています。より深く水木しげるが知りたい人は、このマンガがお勧めです。