【あめりかノート】ワシントン駐在編集特別委員・古森義久■拉致訪米団が提起したこと 拉致問題解決のためにワシントン入りした訪米団の一員、塚田一郎参議院議員が横田めぐみさんとともに新潟市立寄居中学に通っていたという話を聞いて、この拉致のむごさをまたまた実感した。 めぐみさんが北朝鮮工作員にさらわれた1977年11月、二人はともに13歳の寄居中学の生徒だった。学年こそ塚田氏が1年上だったが、小さい学校だからおたがいに知っていた。めぐみさんが行方を絶った後の地元社会の騒ぎや悲しみも塚田氏は肌身で体験したという。 それから30余年、塚田氏は東京の大学から米国の大学院を終え、大手銀行に勤めた後、国政への道を進んだ。同じ中学で同じ時期に学んだめぐみさんにも、こうした躍進へのドアは開かれていたはずだった。だが彼女は工作船に閉じ込められ、「お母さん、助けて!」と泣き叫びながら、北朝鮮の闇にのみこまれていった。同じ中学に通った日本人同士の人生のこれほどの断層はめぐみさんや彼女を愛する人たちを悲嘆に突き落とした犯行の残忍さを改めて感じさせる。 この悲劇の終結に米国の協力をも得ようとする拉致被害者の「家族会」「救う会」「拉致議連」の合同訪米団が4月末からこの3日までワシントンに滞在して、政府や議会など広範な米側関係者多数と面談した。オバマ政権になって初めての拉致関連の訪米団だった。 「家族会」の飯塚繁雄代表と増元照明事務局長は妹や姉を連れ去られた肉親の立場から米側に「拉致問題が埋もれないよう北朝鮮への圧力を緩めないでほしい」と訴えた。「救う会」の西岡力会長代行と島田洋一副会長は政策面で北朝鮮の「テロ支援国家」への再指定と金融制裁の新発動を求めた。 「拉致議連」は国会での補正予算などの審議の合間をぬって駆けつけた平沼赳夫会長や古屋圭司事務局長、松原仁同局長代行がオバマ政権の国家安全保障会議や国務省の当局者に「米国が拉致での対日協力を渋ると、日本側の対米不信を高め、日米同盟に悪影響を与える」などと告げた。イラク派遣の自衛隊で活躍した佐藤正久参院議員と前述の塚田議員も初参加ながら積極的に発言していた。 訪米団がまとめた米側の反応は、北朝鮮のテロ支援国家再指定や金融制裁新発動の要請にははっきりノーの回答が返ってきたように、「オバマ政権はとにかく圧力よりも対話を優先させ、日本の拉致への認識もまだ高くない」(飯塚、増元両氏)という感じだった。その一方、松原、塚田両議員とも「日本側の官民が拉致の解決をなお強く求めているというメッセージを新政権に伝えたことの意義は大きい」と強調した。オバマ政権の北朝鮮政策というのはまだまだ固まっていないから、今回の日本側からのインプットには期待は残る。 しかし気になったのは訪米団が総括の記者会見で日本の民主党の前原誠司、岡田克也両氏の名をあげて批判したことだった。両氏がともにワシントンを最近、個別に訪れた際、米側関係者に「いまの日本は拉致解決に固執しすぎて北朝鮮の核放棄への障害となっている」という趣旨を述べたというのだ。増元、島田、塚田の3氏がともにその「前原・岡田発言」について米側から聞いたと明言し、そんな発言は日本側の拉致解決への希求に対する疑念を米側に抱かせると述べ、日本自体がきちんと団結しない限り、拉致の解決は難しいとも主張した。 前原、岡田両氏の側の見解を聞きたいところである。(産経新聞 2009.5.5 02:54)-----------------------------(引用終了)---------------------------->日本の民主党の前原誠司、岡田克也両氏の名をあげて批判したことだった。>両氏がともにワシントンを最近、個別に訪れた際、>米側関係者に「いまの日本は拉致解決に固執しすぎて>北朝鮮の核放棄への障害となっている」という趣旨を述べたというのだ。政治家には言って良いことと悪いことがあって、これは思っていても言ってはいけないことではないでしょうか。建前としても国民の権利が他国に侵害されていることを政治家が容認するような発言は相手の思う壺になる恐れさえあります。 北朝鮮なんて、北朝鮮の望むがままに交渉を進めてあげても、核開発や実験は進めていたし、先月のミサイル発射後の国連の議長声明に反発して、「核開発再開する宣言」をしているように、これまでの北朝鮮の動きを見ていれば、核のカードは手放さないということは明白で、拉致問題が核放棄への障害となっているとは思えませんけどね。というか、日本が拉致問題さえ引っ込めれば、北が核開発を諦めると本気で思っているのなら、頭がオメデタすぎます。