昨夜、『NHKスペシャル 職業“詐欺”〜増殖する若者犯罪グループ〜』を見ました。番組紹介ページ罪悪感も無く詐欺行為に及んでいる若者のインタビューに、殺人犯の供述を見聞きした時と違った腹立たしさを感じました。ところで、NHKは、振り込め詐欺を実行している若者や、全国の振り込め詐欺グループを束ねるボスクラスの31歳の男性にまでインタビューをしていましたが、ここまで突き止めているなんて、さすがNHKの取材能力は民放とは違い、ずば抜けているし、ある意味で警察より優秀ではないかと思った一方で、ここまで辿り着けない警察は何をやっているんだという気持ちになります。今回のNHKスペシャルに限らず、報道番組で、詐欺師や麻薬密売人といった犯罪者にインタビューすることがありますが、いつも疑問に感じるのは、どういうルートを使って犯罪者に接触しているのかということと、取材される側の犯罪者は、取材されたことによって、捕まるリスクが高まるかもしれないのに、それでも、内部資料を見せて、悪びれることなく、ぺらぺらと手口を明かしたりするのは、メディアの記者との接触で得るものがあるからなのかということです。そもそも、犯罪者を前にしての取材行為は、犯人隠匿の罪にあたらないのでしょうか。話を番組の内容に戻しますが、振り込み詐欺をして捕まった若者も紹介されていましたが、詐欺行為に及んだ若者達は、別に貧しい家庭環境で育ったのではなく、どちらかと言えば中流かそれ以上で、有名大学へ進学していたり、医者を目指していたが、数度の試験に落ち挫折しているような人物でした。しかも、そんな彼らのほとんどが、プライドだけは異様に高く、「金こそ全て」と物質的な豊かさでしか、自分が優位に立てないと思い込んでいるようで、このような感覚の彼らが数年後に服役を追えて出所しても、今度は額に汗して真面目にコツコツ働けるとは想えません。なぜなら、先週、詐欺罪で捕まった「円天」の代表である波和二容疑者が、以前も詐欺で服役していたように、ちょっとの知恵だけで楽をして大金を手に入れ、その金で成金生活を謳歌できたという、詐欺で大金を得ていた“旨み”を経験してしまったからには、服役中も、今度はもっと上手く詐欺をやれないかと、思案していたことを実行に移したり、ほかの詐欺師メンバーから誘われ、再び詐欺師に戻ってしまうだけではないでしょうか。また、番組内では、犯罪者以外にも、振り込め詐欺グループから誘われているという家族の生活のために振り込め詐欺に手を染めるかどうか迷っている会社を首になった妻子持ちの男性や、騙して得たお金を通帳から引き出すという、一番捕まるリスクが高く尚且つ報酬が安い下っ端の出し子という役割で、その日暮している若者にもインタビューをしていました。振り込め詐欺グループを束ねるボスクラスの31歳の男性は、NHKのインタビューで、「下っ端(出し子や名義売り)は、 自分の中に自分だけの正義を作っちゃう。 家族のためとか、食うためとかって正義をね。 そうしたら、何でもできる」このように、犯罪は正義だと肯定し、しかも俺たちだって困った人間を助けているんだという感覚で語っていましたが、景気や雇用悪化によって、振り落とされた人々が、一番捕まるリスクが高く尚且つ報酬が安い下っ端になったり、ドヤ街で戸籍など名義売りをやってしまうように、いとも簡単に犯罪に手を染めたり、この先の生活のための選択肢が犯罪しかないと、生活苦の若者が吸い寄せられてしまうこの不景気を、振り込め詐欺を実行している上位クラスの若者達は歓迎しているように、これから先、社会の善意のリソースを食い潰す振り込め詐欺の被害は減るどころか、益々増えるのではないかと、番組を見て暗澹たる気持ちにさせられました。以前、TBSの『報道特集』で、アジアに広まる振り込め詐欺が特集されていました。韓国では、振り込め詐欺撲滅の為、警察のみならず、携帯電話メーカーや通信会社、そして各金融機関が協力して振り込み詐欺犯人の逮捕へ繋げる努力をして、そこそこの成果を上げているようでしたが、日本も警察だけではなく企業も団結して取り組むべきではないかと思います。