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2008年02月12日(火) 割り箸死亡事故

診察医師の過失認めず、遺族の請求棄却=男児割りばし死亡事故−東京地裁

東京都杉並区で1999年、杉野隼三ちゃん=当時(4つ)=が
割りばしをのどに刺し死亡した事故で、医師が適切な治療を怠ったとして、
父の正雄さん(56)らが病院を経営する学校法人杏林学園(三鷹市)と
医師に総額約8900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、
東京地裁であった。加藤謙一裁判長は
「頭蓋(ずがい)内損傷を予見することが可能だったとはいえない」として、
遺族の訴えを棄却した。遺族側は控訴する方針。
 杏林大付属病院で担当医だった根本英樹被告(39)は業務上過失致死罪で起訴され、
一審は過失を認定したが、死亡との因果関係を否定し、無罪とした。
民事訴訟では過失も認めず、遺族にとってはより厳しい判決となった。
 加藤裁判長は、過去に同様の例が報告されたことはなかったとした上で、
事故時に大量の出血もなく、医師は隼三ちゃん本人が割りばしを抜いたと
知らされていたなどと指摘。「割りばしが頭蓋内に入った可能性を考える
必要があったとまではいえない」と述べた。

(時事通信 2月12日15時31分)


割りばし死亡事故:12日判決 遺族「真実明らかにして」

東京都杉並区で99年、のどに割りばしが刺さって死亡した
杉野隼三(しゅんぞう)君(当時4歳)の両親が、
「十分な診察を怠った」として学校法人杏林学園(三鷹市)と
担当医(39)に8960万円の賠償を求めた訴訟の判決が12日、
東京地裁(加藤謙一裁判長)で言い渡される。

 隼三君は99年7月10日、盆踊り会場で綿菓子の割りばしをくわえたまま転倒し、
杏林大付属病院に運ばれた。担当医は傷に薬を塗っただけで帰宅させ、
隼三君は翌朝死亡。司法解剖で7.6センチの割りばし片が
脳に刺さっていたことが判明した。

 病院側は一貫して「脳に割りばしが刺さっているとは予想できない」と
過失を否定し、直接の謝罪はない。

 父正雄さん(56)は「調査を尽くさない姿勢に納得がいかなかった」、
母文栄さん(50)も「きちんとした説明と謝罪があれば、提訴しなかった」と話す。
兄雄一さん(20)は「兄弟3人いつも一緒だった。
命が失われた理由をはっきりさせて」と訴える。

 担当医は業務上過失致死罪に問われたが、06年3月の東京地裁判決は
過失を認めながら「救命可能性が極めて低かった」と判断し、
無罪を言い渡している(検察側が控訴)。

(毎日新聞 2008年2月10日 20時00分)


-----------------------------(引用終了)----------------------------

この裁判は、どちらに感情移入するかで感想が変わってくると思いますが、

わたしは、医者は神でもないし、

医療と言うのは完璧に行えないこともあるので、

この件に関しては医療機関に過失責任を問うのは無理があり、

この判決は妥当だと感じています。

遺族である親の悲しみや悔しさは察するに余りありますが、

親の悲しみや悔しさと、

過失であったか、そうでなかったかは無関係ではないでしょうか。

これで病院側が負ければ、

医療の崩壊がより加速されるのではないでしょうか。

 医師の小松秀樹氏の著書『医療の限界』(新潮新書)では、

日本の医療制度が危機的な状況を迎えたのは何故かと幾つかの問題点を挙げ、

この割り箸死亡事故についても触れられています。

一般人は治療に当たった医師が割り箸が見つけられなかったのかを疑問に思うが、

多くの医師は、そのような事態は想定できず、

想定できなければ診断のしようもないと考え、

一般人と医師とで、この事件に対する考え方の乖離があった事、

また、遺族、医師、一般人の間で感情的な批難の応酬があり、

このような感情的な軋轢を招いたのは、

既存メディアによって親の監督責任について、

正面きって議論されなかったことだと論じています。

小松氏の主張どおり、

ネットでは一般人による親の監督責任についての議論が存在していましたが、

(その議論の中には、ただの誹謗中傷の読むに堪えない意見も多く含まれます。)

既存メディアは、この事件を伝える際に、医師側ばかりを責め、

逆に、事故は予見できなかったとはいえ、

小さな子供に割り箸を持たせたまま(咥えさせたまま)走らせていた、

親の監督責任について論じることは、

何を恐れたのか自らでタブー化して発言することさえ封印しました。

わたしは、このメディアのタブー化(自主規制)こそが、

逆に、有意義な議論のみならず、

この家族への誹謗中傷がネット上に溢れた

要因になったのではないかと考えています。

 そして、この事件をきっかけとして、

医療はさまざまなリスクも抱えており100%完璧なものではありえないのに、

医療事故や医療提訴が起きた場合、冷静に論じることなく、

患者サイドに肩入れしたメディアによる、

病院や医師バッシング報道が増えた事により、

訴えられるリスクを背負ってまで救急医療、小児科医療、

産婦人科医療などに携わる事を嫌がる医師が増えて、

これが今の医療崩壊に結びついていると述べておられます。










名塚元哉 |←ホームページ