岩男壽美子 著『外国人犯罪者 彼らは何を考えているのか』(中公新書)を読みました。全国五ヶ所の刑務所に服役中の日本人と外国人の犯罪者2156人(有効回答、日本人男女1300名・外国人男女865名)への調査をもとに、日本人と外国人では犯罪意識や行動はどう違うのかを比較し考察した世界でも類を見ない調査報告書です。アンケート内容は、来日目的にはじまり、刑務所内での食事や医療を含めた生活状況と来日前の生活状況の比較、来日前に抱いていた日本の警察や裁判のイメージ、犯罪者自身の目線で捉えた犯罪行為に対する贖罪意識。ほかにも、受刑者の出身地域による犯罪行為などの比較、外国人受刑者のうち、犯罪目的で来日したプロの犯罪者と、それ以外の目的で来日した者との比較。受刑者と一般市民(日本人男女750名、中国人男女110名)との価値観や社会観の比較など多くの調査結果があり、興味深く読むことが出来ました。 また、調査結果を見ていますと、日本人の受刑者には再犯者が多いことや、高齢者が増えていることも驚かされますし、日本人以外にも様々な人種を抱え、それぞれの習慣や文化意識の違いに、しかも定員オーバーな刑務所職員の悲鳴も痛感します。外国人受刑所のほとんどが本国での服役を望んでいるので、早急に日本政府は各国政府と犯罪者の引渡しの制度の枠組み作りに取り組むべきではないでしょうか。 グローバル化にともない年々来日する外国人が増え、ほとんどの人は日本人と共生していますが、しかしながら中には、最初から犯罪目的で来日する者や、何らかの理由によって犯罪に手を染めてしまった者も出てきます。一部の外国人の犯罪によって、それが報道されることで、日本で真面目に生活する多くの外国人に対して誤解や偏見が生まれてしまうことにもつながるので、誤解や偏見を増幅させることなく、異文化との共生と日本国民の安心安全を両立させるにはどうすればよいのか、この本が今後の対策のヒントに役立てばいいのですが。