光母子殺害、元少年「来世で夫になる」リンク切れの時はweb魚拓「僕は死刑になって、来世で弥生さんの夫となる可能性がある」。山口県光市の親子を殺害した元少年が拘置所で語ったとされる証言が、事件の差し戻し控訴審で明らかにされました。 「遺族としては、じっと歯を食いしばって弁護側被告人の話を聞いていた」(遺族 本村 洋 さん) 8年前、本村洋さんの妻、弥生さんと長女の夕夏ちゃんが殺害された事件の差し戻し審で、弁護団の依頼により被告の元少年を独自に精神鑑定した大学教授が証言しました。元少年は、教授との面接でこう話したと言います。 「ぼくは死刑になって、弥生さんと夕夏ちゃんと来世で会う。再会したときに弥生さんの夫となる可能性がある。そうなると洋さんに大変申し訳ない」(元少年が語ったとされる証言) そして元少年は、こうも語ったということです。 「弥生さんは、洋さんが怒っているのを喜んでいないと思う」(元少年が語ったとされる証言) 「何をもって彼がそういう発言をして、どうしてそれを裁判で精神科医が話したのか意図は分かりませんが、もし彼が本心でそれを言っているのであれば反省していないことの証だと思います」(本村 洋 さん) 「幼い頃から不条理な暴力にさらされてきた。その中で彼はつまるところ成長は止まってしまった」(元少年の弁護団 安田好弘 弁護士) 弁護側は、元少年は父親の虐待行為や母親の自殺により、精神的な発達が遅れ、現実を認識する能力がなかったと主張しています。(TBSニュース 26日18:05)「計画的といえない」と精神科医が証言 光母子殺害光母子殺害事件の差し戻し控訴審公判が二十六日、広島高裁(楢崎康英裁判長)であり、元少年(26)=事件当時(18)=を精神鑑定した精神科医の野田正彰・関西学院大教授が弁護側証人として出廷、犯行は「計画的とはいえない」と証言した。 野田教授は、元少年の人格は、父親の暴力や依存関係にあった母親の自殺などが原因で極めて幼いと指摘。本村弥生さん=当時(23)=を「パニックに陥り押さえ込んだ」と述べた。 元少年が夫洋さん(31)に拘置所での作業の報酬を送金したことは「謝っているのは本心だが、一方で許されるという甘えもある」と説明した。 元少年は面接の際「弥生さんはまだ生きている」「来世で(弥生さんの)夫になる可能性がある」などと話したといい、野田教授は「本当の意味で二人を殺した認識ができない」と分析した。(中国新聞 '07/7/26)「信じ難い弁解」と不快感 光母子殺害公判で本村さん山口県光市・母子殺害事件の差し戻し控訴審で、3日間の集中審理を終えた遺族本村洋さん(31)が26日、広島市内のホテルで記者会見。乱暴目的や計画性を否定した元少年(26)や弁護団の主張に「極めて苦しい弁解で、心に入ってくる言葉がない。時々刻々と言っている内容が変わっており信じ難い」と不快感をあらわにした。 元少年は、被告人質問で本村さんの妻弥生さん=当時(23)=について「こんなお母さんの子どもに生まれたらどんなに幸せだろうと思った」などと証言。本村さんは「席を立って『違うだろ』と言いたくなる場面もあった」と振り返ったが、時折目をつぶりながら、妻子の遺影とともにじっと前を見据え続けた。 弥生さんへの乱暴を「亡くなった母親と一体化しようと思っていた」と説明した精神鑑定医の証言も「事件から8年たって鑑定して、なぜ克明に犯行時の被告の心境やそれに至る経緯を言えるのか理解できない」と話した。(中日新聞 2007年7月26日 21時53分)※事件概要など・アパートで主婦、本村弥生さん(当時23歳)を暴行目的で襲って殺害。遺体を陵辱後、 母の遺体に泣きながらはって寄ってくる夕夏ちゃん(同11カ月)を持ち上げて床に叩きつけ それでもなお母の所へ来ようとするところを絞殺。財布を盗んだ。 山口地裁は(1)犯行時は18歳と30日で発育途上(2)法廷で涙を浮かべた様子から更生 可能性あり(3)生育環境に同情すべき点あり、などから無期懲役を言い渡した。※元少年が知人に出した手紙など・「無期はほぼキマリ、7年そこそこに地上に芽を出す」・「犬がかわいい犬と出合った…そのまま『やっちゃった』…罪でしょうか」・『もう勝った。終始笑うは悪なのが今の世だ。 私は環境のせいにして逃げるのだよ、アケチ君』・『オレ自身、刑務所のげんじょーにきょうみあるし、速く出たくもない。 キタナイ外へ出る時は、完全究極体で出たい。 じゃないと二度目のぎせい者が出るかも』・(被害者に対して)『ま、しゃーないですね今更。ありゃー調子付いてると僕もね、思うとりました。』※安田弁護士(死刑廃止派)らの意見…弁護団は21人構成・「遺体を強姦したのは、生き返らせるための魔術的儀式」・「強姦目的じゃなく、優しくしてもらいたいという甘えの気持ちで抱きついた」・「(夕夏ちゃんを殺そうとしたのではなく)泣き止ますために首に蝶々結びしただけ」※心理鑑定・日本福祉大学の加藤幸雄教授の意見・「私なら、世間に“性暴力ストーリー”と受け取らせず、“母胎回帰ストーリー”と示せた」・「専門家のサポートがあれば、更生の可能性がある」※元少年の質問回答・「ロールプレイングゲーム感覚で、排水検査装った」・「ピンポンダッシュ遊びして、たまたま本村さんの家に入った」・「赤ちゃんの遺体を押し入れの天袋に隠したのは、ドラえもんが何とかしてくれると思った」・「赤ちゃんをあやそうと抱いたら、手が滑って頭から落ちた」・「死んだあとで服を脱がしたのは、女性だったら恥ずかしくて反応するかと思って」・「精子を女性の体内に入れたら、生き返ると本で読んだ」-----------------------------(引用終了)----------------------------「来世で夫になる」という言葉は、池田小学校乱入事件の宅間守が裁判で、傍聴席に座っていた遺族に向かって、笑いながら言った捨て台詞の一つ「あの世でも子供をシバキ回したるからな!」に近いものがあり、事件の当事者でもなくとも不愉快極まりないと感じたのですから、本村さんの心の中はどれほどの怒りや悲しみに満ち溢れていたことでしょうか。 精神鑑定を行った精神科医の野田正彰教授は、岩波書店発行の雑誌『世界』(2000年7月号)で、「裁判に用いられる精神鑑定は被告が犯行を行った時に、 精神病であったのかどうかを判断する材料であって、 その時の動機や動機の形成や心理状況がいかにあったか、 その時の心理状況がどうであったのかまでを鑑定に持ち込むのは、 精神鑑定医の越権行為で精神鑑定の乱用である。」という趣旨の論文を発表していました。私もこの論文には同意しています。がしかし、ここ一連の野田教授の行為は、福●孝行の育った環境や心理状況などを犯行に至った動機付けとして持ち出しており、自分が論文で批判していた鑑定医の越権行為と乱用そのものではないでしょうか。 犯行の原因が育った環境にあるという環境説も、もちろん一理あるのかもしれませんが、全てがそこに起因するわけではありません。育った環境が悲惨だからといって、すべての人が犯罪者になるわけではありませんし、また育った環境が悲惨だからといって、犯罪を犯しても仕方ないと正当化することなど言語道断で、被害者や遺族は到底受け入れられるものでないのは至極当然のことです。 以前から、私と同じように、日本は加害者に甘すぎるのではないかと感じている人は多いことでしょう。その気持ちを代弁する新書が先日発売されました。中嶋博行 著『この国が忘れた正義』(文春新書)本書の帯より「日本は加害者に甘すぎる 犯罪者「福祉」予算2200億円! 凶悪犯や虐めっ子を優遇する「犯罪者福祉型社会」を排し、 ウルトラ処罰社会モデルを導入せよ!」■内容紹介■ 著者は弁護士として、「犯罪被害者支援」や「いじめ」問題に積極的に取り組み、書籍や雑誌、テレビなどを通して、様々な提言を行なっています。今回の本では、「犯罪者福祉社会」と化した日本の司法システムの問題点を鋭くえぐり出した上で、「正義」実現のための方策を問うています。そういった活動を行なう弁護士だけに、たんなる「机上の空論」に留まらない説得力があり、かつ『検察捜査』(講談社)で江戸川乱歩賞を受賞した作家だけに、「読ませる」文章になっています。-----------------------------(引用終了)----------------------------本書は、犯罪者の更正改善は幻想に過ぎないと、具体的な例や数字を基に分かりやすく解説しています。いまの日本は、犯罪者が更正すれば、間接的に社会の安全が守られるだろうという甘い期待の考えに基づいて、犯罪者の更正改善を国家目標としており、犯罪者にセカンドチャンスを与えることを優先とし、欧米とは違い、被害者の救済は後回し、社会防衛は二の次の犯罪者「福祉型」社会であると述べております。そして、リベラル左派が強かった1960年代のアメリカで導入され、結果、犯罪の拡大再生産と猟奇犯罪の多発を生みだした「治療モデル」を未だに日本は犯罪者の更正プログラムに導入し続けているのです。 アメリカは犯罪者の更正を軸にした「治療モデル」の失敗を反省し、人間の心は容易く変るわけもなく、犯罪者の更正は幻想に過ぎずと、社会を犯罪から防衛するには、犯罪者を徹底的に隔離し無害化することだと、刑務所の増設と懲役50年というような長期刑の導入を決めたのでした。本書では他にも、刑務所を民営化し、刑務作業に資本主義原理を導入し、被害者の賠償に充てることなど提言しています。最後に山口県光市の事件の弁護団を批判した「あとがき」より一部抜粋します。ヨーロッパで死刑がきれいさっぱり消滅していると聞くと、人類史の流れは死刑廃止の方向にあると思ってしまう。しかし、ヨーロッパと日本では決定的なちがいがある。ヨーロッパでは、犯罪被害者に対する支援がわが国とは比較にならないくらい充実しているのだ。例えば、イギリスの犯罪被害補償金は最高で5五十万ポンド(約一億二千万円)である。 ドイツには、犯罪被害による後遺症のリハビリテーション費用や介護援助、住居費援助などの給付金制度がある。西欧各国とも長い年月をかけて犯罪被害者への社会的補償を完備し、その上で死刑の廃止に踏み切った。それがヨーロッパ的な人道主義なのである。 一方、わが国では、犯罪被害者への補償が不十分なままで、やみくもに死刑廃止が叫ばれている。死刑廃止派の主張が世論の支持を得られないは当然である。 死刑廃止や死刑のモラトリアムに反対するつもりはないが、そのまえに、まず犯罪被害者の支援制度を完備する必要があるだろう。